1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 22:37:34.91 :R161NsPX0
男「親父さん!娘さんを僕にください!」
親父「お前分かってんのか?うちは三条の糸屋で、この子はその娘なんだぞ?」
男「わかっています」
妹「ねぇお母さん、あれがおねぇちゃんの言ってた男さん」
母「そうよ」
姉「……」
親父「お前、この子の目、見たことがあるのか」
男「あります」
親父「ほぅ……おい姉。少し試してみろ」
男「親父さん!娘さんを僕にください!」
親父「お前分かってんのか?うちは三条の糸屋で、この子はその娘なんだぞ?」
男「わかっています」
妹「ねぇお母さん、あれがおねぇちゃんの言ってた男さん」
母「そうよ」
姉「……」
親父「お前、この子の目、見たことがあるのか」
男「あります」
親父「ほぅ……おい姉。少し試してみろ」
2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 22:39:55.61 :R161NsPX0
母「お前さんも、諦めが悪いねぇ」
親父「うるせぇ。嘘かもしんねぇだろ。やれ」
姉「…はい」スッ
男「姉(あね)ちゃん。今日もかわいい目をしているね」ニコッ
姉「///」フイッ
親父「ほーやるじゃねぇか。姉にもこんな奴が現れたか」
母「ええ、やっと・・・」
母「お前さん、いいんじゃありません?」
親父「どうだかな。死なないことと結婚は別だ。今日は帰れ。考えておいてやる」
男「はい! ありがとうございます」
・
・
・
母「お前さんも、諦めが悪いねぇ」
親父「うるせぇ。嘘かもしんねぇだろ。やれ」
姉「…はい」スッ
男「姉(あね)ちゃん。今日もかわいい目をしているね」ニコッ
姉「///」フイッ
親父「ほーやるじゃねぇか。姉にもこんな奴が現れたか」
母「ええ、やっと・・・」
母「お前さん、いいんじゃありません?」
親父「どうだかな。死なないことと結婚は別だ。今日は帰れ。考えておいてやる」
男「はい! ありがとうございます」
・
・
・
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 22:40:46.16 :7NhwP4lo0
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 22:42:49.58 :R161NsPX0
男「じゃあね。姉ちゃん。お母さんも、今日は突然すみませんでした」
母「いいのよ~ こっちこそごめんね。あの人心配性なのよ」
男「大事な娘さんですからね」
姉「また、ね…」
男「うん。じゃあ失礼します」
・
・
・
男「じゃあね。姉ちゃん。お母さんも、今日は突然すみませんでした」
母「いいのよ~ こっちこそごめんね。あの人心配性なのよ」
男「大事な娘さんですからね」
姉「また、ね…」
男「うん。じゃあ失礼します」
・
・
・
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 22:45:44.92 :R161NsPX0
男「はぁ…緊張した。」
男「しかしまぁ、親父さんの反応もそんなに悪くなかったし、結婚認めてもらえるかな」
俺が姉ちゃんと出会ったのは、半年ほど前。鴨川沿いの路地裏だった。
・
・
・
男「はぁ…緊張した。」
男「しかしまぁ、親父さんの反応もそんなに悪くなかったし、結婚認めてもらえるかな」
俺が姉ちゃんと出会ったのは、半年ほど前。鴨川沿いの路地裏だった。
・
・
・
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 22:47:50.33 :R161NsPX0
~~~~回想~~~~~
岡っ引き1「お嬢ちゃん、かわいいね~」
姉「や、やめて…ください」
岡っ引き2「輪郭はいい感じじゃねぇか。三度笠と前髪で顔見えないから、見せてね~」
姉「だめ…」
男「…ん?あれは…」
男「おい!やめろよ!困ってるだろうが」
岡っ引き12「あ?」
姉「…」
女の子が俺の後ろに隠れるようにして岡っ引きの方を向いている。
~~~~回想~~~~~
岡っ引き1「お嬢ちゃん、かわいいね~」
姉「や、やめて…ください」
岡っ引き2「輪郭はいい感じじゃねぇか。三度笠と前髪で顔見えないから、見せてね~」
姉「だめ…」
男「…ん?あれは…」
男「おい!やめろよ!困ってるだろうが」
岡っ引き12「あ?」
姉「…」
女の子が俺の後ろに隠れるようにして岡っ引きの方を向いている。
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 22:50:43.38 :R161NsPX0
男「大丈夫だったかい?」
岡っ引き1「ちっ、めんどくせぇ」
岡っ引き2「帰ろうぜ」
そう吐き捨てて二人は消えていった。
男「ふぅ…」
姉「ぁ…あの・・・あり、がとう…」
男「気にするな。困ってたら、ほっとけないだろ」
姉「///」
男「じゃあ俺帰るから。君も一人で帰れるかい?」
姉「・・・」
小さくうなづく女の子
男「大丈夫だったかい?」
岡っ引き1「ちっ、めんどくせぇ」
岡っ引き2「帰ろうぜ」
そう吐き捨てて二人は消えていった。
男「ふぅ…」
姉「ぁ…あの・・・あり、がとう…」
男「気にするな。困ってたら、ほっとけないだろ」
姉「///」
男「じゃあ俺帰るから。君も一人で帰れるかい?」
姉「・・・」
小さくうなづく女の子
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 22:52:51.45 :R161NsPX0
