1:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 13:56:09.240 :4YlxD2GqM.net
人からもらったものにケチをつけるのは良くないことだけど、でも、人には合う合わないというものがある。
9263、9264、9265……。
私はこの能力が嫌いだ。もっと言ってしまえば、超能力というもの自体が嫌いだった。
だって、能力に依存した人は努力をしなくなるし、努力をしなくなった人間はもろい。精神的にも、肉体的にも。
凍らせてないチューペットくらいもろい。ぽよんぽよんだ。
9691、9692、9693……。
人間は強くなくてはいけない。死んだ私のおじいちゃんがずっと言ってた言葉だ。
おじいちゃんは凍らせたチューペットどころかかちこちのあずきバーくらい強かったけど、悪いやつに殺されて死んじゃった。
世の中に強い人はたくさんいる。ボクシングのヘビー級チャンピオンとか。忍者とか。
あと、超能力者とか。
9998、9999、10000!
ここまで数えて私の日課は終わった。竹刀での素振り10000本。
何歳のころから始めたのかはよく覚えてないけど、おじいちゃんに言われた通りに今でもずっとやってる。
なぜかと言うと、人間は強くなくてはいけないから。
人からもらったものにケチをつけるのは良くないことだけど、でも、人には合う合わないというものがある。
9263、9264、9265……。
私はこの能力が嫌いだ。もっと言ってしまえば、超能力というもの自体が嫌いだった。
だって、能力に依存した人は努力をしなくなるし、努力をしなくなった人間はもろい。精神的にも、肉体的にも。
凍らせてないチューペットくらいもろい。ぽよんぽよんだ。
9691、9692、9693……。
人間は強くなくてはいけない。死んだ私のおじいちゃんがずっと言ってた言葉だ。
おじいちゃんは凍らせたチューペットどころかかちこちのあずきバーくらい強かったけど、悪いやつに殺されて死んじゃった。
世の中に強い人はたくさんいる。ボクシングのヘビー級チャンピオンとか。忍者とか。
あと、超能力者とか。
9998、9999、10000!
ここまで数えて私の日課は終わった。竹刀での素振り10000本。
何歳のころから始めたのかはよく覚えてないけど、おじいちゃんに言われた通りに今でもずっとやってる。
なぜかと言うと、人間は強くなくてはいけないから。
2:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 13:58:46.328 :qxt4RTv7a.net
ちらかってんなぁ
ちらかってんなぁ
3:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 13:58:47.507 :4YlxD2GqM.net
「姫の悲鳴さんまた遅刻? もしかしてあなたの家はこの学校と時差があるの?」
担任教師のマリーペニストンはあきれた様子だった。見慣れた光景とは言え怒られるのはやっぱりむかつく。
私だって好きで遅刻してるわけじゃないし。目覚ましのアラームが鳴っても目が覚めないほど、深い眠りに引きずり込むベッドのやつが悪い。
もっと言えば遅刻なんて制度を設けてる学校が悪い。社会が悪い。国家が悪い。
ヘンに時間に縛られているからこの国の人たちは余裕がなくなって悪いことをするんだ。
どこか田舎の方でロリコンで変態のおっさんが自分のキモい性欲を満たすためだけに幼女を殺してたし、
都会の方では小学生が同級生を大きなナイフで刺して殺してたし、今目の前では若い女教師が可憐な乙女相手に説教を繰り広げている。
こんな世界に誰がした! 平和が一番。ビバ、平和。
説教中だというのにぼーっとしながらそんなことを考えていたら、マリーペニストンが大きなため息を吐いた。
できたて熱々の鍋焼きうどんでもすぐに冷ませそうなくらい大きなため息だった。私はなんとなくやばい雰囲気を察する。
「姫の悲鳴さん聞いているの? それともあなたのお顔の横についているのは耳じゃなくて大きなイヤリングなのかしら。
過度な装飾品は校則違反よ。教師権限で没収してもいいんだけれど?」
冗談っぽい口調だけどこれはマジだ。私には分かる。
その証拠に、マリーペニストンは超能力を発動していた。ただの遅刻のお説教に超能力はずるい。
例えるなら、子どものケンカに大人が出てくるようなものだ。しかもその大人が忍者だったみたいな。たぶん、なんか、そんな感じだと思う。
「姫の悲鳴さんまた遅刻? もしかしてあなたの家はこの学校と時差があるの?」
担任教師のマリーペニストンはあきれた様子だった。見慣れた光景とは言え怒られるのはやっぱりむかつく。
私だって好きで遅刻してるわけじゃないし。目覚ましのアラームが鳴っても目が覚めないほど、深い眠りに引きずり込むベッドのやつが悪い。
もっと言えば遅刻なんて制度を設けてる学校が悪い。社会が悪い。国家が悪い。
ヘンに時間に縛られているからこの国の人たちは余裕がなくなって悪いことをするんだ。
どこか田舎の方でロリコンで変態のおっさんが自分のキモい性欲を満たすためだけに幼女を殺してたし、
都会の方では小学生が同級生を大きなナイフで刺して殺してたし、今目の前では若い女教師が可憐な乙女相手に説教を繰り広げている。
こんな世界に誰がした! 平和が一番。ビバ、平和。
説教中だというのにぼーっとしながらそんなことを考えていたら、マリーペニストンが大きなため息を吐いた。
できたて熱々の鍋焼きうどんでもすぐに冷ませそうなくらい大きなため息だった。私はなんとなくやばい雰囲気を察する。
「姫の悲鳴さん聞いているの? それともあなたのお顔の横についているのは耳じゃなくて大きなイヤリングなのかしら。
過度な装飾品は校則違反よ。教師権限で没収してもいいんだけれど?」
冗談っぽい口調だけどこれはマジだ。私には分かる。
その証拠に、マリーペニストンは超能力を発動していた。ただの遅刻のお説教に超能力はずるい。
例えるなら、子どものケンカに大人が出てくるようなものだ。しかもその大人が忍者だったみたいな。たぶん、なんか、そんな感じだと思う。
4:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 13:59:08.784 :mzqqrOV8a.net
「ニンジャと聞いて」
http://i.imgur.com/72DMXay.jpg
「ニンジャと聞いて」
http://i.imgur.com/72DMXay.jpg
5:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 14:01:33.287 :Aney9pdF0.net
キャラにコテ名使ってるだけで内容はただのオナニー
求められているのはこういうSSじゃない
キャラにコテ名使ってるだけで内容はただのオナニー
求められているのはこういうSSじゃない
6:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:01:43.104 :4YlxD2GqM.net
私は屠殺場の豚みたいな悲鳴をあげた。この時の私は姫の悲鳴じゃない。豚の悲鳴だ。
「ぴぎぃぃぃ!」みたいな声だった。恥ずい。恥ずいけど、仕方がない。
だって両耳を取られたんだから。誰だって叫ぶ。死んじゃう寸前の哀れな豚みたいに。
ラブリーラッピング
「“憎しみで編んだ包み紙”。反省したら返してあげるわ」
マリーペニストンは少しすっきりしたような顔をしていた。顔の横から血を噴き出す私を見て、だ。
こんなやつは教師失格だ。教員免許を取り上げて、しかるべき施設に収容すべきだと思う。暴力教師は糾弾されるべき!
もし、今、この教室で、生徒を裁判員にして裁判をしたら満場一致でマリーペニストンはその職を失うだろう。
そしてしかるべき施設に収容されるだろう。でも悲しいことにここは裁判所ではないし、
みんなはこの暴力教師にびびってるから波風立てずにことなかれ主義を貫く。これが弱者の習性であり、唯一の生きる術なのだ。
と、この時の私はそんなことを考える余裕など一切なく、泣きながら笑ってるみたいなヘンな顔で両方の耳を手で押さえていた。
もとい、耳は無いので血の噴き出る穴を手で押さえていたのだった。
私は屠殺場の豚みたいな悲鳴をあげた。この時の私は姫の悲鳴じゃない。豚の悲鳴だ。
「ぴぎぃぃぃ!」みたいな声だった。恥ずい。恥ずいけど、仕方がない。
だって両耳を取られたんだから。誰だって叫ぶ。死んじゃう寸前の哀れな豚みたいに。
ラブリーラッピング
「“憎しみで編んだ包み紙”。反省したら返してあげるわ」
マリーペニストンは少しすっきりしたような顔をしていた。顔の横から血を噴き出す私を見て、だ。
こんなやつは教師失格だ。教員免許を取り上げて、しかるべき施設に収容すべきだと思う。暴力教師は糾弾されるべき!
