1:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:07:13 :9nEg0gUI
理珠 「ほう。天体観測ですか。どこかの天文台へ行くのですか?」
文乃 「ううん。バスツアーなんだけどね、車で二時間くらいの高原に行くんだよ」
文乃 「結構コアなツアーでね。参加者全員望遠鏡を自分で持って行って、思い思いにレンズを覗くんだ」 ワクワク
文乃 「深夜に駅を出て、数時間天体観測をしたら、早朝に駅に戻ってくるって感じのツアーだよ!」
うるか 「ほへー。そんなのがあるんだねぇ」
成幸 (……それはツアーで行く意味があるのか? とかそういうことは置いておくとして)
成幸 (受験も近いのに大層な余裕だな、というツッコミも置いておくとして)
成幸 「……お父さんと一緒に行くのか?」
文乃 「うんっ! お父さんがね、誘ってくれて……」
文乃 「“一緒に行かないか” って。えへへ……」
成幸 「そうか」 クスッ 「よかったな、古橋」
文乃 「うん! ありがと、成幸くん! 道中のバスではちゃんと勉強するから安心してね!」
成幸 (この寝ぼすけ眠り姫が深夜と明け方のバスで勉強するとは思えないが……)
成幸 (まぁ、たまの息抜きぐらい、問題ないだろうし、何より……)
成幸 (古橋とお父さんの関係が、少しずつ改善しているのが、嬉しい)
理珠 「ほう。天体観測ですか。どこかの天文台へ行くのですか?」
文乃 「ううん。バスツアーなんだけどね、車で二時間くらいの高原に行くんだよ」
文乃 「結構コアなツアーでね。参加者全員望遠鏡を自分で持って行って、思い思いにレンズを覗くんだ」 ワクワク
文乃 「深夜に駅を出て、数時間天体観測をしたら、早朝に駅に戻ってくるって感じのツアーだよ!」
うるか 「ほへー。そんなのがあるんだねぇ」
成幸 (……それはツアーで行く意味があるのか? とかそういうことは置いておくとして)
成幸 (受験も近いのに大層な余裕だな、というツッコミも置いておくとして)
成幸 「……お父さんと一緒に行くのか?」
文乃 「うんっ! お父さんがね、誘ってくれて……」
文乃 「“一緒に行かないか” って。えへへ……」
成幸 「そうか」 クスッ 「よかったな、古橋」
文乃 「うん! ありがと、成幸くん! 道中のバスではちゃんと勉強するから安心してね!」
成幸 (この寝ぼすけ眠り姫が深夜と明け方のバスで勉強するとは思えないが……)
成幸 (まぁ、たまの息抜きぐらい、問題ないだろうし、何より……)
成幸 (古橋とお父さんの関係が、少しずつ改善しているのが、嬉しい)
2:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:08:01 :9nEg0gUI
………………週末 古橋家
文乃 「ふんふふんふふーん♪」
キュッキュッ
文乃 「明日の夜は天体観測~♪ 18歳になったから行けるツアー~♪」
文乃 「レンズを磨いて~♪ アンドロメダ~、プレアデス~、オリオン~♪」
文乃 「全部見られるかな~♪ かな~♪ 幸い~~♪ 明日は快晴~♪」
零侍 「………………」 (……娘のテンションがおかしなことになっている)
零侍 (よっぽど天体観測が楽しみなのだな。受験生相手だから迷ったが、誘って正解だったようだ)
零侍 「それにしても大荷物だな。そんなに大きなリュックがいるのか?」
文乃 「当然だよ。高原まで行くんだよ? もう冬も近いんだよ?」
文乃 「防寒着も必要だし、あとカイロもいるよね」
文乃 「それから、エネルギー補給のためのお菓子」 ドサアッ
零侍 (大きなリュックの中身がほぼすべてお菓子なのだが……)
文乃 「あと……」 クスッ 「成幸くんと勉強するって約束したから、バスの中で読める参考書も」
零侍 「なるほど」 (……まったく。妬けるものだな。そこで一番いい笑顔をしてくれるのだから)
………………週末 古橋家
文乃 「ふんふふんふふーん♪」
キュッキュッ
文乃 「明日の夜は天体観測~♪ 18歳になったから行けるツアー~♪」
文乃 「レンズを磨いて~♪ アンドロメダ~、プレアデス~、オリオン~♪」
文乃 「全部見られるかな~♪ かな~♪ 幸い~~♪ 明日は快晴~♪」
零侍 「………………」 (……娘のテンションがおかしなことになっている)
零侍 (よっぽど天体観測が楽しみなのだな。受験生相手だから迷ったが、誘って正解だったようだ)
零侍 「それにしても大荷物だな。そんなに大きなリュックがいるのか?」
文乃 「当然だよ。高原まで行くんだよ? もう冬も近いんだよ?」
文乃 「防寒着も必要だし、あとカイロもいるよね」
文乃 「それから、エネルギー補給のためのお菓子」 ドサアッ
零侍 (大きなリュックの中身がほぼすべてお菓子なのだが……)
文乃 「あと……」 クスッ 「成幸くんと勉強するって約束したから、バスの中で読める参考書も」
零侍 「なるほど」 (……まったく。妬けるものだな。そこで一番いい笑顔をしてくれるのだから)
3:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:09:20 :9nEg0gUI
零侍 「私も防寒着と傘くらいは用意しておくか。あとは……――」
prrrrrr……
零侍 「む……。研究室からだ。まったく、休日だというのに……」
文乃 「ふふ。わたしのことは気にせず、出ていいよ?」
零侍 「……ああ。すまない」
ピッ
零侍 「もしもし?」
『ああ、よかった。夜分に電話をしてすまないね。少しいいかい?』
零侍 「少しと言うからには本当に少しなんだろうな」
『まぁそう不機嫌そうな声を出すなよ。朗報だよ』
『来月の英国の学会、目玉になっていた研究者が論文の取り下げをしたらしいんだ』
『で、その件について、今日大学に連絡があった。学会の発表順を変えるらしい』
『……古橋先生? 君の論文を学会の最初に据えたいそうだ』
零侍 「……それは本当か?」
『ああ。僕も驚いているんだよ。おめでとう、古橋先生』
零侍 「私も防寒着と傘くらいは用意しておくか。あとは……――」
prrrrrr……
零侍 「む……。研究室からだ。まったく、休日だというのに……」
文乃 「ふふ。わたしのことは気にせず、出ていいよ?」
零侍 「……ああ。すまない」
ピッ
零侍 「もしもし?」
『ああ、よかった。夜分に電話をしてすまないね。少しいいかい?』
零侍 「少しと言うからには本当に少しなんだろうな」
『まぁそう不機嫌そうな声を出すなよ。朗報だよ』
『来月の英国の学会、目玉になっていた研究者が論文の取り下げをしたらしいんだ』
『で、その件について、今日大学に連絡があった。学会の発表順を変えるらしい』
『……古橋先生? 君の論文を学会の最初に据えたいそうだ』
零侍 「……それは本当か?」
『ああ。僕も驚いているんだよ。おめでとう、古橋先生』
4:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:10:36 :9nEg0gUI
『……それでね、明日の夜なんだが、空けておいてくれ』
零侍 「……明日の夜?」
文乃 「……?」
零侍 「いや、明日は……」
『何か予定があるのかもしれないが、こちらを優先してくれ。先方が打ち合わせをしたいのだそうだよ』
『権威のある学会だからね。事前に君とプレゼンの内容を詰めておきたいのだと』
『別件で日本に来る用事があるから、時間を取って君と話したいと言っていたよ』
零侍 「………………」
『おいおい、まさか無理だなんて言わないだろうな』
『あの学会の最初に発表をするということがどういうことか分かっているだろう?』
『学術季刊誌の方も君がトップになる可能性があるんだぞ』
『国からの助成金は確実に増える。よりよい環境を整えられるかもしれない』
零侍 「……分かっている。分かっているが」
『……それでね、明日の夜なんだが、空けておいてくれ』
零侍 「……明日の夜?」
文乃 「……?」
零侍 「いや、明日は……」
『何か予定があるのかもしれないが、こちらを優先してくれ。先方が打ち合わせをしたいのだそうだよ』
『権威のある学会だからね。事前に君とプレゼンの内容を詰めておきたいのだと』
『別件で日本に来る用事があるから、時間を取って君と話したいと言っていたよ』
零侍 「………………」
『おいおい、まさか無理だなんて言わないだろうな』
『あの学会の最初に発表をするということがどういうことか分かっているだろう?』
『学術季刊誌の方も君がトップになる可能性があるんだぞ』
『国からの助成金は確実に増える。よりよい環境を整えられるかもしれない』
零侍 「……分かっている。分かっているが」
5:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:11:17 :9nEg0gUI
零侍 「………………」
零侍 (……私にとって、数学とは至上命題だった。その探究こそがすべてだった)
零侍 (いや、それは今も変わらない。数学の探究は私のワークライフであり、ライフワークだ)
零侍 (しかし……)
文乃 「………………」
―――― 『もしも新しい星を見つけたら…… 文乃ならどんな名前をつけたい?』
―――― 『んーとね んーとね……』
―――― 『「レイジ」 !!』
―――― 『お父さんの名前? えー どうしてー? お母さんじゃないのー?』
―――― 『だってだって お母さんと2人で見つけるんだもん!』