男「じゃあ、気をつけてね」
姉「ぅん……」
姉「あの・・・これ・・・」
女の子のかぶっていた三度笠。その意図がわからず聞こうと俺は顔を上げた。
男「ん? これは・・・って、もういないし」
・
・
・
男「じゃあ、気をつけてね」
姉「ぅん……」
姉「あの・・・これ・・・」
女の子のかぶっていた三度笠。その意図がわからず聞こうと俺は顔を上げた。
男「ん? これは・・・って、もういないし」
・
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・
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 22:55:27.99 :R161NsPX0
姉「ただいま…」
妹「お姉ちゃんおかえりー!」
母「おそかったわね?」
父「……」
姉「人目が、おおくて。避けていたら…」
妹「あれれ、お姉ちゃん。笠は?」
姉「風に飛ばされて、木に引っかかってしまって」
親父「気をつけろよ。あぶねぇだろ」
姉「はい…井戸まで、水を汲みにいってきます。」
母「ふふふ、お前さん あれはきっとあたしと同じですよ」
親父「馬鹿な…」
・
・
・
姉「ただいま…」
妹「お姉ちゃんおかえりー!」
母「おそかったわね?」
父「……」
姉「人目が、おおくて。避けていたら…」
妹「あれれ、お姉ちゃん。笠は?」
姉「風に飛ばされて、木に引っかかってしまって」
親父「気をつけろよ。あぶねぇだろ」
姉「はい…井戸まで、水を汲みにいってきます。」
母「ふふふ、お前さん あれはきっとあたしと同じですよ」
親父「馬鹿な…」
・
・
・
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 22:57:04.02 :R161NsPX0
男「これって、あの子のかぶってた三度笠・・・名前も書いてある…」
男「えっ、この名前って・・・あの子、有名な糸屋の娘なのか・・・」
三条の糸屋というのは、日本でも全国に上物の糸を流している家だ。
俺も商人の家に生まれた身。知らないわけがない。
男「これって、あの子のかぶってた三度笠・・・名前も書いてある…」
男「えっ、この名前って・・・あの子、有名な糸屋の娘なのか・・・」
三条の糸屋というのは、日本でも全国に上物の糸を流している家だ。
俺も商人の家に生まれた身。知らないわけがない。
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:01:05.98 :R161NsPX0
男「これって、あの子のかぶってた三度笠・・・名前も書いてある…」
男「えっ、この名前って・・・あの子、有名な糸屋の娘なのか・・・」
三条の糸屋というのは、日本でも全国に上物の糸を流している家だ。
俺も商人の家に生まれた身。知らないわけがない。
数日後
男「やぁ、今日もまたこんなところ歩いてるんだね。」
姉「うぁ・・・///」
男「ちょっと!何で逃げようとするの」
その時、とっさに彼女の腕を掴み引きとめようとした。
姉「きゃっ!!」
男「あっ、ごめん・・・」
彼女の勢いに引っ張られて、押し倒すように二人で倒れこんでしまった。
その時見えた顔はとても綺麗で、瞳は吸い込まれそうなほどに澄んでいた。
男「これって、あの子のかぶってた三度笠・・・名前も書いてある…」
男「えっ、この名前って・・・あの子、有名な糸屋の娘なのか・・・」
三条の糸屋というのは、日本でも全国に上物の糸を流している家だ。
俺も商人の家に生まれた身。知らないわけがない。
数日後
男「やぁ、今日もまたこんなところ歩いてるんだね。」
姉「うぁ・・・///」
男「ちょっと!何で逃げようとするの」
その時、とっさに彼女の腕を掴み引きとめようとした。
姉「きゃっ!!」
男「あっ、ごめん・・・」
彼女の勢いに引っ張られて、押し倒すように二人で倒れこんでしまった。
その時見えた顔はとても綺麗で、瞳は吸い込まれそうなほどに澄んでいた。
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:03:10.46 :R161NsPX0
姉「え・・・」
男「あっ…ごめん…」
姉「えっ・・・え?」
男「ん?どうした」
彼女の上からどいて、起こすために手を差し伸べた。でも、彼女はその手を掴もうとしない。
男「ほら、おきろよ」
姉「ぁ・・・あなたは、死なないの?」
男「なにいってんの」
姉「私、糸屋の娘だから・・・」
男「は?」
・
・
・
姉「え・・・」
男「あっ…ごめん…」
姉「えっ・・・え?」
男「ん?どうした」
彼女の上からどいて、起こすために手を差し伸べた。でも、彼女はその手を掴もうとしない。
男「ほら、おきろよ」
姉「ぁ・・・あなたは、死なないの?」
男「なにいってんの」
姉「私、糸屋の娘だから・・・」
男「は?」
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13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:07:11.24 :R161NsPX0
男「へぇ~ 視線で人を殺せるのかぁ」
姉「ぅん・・・」
姉「うちの…家系は、代々女は、目で人を殺せてしまう・・・」
姉「だから、前髪を長くして、帽子もかぶって誰とも目をあわせないようにしてる・・・」
男「殺したこと、あるの?」
姉「・・・・・・」
彼女は俯いて何も話さなくなってしまった。つまり、そういうことなんだろう
男「へぇ~ 視線で人を殺せるのかぁ」
姉「ぅん・・・」
