1:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:08:37 :tilxqi9I
雪乃(何て、自分から求めることができれば苦労はしないのよね……)
八幡「は? バナナ? こんな夜更けにバナナかよ」
雪乃「! 比企谷くん……」
八幡「雪ノ下。お前、バナナが欲しいのか」
雪乃「何の話かしら」
八幡「いや、お前……今そう言って」
雪乃「私はバナナが欲しいなんて一言もいっていない。私はただ……」
八幡「ただ?」
雪乃「何でもないの。もう、いいかしら」
八幡「……ああ、悪い。じゃあな」
雪乃「ええ、また」
雪乃(何て、自分から求めることができれば苦労はしないのよね……)
八幡「は? バナナ? こんな夜更けにバナナかよ」
雪乃「! 比企谷くん……」
八幡「雪ノ下。お前、バナナが欲しいのか」
雪乃「何の話かしら」
八幡「いや、お前……今そう言って」
雪乃「私はバナナが欲しいなんて一言もいっていない。私はただ……」
八幡「ただ?」
雪乃「何でもないの。もう、いいかしら」
八幡「……ああ、悪い。じゃあな」
雪乃「ええ、また」
2:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:09:12 :tilxqi9I
八幡(確かに、雪ノ下はバナナが欲しいとは言っていない)
八幡(だが、あいつは確かにこう口にした。バナナが食べたいと)
八幡(いつも自分から求めようとはしない雪ノ下が、自らバナナが食べたいと言ったんだ)
八幡(だったら、その雪ノ下の気持ちは尊重されるべきではなかろうか)
八幡「俺が雪ノ下のためにバナナを食べさせればいいんじゃないか? ……いや」
結衣「バナナ?」
八幡(確かに、雪ノ下はバナナが欲しいとは言っていない)
八幡(だが、あいつは確かにこう口にした。バナナが食べたいと)
八幡(いつも自分から求めようとはしない雪ノ下が、自らバナナが食べたいと言ったんだ)
八幡(だったら、その雪ノ下の気持ちは尊重されるべきではなかろうか)
八幡「俺が雪ノ下のためにバナナを食べさせればいいんじゃないか? ……いや」
結衣「バナナ?」
3:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:09:46 :tilxqi9I
八幡「由比ヶ浜」
結衣「ゆきのんがバナナを……ってどういうこと、ヒッキー?」
八幡「いや、何だ。これは由比ヶ浜、お前には関係のないことなんだ」
結衣「関係ない……って。そんなことない。あたしもゆきのんやヒッキーと同じ奉仕部なんだよ」
八幡「それは……」
結衣「ゆきのんのこと、気になるし……。お願いヒッキー、あたしにも教えて、その……バナナのこと」
八幡「……、ああ、分かった」
八幡「由比ヶ浜」
結衣「ゆきのんがバナナを……ってどういうこと、ヒッキー?」
八幡「いや、何だ。これは由比ヶ浜、お前には関係のないことなんだ」
結衣「関係ない……って。そんなことない。あたしもゆきのんやヒッキーと同じ奉仕部なんだよ」
八幡「それは……」
結衣「ゆきのんのこと、気になるし……。お願いヒッキー、あたしにも教えて、その……バナナのこと」
八幡「……、ああ、分かった」
4:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:10:21 :tilxqi9I
結衣「なるほどね。ゆきのん、バナナが食べたいんだ」
八幡「ああ、そうらしい」
結衣「じゃあ、ヒッキーがゆきのんにバナナを食べさせたらいいんじゃない?」
八幡「確かに理屈ではそうなる。だが、それはできない」
結衣「えっ……何で?」
八幡「俺が雪ノ下にバナナを食べさせるべきだという理由が見当たらない」
結衣「理由って……。え、でもだって、ゆきのんはヒッキーにバナナが食べたいって言ったんだよね?」
八幡「ああ、言ったのは確かだ。だが、それはただの呟きだったし、雪ノ下が直接俺に向かってバナナが食べたいと言ったわけじゃない」
結衣「なるほどね。ゆきのん、バナナが食べたいんだ」