―――― 『2人の一番大好きな人の名前にしなくっちゃ!』
零侍 (ああ、そうだ。大丈夫。分かっている。もう、見失わない)
零侍 (私にとって一番大事なものは……――)
零侍 「………………」
零侍 (……私にとって、数学とは至上命題だった。その探究こそがすべてだった)
零侍 (いや、それは今も変わらない。数学の探究は私のワークライフであり、ライフワークだ)
零侍 (しかし……)
文乃 「………………」
―――― 『もしも新しい星を見つけたら…… 文乃ならどんな名前をつけたい?』
―――― 『んーとね んーとね……』
―――― 『「レイジ」 !!』
―――― 『お父さんの名前? えー どうしてー? お母さんじゃないのー?』
―――― 『だってだって お母さんと2人で見つけるんだもん!』
―――― 『2人の一番大好きな人の名前にしなくっちゃ!』
零侍 (ああ、そうだ。大丈夫。分かっている。もう、見失わない)
零侍 (私にとって一番大事なものは……――)
6:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:11:59 :9nEg0gUI
零侍 「………………」
『……? おい、聞いてるのか? おーい』
零侍 「……ああ。悪いな。学会の最初は、別の研究者に譲ってやってくれ」
『!? おい、正気か? 君の研究が円滑に進むチャンスなんだぞ』
零侍 「ああ、それでも、私は……――」
文乃 「――お父さん」
零侍 「む……」
文乃 「少し、話をしてもいい?」
零侍 「あ、ああ。……すまない。少し待っていてくれ。すぐ戻る」 スッ
零侍 「……どうかしたか?」
文乃 「………………」 ジーーーーッ
零侍 「な、なんだ? その目は……」
文乃 「……明日、無理そう?」
零侍 「い、いや、そんなことはない。大丈夫だ」
零侍 「………………」
『……? おい、聞いてるのか? おーい』
零侍 「……ああ。悪いな。学会の最初は、別の研究者に譲ってやってくれ」
『!? おい、正気か? 君の研究が円滑に進むチャンスなんだぞ』
零侍 「ああ、それでも、私は……――」
文乃 「――お父さん」
零侍 「む……」
文乃 「少し、話をしてもいい?」
零侍 「あ、ああ。……すまない。少し待っていてくれ。すぐ戻る」 スッ
零侍 「……どうかしたか?」
文乃 「………………」 ジーーーーッ
零侍 「な、なんだ? その目は……」
文乃 「……明日、無理そう?」
零侍 「い、いや、そんなことはない。大丈夫だ」
7:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:12:39 :9nEg0gUI
文乃 「………………」 ジーーーーッ 「ほんとぉ?」
零侍 「ほ、本当だ。ウソをつく理由がない」
文乃 「詳しいことは分からないけど、学会の偉い人が来るんじゃないの?」
零侍 「!? き、聞こえていたのか……」
文乃 「いや、普通に電話の声洩れてたし……」
ハァ
文乃 「……無理しなくてもいいよ? 天体観測はいつでも行けるしさ」
文乃 「お仕事の用事が入っちゃったなら仕方ないよ。お仕事優先だよ」
零侍 「い、いや、しかし……」
文乃 「わたしなら大丈夫だよ。天体観測、今回はひとりで行くよ。もう18歳だしね」
文乃 「それに、お母さんも言ってたじゃない」 ニコッ
―――― 『好きなことを全力で 好きにやりなさい』
零侍 「っ……」
文乃 「………………」 ジーーーーッ 「ほんとぉ?」
零侍 「ほ、本当だ。ウソをつく理由がない」
文乃 「詳しいことは分からないけど、学会の偉い人が来るんじゃないの?」
零侍 「!? き、聞こえていたのか……」
文乃 「いや、普通に電話の声洩れてたし……」
ハァ
文乃 「……無理しなくてもいいよ? 天体観測はいつでも行けるしさ」
文乃 「お仕事の用事が入っちゃったなら仕方ないよ。お仕事優先だよ」
零侍 「い、いや、しかし……」
文乃 「わたしなら大丈夫だよ。天体観測、今回はひとりで行くよ。もう18歳だしね」
文乃 「それに、お母さんも言ってたじゃない」 ニコッ
―――― 『好きなことを全力で 好きにやりなさい』
零侍 「っ……」
8:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:13:17 :9nEg0gUI
文乃 「あれはわたしに向けての言葉だったかもしれないけどさ、お父さんも同じだと思うよ?」
文乃 「お母さんはきっと、お父さんにも、好きなことをやってもらいたいと思ってるよ」
グッ
文乃 「だから、わたしが許すよ、お父さん」
文乃 「好きなことを全力で、好きにやりなさい! ってね」
零侍 「文乃……」
零侍 「………………」
零侍 「……すまない」
文乃 「謝らなくていいよ。お仕事だもん。それに、お父さんの “好き” だからね」
文乃 「わたしも好きなことやらせてもらうんだから、お父さんの “好き” な数学も大事にしないとね」
クスクス
文乃 「あと、お父さんが大学クビになったりしたら、わたしも大学に行けなくなっちゃうし」
零侍 「………………」 フッ 「……そうだな。すまない。では、悪いが、明日は……」
文乃 「うん。ひとりで行ってくるよ! お父さん、偉い人と会うんだから、ちゃんとヒゲ剃ってから行くんだよ」
文乃 「じゃあ、わたしちょっと部屋で勉強してくるから!」 シュバッ
文乃 「あれはわたしに向けての言葉だったかもしれないけどさ、お父さんも同じだと思うよ?」
文乃 「お母さんはきっと、お父さんにも、好きなことをやってもらいたいと思ってるよ」
グッ
文乃 「だから、わたしが許すよ、お父さん」
文乃 「好きなことを全力で、好きにやりなさい! ってね」
零侍 「文乃……」
零侍 「………………」
零侍 「……すまない」
文乃 「謝らなくていいよ。お仕事だもん。それに、お父さんの “好き” だからね」
文乃 「わたしも好きなことやらせてもらうんだから、お父さんの “好き” な数学も大事にしないとね」
クスクス
文乃 「あと、お父さんが大学クビになったりしたら、わたしも大学に行けなくなっちゃうし」
零侍 「………………」 フッ 「……そうだな。すまない。では、悪いが、明日は……」
文乃 「うん。ひとりで行ってくるよ! お父さん、偉い人と会うんだから、ちゃんとヒゲ剃ってから行くんだよ」
文乃 「じゃあ、わたしちょっと部屋で勉強してくるから!」 シュバッ
9:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:13:55 :9nEg0gUI
………………
文乃 「………………」
文乃 「……うん。大丈夫。わたしは、大丈夫。だって……」
―――― 零侍 『文乃。来週末、一緒に天体観測に行かないか?』
文乃 「あのとき、あんな風に言ってくれただけで……」
文乃 「とっても嬉しかったから」
文乃 「わたしひとりでたーくさん天体観測して、帰ってきたらお父さんに自慢してやるんだから」
文乃 「えへへ……」
文乃 「………………」
グスッ
文乃 「……うん。お父さんとは、また今度」
文乃 「きっと、また今度一緒に、行けるよね」
………………
文乃 「………………」
文乃 「……うん。大丈夫。わたしは、大丈夫。だって……」
―――― 零侍 『文乃。来週末、一緒に天体観測に行かないか?』
文乃 「あのとき、あんな風に言ってくれただけで……」
文乃 「とっても嬉しかったから」
文乃 「わたしひとりでたーくさん天体観測して、帰ってきたらお父さんに自慢してやるんだから」
文乃 「えへへ……」
文乃 「………………」
グスッ
文乃 「……うん。お父さんとは、また今度」
文乃 「きっと、また今度一緒に、行けるよね」
10:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:14:28 :9nEg0gUI
………………
『はぁ。まったく、まさか断るのかと思ってヒヤヒヤしたよ。勘弁してくれ』
零侍 「すまない。大丈夫だ。明日は18時にホテルに向かえばいいんだな?」
『ああ。先方の宿泊先だ。遅れるなよ。じゃあ、また明日』
零侍 「ああ、ありがとう」
ピッ
零侍 「………………」
零侍 (……これで良かったのだろうか)
零侍 (私は、また娘をないがしろにしてしまったのではないだろうか……)
零侍 (こんなことで、静流との約束を、守れていると言えるのだろうか……)
零侍 「せめて、何か……」
―――― 『成幸くんと勉強するって約束したから、バスの中で読める参考書も』
零侍 「……ん」
………………
『はぁ。まったく、まさか断るのかと思ってヒヤヒヤしたよ。勘弁してくれ』
零侍 「すまない。大丈夫だ。明日は18時にホテルに向かえばいいんだな?」
『ああ。先方の宿泊先だ。遅れるなよ。じゃあ、また明日』
零侍 「ああ、ありがとう」
ピッ
零侍 「………………」
零侍 (……これで良かったのだろうか)
零侍 (私は、また娘をないがしろにしてしまったのではないだろうか……)
零侍 (こんなことで、静流との約束を、守れていると言えるのだろうか……)
零侍 「せめて、何か……」
―――― 『成幸くんと勉強するって約束したから、バスの中で読める参考書も』
零侍 「……ん」
11:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:15:20 :9nEg0gUI