もし、今、この教室で、生徒を裁判員にして裁判をしたら満場一致でマリーペニストンはその職を失うだろう。
そしてしかるべき施設に収容されるだろう。でも悲しいことにここは裁判所ではないし、
みんなはこの暴力教師にびびってるから波風立てずにことなかれ主義を貫く。これが弱者の習性であり、唯一の生きる術なのだ。
と、この時の私はそんなことを考える余裕など一切なく、泣きながら笑ってるみたいなヘンな顔で両方の耳を手で押さえていた。
もとい、耳は無いので血の噴き出る穴を手で押さえていたのだった。
7:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 14:03:13.660 :MyLOIH4ea.net
>>1ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ待ってました
>>1ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ待ってました
8:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:05:39.181 :4YlxD2GqM.net
「反省した?」
マリーペニストンが笑顔でそう尋ねてくる。
ドSだ。辞書のドSの項目にこいつの名前を書き記してやりたいくらいのドSだ。
しかし、残念ながら私の持っている辞書にはドSの項目は無い。いや別に残念ではないんだけど。
私はマリーペニストンの質問に対して肯定の意思を示すために、無言で必死に首を縦に振った。
頭がもげてごろごろ転がっていって綺麗な左曲がりの弧を描いてピンを10本倒してストライクを取っちゃうくらいの勢いで首を振った。
首を振ることが反省の印なのだと主張するかのように、振った。振りまくった。
そしてどうやら許されたらしい。ドSの心にもなんとやらだ。
耳が戻ってきた。私のかわいいお耳、もうどこにも行ったらいけないよ。
「反省した?」
マリーペニストンが笑顔でそう尋ねてくる。
ドSだ。辞書のドSの項目にこいつの名前を書き記してやりたいくらいのドSだ。
しかし、残念ながら私の持っている辞書にはドSの項目は無い。いや別に残念ではないんだけど。
私はマリーペニストンの質問に対して肯定の意思を示すために、無言で必死に首を縦に振った。
頭がもげてごろごろ転がっていって綺麗な左曲がりの弧を描いてピンを10本倒してストライクを取っちゃうくらいの勢いで首を振った。
首を振ることが反省の印なのだと主張するかのように、振った。振りまくった。
そしてどうやら許されたらしい。ドSの心にもなんとやらだ。
耳が戻ってきた。私のかわいいお耳、もうどこにも行ったらいけないよ。
9:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:08:42.145 :4YlxD2GqM.net
「みなさんも品行方正な振る舞いを心掛けるように。わかったわね?」
マリーペニストンの言葉に教室のみんなは首をぶんぶんと縦に振った。もちろん私も振った。なぜなら怖いからだ。
こいつはすぐに能力を発動して人のものを奪ったり気まぐれに返したりする。
たまに返さずに所有者の見ている目の前で潰したりもする。ひどい。
なんだか超能力の発動条件があったらしいけど忘れた。
そんなものを覚えていようがいまいが回避は困難だし、一時しのぎにしかならない解決法は余計に事態を悪化させかねない。
さっきみたいな悲劇を避けるための方法はただひとつ。マリーペニストンを怒らせない。これに限る。
私の通う学校には超能力者しかいない。当然、私も持ってる。嫌だけど。
あ、一人だけ超能力が使えない人がいるけど、こいつは別。というか理不尽なやつだ。
超能力が使えないくせに一番強いらしい。
「らしい」と言うのは私はこいつが戦っているところを数えるほどしか見たことが無いし、仮に戦っているのを見かけてもすぐに逃げるから。
巻き込まれたら死ぬのは確定的に明らかで、何よりこいつのことが大嫌いだからだ。
無能力者の理不尽男は名前をゆっきーという。名前を呼ぶのも嫌なくらい嫌いなうんこヤローだけど。
「みなさんも品行方正な振る舞いを心掛けるように。わかったわね?」
マリーペニストンの言葉に教室のみんなは首をぶんぶんと縦に振った。もちろん私も振った。なぜなら怖いからだ。
こいつはすぐに能力を発動して人のものを奪ったり気まぐれに返したりする。
たまに返さずに所有者の見ている目の前で潰したりもする。ひどい。
なんだか超能力の発動条件があったらしいけど忘れた。
そんなものを覚えていようがいまいが回避は困難だし、一時しのぎにしかならない解決法は余計に事態を悪化させかねない。
さっきみたいな悲劇を避けるための方法はただひとつ。マリーペニストンを怒らせない。これに限る。
私の通う学校には超能力者しかいない。当然、私も持ってる。嫌だけど。
あ、一人だけ超能力が使えない人がいるけど、こいつは別。というか理不尽なやつだ。
超能力が使えないくせに一番強いらしい。
「らしい」と言うのは私はこいつが戦っているところを数えるほどしか見たことが無いし、仮に戦っているのを見かけてもすぐに逃げるから。
巻き込まれたら死ぬのは確定的に明らかで、何よりこいつのことが大嫌いだからだ。
無能力者の理不尽男は名前をゆっきーという。名前を呼ぶのも嫌なくらい嫌いなうんこヤローだけど。
10:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 14:09:17.367 :Aney9pdF0.net
よかったよ乙乙
本音(つまらんゴミ)
よかったよ乙乙
本音(つまらんゴミ)
11:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:11:33.401 :4YlxD2GqM.net
上級生にプラネットヤクザってやつがいる。名前の通りヤクザみたいな風体と人間性で、すぐに人を恐喝したり脅したりユスったりする。
噂だと下級生を何人もレイプしてそのとき撮った映像で脅して売春させてるとか、
持ってるだけで捕まる危なーいクスリを天文学的数字の目が飛び出るような高額で無理矢理人に売りつけてるとか、
理由もなく人を殴ったり蹴ったりシメたりとかとにかくひどいやつ。
しかも持ってる超能力もテレポートと重力操作を合わせたような完全に物理法則を無視してくるタイプのとんでもない能力で、
漫画だったら完全に設定ミスだろとつっこまれるレベルで、先生も手を焼いちゃってる絵に描いたような極悪人だった。
でもある日、理由は分からないんだけどゆっきーにケンカを売って、ボロゾーキンみたいにやられてた。
最後はあのヤクザみたいなやつが泣きながら謝ってたと言うし、よっぽどのことをされたんだと思う。
なんでそんな能力を持ってるのに? ってみんな不思議がってたけど、
そのタネは簡単でゆっきーはテレポートよりも速く動けて重力に逆らえるくらい筋力が強いらしい。
「らしい」と言うのは私はその場を見てないから。でもみんなが言ってたからたぶん正しいんだと思う。よく分かんないけど。
とにかく理不尽なやつなんだ。
あ、あと鴉ってのもやられてた。こいつは空を飛びながら生成した爆弾を次々に放り投げてくる戦闘機みたいなやつだった。
実際、私はこの鴉ってのの超能力を見て「すげー。戦闘機だ」って思った、でも私がそう思った時には鴉はゆっきーにやられてた。
空を飛んでる鴉をふつーにぶん殴ってて、「理不尽だなぁ」って思ったんだった。
上級生にプラネットヤクザってやつがいる。名前の通りヤクザみたいな風体と人間性で、すぐに人を恐喝したり脅したりユスったりする。
噂だと下級生を何人もレイプしてそのとき撮った映像で脅して売春させてるとか、
持ってるだけで捕まる危なーいクスリを天文学的数字の目が飛び出るような高額で無理矢理人に売りつけてるとか、
理由もなく人を殴ったり蹴ったりシメたりとかとにかくひどいやつ。
しかも持ってる超能力もテレポートと重力操作を合わせたような完全に物理法則を無視してくるタイプのとんでもない能力で、
漫画だったら完全に設定ミスだろとつっこまれるレベルで、先生も手を焼いちゃってる絵に描いたような極悪人だった。
でもある日、理由は分からないんだけどゆっきーにケンカを売って、ボロゾーキンみたいにやられてた。
最後はあのヤクザみたいなやつが泣きながら謝ってたと言うし、よっぽどのことをされたんだと思う。
なんでそんな能力を持ってるのに? ってみんな不思議がってたけど、
そのタネは簡単でゆっきーはテレポートよりも速く動けて重力に逆らえるくらい筋力が強いらしい。
「らしい」と言うのは私はその場を見てないから。でもみんなが言ってたからたぶん正しいんだと思う。よく分かんないけど。
とにかく理不尽なやつなんだ。
あ、あと鴉ってのもやられてた。こいつは空を飛びながら生成した爆弾を次々に放り投げてくる戦闘機みたいなやつだった。
実際、私はこの鴉ってのの超能力を見て「すげー。戦闘機だ」って思った、でも私がそう思った時には鴉はゆっきーにやられてた。
空を飛んでる鴉をふつーにぶん殴ってて、「理不尽だなぁ」って思ったんだった。
12:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:15:07.095 :4YlxD2GqM.net
ちょっと話がそれたけど、そういう理不尽な例外を除けばこの学校には超能力者しかいない。生徒も、先生も。
当然強いのもいれば弱いのもいる。私は努力が報われるっていう地味な能力を持っていて、私はその能力が嫌いで、
そもそも超能力自体が大嫌いで、能力者死ね! って常々思ってて、そんな私の強さは真ん中よりちょっと上くらい。
毎日素振り10000回してるんだけどなあ。神様、私の努力は必要十分に達していないのでしょうか。
そう考えると少し悲しいような、虚しいような、そんな気持ちになる。
というかなんだか今までの話からなんとなく学校全体がギスギスしてるような空気を感じ取ったかも知れないけど、そんなことはない。
基本的に普通の学校と同じようにみんな仲良くしてるし、一部の人たちがちょっと調子に乗って暴れてるだけ。
私はそれを良しとしない。だって、痛いのはみんな嫌なはずだから。
殴ったり、蹴ったり、突然両耳を取ったり。そんなのはきっとみんな嫌なはずだから。
あと今思い出したけど、おじいちゃんの言ってた「人間は強くなくてはいけない」ってのも、
そのあとに「なぜなら強くないと人を守ることができない」みたいな文句が続いていたような気がする。
いや、きっとそうだ。そうに違いない。よって私は強さを求め、同時に平和も愛するのだ。ビバ、平和。
ちょっと話がそれたけど、そういう理不尽な例外を除けばこの学校には超能力者しかいない。生徒も、先生も。
当然強いのもいれば弱いのもいる。私は努力が報われるっていう地味な能力を持っていて、私はその能力が嫌いで、
そもそも超能力自体が大嫌いで、能力者死ね! って常々思ってて、そんな私の強さは真ん中よりちょっと上くらい。
毎日素振り10000回してるんだけどなあ。神様、私の努力は必要十分に達していないのでしょうか。