姉「うちの…家系は、代々女は、目で人を殺せてしまう・・・」
姉「だから、前髪を長くして、帽子もかぶって誰とも目をあわせないようにしてる・・・」
男「殺したこと、あるの?」
姉「・・・・・・」
彼女は俯いて何も話さなくなってしまった。つまり、そういうことなんだろう
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:09:38.15 :R161NsPX0
男「あっ、そうだ。ほらこれ。君の三度笠、返すよ。名刺代わりにくれたんだろ?」
姉「うん・・・」
姉「ぁの・・・その…」
男「ん?」
姉「おと、もだちに、なって・・・」
男「なんだ姉ちゃん、そんな事か。喜んで」
姉「ありがと///」
・
・
・
男「あっ、そうだ。ほらこれ。君の三度笠、返すよ。名刺代わりにくれたんだろ?」
姉「うん・・・」
姉「ぁの・・・その…」
男「ん?」
姉「おと、もだちに、なって・・・」
男「なんだ姉ちゃん、そんな事か。喜んで」
姉「ありがと///」
・
・
・
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:12:49.62 :R161NsPX0
その日は次遊ぶ日の約束を取り付けて別れた。
彼女が人目は避けたいというので、町外れでお話を、ということになった。
男「よっ!遅かったな」
姉「人目を避けて、遠回りしてしまって。ごめんなさい…」
男「気にすんなって。姉ちゃんの事情はしってるから」
男「さ、行こうか」
姉「うぁ…///」
姉ちゃんの頭をワシワシと撫で、手を引いて歩き出す。
とりあえず川沿いの土手を目指す
その日は次遊ぶ日の約束を取り付けて別れた。
彼女が人目は避けたいというので、町外れでお話を、ということになった。
男「よっ!遅かったな」
姉「人目を避けて、遠回りしてしまって。ごめんなさい…」
男「気にすんなって。姉ちゃんの事情はしってるから」
男「さ、行こうか」
姉「うぁ…///」
姉ちゃんの頭をワシワシと撫で、手を引いて歩き出す。
とりあえず川沿いの土手を目指す
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:18:18.55 :R161NsPX0
男「へ~ 姉ちゃんの家はそういうやり方なのかぁ」
姉「どうして?」
男「俺の家もね、商いやってるんだ。姉ちゃんの家ほど大きくないけどね」
姉「そう・・・あの、あなたの名前・・・」
男「あぁ、俺?俺は男、よろしくね」
姉「男・・・さん・・・へへ///」
その時ちょうどさっきまで、そよそよと吹く程度だった風が、一瞬強く吹いた。そんな事もあるだろ。
でも、俺は内心を掻き乱された。風と一緒に姉ちゃんの前髪が流れ、小さく笑みを浮かべる姉ちゃんと目が合ってしまったから。やっぱりかわいい。口元に引っかかる髪がとても艶っぽく見えた。
男「へ~ 姉ちゃんの家はそういうやり方なのかぁ」
姉「どうして?」
男「俺の家もね、商いやってるんだ。姉ちゃんの家ほど大きくないけどね」
姉「そう・・・あの、あなたの名前・・・」
男「あぁ、俺?俺は男、よろしくね」
姉「男・・・さん・・・へへ///」
その時ちょうどさっきまで、そよそよと吹く程度だった風が、一瞬強く吹いた。そんな事もあるだろ。
でも、俺は内心を掻き乱された。風と一緒に姉ちゃんの前髪が流れ、小さく笑みを浮かべる姉ちゃんと目が合ってしまったから。やっぱりかわいい。口元に引っかかる髪がとても艶っぽく見えた。
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:21:38.49 :R161NsPX0
男「あっ///」
姉「はぁ///」
男「そ、その…また、こうやって会ってくれないかな・・・」
姉「うん…」
それからは他愛のない話をして時間が過ぎていった。川沿いの土手に腰掛け、お互い手を握って。
意識せずにそうなっていたし、言葉にはしなかったけど、好きあっているのが分かった。
男「じゃあ、また」
姉「うん」
男「次は…あさってくらいでどうかな?」
姉「大丈夫。必ず」
男「あっ///」
姉「はぁ///」
男「そ、その…また、こうやって会ってくれないかな・・・」
姉「うん…」
それからは他愛のない話をして時間が過ぎていった。川沿いの土手に腰掛け、お互い手を握って。
意識せずにそうなっていたし、言葉にはしなかったけど、好きあっているのが分かった。
男「じゃあ、また」
姉「うん」
男「次は…あさってくらいでどうかな?」
姉「大丈夫。必ず」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:24:53.43 :L7gQL9/x0
引き込まれるな
引き込まれるな
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:26:40.13 :R161NsPX0
そう約束して分かれた。
彼女はたいそうかわいい。
そんな事よりも、彼女の力、目で人を殺す。きっと今までに望まない形で、人が死んでいったんだろう。
そんな境遇の彼女を俺は守ってあげたいと思った。俺が一緒にいて、そんな目に合わなくていいようにしてやりたい。
世の中の楽しみを一緒に見て回りたい。いつかそうなるように、これから積み上げていこう。
約束の日
男「親父に捕まって出るのが遅れた。急がないと」
男「あら、こいつは…お侍の行列?」
男「ちょっとあんた。こりゃどうしたんだい」
町人「なんでもな、九州で一揆だそうだ。江戸のお侍は間にあわねってんで、西のお侍がかり出されるんだとよ。」
男「はぁ~ それは大変だ。それにしてもなんだあの駕籠は。随分綺麗に作ってある奴だ…」