零侍 「………………」
零侍 (……まったく、嫌になる)
零侍 (こんなときにまで、頼ろうとしている)
零侍 (彼も受験生だ。そうそう力を借りていいわけもない。彼に失礼だ)
零侍 (しかし……)
ピッ……ピッ……prrr……
花枝 『もしもし? 古橋さん? どうかしましたか?』
零侍 「夜分にすみません、唯我さん。あの……」
零侍 「……成幸くんは、ご在宅でしょうか?」
零侍 (……許してくれ、唯我くん。私は、君に失礼であろうとも、迷惑であろうとも、)
零侍 (娘のために、何かをしてあげたいと思ってしまうんだ)
零侍 「………………」
零侍 (……まったく、嫌になる)
零侍 (こんなときにまで、頼ろうとしている)
零侍 (彼も受験生だ。そうそう力を借りていいわけもない。彼に失礼だ)
零侍 (しかし……)
ピッ……ピッ……prrr……
花枝 『もしもし? 古橋さん? どうかしましたか?』
零侍 「夜分にすみません、唯我さん。あの……」
零侍 「……成幸くんは、ご在宅でしょうか?」
零侍 (……許してくれ、唯我くん。私は、君に失礼であろうとも、迷惑であろうとも、)
零侍 (娘のために、何かをしてあげたいと思ってしまうんだ)
12:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:15:54 :9nEg0gUI
………………翌日 夜 駅前
文乃 「………………」
ワクワクワクワク
文乃 (ふふふ……バス、早く来ないかなぁ)
ハッ
文乃 (いけないいけない。こういう時間こそ勉強にあてるべきだよね)
文乃 (有意義な天体観測のために、今しっかりと勉強しないと……)
ペラッ……ペラッ……
文乃 (ふふ。バスの待ち時間もちゃんと勉強してるなんて、なんか、成幸くんみたい……――)
成幸 「――お、いたいた。ちゃんと勉強してるとは感心だな」
文乃 「へ……?」
成幸 「よっ。こんばんは、古橋」
文乃 「………………」
文乃 「うぺぇ!?」
………………翌日 夜 駅前
文乃 「………………」
ワクワクワクワク
文乃 (ふふふ……バス、早く来ないかなぁ)
ハッ
文乃 (いけないいけない。こういう時間こそ勉強にあてるべきだよね)
文乃 (有意義な天体観測のために、今しっかりと勉強しないと……)
ペラッ……ペラッ……
文乃 (ふふ。バスの待ち時間もちゃんと勉強してるなんて、なんか、成幸くんみたい……――)
成幸 「――お、いたいた。ちゃんと勉強してるとは感心だな」
文乃 「へ……?」
成幸 「よっ。こんばんは、古橋」
文乃 「………………」
文乃 「うぺぇ!?」
13:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:16:40 :9nEg0gUI
文乃 「な……成幸くん!? 何でこんなところにいるの!?」
成幸 「なんでって……。いやいや、お前、お父さんから聞いてないのか?」
成幸 「お父さん、急な仕事で今日行けなくなっちゃったんだろ?」
文乃 「そ、それは知ってるけど……」
成幸 「で、ツアーの代金はふたり分払ってるから、お前ひとりだともったいないから、」
文乃 「うん……?」
成幸 「お父さんの代わりに俺が行くことになった」
文乃 「それは知らないかな!?」
成幸 「えぇ……。いや、だって俺、昨日の夜、お父さんに直接頼まれたんだぞ」
成幸 「18歳とはいえ、娘を深夜にひとりで出歩かせるわけにはいかないから、一緒に行ってやってほしいって」
成幸 (……まぁ、ふたりとも高校生だから色々な条例にひっかかりそうではあるが)
文乃 「えっ、いや、だって、わたし、お父さんからそんなこと何も……」
ピロリン♪
文乃 「? お父さんからメッセージ……?」
文乃 「な……成幸くん!? 何でこんなところにいるの!?」
成幸 「なんでって……。いやいや、お前、お父さんから聞いてないのか?」
成幸 「お父さん、急な仕事で今日行けなくなっちゃったんだろ?」
文乃 「そ、それは知ってるけど……」
成幸 「で、ツアーの代金はふたり分払ってるから、お前ひとりだともったいないから、」
文乃 「うん……?」
成幸 「お父さんの代わりに俺が行くことになった」
文乃 「それは知らないかな!?」
成幸 「えぇ……。いや、だって俺、昨日の夜、お父さんに直接頼まれたんだぞ」
成幸 「18歳とはいえ、娘を深夜にひとりで出歩かせるわけにはいかないから、一緒に行ってやってほしいって」
成幸 (……まぁ、ふたりとも高校生だから色々な条例にひっかかりそうではあるが)
文乃 「えっ、いや、だって、わたし、お父さんからそんなこと何も……」
ピロリン♪
文乃 「? お父さんからメッセージ……?」
14:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:17:31 :9nEg0gUI
『今日は本当にすまない。お詫びと言ってはなんだが、唯我くんに私の代わりを頼んでおいた』
文乃 「!?」 (何でそれを今言うの~~~~!!)
『サプライズのつもりで黙っていたが、喜んでくれただろうか?』
文乃 (あーもう! 相変わらずズレてるんだから、この父親はーーー!!)
『……とはいえ、一応言っておくが、』
『手を繋ぐくらいは許すが、それ以上はまだお前たちには早いから、肝に銘じておくこと』
文乃 (また余計なことを最後に~~~~~!!!)
プンスカプン!!!
成幸 「あー……えっと、ひょっとして……」
成幸 「俺、来ない方が良かったか……?」
文乃 「………………」
文乃 「……け、ないでしょ」 ボソッ
成幸 「へ?」
文乃 「……そんなわけ、ないでしょ。嬉しいよ。成幸くんが一緒に行ってくれるなら」
成幸 「あっ……/// そ、そうか。それなら良かったよ」
『今日は本当にすまない。お詫びと言ってはなんだが、唯我くんに私の代わりを頼んでおいた』
文乃 「!?」 (何でそれを今言うの~~~~!!)
『サプライズのつもりで黙っていたが、喜んでくれただろうか?』
文乃 (あーもう! 相変わらずズレてるんだから、この父親はーーー!!)
『……とはいえ、一応言っておくが、』
『手を繋ぐくらいは許すが、それ以上はまだお前たちには早いから、肝に銘じておくこと』
文乃 (また余計なことを最後に~~~~~!!!)
プンスカプン!!!
成幸 「あー……えっと、ひょっとして……」
成幸 「俺、来ない方が良かったか……?」
文乃 「………………」
文乃 「……け、ないでしょ」 ボソッ
成幸 「へ?」
文乃 「……そんなわけ、ないでしょ。嬉しいよ。成幸くんが一緒に行ってくれるなら」
成幸 「あっ……/// そ、そうか。それなら良かったよ」
15:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:18:07 :9nEg0gUI
文乃 「でも、勉強は大丈夫なの? わたしの趣味に付き合わせるのも悪いし……」
成幸 「お前が人の勉強の心配する立場かよ」
文乃 「うっ……。た、たしかに」
成幸 「まぁ、ちょっとした息抜きにちょうどいいよ。ツアーに行くお金なんかないからな」
成幸 「前にも言っただろ? 星、俺も結構興味出てきたからさ」
文乃 「あっ……」
―――― 『ペガスス ケフェウス カシオペヤ ペルセウス』
―――― 『お祭りの日に色々教えてくれたろ あれからなんかちょっと興味出てきてさ』
文乃 「そ……そっか/// そういえば、そうだったよね……///」
文乃 (うぅ……。あのときの “デート” のこと、思い出しちゃったよ……)
ハッ
文乃 (……っていうか、これって……)
成幸 「いやー、今日は冬の星座と……星団も見られるかもしれないのか!? 楽しみだなぁ……」
文乃 (か……完全に、天体観測デートだよね……///) カァアアアア……
文乃 「でも、勉強は大丈夫なの? わたしの趣味に付き合わせるのも悪いし……」
成幸 「お前が人の勉強の心配する立場かよ」
文乃 「うっ……。た、たしかに」
成幸 「まぁ、ちょっとした息抜きにちょうどいいよ。ツアーに行くお金なんかないからな」
成幸 「前にも言っただろ? 星、俺も結構興味出てきたからさ」
文乃 「あっ……」
―――― 『ペガスス ケフェウス カシオペヤ ペルセウス』
―――― 『お祭りの日に色々教えてくれたろ あれからなんかちょっと興味出てきてさ』
文乃 「そ……そっか/// そういえば、そうだったよね……///」
文乃 (うぅ……。あのときの “デート” のこと、思い出しちゃったよ……)
ハッ
文乃 (……っていうか、これって……)
成幸 「いやー、今日は冬の星座と……星団も見られるかもしれないのか!? 楽しみだなぁ……」
文乃 (か……完全に、天体観測デートだよね……///) カァアアアア……
16:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:19:05 :9nEg0gUI
………………バス車内
文乃 「………………」
成幸 「………………」
カリカリカリ……
文乃 (……って、ま、することは勉強だけだよね)
文乃 (分かってるよ。わたしたちは受験生で、空いた時間は勉強にあてないとだよね)
成幸 「………………」
文乃 (……まったく、澄ました顔しちゃって)
文乃 (分かってるのかな。わたしたち、また一緒に夜を明かしちゃうんだよ?)