そう考えると少し悲しいような、虚しいような、そんな気持ちになる。
というかなんだか今までの話からなんとなく学校全体がギスギスしてるような空気を感じ取ったかも知れないけど、そんなことはない。
基本的に普通の学校と同じようにみんな仲良くしてるし、一部の人たちがちょっと調子に乗って暴れてるだけ。
私はそれを良しとしない。だって、痛いのはみんな嫌なはずだから。
殴ったり、蹴ったり、突然両耳を取ったり。そんなのはきっとみんな嫌なはずだから。
あと今思い出したけど、おじいちゃんの言ってた「人間は強くなくてはいけない」ってのも、
そのあとに「なぜなら強くないと人を守ることができない」みたいな文句が続いていたような気がする。
いや、きっとそうだ。そうに違いない。よって私は強さを求め、同時に平和も愛するのだ。ビバ、平和。
13:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:17:53.415 :4YlxD2GqM.net
当たり前のことだけど私にも友達がいる。友達が二人、いる。
これを「二人しか」と取るのか、それとも「二人も」と取るのかは個人の自由だ。私は人の主観に口を出すような野暮な真似はしない。
水掛け論は不毛だし、何より私は大人だからだ。そもそも人の評価に興味が無いということもある。
友達が少ないと馬鹿にするやつには言わせておけばいい。友達の数なんかで人の価値は決まらないのだ。
ちなみにその二人の中のひとりは名前を病弱という。友達だけどあんまり好きじゃない。
だってこいつは自分がかわいいことを知っているから。なんとなくそんな節がある。
一度話の流れで病弱の超能力を体感してみることになった。
ファンタズムネットワーク
「私の“夢幻回路”は一級品っすよ!」とか言ってた気がする。
当時忍者の漫画にハマっていた私は、それが幻覚の能力と聞いて飛びついた。
「一体いつから、能力を使っていないと錯覚していた?」って言わせたかったのだ。
って、これは忍者の漫画じゃなかった。なんだっけ、これ。
当たり前のことだけど私にも友達がいる。友達が二人、いる。
これを「二人しか」と取るのか、それとも「二人も」と取るのかは個人の自由だ。私は人の主観に口を出すような野暮な真似はしない。
水掛け論は不毛だし、何より私は大人だからだ。そもそも人の評価に興味が無いということもある。
友達が少ないと馬鹿にするやつには言わせておけばいい。友達の数なんかで人の価値は決まらないのだ。
ちなみにその二人の中のひとりは名前を病弱という。友達だけどあんまり好きじゃない。
だってこいつは自分がかわいいことを知っているから。なんとなくそんな節がある。
一度話の流れで病弱の超能力を体感してみることになった。
ファンタズムネットワーク
「私の“夢幻回路”は一級品っすよ!」とか言ってた気がする。
当時忍者の漫画にハマっていた私は、それが幻覚の能力と聞いて飛びついた。
「一体いつから、能力を使っていないと錯覚していた?」って言わせたかったのだ。
って、これは忍者の漫画じゃなかった。なんだっけ、これ。
14:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:20:52.986 :4YlxD2GqM.net
結論から言わせてもらえばがっかりの一言だった。幻覚と言うかファンタジーと言うか少女趣味と言うか。
現実に引き戻された私はまず、「あんたかわいいって言われたいだけでしょ? そうなんでしょ?」と問い詰めたい衝動にかられた。
でも言わなかった。言えなかった。だって友達だから。
「どうだったっすか?」と笑顔で聞く病弱はかわいかった。
でもかわいいとは言わなかった。言えなかった。なぜなら少しむかついてたから。
「いや、なんとも。メルヘンな世界でうさぎが飛び跳ねてただけ」
幻覚の国では星屑の川が流れそこに虹の橋が架かっていて、
ほわんほわんとわたがしのようなというかまさにわたがしの雲が空に浮かび、それに負けないほど真っ白でもこもこなうさぎたちが、
板チョコの地面からグルグルキャンディーの花が咲き誇る野原をぴょこたんぴょこたんと跳ね回っていた。
あと、全体的になんか薄いピンク色だった。
「楽しくなかったっすか?」
「全然」
しょんぼりとうなだれる病弱はかわいかったよ。でも、よく分からないけどそれ以上になんだかむかついたんだ。
結論から言わせてもらえばがっかりの一言だった。幻覚と言うかファンタジーと言うか少女趣味と言うか。
現実に引き戻された私はまず、「あんたかわいいって言われたいだけでしょ? そうなんでしょ?」と問い詰めたい衝動にかられた。
でも言わなかった。言えなかった。だって友達だから。
「どうだったっすか?」と笑顔で聞く病弱はかわいかった。
でもかわいいとは言わなかった。言えなかった。なぜなら少しむかついてたから。
「いや、なんとも。メルヘンな世界でうさぎが飛び跳ねてただけ」
幻覚の国では星屑の川が流れそこに虹の橋が架かっていて、
ほわんほわんとわたがしのようなというかまさにわたがしの雲が空に浮かび、それに負けないほど真っ白でもこもこなうさぎたちが、
板チョコの地面からグルグルキャンディーの花が咲き誇る野原をぴょこたんぴょこたんと跳ね回っていた。
あと、全体的になんか薄いピンク色だった。
「楽しくなかったっすか?」
「全然」
しょんぼりとうなだれる病弱はかわいかったよ。でも、よく分からないけどそれ以上になんだかむかついたんだ。
15:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:23:54.784 :4YlxD2GqM.net
1限の授業が終わって私が屋上へ行くと猫のAAは既にそこにいた。
つまり1限すらサボったことになる。不良だ。不登校児だ。
いや、登校はしてるから、半不登校児だ。半不良だ。
「何?」
屋上と校舎を繋ぐドアの前で私が無言で突っ立っていたからだろう。
業を煮やしたのか何を煮やしたのか知らないけど、猫のAAはこちらも見ずにそう言った。
ひどくぶすっとした横顔だった。
「いや、別に」
私にはほんとに何の用事も無かった。猫のAAがいるかなと思って屋上に来ただけで、
もっと言ってしまえば、ただ、猫のAAとおしゃべりがしたかっただけだ。
私の言葉に素っ気無く「そう」とだけ言って、猫のAAは手すりに両腕を乗せて変わらずお空を眺めていた。
「あの」
「何?」
「おはよう」
「おはよ」
会話はそれで終了した。
1限の授業が終わって私が屋上へ行くと猫のAAは既にそこにいた。
つまり1限すらサボったことになる。不良だ。不登校児だ。
いや、登校はしてるから、半不登校児だ。半不良だ。
「何?」
屋上と校舎を繋ぐドアの前で私が無言で突っ立っていたからだろう。
業を煮やしたのか何を煮やしたのか知らないけど、猫のAAはこちらも見ずにそう言った。
ひどくぶすっとした横顔だった。
「いや、別に」
私にはほんとに何の用事も無かった。猫のAAがいるかなと思って屋上に来ただけで、
もっと言ってしまえば、ただ、猫のAAとおしゃべりがしたかっただけだ。
私の言葉に素っ気無く「そう」とだけ言って、猫のAAは手すりに両腕を乗せて変わらずお空を眺めていた。
「あの」
「何?」
「おはよう」
「おはよ」
会話はそれで終了した。
16:近江 :2017/10/07(土) 14:24:00.292 :l0hvIzsf0.net
西尾維新版ヒロアカ
西尾維新版ヒロアカ
17:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:26:52.900 :4YlxD2GqM.net
お昼休みになってまた屋上に行った。半不登校児はまだそこにいた。
先程と違うことと言えば、猫のAAが柔らかい陽射しの降り注ぐ屋上のすみっこの方で体育座りをして寝ていることくらい。
こいつは名前の通り猫みたいなやつだ。日向を見つければすぐにひなたぼっこを始めるし、機嫌がいい時と悪い時の差が激しい。
機嫌が悪い時は私の部屋にあるハワイのお土産の置きものみたいにじっとして動かないけど、
機嫌がいい時はぽてぽてとかわいらしい仕草でそれなりに動く。
水を得た魚か、マタタビを与えられた猫か、念仏を唱えられた馬くらいに動く。
みんなは知らないだろうけど、馬は耳元で念仏を唱えられると機嫌が良くなって嬉しそうに暴れる。
学校の行事で牧場に行ったときにアホなクラスの男子が馬に念仏を唱えてそれで馬が暴れて大変なことになったのだから、まず間違いない。
でもあの馬が特殊だっただけかも知れないという可能性を捨てずに、全ての馬がそうだという断言は避ける。私は実は賢いのだ。
「おはよう。もうお昼の時間だよ」
「おひるぅ?」
寝起きの猫のAAは目をつむったままふにゃふにゃとヘンな声で答えた。
こういう時の猫のAAは機嫌がいい。悪い時は起きると同時に爪で引っかいてくるから。油断のならないやつだ。
「じゃあおひるごはんにしましょう」
猫のAAはそう言って、赤ちゃんがするハイハイみたいな感じで屋上のコンクリートの上を這っていった。まだ目は閉じてる。
さっき猫みたいなやつだって言ったけど、この歩き方を見ると猫みたいだとは思えない。ほんとの赤ちゃんみたいだ。なんか小さいし。
お昼休みになってまた屋上に行った。半不登校児はまだそこにいた。
先程と違うことと言えば、猫のAAが柔らかい陽射しの降り注ぐ屋上のすみっこの方で体育座りをして寝ていることくらい。
こいつは名前の通り猫みたいなやつだ。日向を見つければすぐにひなたぼっこを始めるし、機嫌がいい時と悪い時の差が激しい。
機嫌が悪い時は私の部屋にあるハワイのお土産の置きものみたいにじっとして動かないけど、
機嫌がいい時はぽてぽてとかわいらしい仕草でそれなりに動く。
水を得た魚か、マタタビを与えられた猫か、念仏を唱えられた馬くらいに動く。
みんなは知らないだろうけど、馬は耳元で念仏を唱えられると機嫌が良くなって嬉しそうに暴れる。
学校の行事で牧場に行ったときにアホなクラスの男子が馬に念仏を唱えてそれで馬が暴れて大変なことになったのだから、まず間違いない。
でもあの馬が特殊だっただけかも知れないという可能性を捨てずに、全ての馬がそうだという断言は避ける。私は実は賢いのだ。
「おはよう。もうお昼の時間だよ」
「おひるぅ?」
寝起きの猫のAAは目をつむったままふにゃふにゃとヘンな声で答えた。
こういう時の猫のAAは機嫌がいい。悪い時は起きると同時に爪で引っかいてくるから。油断のならないやつだ。
「じゃあおひるごはんにしましょう」
猫のAAはそう言って、赤ちゃんがするハイハイみたいな感じで屋上のコンクリートの上を這っていった。まだ目は閉じてる。
さっき猫みたいなやつだって言ったけど、この歩き方を見ると猫みたいだとは思えない。ほんとの赤ちゃんみたいだ。なんか小さいし。
18:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:29:52.428 :4YlxD2GqM.net
言い忘れてたけど、私に二人いる友達のうちの一人がこの子、猫のAAだ。私には病弱と猫のAA、この二人の他に喋る友達がいない。
「いただきます」
女の子座りの膝の上にお弁当を広げると、猫のAAは食事前の儀礼的な言葉を吐いた。