男「おっといけない。急がないと」
その日、待ち合わせの時間通りに彼女は来なかった。遅刻は毎度のことと思って待ってみてもまだ来ない。
男「おかしいなぁ…姉ちゃんの家に行くか。先のことを考えたら、行くのためらうのもへんだしな」
・
・
・
そう約束して分かれた。
彼女はたいそうかわいい。
そんな事よりも、彼女の力、目で人を殺す。きっと今までに望まない形で、人が死んでいったんだろう。
そんな境遇の彼女を俺は守ってあげたいと思った。俺が一緒にいて、そんな目に合わなくていいようにしてやりたい。
世の中の楽しみを一緒に見て回りたい。いつかそうなるように、これから積み上げていこう。
約束の日
男「親父に捕まって出るのが遅れた。急がないと」
男「あら、こいつは…お侍の行列?」
男「ちょっとあんた。こりゃどうしたんだい」
町人「なんでもな、九州で一揆だそうだ。江戸のお侍は間にあわねってんで、西のお侍がかり出されるんだとよ。」
男「はぁ~ それは大変だ。それにしてもなんだあの駕籠は。随分綺麗に作ってある奴だ…」
男「おっといけない。急がないと」
その日、待ち合わせの時間通りに彼女は来なかった。遅刻は毎度のことと思って待ってみてもまだ来ない。
男「おかしいなぁ…姉ちゃんの家に行くか。先のことを考えたら、行くのためらうのもへんだしな」
・
・
・
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:30:45.64 :R161NsPX0
男「この辺りだったはず・・・あった。って、え…」
驚くほど小さな家だった。普通の家と変わらない、通りの一角に収まるほどの。
全国に糸を流しているとは思えない。
俺は、ちょっと乱暴に扉をたたいた。姉ちゃんのことが心配で、焦っていたのかもしれない。
男「こんにちは!どなたかいらっしゃいますか」
母「はぁ、どちら様で?」
男「あっ、あの!姉ちゃ…姉さんはいらっしゃいますか?」
母「貴方なのね…入ってちょうだいな」
男「?はぁ…」
男「この辺りだったはず・・・あった。って、え…」
驚くほど小さな家だった。普通の家と変わらない、通りの一角に収まるほどの。
全国に糸を流しているとは思えない。
俺は、ちょっと乱暴に扉をたたいた。姉ちゃんのことが心配で、焦っていたのかもしれない。
男「こんにちは!どなたかいらっしゃいますか」
母「はぁ、どちら様で?」
男「あっ、あの!姉ちゃ…姉さんはいらっしゃいますか?」
母「貴方なのね…入ってちょうだいな」
男「?はぁ…」
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:33:15.54 :R161NsPX0
母「今、うちの人は出てるから少し話をしましょう。」
男「はい…」
母「貴方、姉の目みたわね」
男「えぇ なんでそれを・・・」
母「あの子が言わなくても、なんとなくわかるわ。あの子が三度笠を失くして帰ってきたときに。私と同じなんだもの。」
男「ははは…そうですか。あっ、そんな事より姉ちゃんは」
母「戦に行ったわ」
男「えっ…」
母「この家、とても小さいでしょ?あの有名な三条の糸屋のはず・・・って思わなかった?」
男「ええ」
母「今、うちの人は出てるから少し話をしましょう。」
男「はい…」
母「貴方、姉の目みたわね」
男「えぇ なんでそれを・・・」
母「あの子が言わなくても、なんとなくわかるわ。あの子が三度笠を失くして帰ってきたときに。私と同じなんだもの。」
男「ははは…そうですか。あっ、そんな事より姉ちゃんは」
母「戦に行ったわ」
男「えっ…」
母「この家、とても小さいでしょ?あの有名な三条の糸屋のはず・・・って思わなかった?」
男「ええ」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:36:03.41 :R161NsPX0
母「うちの家系はね、代々何時のころからか娘は、目で人が殺せるの。目と目が合った瞬間に
心が抜かれたように倒れてそのまま絶命してしまう。」
母「その力で、将軍に奉仕しているの。その見返りとして、年貢のほとんどを免除してもらって。さらに報酬も貰っている。そりゃあうちの糸屋は長いから、そこいらの糸屋には負けないけど、うちのひと一人だからね?」
男「そんな、まだ年端も行かない女の子に戦なんて」
母「仕方がないの。見るだけで人を殺せるのよ?協力しなければ、家ごとつぶされてしまう」
男「でも!それなら何でお母さんが行かないんですか!?自分の娘でしょう!」
母「私はもうだめなのよ。力はない。貴方もさっきから私と目を合わせて話しているでしょう」
そういえばそうだ。緊張と焦りでそれどころじゃなかっただけで、忘れていた。
母「うちの家系はね、代々何時のころからか娘は、目で人が殺せるの。目と目が合った瞬間に
心が抜かれたように倒れてそのまま絶命してしまう。」
母「その力で、将軍に奉仕しているの。その見返りとして、年貢のほとんどを免除してもらって。さらに報酬も貰っている。そりゃあうちの糸屋は長いから、そこいらの糸屋には負けないけど、うちのひと一人だからね?」
男「そんな、まだ年端も行かない女の子に戦なんて」
母「仕方がないの。見るだけで人を殺せるのよ?協力しなければ、家ごとつぶされてしまう」
男「でも!それなら何でお母さんが行かないんですか!?自分の娘でしょう!」
母「私はもうだめなのよ。力はない。貴方もさっきから私と目を合わせて話しているでしょう」
そういえばそうだ。緊張と焦りでそれどころじゃなかっただけで、忘れていた。