文乃 (お祭りの日と同じように、一緒に……)
カァアアアア……
文乃 (……わ、わたしってば、何考えてるんだろ。あのときとは全然違うのに……)
文乃 (わたしもまじめに勉強しないと……)
文乃 (しない、と……) ムニャムニャ……
………………バス車内
文乃 「………………」
成幸 「………………」
カリカリカリ……
文乃 (……って、ま、することは勉強だけだよね)
文乃 (分かってるよ。わたしたちは受験生で、空いた時間は勉強にあてないとだよね)
成幸 「………………」
文乃 (……まったく、澄ました顔しちゃって)
文乃 (分かってるのかな。わたしたち、また一緒に夜を明かしちゃうんだよ?)
文乃 (お祭りの日と同じように、一緒に……)
カァアアアア……
文乃 (……わ、わたしってば、何考えてるんだろ。あのときとは全然違うのに……)
文乃 (わたしもまじめに勉強しないと……)
文乃 (しない、と……) ムニャムニャ……
17:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:19:53 :9nEg0gUI
成幸 「………………」
成幸 (……今さらなことだけど、深夜にふたりきりで出かけるって、)
成幸 (すごい、ことだよなぁ……)
カァアアアア……
成幸 (はっ、い、いかん。古橋のお父さんは、俺を信頼して付き添いを頼んだんだ)
成幸 (俺はその信頼に応えねば……!)
……ポフッ
成幸 「……? ぽふ?」
文乃 「………………」 Zzzz……
成幸 「!?」 (ふ、古橋!? 早速寝たのかこいつ!)
成幸 (し、しかも……俺の肩に、もたれかかって……)
成幸 (シャンプーの香りが……) ハッ (お、俺はなんて不埒なことを考えてるんだ!?)
文乃 「むにゃ……むにゃ……」 Zzzz……
成幸 (……ったく、勉強するって言ってたくせに)
文乃 「えへ……お父さん、天体観測……楽しみ、だね……」 Zzzz……
成幸 「………………」
成幸 (……今さらなことだけど、深夜にふたりきりで出かけるって、)
成幸 (すごい、ことだよなぁ……)
カァアアアア……
成幸 (はっ、い、いかん。古橋のお父さんは、俺を信頼して付き添いを頼んだんだ)
成幸 (俺はその信頼に応えねば……!)
……ポフッ
成幸 「……? ぽふ?」
文乃 「………………」 Zzzz……
成幸 「!?」 (ふ、古橋!? 早速寝たのかこいつ!)
成幸 (し、しかも……俺の肩に、もたれかかって……)
成幸 (シャンプーの香りが……) ハッ (お、俺はなんて不埒なことを考えてるんだ!?)
文乃 「むにゃ……むにゃ……」 Zzzz……
成幸 (……ったく、勉強するって言ってたくせに)
文乃 「えへ……お父さん、天体観測……楽しみ、だね……」 Zzzz……
18:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:20:26 :9nEg0gUI
成幸 「………………」
成幸 (……まぁ、起こすのも野暮ってもんか)
成幸 (バスで勉強して酔ったりして、肝心の天体観測が楽しめなかったら本末転倒だし、)
成幸 (寝かしといてやるか……)
成幸 「………………」
ハッ
成幸 (……って、ことは、だ)
文乃 「………………」 Zzzz……
成幸 (お、俺は……)
成幸 (目的地に着くまで、古橋に寄りかかられたままってことか……)
文乃 「むにゃ……成幸くん……」
成幸 (た、頼むから……耳元で名前を呼ばないでくれーーー!!)
成幸 「………………」
成幸 (……まぁ、起こすのも野暮ってもんか)
成幸 (バスで勉強して酔ったりして、肝心の天体観測が楽しめなかったら本末転倒だし、)
成幸 (寝かしといてやるか……)
成幸 「………………」
ハッ
成幸 (……って、ことは、だ)
文乃 「………………」 Zzzz……
成幸 (お、俺は……)
成幸 (目的地に着くまで、古橋に寄りかかられたままってことか……)
文乃 「むにゃ……成幸くん……」
成幸 (た、頼むから……耳元で名前を呼ばないでくれーーー!!)
19:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:21:17 :9nEg0gUI
………………到着
文乃 「すごーい! 満天の星空だよ、成幸くん! 晴れててよかったー!」
成幸 「あ、ああ、そうだな……」 ゲッソリ
文乃 「……成幸くん? どうしたの?」
成幸 「い、いや、なんでもない……」
成幸 (結局ずっと古橋に寄りかかられたままだった……)
成幸 (もう慣れたつもりだったけど、古橋ってめちゃくちゃ綺麗だから……)
文乃 「?」
成幸 (……さすがに緊張したな)
成幸 (勉強にも全然集中できなかった……)
文乃 「はっ! こうしちゃいられないよ、成幸くん! 出発時間までにできるだけたくさん星を見ないと!」
文乃 「望遠鏡と三脚を持って……っと。ほら、行くよ!!」
成幸 「あっ……ち、ちょっと待ってくれ、古橋ー!」
………………到着
文乃 「すごーい! 満天の星空だよ、成幸くん! 晴れててよかったー!」
成幸 「あ、ああ、そうだな……」 ゲッソリ
文乃 「……成幸くん? どうしたの?」
成幸 「い、いや、なんでもない……」
成幸 (結局ずっと古橋に寄りかかられたままだった……)
成幸 (もう慣れたつもりだったけど、古橋ってめちゃくちゃ綺麗だから……)
文乃 「?」
成幸 (……さすがに緊張したな)
成幸 (勉強にも全然集中できなかった……)
文乃 「はっ! こうしちゃいられないよ、成幸くん! 出発時間までにできるだけたくさん星を見ないと!」
文乃 「望遠鏡と三脚を持って……っと。ほら、行くよ!!」
成幸 「あっ……ち、ちょっと待ってくれ、古橋ー!」
20:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:22:43 :9nEg0gUI
………………
成幸 「はー……」
成幸 (さすが、標高約1000メートル。灯りもないし空気も澄んでるし、星がすごいな……)
成幸 (落ちてくるようだ……とは思わないけど、なんていうか……)
成幸 (しっかりとした模様に見えるくらい、星がくっきりしてる……)
成幸 (星座なんて、無理矢理形にしてるだけじゃねーか、って思ってたけど、)
成幸 (人工の光が近くにないと、ぼんやりと星座に見えてくるような気がするな)
成幸 「……きれいだな」
文乃 「うん。本当にきれいだね」
クスッ
文乃 「寝そべってたら本当に眠っちゃうよ?」
成幸 「ん、悪い悪い。寝そべると視界全部が星空になってきれいでさ」
文乃 「気持ちは分かるけどね」
文乃 「……望遠鏡、セットしてみたから覗いてみない?」
成幸 「ん……何か見えるのか?」
………………
成幸 「はー……」
成幸 (さすが、標高約1000メートル。灯りもないし空気も澄んでるし、星がすごいな……)
成幸 (落ちてくるようだ……とは思わないけど、なんていうか……)
成幸 (しっかりとした模様に見えるくらい、星がくっきりしてる……)
成幸 (星座なんて、無理矢理形にしてるだけじゃねーか、って思ってたけど、)
成幸 (人工の光が近くにないと、ぼんやりと星座に見えてくるような気がするな)
成幸 「……きれいだな」
文乃 「うん。本当にきれいだね」
クスッ
文乃 「寝そべってたら本当に眠っちゃうよ?」
成幸 「ん、悪い悪い。寝そべると視界全部が星空になってきれいでさ」
文乃 「気持ちは分かるけどね」
文乃 「……望遠鏡、セットしてみたから覗いてみない?」
成幸 「ん……何か見えるのか?」
21:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:23:35 :9nEg0gUI
文乃 「それは、まぁ……」 ニコッ 「覗いてみてのお楽しみ、ってことで」
成幸 「ああ。じゃあ、ちょっと拝借して、っと……」
成幸 「……!?」
成幸 「この時間にこの方角で、これって……アンドロメダ座銀河か?」
文乃 「おー、さすが成幸くん! 正解!」
成幸 「す、すごいな! こんな小さな望遠鏡で、こんなくっきりと……」
成幸 「星が密集して銀河を形成してるのが見えるとは思わなかったな……」
文乃 「そうそう。灯りがないと意外と見えちゃうんだよね」
文乃 「ほら、肉眼でも薄ぼんやり見えるでしょ」
成幸 「た、たしかに……。遠出しただけあってすごいな、ここ……」
文乃 「小さい頃からここで星を見るのが憧れだったんだよ~。すごいよね!」
文乃 「成幸くんなら一緒に感動してくれると思ったよ。えへへ」