私はこれがあまり好きではない。何に対しての「いただきます」なのかよく分からないからだ。
「いただきます」
でも友達に合わせて私も儀礼的な言葉を吐く。協調性は大事。
一口目を食べて、私は姿勢を少し変えた。
コンクリートの上に薄手のレジャーシートを敷いただけのところに座っているとすぐに膝が痛くなってくる。
少しずつ体勢をずらしながらでないと、膝の頭がすぐに赤くなってしまうのだ。
うら若き乙女に取ってこれは死活問題。スカートから覗く足はJKの最大の武器なのである。
それを自ら摩耗させるとは愚の骨頂、痴態の極みだ。ところで骨頂ってなんだろ。ほねのいただき? いただきます。
言い忘れてたけど、私に二人いる友達のうちの一人がこの子、猫のAAだ。私には病弱と猫のAA、この二人の他に喋る友達がいない。
「いただきます」
女の子座りの膝の上にお弁当を広げると、猫のAAは食事前の儀礼的な言葉を吐いた。
私はこれがあまり好きではない。何に対しての「いただきます」なのかよく分からないからだ。
「いただきます」
でも友達に合わせて私も儀礼的な言葉を吐く。協調性は大事。
一口目を食べて、私は姿勢を少し変えた。
コンクリートの上に薄手のレジャーシートを敷いただけのところに座っているとすぐに膝が痛くなってくる。
少しずつ体勢をずらしながらでないと、膝の頭がすぐに赤くなってしまうのだ。
うら若き乙女に取ってこれは死活問題。スカートから覗く足はJKの最大の武器なのである。
それを自ら摩耗させるとは愚の骨頂、痴態の極みだ。ところで骨頂ってなんだろ。ほねのいただき? いただきます。
19:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:33:47.148 :4YlxD2GqM.net
猫のAAのお弁当箱の中身は相変わらずだった。
のりたまのかかったご飯と玉子焼き。これだけ。シンプルイズベスト。
玉子焼きはしょっぱいのと甘いのを半分ずつ入れてると前に言ってた。
見た目では分からないけど、今日もきっとそうなのだろう。
「ひめひめのお弁当は相変わらずね」
私のお弁当箱を覗き込んで、猫のAAは言った。
ひめひめというのは私のあだ名だ。姫の悲鳴だからひめひめ。自分でもちょっと気に入ってる。
「そう?」
一度顔を上げてから、私は自分のお弁当箱に目を落とした。
ゴマ塩をふりかけたご飯と、鶏むね肉の唐揚げと、適当にちぎったレタスと、かわいいピックの刺さったプチトマト。
昨日もそうだったし、一昨日もそうだった。その前は土日だったからお弁当は無かったけど、
先週の金曜日もお弁当はこれだったし、木曜も水曜も、1か月前の月曜もこれだった気がする。あんまり覚えてないけど、多分そう。
「バランスを考えないとダメよ。栄養が偏っちゃうから」
しょっぱいのか甘いのか分からない玉子焼きをほおばりながら猫のAAは言う。
お前が言うなとは口が裂けても言わない。なぜなら、協調性は大事だから。
「そうだね」ととりあえず同意しておいた。
猫のAAのお弁当箱の中身は相変わらずだった。
のりたまのかかったご飯と玉子焼き。これだけ。シンプルイズベスト。
玉子焼きはしょっぱいのと甘いのを半分ずつ入れてると前に言ってた。
見た目では分からないけど、今日もきっとそうなのだろう。
「ひめひめのお弁当は相変わらずね」
私のお弁当箱を覗き込んで、猫のAAは言った。
ひめひめというのは私のあだ名だ。姫の悲鳴だからひめひめ。自分でもちょっと気に入ってる。
「そう?」
一度顔を上げてから、私は自分のお弁当箱に目を落とした。
ゴマ塩をふりかけたご飯と、鶏むね肉の唐揚げと、適当にちぎったレタスと、かわいいピックの刺さったプチトマト。
昨日もそうだったし、一昨日もそうだった。その前は土日だったからお弁当は無かったけど、
先週の金曜日もお弁当はこれだったし、木曜も水曜も、1か月前の月曜もこれだった気がする。あんまり覚えてないけど、多分そう。
「バランスを考えないとダメよ。栄養が偏っちゃうから」
しょっぱいのか甘いのか分からない玉子焼きをほおばりながら猫のAAは言う。
お前が言うなとは口が裂けても言わない。なぜなら、協調性は大事だから。
「そうだね」ととりあえず同意しておいた。
20:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:36:52.058 :4YlxD2GqM.net
「ところで、どうしてひめひめはジャージでいるの?」
お弁当を食べ終えた猫のAAがそう切り出してきた。
かわいらしく首をかしげる仕草が、まるで童話の世界から飛び出してきた赤ずきんちゃんみたいだ。
「ああ、これは」私は今朝の出来事を多少の脚色を織り交ぜて話し、血の付いた制服からジャージに着替えたことを説明した。
「街中で倒れたおばあさんを助けるために遅刻したのに、罰を与えるなんて先生もひどいことをするのね」
「うん。あの人はひどい。たぶん近いうちに地獄に落ちると思う」
猫のAAは憤懣やるかたない様子だった。私にもそれが移ったのか、少し語気が強くなってしまう。
私の考えでは、女子高生を女子高生たらしめているものは制服なのだ。女子高生の本体は制服だと言っても言い過ぎじゃないと思う。
制服を着ていない女子高生はただの10代半ばの女の子であって、ジャージを着ている女子高生はただのジャージマンだ。
いや、女の子だからジャージマンじゃないや。ジャージガール? それとも運動好き好き少女? なんてこと!
私は運動が嫌いなのにジャージを着ているというだけで運動が好きだと思われたらたまったものじゃない。
竹刀の素振りだっておじいちゃんの言ってたことだから嫌々やっているだけだし、そもそも人を見た目で判断するやつにろくなのはいない。
そういったわけだから、少し話を脚色するくらいはお空の上の方からみんなを見下ろしている神様だって許してくれるはずだ。
「私も先生は地獄に落ちると思う」
私が怒った顔をしていたからだろう。普段は私の言うことを否定することが多い猫のAAが、珍しく同意してくれた。
なんだか少し気分が良くなる。るんるん。やっぱり協調性は大事だ。
「ところで、どうしてひめひめはジャージでいるの?」
お弁当を食べ終えた猫のAAがそう切り出してきた。
かわいらしく首をかしげる仕草が、まるで童話の世界から飛び出してきた赤ずきんちゃんみたいだ。
「ああ、これは」私は今朝の出来事を多少の脚色を織り交ぜて話し、血の付いた制服からジャージに着替えたことを説明した。
「街中で倒れたおばあさんを助けるために遅刻したのに、罰を与えるなんて先生もひどいことをするのね」
「うん。あの人はひどい。たぶん近いうちに地獄に落ちると思う」
猫のAAは憤懣やるかたない様子だった。私にもそれが移ったのか、少し語気が強くなってしまう。
私の考えでは、女子高生を女子高生たらしめているものは制服なのだ。女子高生の本体は制服だと言っても言い過ぎじゃないと思う。
制服を着ていない女子高生はただの10代半ばの女の子であって、ジャージを着ている女子高生はただのジャージマンだ。
いや、女の子だからジャージマンじゃないや。ジャージガール? それとも運動好き好き少女? なんてこと!
私は運動が嫌いなのにジャージを着ているというだけで運動が好きだと思われたらたまったものじゃない。
竹刀の素振りだっておじいちゃんの言ってたことだから嫌々やっているだけだし、そもそも人を見た目で判断するやつにろくなのはいない。
そういったわけだから、少し話を脚色するくらいはお空の上の方からみんなを見下ろしている神様だって許してくれるはずだ。
「私も先生は地獄に落ちると思う」
私が怒った顔をしていたからだろう。普段は私の言うことを否定することが多い猫のAAが、珍しく同意してくれた。
なんだか少し気分が良くなる。るんるん。やっぱり協調性は大事だ。
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2017/10/07(土) 14:37:33.708 :czSN6o5o0.net
おっ待ってました
おっ待ってました
22:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:40:32.801 :4YlxD2GqM.net
事件はその日の放課後に起きた。
帰り支度を済ませた私が、スクールバッグと愛用の竹刀袋を肩にかけようとした時だ。
「ちょっと僕と一緒に来てくれるかな。姫の悲鳴、さん」
突然の声に振り返った私の目に飛び込んできたのは、見たこともない男子生徒だった。
そいつは見るからになんかキモくて、フチ無しの眼鏡の奥の目がなんかギョロギョロしてるし、
坊主頭のくせに清潔感が無くてなんか汚らしい感じだし、とにかくなんかキモかった。キモい・オブ・キモいやつだった。
「何? 嫌なんだけど」
キモいそいつがキモい目つきでなんか見てくるからなんかキモくなって私はそいつから視線を外して言った。
なんか「フフ」とかいって笑ってるし。キモすぎ。
「じゃあね。私は帰るから」
キモいのが移って私までキモくなったら嫌だから私はそう言って帰ろうとした。
キモさが空気感染しないように息を止めてそいつの横を通り過ぎる。
数歩行ったところでそいつが後ろから「僕と一緒に来た方が良いと思うよ」ってまた声かけてきた。
キモいキモいキモい。マジでキモい。絶対一緒に行っても良いことなんて無い。死ね。
そんなことを考えてたらまた「フフ」ってヘンな笑い声がしてキモさに耐えきれなくなった私の耳に、信じられない言葉が聞こえてきた。
「猫のAAを預かってるんだけど。拉致監禁、ってやつ?」
私は驚いて弾かれたように振り返ってそいつの目を見た。
相変わらずそいつはキモかったけど、もう悪態をつく余裕は私には無かった。
事件はその日の放課後に起きた。
帰り支度を済ませた私が、スクールバッグと愛用の竹刀袋を肩にかけようとした時だ。
「ちょっと僕と一緒に来てくれるかな。姫の悲鳴、さん」
突然の声に振り返った私の目に飛び込んできたのは、見たこともない男子生徒だった。
そいつは見るからになんかキモくて、フチ無しの眼鏡の奥の目がなんかギョロギョロしてるし、
坊主頭のくせに清潔感が無くてなんか汚らしい感じだし、とにかくなんかキモかった。キモい・オブ・キモいやつだった。
「何? 嫌なんだけど」
キモいそいつがキモい目つきでなんか見てくるからなんかキモくなって私はそいつから視線を外して言った。
なんか「フフ」とかいって笑ってるし。キモすぎ。
「じゃあね。私は帰るから」
キモいのが移って私までキモくなったら嫌だから私はそう言って帰ろうとした。
キモさが空気感染しないように息を止めてそいつの横を通り過ぎる。
数歩行ったところでそいつが後ろから「僕と一緒に来た方が良いと思うよ」ってまた声かけてきた。
キモいキモいキモい。マジでキモい。絶対一緒に行っても良いことなんて無い。死ね。
そんなことを考えてたらまた「フフ」ってヘンな笑い声がしてキモさに耐えきれなくなった私の耳に、信じられない言葉が聞こえてきた。
「猫のAAを預かってるんだけど。拉致監禁、ってやつ?」
私は驚いて弾かれたように振り返ってそいつの目を見た。
相変わらずそいつはキモかったけど、もう悪態をつく余裕は私には無かった。