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:42:13.22 :R161NsPX0
男「どうして…」
母「恋をすると…好きな人が出来るとね。力が消えてしまうの。私は今の夫と出会ったときに、今の姉くらいの年だったかしら。それに、三度笠渡すところまでそっくり」
男「それなら、今の姉ちゃんは自分に力がないことを知っているんですよね?」
母「知らないでしょうね。」
男「何で!なんで教えてあげないんですか!何で行かせたんですか!」
母「間に合わなかったの。力が消えたことの証明は、お役人のところに、打ち首になる罪人で試しに行くの。でも、姉が内気でちゃんと何も言わなかったのと、今回の一揆がいきなりだったことで、それが出来なかった。」
母「そこで証明していなければ、逆らうことも出来ずに連れて行かれてしまう。」
男「それでも…なんとか、ならなかったんですか…」
なんともならなんだろうと思った。もう何代と続いている糸屋の慣習というか。俺にも何の手立てもうかばない。
男「どうして…」
母「恋をすると…好きな人が出来るとね。力が消えてしまうの。私は今の夫と出会ったときに、今の姉くらいの年だったかしら。それに、三度笠渡すところまでそっくり」
男「それなら、今の姉ちゃんは自分に力がないことを知っているんですよね?」
母「知らないでしょうね。」
男「何で!なんで教えてあげないんですか!何で行かせたんですか!」
母「間に合わなかったの。力が消えたことの証明は、お役人のところに、打ち首になる罪人で試しに行くの。でも、姉が内気でちゃんと何も言わなかったのと、今回の一揆がいきなりだったことで、それが出来なかった。」
母「そこで証明していなければ、逆らうことも出来ずに連れて行かれてしまう。」
男「それでも…なんとか、ならなかったんですか…」
なんともならなんだろうと思った。もう何代と続いている糸屋の慣習というか。俺にも何の手立てもうかばない。
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:49:37.97 :R161NsPX0
母「大丈夫よ。姉は一人じゃないから。妹がいるのは知ってるわね。あの子もちゃんと人を殺せる」
男「やっぱり…妹ちゃんもなんですね」
母「姉があの性格な分、妹はうんと強くなったわ。もちろん精神的にってだけだけど」
母「それにあの子達は運がいいの。徳川の世になって大きな戦がなくなった。先々代のころなら・・・目も当てられないわ」
男「はぁ…」
母「今日はお帰りなさいな。大丈夫、あの子達はちゃんと帰ってくるから。」
お母さんはニコニコと玄関先まで送り出してくれた。
代々受け継がれてきた血縁の強さとでも言うんだろうか。迷いがない目をしていた。
・
・
・
母「大丈夫よ。姉は一人じゃないから。妹がいるのは知ってるわね。あの子もちゃんと人を殺せる」
男「やっぱり…妹ちゃんもなんですね」
母「姉があの性格な分、妹はうんと強くなったわ。もちろん精神的にってだけだけど」
母「それにあの子達は運がいいの。徳川の世になって大きな戦がなくなった。先々代のころなら・・・目も当てられないわ」
男「はぁ…」
母「今日はお帰りなさいな。大丈夫、あの子達はちゃんと帰ってくるから。」
お母さんはニコニコと玄関先まで送り出してくれた。
代々受け継がれてきた血縁の強さとでも言うんだろうか。迷いがない目をしていた。
・
・
・
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:55:39.58 :R161NsPX0
道中 駕籠
姉(男さん、私…もう一回、会いたい。これでお別れになるかもしれない…)
妹「おねぇちゃん?大丈夫?いつもより、すっごく震えてる…」
姉「妹ちゃん…帰りたい、帰りたいよぅ…」
妹「どうしたのおねぇちゃん。私たち、負けたことないじゃない。傷一つ負ったことないのに、まだ怖い?」
姉「妹ちゃん私ね、好きな人が出来たの…男さんっていう。でもこれでお別れになったらって思うと…」
妹「そっかぁ。うらやましいなぁ~私もかっこいいお兄ちゃんと恋がしたいよ」
妹「おねぇちゃんはここで死んで、男さんに会えなくなりたいの?」
道中 駕籠
姉(男さん、私…もう一回、会いたい。これでお別れになるかもしれない…)
妹「おねぇちゃん?大丈夫?いつもより、すっごく震えてる…」
姉「妹ちゃん…帰りたい、帰りたいよぅ…」
妹「どうしたのおねぇちゃん。私たち、負けたことないじゃない。傷一つ負ったことないのに、まだ怖い?」
姉「妹ちゃん私ね、好きな人が出来たの…男さんっていう。でもこれでお別れになったらって思うと…」
妹「そっかぁ。うらやましいなぁ~私もかっこいいお兄ちゃんと恋がしたいよ」
妹「おねぇちゃんはここで死んで、男さんに会えなくなりたいの?」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:57:29.34 :R161NsPX0
姉「いや!そんなの、いやに決まってる!」
侍「おい!うるさいぞ!」
妹「あっ、ごめんなさ~い」
妹「だったらさ、ちゃんと殺して、早くおうちにかえろうよ!ちっちゃい農民の一揆だっていうしね!」
姉「うん…私、がんばるね」
・
・
・
姉「いや!そんなの、いやに決まってる!」
侍「おい!うるさいぞ!」
妹「あっ、ごめんなさ~い」
妹「だったらさ、ちゃんと殺して、早くおうちにかえろうよ!ちっちゃい農民の一揆だっていうしね!」
姉「うん…私、がんばるね」
・
・
・
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/12(日) 23:59:31.95 :R161NsPX0