成幸 (子どもみたいに笑っちまってまぁ……)
文乃 「じゃあ、次はプレアデス星団を探すよ! どっちが先に見つけられるか勝負だね!」
成幸 「おう! 負けないぞ!」
文乃 「それは、まぁ……」 ニコッ 「覗いてみてのお楽しみ、ってことで」
成幸 「ああ。じゃあ、ちょっと拝借して、っと……」
成幸 「……!?」
成幸 「この時間にこの方角で、これって……アンドロメダ座銀河か?」
文乃 「おー、さすが成幸くん! 正解!」
成幸 「す、すごいな! こんな小さな望遠鏡で、こんなくっきりと……」
成幸 「星が密集して銀河を形成してるのが見えるとは思わなかったな……」
文乃 「そうそう。灯りがないと意外と見えちゃうんだよね」
文乃 「ほら、肉眼でも薄ぼんやり見えるでしょ」
成幸 「た、たしかに……。遠出しただけあってすごいな、ここ……」
文乃 「小さい頃からここで星を見るのが憧れだったんだよ~。すごいよね!」
文乃 「成幸くんなら一緒に感動してくれると思ったよ。えへへ」
成幸 (子どもみたいに笑っちまってまぁ……)
文乃 「じゃあ、次はプレアデス星団を探すよ! どっちが先に見つけられるか勝負だね!」
成幸 「おう! 負けないぞ!」
22:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:24:37 :9nEg0gUI
………………
成幸 「はー……」
パタリ
成幸 「結局、どれも古橋の方が先に見つけちゃったな。完敗だ」
成幸 「星座と星の位置関係、結構覚えたつもりだったんだけどな」
文乃 「ふふふ。まだまだだね、成幸くん」
文乃 「………………」
パサッ……
成幸 「……? おいおい、お前が寝転んだら本当に寝ちゃうぞ?」
文乃 「成幸くんが寝転んでるのをみたら、わたしも寝転んでみたくなっちゃってさ」
文乃 「大丈夫。寝ないよ。だって、目の前が……」
文乃 「うわぁ~~~~……成幸くんの言うとおり、寝転ぶとすごいね。全方位星、星、星だよ」
成幸 「……だな。こんなすごい景色じゃ、寝てられないよな」 クスッ
………………
成幸 「はー……」
パタリ
成幸 「結局、どれも古橋の方が先に見つけちゃったな。完敗だ」
成幸 「星座と星の位置関係、結構覚えたつもりだったんだけどな」
文乃 「ふふふ。まだまだだね、成幸くん」
文乃 「………………」
パサッ……
成幸 「……? おいおい、お前が寝転んだら本当に寝ちゃうぞ?」
文乃 「成幸くんが寝転んでるのをみたら、わたしも寝転んでみたくなっちゃってさ」
文乃 「大丈夫。寝ないよ。だって、目の前が……」
文乃 「うわぁ~~~~……成幸くんの言うとおり、寝転ぶとすごいね。全方位星、星、星だよ」
成幸 「……だな。こんなすごい景色じゃ、寝てられないよな」 クスッ
23:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:25:08 :9nEg0gUI
文乃 「………………」
文乃 「……ねぇ、成幸くん」
成幸 「うん?」
文乃 「今日はありがとね。お父さんの代わりに、わたしの趣味に付き合ってくれて」
成幸 「いやいや、礼を言うのはこっちだよ。タダでこんな良い場所まで来られたしさ」
成幸 「古橋と一緒に星を見るのも楽しかったしさ。ほんと、ありがとな」
文乃 「っ……///」
文乃 「そ、それなら、良かったけど……」
文乃 「………………」
ドキドキドキドキ……
―――― 『手を繋ぐくらいは許すが、それ以上はまだお前たちには早いから、肝に銘じておくこと』
文乃 「……ねっ、ねえ、成幸くん」
成幸 「ん?」
文乃 「もう、冬も近いし……ちょっと、寒いね」
文乃 「………………」
文乃 「……ねぇ、成幸くん」
成幸 「うん?」
文乃 「今日はありがとね。お父さんの代わりに、わたしの趣味に付き合ってくれて」
成幸 「いやいや、礼を言うのはこっちだよ。タダでこんな良い場所まで来られたしさ」
成幸 「古橋と一緒に星を見るのも楽しかったしさ。ほんと、ありがとな」
文乃 「っ……///」
文乃 「そ、それなら、良かったけど……」
文乃 「………………」
ドキドキドキドキ……
―――― 『手を繋ぐくらいは許すが、それ以上はまだお前たちには早いから、肝に銘じておくこと』
文乃 「……ねっ、ねえ、成幸くん」
成幸 「ん?」
文乃 「もう、冬も近いし……ちょっと、寒いね」
24:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:25:41 :9nEg0gUI
成幸 「ああ。たしかに冷えるけど……そろそろバスに戻るか?」
文乃 「へ? う、ううん。まだ星を見てたいから、それはいいんだけど……」
文乃 「……いや、その、寒いって言ってもね、ほら、冷えるのって末端からじゃない?」
成幸 「? まぁ、そりゃ中心から冷えはしないだろうけど……」
文乃 「それで、その……ね? えっと……手がね?」
成幸 「手?」
文乃 「うん。手がさ……手袋を、してても、だね? 少し、冷えてきててさ……」
成幸 「ああ。冷え性なんだな。そりゃ大変だ。一応カイロ持ってきてるから、やるよ――」
文乃 「――いやー? カイロはさー、なんていうかー……えっとー?」
文乃 「ずっと持ってたら、低温火傷になっちゃうしね? ね?」
成幸 「いや、そりゃそうだろうけど、ずっと持ってなきゃいいだけじゃ……」
文乃 「……でもずっと何かを握っていたい、みたいな?」
成幸 「みたいなって何だ……?」
文乃 「……いや、あの、だからね?」 カァアアアア…… 「……手を、ね?」
文乃 「繋いで、ほしいな……なんて、ね?」
成幸 「ああ。たしかに冷えるけど……そろそろバスに戻るか?」
文乃 「へ? う、ううん。まだ星を見てたいから、それはいいんだけど……」
文乃 「……いや、その、寒いって言ってもね、ほら、冷えるのって末端からじゃない?」
成幸 「? まぁ、そりゃ中心から冷えはしないだろうけど……」
文乃 「それで、その……ね? えっと……手がね?」
成幸 「手?」
文乃 「うん。手がさ……手袋を、してても、だね? 少し、冷えてきててさ……」
成幸 「ああ。冷え性なんだな。そりゃ大変だ。一応カイロ持ってきてるから、やるよ――」
文乃 「――いやー? カイロはさー、なんていうかー……えっとー?」
文乃 「ずっと持ってたら、低温火傷になっちゃうしね? ね?」
成幸 「いや、そりゃそうだろうけど、ずっと持ってなきゃいいだけじゃ……」
文乃 「……でもずっと何かを握っていたい、みたいな?」
成幸 「みたいなって何だ……?」
文乃 「……いや、あの、だからね?」 カァアアアア…… 「……手を、ね?」
文乃 「繋いで、ほしいな……なんて、ね?」
25:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:26:19 :9nEg0gUI
成幸 「へ……?」
カァアアアア……
成幸 「あっ……/// いや、えっと、それは……」
文乃 「………………」 カァアアアア……
成幸 「………………」 スッ 「……お、俺の手で、いいなら」
文乃 「………………」 コクッ
…………ギュッ……
成幸 「………………」
文乃 「………………」
成幸 (なっ……なんで、手を、繋ぎたいなんて言い出したんだ……?///)
文乃 (わ、わたしってば、何言ってるのかな……///)
文乃 (これじゃまるで、わたしが……) カァアアアア…… (成幸くんのこと……)
文乃 (うぅ……///) プシューーー
成幸 「へ……?」
カァアアアア……
成幸 「あっ……/// いや、えっと、それは……」
文乃 「………………」 カァアアアア……
成幸 「………………」 スッ 「……お、俺の手で、いいなら」
文乃 「………………」 コクッ
…………ギュッ……
成幸 「………………」
文乃 「………………」
成幸 (なっ……なんで、手を、繋ぎたいなんて言い出したんだ……?///)
文乃 (わ、わたしってば、何言ってるのかな……///)
文乃 (これじゃまるで、わたしが……) カァアアアア…… (成幸くんのこと……)
文乃 (うぅ……///) プシューーー
26:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:27:24 :9nEg0gUI
文乃 「………………」
文乃 (……そう、だよね。今さら、否定、できないよね……)
文乃 (わたし、成幸くんのこと……)
成幸 「……?」
文乃 「……ねえ、成幸くん」
成幸 「お、おう」
文乃 「わたし、ちゃんと “起きてる” でしょ?」