23:かわいいな川相さん :2017/10/07(土) 14:41:53.805 :+gBeIhpR0.net
この学校無法地帯杉だろ
法律はどうした
この学校無法地帯杉だろ
法律はどうした
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2017/10/07(土) 14:41:57.604 :czSN6o5o0.net
あっ
あっ
25:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:43:52.716 :4YlxD2GqM.net
端的に今の私の置かれた状況を説明すると、卑怯な嘘に騙された。
薄暗くて埃っぽい体育倉庫で、備品を収納する棚の柱に縄跳びで後ろ手に縛られて、
ご丁寧にさるぐつわまでされているのでもごもごとしか喋れない私をキモいそいつが見下ろしていた。
私だってこんなキモいやつにやられたくないから必死に頑張ったけど、手も足も出せずにやられてしまった。
キモいくせに強いなんて。こいつはなんてキモいんだろう。
「君って馬鹿だろ。あんな嘘に騙されて、ノコノコこんなところまでついてくるなんて」
もごもご。
「でも君が馬鹿なおかげで猫のAAをおびき出せそうだ。君を人質にしてね」
もごもごもごもご。
「友達を人質を取られて無抵抗の猫のAAに、あんなことやこんなことを」
もごもごもごもごもごもごもごもご。
「おっと、失礼。僕としたことが、だらしない顔を見せてしまったね」
もごもごもごもごもごもごもごもご、もがもがもがもがもがもがもがもがもがもがもがもがもがもがもがもが。
端的に今の私の置かれた状況を説明すると、卑怯な嘘に騙された。
薄暗くて埃っぽい体育倉庫で、備品を収納する棚の柱に縄跳びで後ろ手に縛られて、
ご丁寧にさるぐつわまでされているのでもごもごとしか喋れない私をキモいそいつが見下ろしていた。
私だってこんなキモいやつにやられたくないから必死に頑張ったけど、手も足も出せずにやられてしまった。
キモいくせに強いなんて。こいつはなんてキモいんだろう。
「君って馬鹿だろ。あんな嘘に騙されて、ノコノコこんなところまでついてくるなんて」
もごもご。
「でも君が馬鹿なおかげで猫のAAをおびき出せそうだ。君を人質にしてね」
もごもごもごもご。
「友達を人質を取られて無抵抗の猫のAAに、あんなことやこんなことを」
もごもごもごもごもごもごもごもご。
「おっと、失礼。僕としたことが、だらしない顔を見せてしまったね」
もごもごもごもごもごもごもごもご、もがもがもがもがもがもがもがもがもがもがもがもがもがもがもがもが。
26:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:49:29.656 :4YlxD2GqM.net
猫のAAは人に懐かない猫みたいな人間だし、きっと私のことなんか気にもかけずにこのキモいやつをやっつけてくれるだろう。
そう思っていた私は自分のことを恥ずかしい糞ゴミ人間だと罵ってやりたくなった。
キモいやつのキモい視線の先で青白い顔をして下着姿で震えている猫のAAは、私に対してそれだけの友情を感じていてくれていたのだ。
でもそのことについて嬉しがっている場合じゃない。このままだと私のとっても大切な友達の猫のAAは、
この坊主頭で眼鏡の糞キモいキモさの極致に達したキモキモ人間にあんなことやこんなことをされてしまう。
もが。抵抗を試みる私は必死にもがいた。もがもが。でも縄跳びが手首に食い込むだけでなんともならない。
鬱血した指先が痺れる。死ぬほど痛いけど、今は痛いとか弱音を吐いている時なのか。否。TPOをわきまえろ、姫の悲鳴!
そう自分を叱咤するが、痛いものは痛いし、切れないものは切れない。
きっと私の手首は食べごろに熟したりんごのように真っ赤になっていることだろう。
全てが終わったときに血のにじむ手首を見せたら、私の大切な友達の猫のAAは私の友情を感じてくれるだろうか。
私がそんなくだらないことを考えていると、猫のようにかわいい幼児体型の猫のAAの下着姿を見ているだけでは我慢できなくなったのか、
そのキモいやつが猫のAAへと一歩また一歩と近づいて行った。
猫のAAは人に懐かない猫みたいな人間だし、きっと私のことなんか気にもかけずにこのキモいやつをやっつけてくれるだろう。
そう思っていた私は自分のことを恥ずかしい糞ゴミ人間だと罵ってやりたくなった。
キモいやつのキモい視線の先で青白い顔をして下着姿で震えている猫のAAは、私に対してそれだけの友情を感じていてくれていたのだ。
でもそのことについて嬉しがっている場合じゃない。このままだと私のとっても大切な友達の猫のAAは、
この坊主頭で眼鏡の糞キモいキモさの極致に達したキモキモ人間にあんなことやこんなことをされてしまう。
もが。抵抗を試みる私は必死にもがいた。もがもが。でも縄跳びが手首に食い込むだけでなんともならない。
鬱血した指先が痺れる。死ぬほど痛いけど、今は痛いとか弱音を吐いている時なのか。否。TPOをわきまえろ、姫の悲鳴!
そう自分を叱咤するが、痛いものは痛いし、切れないものは切れない。
きっと私の手首は食べごろに熟したりんごのように真っ赤になっていることだろう。
全てが終わったときに血のにじむ手首を見せたら、私の大切な友達の猫のAAは私の友情を感じてくれるだろうか。
私がそんなくだらないことを考えていると、猫のようにかわいい幼児体型の猫のAAの下着姿を見ているだけでは我慢できなくなったのか、
そのキモいやつが猫のAAへと一歩また一歩と近づいて行った。
27:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:52:13.003 :4YlxD2GqM.net
「もうやめて。イカナナ」
いきなり、猫のAAが呟くようにそう言った。このキモいやつはイカナナって名前なのか。と言うか、二人は知り合いなのか。
なんだか突然蚊帳の外に全力で放り投げられたような、そんな気分になる。
かわいい猫のAAのかわいいお願いも無視して、そのイカナナとかいうキモいやつは「デュヘヘ」とか糞キモイ笑い声を発しながら、
そのキモい顔をかわいい猫のAAのかわいいお顔へと近づけていった。
たまらずぎゅっと目をつむった猫のAAの耳元へ、イカナナが鼻先を密着させる。
息を飲むような悲鳴をあげ顔を背けた猫のAAの動きに合わせて、イカナナも頭と体を移動させた。
最初はこいつ何をしてんだキモいとか思ってたけど、
どうやら猫のAAの髪の毛の匂いを嗅いでいるらしいことが深呼吸をするような鼻息で分かった。
キモい。こいつは糞キモい街道をキモい走り方で絶賛爆走中だ。もが。
あまりのキモさにたまらず全身の力が抜けそうになり、私は目をそらすように頭を下げて、必死に踏ん張る。もがもが。
「もうやめて。イカナナ」
いきなり、猫のAAが呟くようにそう言った。このキモいやつはイカナナって名前なのか。と言うか、二人は知り合いなのか。
なんだか突然蚊帳の外に全力で放り投げられたような、そんな気分になる。
かわいい猫のAAのかわいいお願いも無視して、そのイカナナとかいうキモいやつは「デュヘヘ」とか糞キモイ笑い声を発しながら、
そのキモい顔をかわいい猫のAAのかわいいお顔へと近づけていった。
たまらずぎゅっと目をつむった猫のAAの耳元へ、イカナナが鼻先を密着させる。
息を飲むような悲鳴をあげ顔を背けた猫のAAの動きに合わせて、イカナナも頭と体を移動させた。
最初はこいつ何をしてんだキモいとか思ってたけど、
どうやら猫のAAの髪の毛の匂いを嗅いでいるらしいことが深呼吸をするような鼻息で分かった。
キモい。こいつは糞キモい街道をキモい走り方で絶賛爆走中だ。もが。
あまりのキモさにたまらず全身の力が抜けそうになり、私は目をそらすように頭を下げて、必死に踏ん張る。もがもが。
28:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:55:18.087 :4YlxD2GqM.net
再び猫のAAが短い悲鳴を上げた。何事かと視線を移すと、
イカナナの糞キモい指先が猫のAAの透き通るように白く、きめの細かい肌の上を這っていた。
それはおへその横からわき腹のあたりをさまよいながら、徐々に胸のあたりへと近付いていっているように見える。
まっすぐに下へと伸ばした腕の先で拳を握りしめ、小刻みに震える猫のAAは、固く閉じたまぶたの隙間から大粒の涙を流していた。
どくんどくん。うるさい音がすると思ったら自分の心臓の音だった。
大切な友達を守りたい! おじいちゃんの言葉を思い出す。人間は強くなくてはいけない。
弱い私が悪いんだ。弱いし、頭も悪いし、すぐに遅刻はするし、ドジで、間抜けで、簡単に人に騙されて、
こんなときでも自分のことしか考えられなくて、大切な友達も守れない。そんな私が、全部悪いんだ。
自身の内から湧き出る感情が心の中で爆発しそうだった。血のにじんだ手首を見せたら友情を感じてくれる?
なんて馬鹿なんだ私は! 猫のAAは私を守ってくれている。私だって大切な友達を守らなくちゃ。
イカナナの指先が猫のAAの胸を覆う下着の下端に触れた。
猫のAAは一瞬身体を大きく跳ねるように震わせ、子どもみたいに「えぐっ、ぐっ」と泣き声を漏らした。
でも、そのすぐ後に身体の力を抜いたように見えた。まるで何かを覚悟したかのように。
猫のAAが静かに目を開けて私の方を見る。そして口をぱくぱくと動かした。
『私は、大丈夫だから』儚い笑みを覗かせて、そう言ったように見えた。いや、私には分かる。確かにそう言った。
その瞬間、私の中で何かが切れた。同時に、身体の自由を奪っていた縄跳びも、
口の中で唾液を吸って重くなったさるぐつわも、ばちんと音をたてる。
オーバーザレインボウ
「“軌跡の果て”……発動!」
私は生まれて初めて自分の能力を使うことにした。即座に竹刀を掴み取り、キモいやつのキモい脳天へと叩きこむ。
自分でも驚くくらいの速さだった。イカナナは当然のように反応できていなかったし、猫のAAも何が起きたか分かっていないようだ。
報われない努力の大切さを忘れさせてしまうから大嫌いな能力だったけど、こんなときには少し頼もしく思えた。
再び猫のAAが短い悲鳴を上げた。何事かと視線を移すと、
イカナナの糞キモい指先が猫のAAの透き通るように白く、きめの細かい肌の上を這っていた。
それはおへその横からわき腹のあたりをさまよいながら、徐々に胸のあたりへと近付いていっているように見える。
まっすぐに下へと伸ばした腕の先で拳を握りしめ、小刻みに震える猫のAAは、固く閉じたまぶたの隙間から大粒の涙を流していた。
どくんどくん。うるさい音がすると思ったら自分の心臓の音だった。
大切な友達を守りたい! おじいちゃんの言葉を思い出す。人間は強くなくてはいけない。
弱い私が悪いんだ。弱いし、頭も悪いし、すぐに遅刻はするし、ドジで、間抜けで、簡単に人に騙されて、
こんなときでも自分のことしか考えられなくて、大切な友達も守れない。そんな私が、全部悪いんだ。
自身の内から湧き出る感情が心の中で爆発しそうだった。血のにじんだ手首を見せたら友情を感じてくれる?