武将「わかっておるな。お前らがうまくやれば、楽して帰れる。頼んだぞ」
妹姉「はい!」
妹「おねぇちゃん、作戦はわかってる?」
姉「うん、いつもどおり何も変わらない。」
妹「じゃあ、いこっか」
作戦はこう。城跡に立てこもっているの農民に紛れ込んで、中から殺していく。
適当に入り口付近を掃討したら開門して味方を引き入れる。それだけのこと…
武将「わかっておるな。お前らがうまくやれば、楽して帰れる。頼んだぞ」
妹姉「はい!」
妹「おねぇちゃん、作戦はわかってる?」
姉「うん、いつもどおり何も変わらない。」
妹「じゃあ、いこっか」
作戦はこう。城跡に立てこもっているの農民に紛れ込んで、中から殺していく。
適当に入り口付近を掃討したら開門して味方を引き入れる。それだけのこと…
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:02:12.53 :GGMphArn0
城跡内
姉・妹「……」
農民「お嬢ちゃんたち、何でこんなところに?」
姉「はい…物資の搬入の手伝いで来たのですが、はぐれて取り残されて…」
農民「あららぁ、そいつはいけね。あぶねぇから中に引っ込んでな」
妹「うん!ありがと!」
そういって満面の笑みを農民に向ける妹ちゃん。その瞬間に農民の目から光が消え少しの断末魔を残して崩れ落ちる。もう見慣れた光景。
農民1「はっ…ぁ…」
城跡内
姉・妹「……」
農民「お嬢ちゃんたち、何でこんなところに?」
姉「はい…物資の搬入の手伝いで来たのですが、はぐれて取り残されて…」
農民「あららぁ、そいつはいけね。あぶねぇから中に引っ込んでな」
妹「うん!ありがと!」
そういって満面の笑みを農民に向ける妹ちゃん。その瞬間に農民の目から光が消え少しの断末魔を残して崩れ落ちる。もう見慣れた光景。
農民1「はっ…ぁ…」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:04:07.33 :GGMphArn0
農民2「おい!どうした!」
仲間の倒れた音でまた一人駆け寄ってきた。
姉「いきなりね、このおじさんが倒れたの」
今度は私の番。『突然このおじさんが倒れました』そんな不安げな目をして見上げる。
姉(あ、あれ…?)
妹(ん?おねぇちゃん?)
妹「おじさん、何とかしてあげて!」
妹ちゃんも迫真の演技。涙まで浮かべて縋り付いて見上げる。
農民2「ふっ…く…」
私の異常に気が付いて妹が声を潜めつつ、強い語気で言う。
妹「おねぇちゃん、なにやってるの!」
農民2「おい!どうした!」
仲間の倒れた音でまた一人駆け寄ってきた。
姉「いきなりね、このおじさんが倒れたの」
今度は私の番。『突然このおじさんが倒れました』そんな不安げな目をして見上げる。
姉(あ、あれ…?)
妹(ん?おねぇちゃん?)
妹「おじさん、何とかしてあげて!」
妹ちゃんも迫真の演技。涙まで浮かべて縋り付いて見上げる。
農民2「ふっ…く…」
私の異常に気が付いて妹が声を潜めつつ、強い語気で言う。
妹「おねぇちゃん、なにやってるの!」
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:07:05.67 :GGMphArn0
姉「妹ちゃん、おかしいの。今殺せなかった。」
妹「えっ…?」
姉「どうしよう、どうしよう!?私、何も出来ないよ?殺されちゃう!見つかったら…」
妹「おねぇちゃん落ち着いて…」
姉「男さんにも会えなくなる!いやだ、やだよそんなの!!!」
農民「おい!なんだ!!」
農民「二人倒れてるぞ!あの女の子がやったのか?」
農民「何でもいい。とっ捕まえろ。怪しい」
動揺してつい声を上げてしまった。奥の方からわらわらと農民がわいてくる。
姉「妹ちゃん、おかしいの。今殺せなかった。」
妹「えっ…?」
姉「どうしよう、どうしよう!?私、何も出来ないよ?殺されちゃう!見つかったら…」
妹「おねぇちゃん落ち着いて…」
姉「男さんにも会えなくなる!いやだ、やだよそんなの!!!」
農民「おい!なんだ!!」
農民「二人倒れてるぞ!あの女の子がやったのか?」
農民「何でもいい。とっ捕まえろ。怪しい」
動揺してつい声を上げてしまった。奥の方からわらわらと農民がわいてくる。
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:08:48.98 :GGMphArn0
妹「まずい。もう気づかれた。早すぎる…」
姉「あぁ…ぁ…どうしよう…男、さん…」
妹「落ち着いて…私が全部やるから。おねぇちゃんは開門の準備をお願い…」
姉「いっちゃやだ…置いてかないで、妹ちゃん」
妹「馬鹿!二人で死にたいの?お父さんにもお母さんにも、男さんにだって会えなくなったっていいの?」
妹「じゃあ、任せたからね!」タッタッタ
妹ちゃん行っちゃった。睨んで睨んで、睨み倒してる。妹ちゃんは強いな。私体動かないよ…
震えがとまらないよ。男さん、会いたい…
<オラアアアアアアアア コッチミンカアアアアイ
妹「まずい。もう気づかれた。早すぎる…」
姉「あぁ…ぁ…どうしよう…男、さん…」
妹「落ち着いて…私が全部やるから。おねぇちゃんは開門の準備をお願い…」
姉「いっちゃやだ…置いてかないで、妹ちゃん」
妹「馬鹿!二人で死にたいの?お父さんにもお母さんにも、男さんにだって会えなくなったっていいの?」
妹「じゃあ、任せたからね!」タッタッタ
妹ちゃん行っちゃった。睨んで睨んで、睨み倒してる。妹ちゃんは強いな。私体動かないよ…
震えがとまらないよ。男さん、会いたい…
<オラアアアアアアアア コッチミンカアアアアイ