成幸 「ん……? ああ、まぁ……起きてるけど……」
文乃 (……そう。わたしは “起きてる” 。もう、眠り姫じゃ、ない)
文乃 (わたしは……)
文乃 「……あのね、成幸くん、わたし……わたしね……」
文乃 「わたしっ、成幸くんのこと、――」
――――グゥゥゥウウウウ……
文乃 「ふぇっ…?」
成幸 「へ……?」
文乃 「………………」
文乃 (……そう、だよね。今さら、否定、できないよね……)
文乃 (わたし、成幸くんのこと……)
成幸 「……?」
文乃 「……ねえ、成幸くん」
成幸 「お、おう」
文乃 「わたし、ちゃんと “起きてる” でしょ?」
成幸 「ん……? ああ、まぁ……起きてるけど……」
文乃 (……そう。わたしは “起きてる” 。もう、眠り姫じゃ、ない)
文乃 (わたしは……)
文乃 「……あのね、成幸くん、わたし……わたしね……」
文乃 「わたしっ、成幸くんのこと、――」
――――グゥゥゥウウウウ……
文乃 「ふぇっ…?」
成幸 「へ……?」
27:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:28:07 :9nEg0gUI
文乃 「………………」
成幸 「………………」
成幸 「ふ、古橋? 今の音って……ひょっとして……――」
文乃 「……い、言わないでよ! 本当にデリカシーがないね、成幸くんは!」
成幸 「いや、だって……」 クスッ 「あんまり大きい腹の虫だから、一瞬クマでも出たのかと……」
文乃 「だっ……だから言わないでって言ってるのにーー!!」
文乃 「……仕方ないでしょ! 深夜はお腹空くし、いつもお夜食食べてるし……」
文乃 「ふんだ。お菓子たくさん持ってきたけど、成幸くんには分けてあげないんだから」
ヒョイッ……パクッ……パクッパクッパクッ……
成幸 「お、おいおい……。いくらなんでも食べ過ぎじゃ……」
文乃 「………………」
成幸 「………………」
成幸 「ふ、古橋? 今の音って……ひょっとして……――」
文乃 「……い、言わないでよ! 本当にデリカシーがないね、成幸くんは!」
成幸 「いや、だって……」 クスッ 「あんまり大きい腹の虫だから、一瞬クマでも出たのかと……」
文乃 「だっ……だから言わないでって言ってるのにーー!!」
文乃 「……仕方ないでしょ! 深夜はお腹空くし、いつもお夜食食べてるし……」
文乃 「ふんだ。お菓子たくさん持ってきたけど、成幸くんには分けてあげないんだから」
ヒョイッ……パクッ……パクッパクッパクッ……
成幸 「お、おいおい……。いくらなんでも食べ過ぎじゃ……」
28:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:28:43 :9nEg0gUI
文乃 (あー……もう!)
文乃 (何であのタイミングでお腹鳴るかなー! もー!!)
文乃 「………………」
文乃 (……でも、わたし……)
文乃 (あそこでお腹が鳴らなかったら……)
―――― 『わたしっ、成幸くんのこと、』
文乃 「はうっ……」
文乃 (わたし……何を言おうとしてたんだろ……)
文乃 (何を言っちゃうところだったんだろ……)
文乃 (あー……もう!)
文乃 (何であのタイミングでお腹鳴るかなー! もー!!)
文乃 「………………」
文乃 (……でも、わたし……)
文乃 (あそこでお腹が鳴らなかったら……)
―――― 『わたしっ、成幸くんのこと、』
文乃 「はうっ……」
文乃 (わたし……何を言おうとしてたんだろ……)
文乃 (何を言っちゃうところだったんだろ……)
29:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:29:17 :9nEg0gUI
………………帰路 バス車内
文乃 「はー……」
文乃 (まぁ、色々あったけど、天体観測自体は楽しかったし有意義だったかな)
文乃 (星団や銀河があんなにはっきりと見られるなんて、ほんと来て良かったよ……)
文乃 (さっ。眠気も吹っ飛んだことだし、帰りのバスこそちゃんと勉強しないとね!)
成幸 「………………」
文乃 (さすが成幸くん。もう静かに勉強を始めてるよ。わたしも見習わないと……――)
――ポスッ
文乃 「はぇ……? ぽす?」
成幸 「………………」 Zzzz……
文乃 「へっ?」 (へぇえええええええええ!?)
文乃 (な、成幸くん!? 静かだと思ったら、勉強してたんじゃなくて寝ちゃってたの!?)
文乃 (まぁ、もう明け方だし、ずっと起きてたんだから眠いよね……)
………………帰路 バス車内
文乃 「はー……」
文乃 (まぁ、色々あったけど、天体観測自体は楽しかったし有意義だったかな)
文乃 (星団や銀河があんなにはっきりと見られるなんて、ほんと来て良かったよ……)
文乃 (さっ。眠気も吹っ飛んだことだし、帰りのバスこそちゃんと勉強しないとね!)
成幸 「………………」
文乃 (さすが成幸くん。もう静かに勉強を始めてるよ。わたしも見習わないと……――)
――ポスッ
文乃 「はぇ……? ぽす?」
成幸 「………………」 Zzzz……
文乃 「へっ?」 (へぇえええええええええ!?)
文乃 (な、成幸くん!? 静かだと思ったら、勉強してたんじゃなくて寝ちゃってたの!?)
文乃 (まぁ、もう明け方だし、ずっと起きてたんだから眠いよね……)
30:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:29:52 :9nEg0gUI
成幸 「むにゃ……」 Zzzz……
文乃 (っ……ね、寝顔可愛い……――)
――――ハッ
文乃 (じゃなくて!! よ、寄りかかられちゃってて、すごく近い……///)
文乃 (で、でも、疲れてるだろうし、寝かしておいてあげたいし……)
文乃 「………………」
文乃 (しっ、仕方ないなぁ。文乃姉ちゃんが、成幸くんのために肩を貸してあげるとしようかな)
ドキドキドキドキ……
文乃 (えへへ……)
成幸 「むにゃ……お……理珠、お前、それ……間違って……」
文乃 「……ん?」
成幸 「うるかも、それ違っ……いや……あしゅみー先輩まで……」
文乃 「……んん??」
成幸 「……あっ、真冬センセ……違うんです。それは……」
文乃 「……んんん???」
成幸 「むにゃ……」 Zzzz……
文乃 (っ……ね、寝顔可愛い……――)
――――ハッ
文乃 (じゃなくて!! よ、寄りかかられちゃってて、すごく近い……///)
文乃 (で、でも、疲れてるだろうし、寝かしておいてあげたいし……)
文乃 「………………」
文乃 (しっ、仕方ないなぁ。文乃姉ちゃんが、成幸くんのために肩を貸してあげるとしようかな)
ドキドキドキドキ……
文乃 (えへへ……)
成幸 「むにゃ……お……理珠、お前、それ……間違って……」
文乃 「……ん?」
成幸 「うるかも、それ違っ……いや……あしゅみー先輩まで……」
文乃 「……んん??」
成幸 「……あっ、真冬センセ……違うんです。それは……」
文乃 「……んんん???」
31:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:30:32 :9nEg0gUI
文乃 「………………」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
文乃 (ほーう。いい度胸だねぇ、成幸くん)
文乃 (わたしの肩の上で寝息を立てておいて、見るのは他の女の夢ってかい……?)
文乃 (しかもなぜか全員名前とか愛称呼び? へー。ふーん。ほーん)
文乃 (ほんと、いい度胸だよ……――)
成幸 「あっ……」 ニコッ 「文乃……姉ちゃん……えへへ……」
文乃 「………………」
オホン
文乃 (……まぁ、最後にわたしの名前を呼んだことだし?)
文乃 (わたしの名前を呼ぶときだけ、笑顔だったし?)
ニヘラ
文乃 (しっ……仕方ないから? 許してあげようかな……///)
おわり
文乃 「………………」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
文乃 (ほーう。いい度胸だねぇ、成幸くん)
文乃 (わたしの肩の上で寝息を立てておいて、見るのは他の女の夢ってかい……?)
文乃 (しかもなぜか全員名前とか愛称呼び? へー。ふーん。ほーん)
文乃 (ほんと、いい度胸だよ……――)
成幸 「あっ……」 ニコッ 「文乃……姉ちゃん……えへへ……」
文乃 「………………」
オホン
文乃 (……まぁ、最後にわたしの名前を呼んだことだし?)