なんて馬鹿なんだ私は! 猫のAAは私を守ってくれている。私だって大切な友達を守らなくちゃ。
イカナナの指先が猫のAAの胸を覆う下着の下端に触れた。
猫のAAは一瞬身体を大きく跳ねるように震わせ、子どもみたいに「えぐっ、ぐっ」と泣き声を漏らした。
でも、そのすぐ後に身体の力を抜いたように見えた。まるで何かを覚悟したかのように。
猫のAAが静かに目を開けて私の方を見る。そして口をぱくぱくと動かした。
『私は、大丈夫だから』儚い笑みを覗かせて、そう言ったように見えた。いや、私には分かる。確かにそう言った。
その瞬間、私の中で何かが切れた。同時に、身体の自由を奪っていた縄跳びも、
口の中で唾液を吸って重くなったさるぐつわも、ばちんと音をたてる。
オーバーザレインボウ
「“軌跡の果て”……発動!」
私は生まれて初めて自分の能力を使うことにした。即座に竹刀を掴み取り、キモいやつのキモい脳天へと叩きこむ。
自分でも驚くくらいの速さだった。イカナナは当然のように反応できていなかったし、猫のAAも何が起きたか分かっていないようだ。
報われない努力の大切さを忘れさせてしまうから大嫌いな能力だったけど、こんなときには少し頼もしく思えた。
29:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 14:55:48.009 :MyLOIH4ea.net
みてるお
みてるお
30:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 14:58:31.684 :4YlxD2GqM.net
自分のちっぽけなプライドと、大切な友達。
どっちが上かなんて、比べるまでもなく分かれよ!
自身の胸元に顔をうずめて泣きじゃくる友達の頭をなでなでしながら、私はそんなことを考えていた。私のバカバカ。
こんなことならさっさと能力を使っていれば良かった。
「怖かったぁぁー。えぐっ。怖かったよぉ。ひぐっ、ううっ」
あんなキモいやつにあんなキモいことをされたらさぞかしキモ怖かったことだろう。
かわいそうな猫のAA。私はよしよしと言いながらそのかわいくてかわいそうな猫のAAの頭を撫でてあげる。
周囲には飛び散ったガレキの山。私の一撃はどうやらなかなかの威力らしい。
まるで大型台風の直撃でもくらったかのように体育倉庫は吹き飛び、備品も棚の残骸もごちゃごちゃになって散らばっていた。
「でも、すごいの」
少しして落ち着いた猫のAAがすんすんと鼻を鳴らしながら言った。
「イカナナは人の思考が読めるから私も手が出せなかったのに、ひめひめの動きは分かっていても避けられないものだったのね」
自分のちっぽけなプライドと、大切な友達。
どっちが上かなんて、比べるまでもなく分かれよ!
自身の胸元に顔をうずめて泣きじゃくる友達の頭をなでなでしながら、私はそんなことを考えていた。私のバカバカ。
こんなことならさっさと能力を使っていれば良かった。
「怖かったぁぁー。えぐっ。怖かったよぉ。ひぐっ、ううっ」
あんなキモいやつにあんなキモいことをされたらさぞかしキモ怖かったことだろう。
かわいそうな猫のAA。私はよしよしと言いながらそのかわいくてかわいそうな猫のAAの頭を撫でてあげる。
周囲には飛び散ったガレキの山。私の一撃はどうやらなかなかの威力らしい。
まるで大型台風の直撃でもくらったかのように体育倉庫は吹き飛び、備品も棚の残骸もごちゃごちゃになって散らばっていた。
「でも、すごいの」
少しして落ち着いた猫のAAがすんすんと鼻を鳴らしながら言った。
「イカナナは人の思考が読めるから私も手が出せなかったのに、ひめひめの動きは分かっていても避けられないものだったのね」
31:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 15:01:28.790 :4YlxD2GqM.net
自分があれだけ怖い思いをした後なのに、私のことを称える猫のAAがひどく愛おしく思えた。
膝の上に抱えてぎゅうっと力いっぱい抱きしめる。
「なんなの。苦しいよ」
言葉ではそう言っていても、猫のAAはそれほど嫌がっているふうではなかった。
それをいいことに抱きしめたまま床に倒れ込み、ごろごろとその場を転がる。
かわいいものをもみくちゃにしたいと言うのは、きっと人間の本能なのだ。
仰向けに寝転んだ私の上でもがく猫のAAの髪の毛をわちゃわちゃと撫でまわす。
と、その時だった。足元の方にあるガレキが派手な音をたてて飛び散った。
「油断したな。一発殴られたくらいで俺がやられると思ったか」
視線をそちらへと向けると、割れた脳天から血を流したキモいやつが立っていて、キモいセリフを吐いているところだった。
自分があれだけ怖い思いをした後なのに、私のことを称える猫のAAがひどく愛おしく思えた。
膝の上に抱えてぎゅうっと力いっぱい抱きしめる。
「なんなの。苦しいよ」
言葉ではそう言っていても、猫のAAはそれほど嫌がっているふうではなかった。
それをいいことに抱きしめたまま床に倒れ込み、ごろごろとその場を転がる。
かわいいものをもみくちゃにしたいと言うのは、きっと人間の本能なのだ。
仰向けに寝転んだ私の上でもがく猫のAAの髪の毛をわちゃわちゃと撫でまわす。
と、その時だった。足元の方にあるガレキが派手な音をたてて飛び散った。
「油断したな。一発殴られたくらいで俺がやられると思ったか」
視線をそちらへと向けると、割れた脳天から血を流したキモいやつが立っていて、キモいセリフを吐いているところだった。
32:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 15:01:43.859 :Cpw6G5ej0.net
「ボクらはを世界に変える定念に生きる意味があると…」
「ボクらはを世界に変える定念に生きる意味があると…」
33:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 15:04:23.456 :4YlxD2GqM.net
まずい、と私は思った。
能力を発動して立ち上がれば猫のAAに怪我をさせてしまうかも知れないし、
私に抱きしめられ寝転んでいる状態の猫のAAは素早く立つことができないはずだ。
それ以前に、どうやらあのキモい声がトラウマになっているようで、猫のAAは背後からした声を耳にして身体を硬直させていた。
私はなんとか首から上だけを動かしてイカナナの姿を完全に視界に収める。
全力でこちらへと駆けてきている。相変わらずキモい。
そう思った瞬間に顔面を蹴りあげられた。猫のAAと共に床の上を転がる。猫のAAが私の上からどいた。
なんとか床に両手を踏ん張り私は立ち上がろうとするが、その腕を足で払われ、バランスを崩した私は再び床の上へと倒れ込む。
そして、完全に伸びきった左腕を思い切り足で踏みつけられた。木の枝が折れるような、嫌な音が身体の中で響いた。
まずい、と私は思った。
能力を発動して立ち上がれば猫のAAに怪我をさせてしまうかも知れないし、
私に抱きしめられ寝転んでいる状態の猫のAAは素早く立つことができないはずだ。
それ以前に、どうやらあのキモい声がトラウマになっているようで、猫のAAは背後からした声を耳にして身体を硬直させていた。
私はなんとか首から上だけを動かしてイカナナの姿を完全に視界に収める。
全力でこちらへと駆けてきている。相変わらずキモい。
そう思った瞬間に顔面を蹴りあげられた。猫のAAと共に床の上を転がる。猫のAAが私の上からどいた。
なんとか床に両手を踏ん張り私は立ち上がろうとするが、その腕を足で払われ、バランスを崩した私は再び床の上へと倒れ込む。
そして、完全に伸びきった左腕を思い切り足で踏みつけられた。木の枝が折れるような、嫌な音が身体の中で響いた。
34:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 15:07:27.662 :4YlxD2GqM.net
折れているのが一目でわかった。これでは竹刀を握れない。
思い切りよく振り抜くのに重要な左腕を失っては、どうやっても威力に期待はできないだろう。
痛みと悔しさで、地面に倒れ込んだままの私の瞳に涙が浮かぶ。
こんなことになるのなら、右腕だけで竹刀を振る練習をしておけばよかった。
戦意を失った私に対して、イカナナは容赦なく蹴りを繰り出してきた。
おなかをつま先で蹴られて一瞬息が止まる。苦しい。反射的におなかを抱えると頭を踏みつけられた。
頭をかばうとおなか、肩、背中。私はどうすることもできなくなって、身体を丸める。
それでも攻撃は止まなかった。どこを蹴られても折れた左腕が自己主張するかのように痛んだ。
「最初からこうしておけば良かったよ。僕も詰めが甘かった」
折れているのが一目でわかった。これでは竹刀を握れない。
思い切りよく振り抜くのに重要な左腕を失っては、どうやっても威力に期待はできないだろう。
痛みと悔しさで、地面に倒れ込んだままの私の瞳に涙が浮かぶ。
こんなことになるのなら、右腕だけで竹刀を振る練習をしておけばよかった。
戦意を失った私に対して、イカナナは容赦なく蹴りを繰り出してきた。
おなかをつま先で蹴られて一瞬息が止まる。苦しい。反射的におなかを抱えると頭を踏みつけられた。
頭をかばうとおなか、肩、背中。私はどうすることもできなくなって、身体を丸める。
それでも攻撃は止まなかった。どこを蹴られても折れた左腕が自己主張するかのように痛んだ。
「最初からこうしておけば良かったよ。僕も詰めが甘かった」
35:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 15:10:23.624 :4YlxD2GqM.net
膝の内側を思い切り踏みつけられ、私は無様に泣き声を上げた。痛い。全身を貫く様な痛みに、喉の奥からか細い悲鳴が漏れる。
いつの間にか口の中に何かが入ってしまったのか、異物感があって唾をぺっと吐き出す。血が混じって赤くなってる。その中に何かが見えた。
最初は何かの破片なのか砂利なのかなと思ったけど、白いから歯だって分かった。
頭上から笑い声が降ってきた。それと同時に頭に衝撃を受け、私は大きくのけぞるようにして後ろに倒れ込んだ。
口元がじんじんと疼く。顔を蹴りあげられたのだ。口の中に血が次々と溢れてきて気持ち悪い。
寝返りをうつようにうつ伏せになって、また唾を吐き出した。
同時にまた激しい痛みと衝撃。溢れ出る血液と痛みと熱で右のほっぺたが溶けていくような感じがした。
私はうああ、とかあがーみたいな情けない声を出して、口を半開きにして、口の中を占めていく血を全部流してしまおうと思った。