八幡「ああ、そうらしい」
結衣「じゃあ、ヒッキーがゆきのんにバナナを食べさせたらいいんじゃない?」
八幡「確かに理屈ではそうなる。だが、それはできない」
結衣「えっ……何で?」
八幡「俺が雪ノ下にバナナを食べさせるべきだという理由が見当たらない」
結衣「理由って……。え、でもだって、ゆきのんはヒッキーにバナナが食べたいって言ったんだよね?」
八幡「ああ、言ったのは確かだ。だが、それはただの呟きだったし、雪ノ下が直接俺に向かってバナナが食べたいと言ったわけじゃない」
5:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:10:52 :tilxqi9I
八幡「現に、雪ノ下はその発言についてはぐらかそうとした」
八幡「もっとも、『バナナが欲しいのか』という俺の発言を否定しただけで、『バナナが食べたい』ということはあくまで否定していないが」
結衣「えっと、だったら、ゆきのんのバナナが食べたいっていう気持ちはきっと本当なんだよね?」
八幡「ああ、おそらく雪ノ下がバナナを食べたいという気持ちは確かなんだと思う」
結衣「なら、ヒッキーがやることは決まってるでしょ。ゆきのんにバナナを食べさせてあげて」
八幡「いや、待て。そもそも雪ノ下の発言から、雪ノ下が『俺に』バナナを食べさせてほしいのだと安易に断定することはできない」
結衣「へ……どうして?」
八幡「現に、雪ノ下はその発言についてはぐらかそうとした」
八幡「もっとも、『バナナが欲しいのか』という俺の発言を否定しただけで、『バナナが食べたい』ということはあくまで否定していないが」
結衣「えっと、だったら、ゆきのんのバナナが食べたいっていう気持ちはきっと本当なんだよね?」
八幡「ああ、おそらく雪ノ下がバナナを食べたいという気持ちは確かなんだと思う」
結衣「なら、ヒッキーがやることは決まってるでしょ。ゆきのんにバナナを食べさせてあげて」
八幡「いや、待て。そもそも雪ノ下の発言から、雪ノ下が『俺に』バナナを食べさせてほしいのだと安易に断定することはできない」
結衣「へ……どうして?」
6:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:11:34 :tilxqi9I
八幡「雪ノ下はこう言った。『比企谷くん、バナナが食べたいのだけれど』」
八幡「『比企谷くん』というのはただ俺に対して呼び掛けただけであって、俺にバナナの提供行為を要求したとまでは言えないんじゃねぇの?」
八幡「それに、仮にも雪ノ下は奉仕部の部長だ。腹が減って困っている人間に魚を与えるんじゃなく、魚の取り方を教えてやる」
八幡「それがボランティアの精神であって、雪ノ下の信条でもある。そんな雪ノ下に俺がバナナを与えてしまったら」
八幡「雪ノ下の自立性を確保できない。それではただの……ただの依存でしかない」
結衣「違う……違うよ。そんなんじゃないよ!」
八幡「由比ヶ浜……」
八幡「雪ノ下はこう言った。『比企谷くん、バナナが食べたいのだけれど』」
八幡「『比企谷くん』というのはただ俺に対して呼び掛けただけであって、俺にバナナの提供行為を要求したとまでは言えないんじゃねぇの?」
八幡「それに、仮にも雪ノ下は奉仕部の部長だ。腹が減って困っている人間に魚を与えるんじゃなく、魚の取り方を教えてやる」
八幡「それがボランティアの精神であって、雪ノ下の信条でもある。そんな雪ノ下に俺がバナナを与えてしまったら」
八幡「雪ノ下の自立性を確保できない。それではただの……ただの依存でしかない」
結衣「違う……違うよ。そんなんじゃないよ!」
八幡「由比ヶ浜……」
7:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:12:42 :tilxqi9I
結衣「依存とか……共依存だとか……あたし、バカだからよくわかんないけど」
結衣「そういう言葉で切り捨てちゃうの……やめようよ」
結衣「ゆきのんとヒッキーの関係も……、奉仕部の……あたしたちの関係も」