文乃 (わたしの名前を呼ぶときだけ、笑顔だったし?)
ニヘラ
文乃 (しっ……仕方ないから? 許してあげようかな……///)
おわり
32:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:31:02 :9nEg0gUI
………………幕間 「体重」
文乃 「いや、うん。分かってたことだけどね」
ガクッ
文乃 「深夜のお菓子のやけ食いダメ絶対……!!!」
おわり
………………幕間 「体重」
文乃 「いや、うん。分かってたことだけどね」
ガクッ
文乃 「深夜のお菓子のやけ食いダメ絶対……!!!」
おわり
33:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:31:39 :9nEg0gUI
読んでくださった方ありがとうございました。
読んでくださった方ありがとうございました。
34:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:38:55 :ZMrC1Ml6
おつおつ
おつおつ
35:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:41:59 :uh.6Vgpo
おつんこ貧乳
おつんこ貧乳
36:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/04(土) 01:42:33 :VkW2zAH6
乙やっぱり文系なんだよなぁ…
乙やっぱり文系なんだよなぁ…
37:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/04(土) 08:51:20 :gL/1g57w
かわいい
かわいい
38:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/04(土) 09:03:51 :so3aMNgA
乙
新作待ってました!めちゃくちゃ良かった
乙
新作待ってました!めちゃくちゃ良かった
39:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/05(日) 01:12:17 :iRsvuDBQ
おつ
すごく出来良くね?(謎の上から目線)
個人的にこのss大好きだわ
おつ
すごく出来良くね?(謎の上から目線)
個人的にこのss大好きだわ
40:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/05(日) 17:50:58 :vb3lVSgU
この完成度は見覚えがありますね
この完成度は見覚えがありますね
41:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 16:35:04 :nAmEHrAU
ええな
ええな
42:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:23:24 :ZJywfASQ
【ぼく勉】 理珠 「今週末は、町内会のお祭りなんです」
【ぼく勉】 理珠 「今週末は、町内会のお祭りなんです」
43:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:23:57 :ZJywfASQ
文乃 「お祭り? ってことは、ひょっとしてりっちゃん家も出店するの?」
理珠 「ええ。夏は焼きうどんでしたが、今度はかけうどんです」
うるか 「ほへぇ。いいねぇ。あたしも食べに行っちゃおうかなー……」 チラッ
成幸 「……? 何でこっちを見るんだ、うるか」
うるか 「いやぁ、成幸的に、受験生がこの時期にお祭りに行くのはアリかなー、って」
成幸 「俺の様子を伺ってたのか……。まったく」
成幸 「受験生だって息抜きくらい必要だろ。行きたいなら行くといいよ」
うるか 「やたっ! じゃあ、文乃っち、一緒にお祭りまわろ!」
文乃 「へ? う、うん。それはもちろん構わないけど……」
文乃 (わたしじゃなくて、成幸くん誘って行ったらいいのに……)
文乃 (ヘンなところ恥ずかしがり屋なんだから。仕方ないなぁ。一肌脱いであげるとするか)
文乃 「………………」
文乃 (べっ……べつに、わたしが成幸くんと一緒がいいから、とかじゃないからね!)
文乃 「お祭り? ってことは、ひょっとしてりっちゃん家も出店するの?」
理珠 「ええ。夏は焼きうどんでしたが、今度はかけうどんです」
うるか 「ほへぇ。いいねぇ。あたしも食べに行っちゃおうかなー……」 チラッ
成幸 「……? 何でこっちを見るんだ、うるか」
うるか 「いやぁ、成幸的に、受験生がこの時期にお祭りに行くのはアリかなー、って」
成幸 「俺の様子を伺ってたのか……。まったく」
成幸 「受験生だって息抜きくらい必要だろ。行きたいなら行くといいよ」
うるか 「やたっ! じゃあ、文乃っち、一緒にお祭りまわろ!」
文乃 「へ? う、うん。それはもちろん構わないけど……」
文乃 (わたしじゃなくて、成幸くん誘って行ったらいいのに……)
文乃 (ヘンなところ恥ずかしがり屋なんだから。仕方ないなぁ。一肌脱いであげるとするか)
文乃 「………………」
文乃 (べっ……べつに、わたしが成幸くんと一緒がいいから、とかじゃないからね!)
44:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:24:30 :ZJywfASQ
文乃 「成幸くんも一緒にどう?」
うるか 「!?」 パァアアアアアア……!!!
成幸 「へ? ああ、悪い。週末はバイトが入っててさ。たぶん無理かな」
うるか 「………………」 シューーーン
文乃 「あっ……そうなんだ。残念だけど仕方ないね」
文乃 (うるかちゃんの浮き沈み分かりやすいなぁ……。あれでバレてないつもりなんだよね……)
成幸 「悪いな。ふたりで楽しんでこいよ」
文乃 「うん! りっちゃん家のうどん楽しみだなぁ~」
うるか 「お祭りで食べると、味わいもヒトシオだよねぇ~」
成幸 「緒方も出店がんばってな」
理珠 「はいっ! 緒方うどんの美味しさをもっと多くの人に知ってもらうためにがんばります!」
成幸 (がんばりが壮大すぎる……)
文乃 「成幸くんも一緒にどう?」
うるか 「!?」 パァアアアアアア……!!!
成幸 「へ? ああ、悪い。週末はバイトが入っててさ。たぶん無理かな」
うるか 「………………」 シューーーン
文乃 「あっ……そうなんだ。残念だけど仕方ないね」
文乃 (うるかちゃんの浮き沈み分かりやすいなぁ……。あれでバレてないつもりなんだよね……)
成幸 「悪いな。ふたりで楽しんでこいよ」
文乃 「うん! りっちゃん家のうどん楽しみだなぁ~」
うるか 「お祭りで食べると、味わいもヒトシオだよねぇ~」
成幸 「緒方も出店がんばってな」
理珠 「はいっ! 緒方うどんの美味しさをもっと多くの人に知ってもらうためにがんばります!」
成幸 (がんばりが壮大すぎる……)
45:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:25:07 :ZJywfASQ
………………金曜日 緒方家
理珠 「鍋良し、おたま良し、カゴ良し、あとは、と……」 ゴソゴソゴソ……
理珠 (ふむ、完ぺきですね。小物類は全部寸胴鍋に入れておけばいいでしょうか)
理珠 (でも、寸胴鍋に荷物を入れてしまうと、重くて運びにくいですね……)
ガサゴソガサゴソ……
理珠 「他の荷物は別の段ボールに入れて、っと……」
理珠 (運ぶ回数は増えますが、これなら車まで軽く運べそうですね)
ガラッ
親父さん 「リズたま~、準備ご苦労さま。ありがとうね」
理珠 「いえ。お父さんは店で忙しいでしょうから、準備くらいはさせてください」
理珠 「二回確認しましたが、荷物は完ぺきです」
親父さん 「さすがリズたま! ありがとう!」
親父さん 「……ママは用事があって実家に帰省中だしし、リズたまに頼ってしまってごめんな」
親父さん 「明日も出店があるし、受験生なのに受験勉強もなかなかさせてあげられないし……」
………………金曜日 緒方家
理珠 「鍋良し、おたま良し、カゴ良し、あとは、と……」 ゴソゴソゴソ……
理珠 (ふむ、完ぺきですね。小物類は全部寸胴鍋に入れておけばいいでしょうか)
理珠 (でも、寸胴鍋に荷物を入れてしまうと、重くて運びにくいですね……)
ガサゴソガサゴソ……
理珠 「他の荷物は別の段ボールに入れて、っと……」
理珠 (運ぶ回数は増えますが、これなら車まで軽く運べそうですね)
ガラッ
親父さん 「リズたま~、準備ご苦労さま。ありがとうね」
理珠 「いえ。お父さんは店で忙しいでしょうから、準備くらいはさせてください」
理珠 「二回確認しましたが、荷物は完ぺきです」
親父さん 「さすがリズたま! ありがとう!」
親父さん 「……ママは用事があって実家に帰省中だしし、リズたまに頼ってしまってごめんな」
親父さん 「明日も出店があるし、受験生なのに受験勉強もなかなかさせてあげられないし……」
46:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:25:50 :ZJywfASQ
理珠 「? 私はこの家の娘ですから、お手伝いをするくらい当然だと思いますが」
理珠 「それに、普段成幸さんに教えてもらってしっかりと勉強していますから、」 フンス
親父さん 「………………」 ピクッ
理珠 「家のお手伝いを少しするくらいでどうにかなるようなことはありません!」
親父さん 「リズたま……」 (……センセイの名前が出てくるのは気になるが……)
親父さん (健気なリズたまがかわいいからどうでもいいか……) ホゥ……
理珠 (……とはいえ、明日は一日勉強ができないのは事実ですから、)
理珠 (今日は夜まで勉強しておかないとですね)
理珠 「では、お父さん。私はそろそろ部屋に戻ります」
親父さん 「ん、ああ。分かったよ。勉強がんばってね、リズたま」
親父さん 「じゃあ、俺は荷物を車に積んでおこうかな……」 グッ
理珠 「あっ、その寸胴鍋、中身が……――」
親父さん 「――だいじょぶだいじょぶ。重いものを運ぶのには慣れてんだ」
親父さん 「よいしょっ、と……」 グイッ 「ん……!?」
グキッ……!!!