もう吐き出す力なんて無い。ぼろぼろと涙がこぼれた。顔の下半分が焼けるように、熱い。
身体中が私に助けを求めて痛い痛いと次々に言っているみたいだったけど、私にはどうすることもできなかった。
全身から発する苦痛を溶かした水分を搾り出しているかのように涙が溢れる。
口から流れ出る真っ赤な血に白いものがぽつぽつと混じっていた。
自動販売機で売ってる缶のコーンポタージュスープみたいだ。
また気持ちの悪い笑い声がして、顔を蹴られた。それで気付いた。
こいつは私の歯を全部へし折るつもりなんだ、って。
膝の内側を思い切り踏みつけられ、私は無様に泣き声を上げた。痛い。全身を貫く様な痛みに、喉の奥からか細い悲鳴が漏れる。
いつの間にか口の中に何かが入ってしまったのか、異物感があって唾をぺっと吐き出す。血が混じって赤くなってる。その中に何かが見えた。
最初は何かの破片なのか砂利なのかなと思ったけど、白いから歯だって分かった。
頭上から笑い声が降ってきた。それと同時に頭に衝撃を受け、私は大きくのけぞるようにして後ろに倒れ込んだ。
口元がじんじんと疼く。顔を蹴りあげられたのだ。口の中に血が次々と溢れてきて気持ち悪い。
寝返りをうつようにうつ伏せになって、また唾を吐き出した。
同時にまた激しい痛みと衝撃。溢れ出る血液と痛みと熱で右のほっぺたが溶けていくような感じがした。
私はうああ、とかあがーみたいな情けない声を出して、口を半開きにして、口の中を占めていく血を全部流してしまおうと思った。
もう吐き出す力なんて無い。ぼろぼろと涙がこぼれた。顔の下半分が焼けるように、熱い。
身体中が私に助けを求めて痛い痛いと次々に言っているみたいだったけど、私にはどうすることもできなかった。
全身から発する苦痛を溶かした水分を搾り出しているかのように涙が溢れる。
口から流れ出る真っ赤な血に白いものがぽつぽつと混じっていた。
自動販売機で売ってる缶のコーンポタージュスープみたいだ。
また気持ちの悪い笑い声がして、顔を蹴られた。それで気付いた。
こいつは私の歯を全部へし折るつもりなんだ、って。
36:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 15:13:42.971 :4YlxD2GqM.net
さすがに蹴り疲れたのか、雨の様な攻撃はやんだ。
私は力なく床の上を転がり、視線を横へと向けた。その先には猫のAAがいる。
かわいい猫のAA。大切な私の友達。
その小さな体を震わせて、ひどく怯えた表情で、こっちを見ながら泣いている。
私があっちにいる立場だったら、「次は私もこうなるんだ」とか、自分本位にそんなことを考えて怖くて泣いてると思う。
でも、猫のAAは違う。きっと私のことがかわいそうで、友達がひどく傷つけられているのが悲しくて、
つらくて、何もできない自分が歯がゆくて、そんな気持ちでいっぱいになって、それで泣いてるんだと思う。
助けてあげなくちゃ。大切な私の友達を、救ってあげなくちゃ。
私は口をぱくぱくと動かした。痛くてうまく動かせないけど、必死になって頑張る。
涙がにじんでよく目が見えなくなってきた。猫のAAはどんな顔をしてるだろう。
『私は、大丈夫だから』
私は口の動きだけでそう言った。言葉にはなっていなくても、きっと分かってくれる。だって、友達なんだから。
全然大丈夫そうに見えないよって、君は笑うかな。
さすがに蹴り疲れたのか、雨の様な攻撃はやんだ。
私は力なく床の上を転がり、視線を横へと向けた。その先には猫のAAがいる。
かわいい猫のAA。大切な私の友達。
その小さな体を震わせて、ひどく怯えた表情で、こっちを見ながら泣いている。
私があっちにいる立場だったら、「次は私もこうなるんだ」とか、自分本位にそんなことを考えて怖くて泣いてると思う。
でも、猫のAAは違う。きっと私のことがかわいそうで、友達がひどく傷つけられているのが悲しくて、
つらくて、何もできない自分が歯がゆくて、そんな気持ちでいっぱいになって、それで泣いてるんだと思う。
助けてあげなくちゃ。大切な私の友達を、救ってあげなくちゃ。
私は口をぱくぱくと動かした。痛くてうまく動かせないけど、必死になって頑張る。
涙がにじんでよく目が見えなくなってきた。猫のAAはどんな顔をしてるだろう。
『私は、大丈夫だから』
私は口の動きだけでそう言った。言葉にはなっていなくても、きっと分かってくれる。だって、友達なんだから。
全然大丈夫そうに見えないよって、君は笑うかな。
37:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 15:16:48.096 :4YlxD2GqM.net
抗うことも出来ず降り注ぐ無慈悲な暴力に、私は延々と晒され続けていた。
もう口をぱくぱくと動かす力さえ残ってない。今の私は金魚鉢を不自由に泳ぐ金魚にさえ負ける自信がある。
そんな私に向けて攻撃を再開したイカナナは、磔にした小動物をいたぶる精神異常者だ。
膝を踏み砕かれる痛みにさえほとんど反応しない、できないでいる私を、これ以上どうしたいのだろう。
無造作に頭を蹴りつけられた私の視界に、泣き叫んでいる猫のAAの姿が収まった。
鼓膜が破れたのか、それとも耳の中に血が詰まっているのか、音がヘンなふうにしか聞こえないから今の今まで気が付かなかった。
私の友達は今も苦しんでいる。私は友達を、結局のところ、救えなかったんだ。
ああ、そうか。私はとても嫌な考えに辿り着いた。
イカナナは私の大切な友達を苦しめるためにこの攻撃をやめないんだ。
きっと、このまま、散々痛めつけるだけ痛めつけて、私を殺す気なんだ。
この若さで死ぬのは嫌だな。まだやりたいこともたくさんあったのに。
でももっと嫌なのは、友達の心が死んじゃうこと。私のせいで、友達がひどく悲しんじゃうこと。
私は徐々に自分の命の灯火が消えていくのを感じながら、自分が死んだ後の友達のことをずっと考えていた。
抗うことも出来ず降り注ぐ無慈悲な暴力に、私は延々と晒され続けていた。
もう口をぱくぱくと動かす力さえ残ってない。今の私は金魚鉢を不自由に泳ぐ金魚にさえ負ける自信がある。
そんな私に向けて攻撃を再開したイカナナは、磔にした小動物をいたぶる精神異常者だ。
膝を踏み砕かれる痛みにさえほとんど反応しない、できないでいる私を、これ以上どうしたいのだろう。
無造作に頭を蹴りつけられた私の視界に、泣き叫んでいる猫のAAの姿が収まった。
鼓膜が破れたのか、それとも耳の中に血が詰まっているのか、音がヘンなふうにしか聞こえないから今の今まで気が付かなかった。
私の友達は今も苦しんでいる。私は友達を、結局のところ、救えなかったんだ。
ああ、そうか。私はとても嫌な考えに辿り着いた。
イカナナは私の大切な友達を苦しめるためにこの攻撃をやめないんだ。
きっと、このまま、散々痛めつけるだけ痛めつけて、私を殺す気なんだ。
この若さで死ぬのは嫌だな。まだやりたいこともたくさんあったのに。
でももっと嫌なのは、友達の心が死んじゃうこと。私のせいで、友達がひどく悲しんじゃうこと。
私は徐々に自分の命の灯火が消えていくのを感じながら、自分が死んだ後の友達のことをずっと考えていた。
38:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 15:20:23.352 :4YlxD2GqM.net
世の中には極度に間の悪い人間と言うのが少なからず存在する。
水中で目を開けた時の視界みたいに薄ぼんやりとした意識の中で、私はそんなことを思った。
「あのさ、今いいところなんだよね。邪魔しないでくれるかな」
「邪魔?」
イカナナとかいうやつは不運だな。不運な上にキモい。
痛みのあまり感覚が麻痺していたことと、おそらく自分が助かったであろうことを知って、私は少し余裕を取り戻していた。
でも自分の大嫌いなやつに、結果的にとは言え助けられる現実に、同時にやや不機嫌にもなっていた。
「邪魔してんのはそっちだろ。もしかして馬鹿なのかな」
イカナナが不運だというのは、その間の悪い人間が、イカナナにとって最大限間の悪いタイミングで現れたということだ。
「ドチャドチャうるせぇんだよ。人の昼寝の邪魔すんなこの馬鹿」
私の視線の先で、理不尽男のゆっきーが、寝癖だらけの頭をかきながらイカナナのことを睨み付けていた。
世の中には極度に間の悪い人間と言うのが少なからず存在する。
水中で目を開けた時の視界みたいに薄ぼんやりとした意識の中で、私はそんなことを思った。
「あのさ、今いいところなんだよね。邪魔しないでくれるかな」
「邪魔?」
イカナナとかいうやつは不運だな。不運な上にキモい。
痛みのあまり感覚が麻痺していたことと、おそらく自分が助かったであろうことを知って、私は少し余裕を取り戻していた。
でも自分の大嫌いなやつに、結果的にとは言え助けられる現実に、同時にやや不機嫌にもなっていた。
「邪魔してんのはそっちだろ。もしかして馬鹿なのかな」
イカナナが不運だというのは、その間の悪い人間が、イカナナにとって最大限間の悪いタイミングで現れたということだ。
「ドチャドチャうるせぇんだよ。人の昼寝の邪魔すんなこの馬鹿」
私の視線の先で、理不尽男のゆっきーが、寝癖だらけの頭をかきながらイカナナのことを睨み付けていた。
39:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 15:21:50.714 :QYmYf2A60.net
比喩織り交ぜればそれっぽくなると思ってるみたいだけどただ読みづらい
比喩織り交ぜればそれっぽくなると思ってるみたいだけどただ読みづらい
40:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 15:23:55.368 :4YlxD2GqM.net
「昼寝の邪魔ね。こっちはもっといいところを邪魔されてるんだけどな。立場をわきまえなよこの無能力者」
「ああ?」
険悪な雰囲気の二人のことは無視して、私は猫のAAの方へと視線を移した。
涙と鼻水だらけのひどく間の抜けた顔をして、事の顛末をぽかんと眺めている。
オーソドックスマインド
「僕の“知性の墓場”の敵じゃないんだよ。悪いけど」
イカナナのその明らかに負けるやつが言うようなキモいセリフと同時に、すごい音がした。
ばきっとかどかっとかそんなありきたりなのじゃなくて、ごじゅんばりがりんとかぐじゃりんばんとか。私の耳にはそんなふうに聞こえた。
多分耳の中に血が詰まってるかしてるからヘンな音に聞こえたんだろうけど、でも、すごい音だったことに変わりはない。
それで私が音のした方を見ると、イカナナはひゅーーーんとか漫画みたいな擬音を残して飛んでって、
豆粒みたいな大きさになって、それで、遥か遠くに見える森にざんっ! て感じで突き刺さって消えた。