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:14:27.98 :GGMphArn0
姉「開門、しなきゃ・・・」フラフラ
農民「いたぞ!あいつらだ!」
姉「ひっ!?」
農民「うらあああ!!」
姉(あ・・・終わった…)
姉「んっ…」
ぎゅっと目を閉じた。こんなに強く戦場で目を閉じたことがなかった。戦場じゃ見ることがすべてだったから。
人の死ぬ瞬間を見るのが私の仕事。それももう終わりだからいいよね…
姉「開門、しなきゃ・・・」フラフラ
農民「いたぞ!あいつらだ!」
姉「ひっ!?」
農民「うらあああ!!」
姉(あ・・・終わった…)
姉「んっ…」
ぎゅっと目を閉じた。こんなに強く戦場で目を閉じたことがなかった。戦場じゃ見ることがすべてだったから。
人の死ぬ瞬間を見るのが私の仕事。それももう終わりだからいいよね…
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:14:57.55 :zEtVbchq0
いもちゅしえん
いもちゅしえん
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:16:58.59 :GGMphArn0
妹「はぁ…はぁ、馬鹿…おねぇちゃんのばか!」
姉「…あれ?妹ちゃん…ぁ…ぅ…うぐっ…」
妹「泣いてないの!私が間に合わなかったら、お姉ちゃん死んでたんだよ!?」
姉「ごっ・・・ヒクッ…ごめんらひゃい…」
涙をぬぐって周りを見渡すと、死体のやま。最初はすごく気持ち悪くて。必死になっている戦場から離れたとたんに嘔吐がとまらなかった。今はこれを見ると落ち着く。もうすぐ帰れるんだって。
城門を開けるために、二人で鉄の取っ手をぐるぐると回す。と同時に、味方に突入を知らせる狼煙を上げる。もうこれ以上ここに居られるほど余裕がない。開門とともに城跡を離れる。
・
・
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妹「はぁ…はぁ、馬鹿…おねぇちゃんのばか!」
姉「…あれ?妹ちゃん…ぁ…ぅ…うぐっ…」
妹「泣いてないの!私が間に合わなかったら、お姉ちゃん死んでたんだよ!?」
姉「ごっ・・・ヒクッ…ごめんらひゃい…」
涙をぬぐって周りを見渡すと、死体のやま。最初はすごく気持ち悪くて。必死になっている戦場から離れたとたんに嘔吐がとまらなかった。今はこれを見ると落ち着く。もうすぐ帰れるんだって。
城門を開けるために、二人で鉄の取っ手をぐるぐると回す。と同時に、味方に突入を知らせる狼煙を上げる。もうこれ以上ここに居られるほど余裕がない。開門とともに城跡を離れる。
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35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:21:47.00 :GGMphArn0
三週間後
男(姉ちゃん大丈夫かな…)
男(まさかってこと…)
親父「おい!馬鹿野郎!なにボーっとしてやがる。それとな、この帳簿、間違ってたぞ」
男「あ、あぁ…ごめん」
親父「ここはもういい。ちょっとここに遣い行って来い」
男「あぁ…」
紙を受け取って、表に出る。スカッと晴れていて、いい風が吹いてる。
姉ちゃんと川原に座って語らったあの日みたいに。親父に背後からどやされ歩き始める。
三週間後
男(姉ちゃん大丈夫かな…)
男(まさかってこと…)
親父「おい!馬鹿野郎!なにボーっとしてやがる。それとな、この帳簿、間違ってたぞ」
男「あ、あぁ…ごめん」
親父「ここはもういい。ちょっとここに遣い行って来い」
男「あぁ…」
紙を受け取って、表に出る。スカッと晴れていて、いい風が吹いてる。
姉ちゃんと川原に座って語らったあの日みたいに。親父に背後からどやされ歩き始める。
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:26:52.83 :GGMphArn0
男「はぁ…」
男「姉ちゃん…」
姉「なん、ですか…?」
男「へ?」
姉「私の、名前、呼んでたから。」
男「えっっと…どちらさま?」
姉「ふふふ…私…京の三条の糸屋の娘」
男「えぇ!?姉ちゃん?髪きったんだね…」
姉「似合わない、ですか?」
男「そんなことないよ!それよりほら、こっち!」
俺は姉ちゃんの手を取って走り出した。親父の遣いとかそれどころじゃない。ずっと待ち焦がれていた。姉ちゃんが帰ってくるのを。
町を突っ切って、あの川原の土手へ向かう。
男「はぁ…」
男「姉ちゃん…」
姉「なん、ですか…?」
男「へ?」
姉「私の、名前、呼んでたから。」
男「えっっと…どちらさま?」
姉「ふふふ…私…京の三条の糸屋の娘」
男「えぇ!?姉ちゃん?髪きったんだね…」
姉「似合わない、ですか?」
男「そんなことないよ!それよりほら、こっち!」
俺は姉ちゃんの手を取って走り出した。親父の遣いとかそれどころじゃない。ずっと待ち焦がれていた。姉ちゃんが帰ってくるのを。
町を突っ切って、あの川原の土手へ向かう。
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:34:20.45 :GGMphArn0
男「怪我はしなかった?人、殺せなくなってたんでしょ?」
姉「妹ちゃんが、守ってくれました。」
男「そっか。」
姉「……」
男「……あのさ、俺と結婚してくれないか?」
姉「ぅん…喜んで!」
出会って一ヶ月。正直なところ早すぎる。もっと関係を深めてからって思ったけど。我慢できなかった。