結衣「そんな一言で表せるような……簡単なものじゃないと思う」
八幡「いや、勿論、関係性を一言で表すのはそんなに単純な話ではないが……実感としてこの言葉が一番しっくりくるし」
八幡「何より……俺自身が一番よく分かってるんだ。この関係はそういう不健全で、気持ち悪い関係でしかないということが」
結衣「……いいじゃん」
八幡「は?」
結衣「依存とか……共依存だとか……あたし、バカだからよくわかんないけど」
結衣「そういう言葉で切り捨てちゃうの……やめようよ」
結衣「ゆきのんとヒッキーの関係も……、奉仕部の……あたしたちの関係も」
結衣「そんな一言で表せるような……簡単なものじゃないと思う」
八幡「いや、勿論、関係性を一言で表すのはそんなに単純な話ではないが……実感としてこの言葉が一番しっくりくるし」
八幡「何より……俺自身が一番よく分かってるんだ。この関係はそういう不健全で、気持ち悪い関係でしかないということが」
結衣「……いいじゃん」
八幡「は?」
8:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:13:20 :tilxqi9I
結衣「もういいんじゃない。どんだけ不健全で、おかしくて、歪んでて、気持ち悪くても……」
八幡「馬鹿……何言ってるんだ由比ヶ浜」
結衣「だって、ヒッキーだって居心地よかったでしょ……あの部室で過ごした毎日のこと」
八幡「それは……けれど、それはまちがってたんだ」
結衣「まちがってたっていい!!」
八幡「ッ」
結衣「あたしは本当に居心地良かった。ずっとあのままでいたいって願った。今も、願ってる」
八幡「……」
結衣「また、戻ろうよ……あの頃に」
結衣「もういいんじゃない。どんだけ不健全で、おかしくて、歪んでて、気持ち悪くても……」
八幡「馬鹿……何言ってるんだ由比ヶ浜」
結衣「だって、ヒッキーだって居心地よかったでしょ……あの部室で過ごした毎日のこと」
八幡「それは……けれど、それはまちがってたんだ」
結衣「まちがってたっていい!!」
八幡「ッ」
結衣「あたしは本当に居心地良かった。ずっとあのままでいたいって願った。今も、願ってる」
八幡「……」
結衣「また、戻ろうよ……あの頃に」
9:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:13:56 :tilxqi9I
八幡「それは駄目だ。今、雪ノ下は変わろうとしているのに……俺が雪ノ下を直接助けてしまったら……」
結衣「ゆきのん……ダメになっちゃうかもね」
八幡「だから……!」
結衣「でも、あたしはそれでいい。だってダメダメなゆきのんもちょっと可愛いし」
八幡「由比ヶ浜……お前……」
結衣「うん。あたし……ひどい子だ。悪い子で、ずるい子だし。ほんとにわがままだけど」
結衣「でも、それがいいの。だってそうしないと……ヒッキーも……ゆきのんも……ひっく」
八幡「お、おい……」
八幡「それは駄目だ。今、雪ノ下は変わろうとしているのに……俺が雪ノ下を直接助けてしまったら……」
結衣「ゆきのん……ダメになっちゃうかもね」
八幡「だから……!」
結衣「でも、あたしはそれでいい。だってダメダメなゆきのんもちょっと可愛いし」
八幡「由比ヶ浜……お前……」
結衣「うん。あたし……ひどい子だ。悪い子で、ずるい子だし。ほんとにわがままだけど」
結衣「でも、それがいいの。だってそうしないと……ヒッキーも……ゆきのんも……ひっく」
八幡「お、おい……」
10:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:15:00 :tilxqi9I
結衣「だって……っ……」ポロ
結衣「あたしは……っ……二人のこと……大好き……だから」ポロ
結衣「ずっとずっと……三人で……一緒にいたいから……」
結衣「この気持ちはまちがいなんかじゃないから……」
結衣「だから。ゆきのんの代わりにあたしがヒッキーにお願いする」
結衣「ヒッキー、ゆきのんにバナナを食べさせてあげて」
八幡「……………………………」
八幡「わかった」ガクッ