私はその一部始終を見てはいなかったけど、
どうせ理不尽男のゆっきーが思考を読めるはずのキモいやつを理不尽にぶん殴ってぶっ飛ばしたんだと思う。
当のゆっきーはと言えば、その時には既に「よし。これで静かになったな」とか言いながらどこかへと立ち去った後だった。
でも、私にとって今目の前で起きたそれらはどうでもいいことだった。
慌てて駆け寄ってきた猫のAAが私のことを抱きしめながら泣いてる。
そっちの方が嬉しくて、悲しくて、でも安心して、心がほんわかしてとても大事なことで、暖かくて、柔らかくて、良い匂いがして、
そして何より痛みで気が狂いそうだったので、「力強く抱きしめるのはやめて」と大切な友達にお願いするのがその時の最重要事項だった。
「昼寝の邪魔ね。こっちはもっといいところを邪魔されてるんだけどな。立場をわきまえなよこの無能力者」
「ああ?」
険悪な雰囲気の二人のことは無視して、私は猫のAAの方へと視線を移した。
涙と鼻水だらけのひどく間の抜けた顔をして、事の顛末をぽかんと眺めている。
オーソドックスマインド
「僕の“知性の墓場”の敵じゃないんだよ。悪いけど」
イカナナのその明らかに負けるやつが言うようなキモいセリフと同時に、すごい音がした。
ばきっとかどかっとかそんなありきたりなのじゃなくて、ごじゅんばりがりんとかぐじゃりんばんとか。私の耳にはそんなふうに聞こえた。
多分耳の中に血が詰まってるかしてるからヘンな音に聞こえたんだろうけど、でも、すごい音だったことに変わりはない。
それで私が音のした方を見ると、イカナナはひゅーーーんとか漫画みたいな擬音を残して飛んでって、
豆粒みたいな大きさになって、それで、遥か遠くに見える森にざんっ! て感じで突き刺さって消えた。
私はその一部始終を見てはいなかったけど、
どうせ理不尽男のゆっきーが思考を読めるはずのキモいやつを理不尽にぶん殴ってぶっ飛ばしたんだと思う。
当のゆっきーはと言えば、その時には既に「よし。これで静かになったな」とか言いながらどこかへと立ち去った後だった。
でも、私にとって今目の前で起きたそれらはどうでもいいことだった。
慌てて駆け寄ってきた猫のAAが私のことを抱きしめながら泣いてる。
そっちの方が嬉しくて、悲しくて、でも安心して、心がほんわかしてとても大事なことで、暖かくて、柔らかくて、良い匂いがして、
そして何より痛みで気が狂いそうだったので、「力強く抱きしめるのはやめて」と大切な友達にお願いするのがその時の最重要事項だった。
41:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 15:27:15.010 :4YlxD2GqM.net
翌日には私の怪我は治っていた。と言うよりも、猫のAAの能力のおかげで元に戻ったと言うべきなのかな。
グッバイデイズ
「“光陰にゃのごとし”は便利だにゃ」とは猫のAAの談である。
超能力には使うための制約や条件の様なものがあることが多くて、
猫のAAの場合は能力を使うと一定期間語尾が「にゃ」に変化するのだ。
かわいいからそのままでいいのにと私は思うけど、当人は嫌みたいで普段から無口なのもそのためらしい。
猫のAAの持っている超能力は時間を戻せるというもの。
ただ、時間を戻して過去を変えたとしても、未来そのものを変える力は無いので、
時間を戻してその原因となるものを摘み取ることで物の状態を変化させるのが関の山なんだって。
どういうことかと言うと、昨日の段階でイカナナが私を痛めつけるのを猫のAAが頑張って介入して防いだ結果、
私の怪我は治った、というか怪我をしない状態になったんだけど、
でも入院する未来は残っているので私は今とても元気なのに病院のベッドでごろごろと無為に時間を過ごしているわけだ。
健康だからと退院しようとしても謎の力に阻まれてできない。
なんだかプログラミングのバグを放置したまま発売されたゲームをやっているようで、気分はあまりよくない。
翌日には私の怪我は治っていた。と言うよりも、猫のAAの能力のおかげで元に戻ったと言うべきなのかな。
グッバイデイズ
「“光陰にゃのごとし”は便利だにゃ」とは猫のAAの談である。
超能力には使うための制約や条件の様なものがあることが多くて、
猫のAAの場合は能力を使うと一定期間語尾が「にゃ」に変化するのだ。
かわいいからそのままでいいのにと私は思うけど、当人は嫌みたいで普段から無口なのもそのためらしい。
猫のAAの持っている超能力は時間を戻せるというもの。
ただ、時間を戻して過去を変えたとしても、未来そのものを変える力は無いので、
時間を戻してその原因となるものを摘み取ることで物の状態を変化させるのが関の山なんだって。
どういうことかと言うと、昨日の段階でイカナナが私を痛めつけるのを猫のAAが頑張って介入して防いだ結果、
私の怪我は治った、というか怪我をしない状態になったんだけど、
でも入院する未来は残っているので私は今とても元気なのに病院のベッドでごろごろと無為に時間を過ごしているわけだ。
健康だからと退院しようとしても謎の力に阻まれてできない。
なんだかプログラミングのバグを放置したまま発売されたゲームをやっているようで、気分はあまりよくない。
42:きなこテュヌス :2017/10/07(土) 15:30:14.414 :4YlxD2GqM.net
それでもひとつだけいいことがある。猫のAAが毎日お見舞いに来てくれることだ。
「猫のAAだって自分の時間があるんだろうし、無理に毎日来てくれなくてもいいからね。
責任を感じることだってないんだよ」
私のそんな言葉に、少しむっとした様子で猫のAAはこう返した。
「私は友達に会いに来ているだけで別に無理してないし責任を感じてとかどうとかそんなの関係ないんだけどひめひめが迷惑だって言うなら来る頻度を下げるにゃ」
語尾が恥ずかしいのか最近の猫のAAは文章をひとまとめにして区切らずに喋る。
それがかわいくって面白くって私は笑う。
「何を笑っているにゃ」
「猫のAAだって笑ってるじゃん」
退屈な入院生活だけど、こんな毎日が続けばいいなと、私は思う。
終わり
それでもひとつだけいいことがある。猫のAAが毎日お見舞いに来てくれることだ。
「猫のAAだって自分の時間があるんだろうし、無理に毎日来てくれなくてもいいからね。
責任を感じることだってないんだよ」
私のそんな言葉に、少しむっとした様子で猫のAAはこう返した。
「私は友達に会いに来ているだけで別に無理してないし責任を感じてとかどうとかそんなの関係ないんだけどひめひめが迷惑だって言うなら来る頻度を下げるにゃ」
語尾が恥ずかしいのか最近の猫のAAは文章をひとまとめにして区切らずに喋る。
それがかわいくって面白くって私は笑う。
「何を笑っているにゃ」
「猫のAAだって笑ってるじゃん」
退屈な入院生活だけど、こんな毎日が続けばいいなと、私は思う。
終わり
43:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 15:33:55.882 :k0Byr6KJa.net
乙
乙
44:こころ :2017/10/07(土) 15:34:34.307 :coZjyLySp.net
よかったよ乙乙
よかったよ乙乙
45:近江 :2017/10/07(土) 15:41:11.580 :l0hvIzsf0.net
>>44
よかった....?面白かったじゃなくて?
>>44
よかった....?面白かったじゃなくて?
46:猫のAA :2017/10/07(土) 15:47:17.450 :nPMKSngBd.net
今気付いた
待ってました!大事に読むよ
早い段階から登場出来てて嬉しい
今気付いた
待ってました!大事に読むよ
早い段階から登場出来てて嬉しい
47:えすぱーつやま :2017/10/07(土) 15:51:05.899 :zyhmyjGO0.net
おつおつおちゅぬす
おつおつおちゅぬす
48:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 16:19:23.506 :E4zgdQ3pa.net
乙です
乙です
49:鴉 :2017/10/07(土) 16:24:27.673 :7FwtuuVEp.net
おつおつ、面白かった
おつおつ、面白かった
50:ピアノ教師マリーペニストン :2017/10/07(土) 16:25:09.075 :cws4Uahjp.net
きなぴーおつかれ
よかったよー
きなぴーおつかれ
よかったよー
51:猫のAA :2017/10/07(土) 16:39:37.725 :nPMKSngBd.net
残酷描写が多かったけど乙!
作中のイカナナって奴はマジでキモくて最低だな
残酷描写が多かったけど乙!
作中のイカナナって奴はマジでキモくて最低だな
52:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 16:43:33.478 :vdbR5KfUd.net
つまらないから読んでなくて内容には触れずにみんなおつかれとしか言わないっていうスレ
つまらないから読んでなくて内容には触れずにみんなおつかれとしか言わないっていうスレ
53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2017/10/07(土) 16:44:57.205 :czSN6o5o0.net
27位まで読んだ僕「くっそイカナナを倒す役になりてえっ!!」ビンビン(混乱)
27位まで読んだ僕「くっそイカナナを倒す役になりてえっ!!」ビンビン(混乱)
54:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 16:54:28.600 :c4bjHACu0.net
どっちが脆いかっていうと凍らせたチューペットの方だよね
どっちが脆いかっていうと凍らせたチューペットの方だよね
55:ぬこ :2017/10/07(土) 17:52:08.912 :ykBvJrRY0.net
乙です
読んできます
乙です
読んできます
56:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/10/07(土) 18:00:18.710 :FnK/5XqOd.net
壁]*´-`)きなこっちお疲れさまっ
仕事終わったらゆっくり読ませてもらうねっ
壁]*´-`)きなこっちお疲れさまっ
仕事終わったらゆっくり読ませてもらうねっ
57:過去ログ ★::
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