俺の家のこととか、自分たちの子供のこととか度外視にして、お互いの将来を約束しあった。
両親に話すのはもう半年位したら。お互いがもう一つ年を取った時、その節目にとなった。
~~~~回想終わり~~~~
男「怪我はしなかった?人、殺せなくなってたんでしょ?」
姉「妹ちゃんが、守ってくれました。」
男「そっか。」
姉「……」
男「……あのさ、俺と結婚してくれないか?」
姉「ぅん…喜んで!」
出会って一ヶ月。正直なところ早すぎる。もっと関係を深めてからって思ったけど。我慢できなかった。
俺の家のこととか、自分たちの子供のこととか度外視にして、お互いの将来を約束しあった。
両親に話すのはもう半年位したら。お互いがもう一つ年を取った時、その節目にとなった。
~~~~回想終わり~~~~
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:41:00.75 :GGMphArn0
翌日
姉父「ごめんください」
男「へ~い うぇっ!?親父さん」
母「男君、こんにちは」
姉「……」
二人の後ろからそっと現れて何も言わず小さく頭を下げる姉ちゃんも見えた
男父「なんだ騒々しい。」
男父「あぁっ!これはこれは糸屋の旦那じゃありませんか。今日はどういったご用件で?」
親父の顔が引きつってる。完全にビビッてる。腰が引けて手を擦り揉みしてる。
翌日
姉父「ごめんください」
男「へ~い うぇっ!?親父さん」
母「男君、こんにちは」
姉「……」
二人の後ろからそっと現れて何も言わず小さく頭を下げる姉ちゃんも見えた
男父「なんだ騒々しい。」
男父「あぁっ!これはこれは糸屋の旦那じゃありませんか。今日はどういったご用件で?」
親父の顔が引きつってる。完全にビビッてる。腰が引けて手を擦り揉みしてる。
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:49:21.93 :GGMphArn0
姉父「うちの娘に、お宅の息子さんをいただきたい」
母「お願いします」
姉「・・・…」
あの糸屋の一家が、総出で頭を下げている光景に親父は言葉も出ないみたいだ。
男父「・・・・・・あぁ…いやいや、頭を上げてくだせぇ」
男父「お前、いつの間に。馬鹿野郎!!なにやってんだ!」
男「なんもしてねぇよ。俺はただ、糸屋の姉ちゃんが好きなだけだ」
男「糸屋の親父さんにも昨日お願いしに行った」
男父「何でそんな大事なこと!あっ、いやいや。皆さん、上がってください。そこでゆっくりと…」
糸屋一家を家に上げて、話が始まった。俺の母さんも驚いてた。当たり前か。
話は順調に進んでいった。糸屋の娘がどんな運命を背負っているのか。それも込みで。
俺の両親は一人っ子の俺を婿にやることを、始めは躊躇ったし自分たちの孫を心配もしていた。
でもそこは、糸屋の親父さんとお母さんが、すべて助けることを強く押して納得したみたいだ。
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姉父「うちの娘に、お宅の息子さんをいただきたい」
母「お願いします」
姉「・・・…」
あの糸屋の一家が、総出で頭を下げている光景に親父は言葉も出ないみたいだ。
男父「・・・・・・あぁ…いやいや、頭を上げてくだせぇ」
男父「お前、いつの間に。馬鹿野郎!!なにやってんだ!」
男「なんもしてねぇよ。俺はただ、糸屋の姉ちゃんが好きなだけだ」
男「糸屋の親父さんにも昨日お願いしに行った」
男父「何でそんな大事なこと!あっ、いやいや。皆さん、上がってください。そこでゆっくりと…」
糸屋一家を家に上げて、話が始まった。俺の母さんも驚いてた。当たり前か。
話は順調に進んでいった。糸屋の娘がどんな運命を背負っているのか。それも込みで。
俺の両親は一人っ子の俺を婿にやることを、始めは躊躇ったし自分たちの孫を心配もしていた。
でもそこは、糸屋の親父さんとお母さんが、すべて助けることを強く押して納得したみたいだ。
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40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/13(月) 00:54:35.23 :GGMphArn0
姉「ねぇ、男君?」
男「なに?っていうか、俺たち結婚するんだから、そろそろ『あなた』とか『あんた』とかにならない?」
姉「まだ、男君と居るとドキドキする。そんなの無理」
でもまぁ、前よりは饒舌になってるのがわかる。姉ちゃんが家族と話すときに近くなってるのはわかるから、よしとする。
姉「がんばろうね。お仕事も、私たちの子供のことも」
男「あぁ…そうだな。幸せにするよ。絶対」
姉「それからね?まだ聞いたこと無かったけど、私のどこを好きになってくれたの?私うまくお話もでき・・・」
男「白い肌。綺麗な黒髪。飾らない服。それから…」
男「目・・・かな」
終わり。
姉「ねぇ、男君?」
男「なに?っていうか、俺たち結婚するんだから、そろそろ『あなた』とか『あんた』とかにならない?」
姉「まだ、男君と居るとドキドキする。そんなの無理」
でもまぁ、前よりは饒舌になってるのがわかる。姉ちゃんが家族と話すときに近くなってるのはわかるから、よしとする。
姉「がんばろうね。お仕事も、私たちの子供のことも」
男「あぁ…そうだな。幸せにするよ。絶対」
姉「それからね?まだ聞いたこと無かったけど、私のどこを好きになってくれたの?私うまくお話もでき・・・」
男「白い肌。綺麗な黒髪。飾らない服。それから…」
男「目・・・かな」
終わり。