結衣「だって……っ……」ポロ
結衣「あたしは……っ……二人のこと……大好き……だから」ポロ
結衣「ずっとずっと……三人で……一緒にいたいから……」
結衣「この気持ちはまちがいなんかじゃないから……」
結衣「だから。ゆきのんの代わりにあたしがヒッキーにお願いする」
結衣「ヒッキー、ゆきのんにバナナを食べさせてあげて」
八幡「……………………………」
八幡「わかった」ガクッ
11:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:15:57 :tilxqi9I
【病室】
雪乃「比企谷くん、またバナナが食べたいのだけれど」
八幡「おう、またか。今買ってくるからな」
結衣「あっそうだ。バナナの種を植えてこの部室で育てたらどうだろ! バナナ食べ放題になるし!」
八幡「アホか。流通してるバナナに種はねぇよ」
結衣「えっ、じゃあなんで絶滅しないし!?」
雪乃「いいかしら由比ヶ浜さん、バナナというのは熱帯アジア原産のバショウ科の植物よ。野生のバナナにはもともと種があって――」ペラペラ
【病室】
雪乃「比企谷くん、またバナナが食べたいのだけれど」
八幡「おう、またか。今買ってくるからな」
結衣「あっそうだ。バナナの種を植えてこの部室で育てたらどうだろ! バナナ食べ放題になるし!」
八幡「アホか。流通してるバナナに種はねぇよ」
結衣「えっ、じゃあなんで絶滅しないし!?」
雪乃「いいかしら由比ヶ浜さん、バナナというのは熱帯アジア原産のバショウ科の植物よ。野生のバナナにはもともと種があって――」ペラペラ
12:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:17:46 :tilxqi9I
【廊下】
いろは「また三人で部活ごっこしてますねー。それと注意してもすぐ深夜徘徊しちゃいますし」
静「ああ」
小町「先生、お兄ちゃんたちの病気はもう治らないんでしょうか……」
静「彼らはそれぞれ重い精神疾患や発達障害を抱えている」
静「三人を関わらせることで症状が改善することを期待していたが……どうやら余計に悪化してしまったようだ」
小町「そんな……」
静「すまない。私の医者としての力量の無さが原因だ。責任を取って私は退職する。後は後任の医師に任せることになる」
静「一色。君は今後も専属の看護師として、彼らの様子を温かく見守ってくれたまえ。カウンセラーの陽乃たちとも協力してな」
いろは「正直勘弁してほしいんですけどー。仕事ですからね……仕方ないですね……わかりました」
【廊下】
いろは「また三人で部活ごっこしてますねー。それと注意してもすぐ深夜徘徊しちゃいますし」
静「ああ」
小町「先生、お兄ちゃんたちの病気はもう治らないんでしょうか……」
静「彼らはそれぞれ重い精神疾患や発達障害を抱えている」
静「三人を関わらせることで症状が改善することを期待していたが……どうやら余計に悪化してしまったようだ」
小町「そんな……」
静「すまない。私の医者としての力量の無さが原因だ。責任を取って私は退職する。後は後任の医師に任せることになる」
静「一色。君は今後も専属の看護師として、彼らの様子を温かく見守ってくれたまえ。カウンセラーの陽乃たちとも協力してな」
いろは「正直勘弁してほしいんですけどー。仕事ですからね……仕方ないですね……わかりました」
13:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 00:19:27 :tilxqi9I
小町(お兄ちゃん。お父さんとお母さんはもうお兄ちゃんのこと見はなして、病院に寄りつきもしないけど)
小町(小町だけはずっとお兄ちゃんのそばにいてあげるからね。これ小町的にポイント高いよ)
小町「´;ω;`」ウッ…
(おしまい)
小町(お兄ちゃん。お父さんとお母さんはもうお兄ちゃんのこと見はなして、病院に寄りつきもしないけど)
小町(小町だけはずっとお兄ちゃんのそばにいてあげるからね。これ小町的にポイント高いよ)
小町「´;ω;`」ウッ…
(おしまい)