理珠 「? 私はこの家の娘ですから、お手伝いをするくらい当然だと思いますが」
理珠 「それに、普段成幸さんに教えてもらってしっかりと勉強していますから、」 フンス
親父さん 「………………」 ピクッ
理珠 「家のお手伝いを少しするくらいでどうにかなるようなことはありません!」
親父さん 「リズたま……」 (……センセイの名前が出てくるのは気になるが……)
親父さん (健気なリズたまがかわいいからどうでもいいか……) ホゥ……
理珠 (……とはいえ、明日は一日勉強ができないのは事実ですから、)
理珠 (今日は夜まで勉強しておかないとですね)
理珠 「では、お父さん。私はそろそろ部屋に戻ります」
親父さん 「ん、ああ。分かったよ。勉強がんばってね、リズたま」
親父さん 「じゃあ、俺は荷物を車に積んでおこうかな……」 グッ
理珠 「あっ、その寸胴鍋、中身が……――」
親父さん 「――だいじょぶだいじょぶ。重いものを運ぶのには慣れてんだ」
親父さん 「よいしょっ、と……」 グイッ 「ん……!?」
グキッ……!!!
47:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:26:21 :ZJywfASQ
親父さん 「」
理珠 「お、お父さん……?」
理珠 「寸胴鍋、中身を別の段ボールに移したから軽いですよ、って言おうとしたんですが……」
理珠 「大丈夫、です、か……?」
親父さん 「う……うん。大丈夫だよ、リズたま。でもね、ちょっとね……」
ガクガクガクガク
親父さん 「すごく重いものを持ち上げるつもりで力を入れたら、予想以上に軽くてね……」
親父さん 「多分、なんだけど……」
ニコッ
親父さん 「腰、やっちゃった、かも……」
ガクッ……
理珠 「お、お父さん!? お父さん、大丈夫ですか!?」
親父さん 「あっ、だ、だめだよリズたま。いま揺すると、いたっ……ああああ……」
理珠 「お父さーーーん!!」
親父さん 「」
理珠 「お、お父さん……?」
理珠 「寸胴鍋、中身を別の段ボールに移したから軽いですよ、って言おうとしたんですが……」
理珠 「大丈夫、です、か……?」
親父さん 「う……うん。大丈夫だよ、リズたま。でもね、ちょっとね……」
ガクガクガクガク
親父さん 「すごく重いものを持ち上げるつもりで力を入れたら、予想以上に軽くてね……」
親父さん 「多分、なんだけど……」
ニコッ
親父さん 「腰、やっちゃった、かも……」
ガクッ……
理珠 「お、お父さん!? お父さん、大丈夫ですか!?」
親父さん 「あっ、だ、だめだよリズたま。いま揺すると、いたっ……ああああ……」
理珠 「お父さーーーん!!」
48:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:26:52 :ZJywfASQ
………………小美浪診療所
宗二朗 「……うん。間違いない。ぎっくり腰だよ」
親父さん 「うぅ……」
理珠 「ぎっくり腰……」
ホッ
理珠 「急に倒れたので、大病かと慌てましたが、ぎっくり腰ですか。良かった……」
宗二朗 「うーむ。そのぎっくり腰に対しての認識は改めた方がいいかもしれんな」
理珠 「?」
宗二朗 「たとえば、ぎっくり腰の患者に、こうしてでこぴんをしてみると、」
ピーン
親父さん 「ぐおお!?」 ビキッ 「うおおおおおおお!?」
宗二朗 「まずでこぴんの衝撃で腰が痛む。その生体反応で動いてしまってまた腰が痛む」
宗二朗 「振り子の振動と一緒だね。その痛み振幅は少しずつ小さくなるがなかなかなくならない」
理珠 「な、なるほど……。恐ろしいものなのですね、ぎっくり腰とは……」
親父さん 「せ、センセイよぉ……。俺の身体でぎっくり腰の解説をすんのはやめてくれよ……」
………………小美浪診療所
宗二朗 「……うん。間違いない。ぎっくり腰だよ」
親父さん 「うぅ……」
理珠 「ぎっくり腰……」
ホッ
理珠 「急に倒れたので、大病かと慌てましたが、ぎっくり腰ですか。良かった……」
宗二朗 「うーむ。そのぎっくり腰に対しての認識は改めた方がいいかもしれんな」
理珠 「?」
宗二朗 「たとえば、ぎっくり腰の患者に、こうしてでこぴんをしてみると、」
ピーン
親父さん 「ぐおお!?」 ビキッ 「うおおおおおおお!?」
宗二朗 「まずでこぴんの衝撃で腰が痛む。その生体反応で動いてしまってまた腰が痛む」
宗二朗 「振り子の振動と一緒だね。その痛み振幅は少しずつ小さくなるがなかなかなくならない」
理珠 「な、なるほど……。恐ろしいものなのですね、ぎっくり腰とは……」
親父さん 「せ、センセイよぉ……。俺の身体でぎっくり腰の解説をすんのはやめてくれよ……」
49:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:28:20 :ZJywfASQ
親父さん 「こんなの大したことねぇよ。明日まで寝りゃすぐ痛みもひくだろ……」
宗二朗 「だからそんな簡単なものじゃないと言っているんだがな」
宗二朗 「なんにせよ、しばらくまともに動けないだろう。二、三日の安静が必要だよ」
親父さん 「……安静ってのは、仕事をしても大丈夫なんだよな?」
宗二朗 「バカを言うんじゃない。仕事なんかさせられるわけないだろう」
親父さん 「!? いやいや、そりゃ困るよセンセイ! 明日は町内会のお祭りに出店しなきゃなんだ!」
宗二朗 「そう言われてもな」
ピーン
親父さん 「ぬおおおお!?」
宗二朗 「少し触るだけでそれだけ痛がっていたら、仕事なんてできるものではないと思うがね」
親父さん 「ぐおおお……」
宗二朗 「出店の方は諦めた方がいい。それから、お店の方も一週間ほどは休業した方がいいだろうな」
親父さん 「うぐ……でもな、そうそう簡単に仕事を休むわけにも……」
宗二朗 「腰は消耗品だ。軽く見てると一生仕事ができなくなるぞ?」
親父さん 「むぐっ……」
親父さん 「こんなの大したことねぇよ。明日まで寝りゃすぐ痛みもひくだろ……」
宗二朗 「だからそんな簡単なものじゃないと言っているんだがな」
宗二朗 「なんにせよ、しばらくまともに動けないだろう。二、三日の安静が必要だよ」
親父さん 「……安静ってのは、仕事をしても大丈夫なんだよな?」
宗二朗 「バカを言うんじゃない。仕事なんかさせられるわけないだろう」
親父さん 「!? いやいや、そりゃ困るよセンセイ! 明日は町内会のお祭りに出店しなきゃなんだ!」
宗二朗 「そう言われてもな」
ピーン
親父さん 「ぬおおおお!?」
宗二朗 「少し触るだけでそれだけ痛がっていたら、仕事なんてできるものではないと思うがね」
親父さん 「ぐおおお……」
宗二朗 「出店の方は諦めた方がいい。それから、お店の方も一週間ほどは休業した方がいいだろうな」
親父さん 「うぐ……でもな、そうそう簡単に仕事を休むわけにも……」
宗二朗 「腰は消耗品だ。軽く見てると一生仕事ができなくなるぞ?」
親父さん 「むぐっ……」
50:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:28:59 :ZJywfASQ
親父さん 「……分かったよ。センセイの言うとおりにするよ」
宗二朗 「うむ。よろしい」
宗二朗 「……と、言うわけで緒方さん。お父さんは二、三日うちで預かるよ」
宗二朗 「話を聞けばお母様も家にいらっしゃらないようだし、その方がいいだろう」
理珠 「すみません。ありがとうございます。父をよろしくお願いします」
親父さん 「リズたま!? リズたまは家にひとりで大丈夫なのかい!?」
理珠 「? 何の問題もありませんが?」
理珠 (……そう。家にひとりなのは問題ない。問題は……)
―――― 『うん! りっちゃん家のうどん楽しみだなぁ~』
―――― 『お祭りで食べると、味わいもヒトシオだよねぇ~』
理珠 「……楽しみにしてくれている人が、いますからね」
親父さん 「……? リズたま?」
理珠 「安心してください、お父さん! お店は無理でも、明日のお祭りくらいなら……」
理珠 「私ひとりでどうにか切り盛りしてみせますから!!」
親父さん 「……分かったよ。センセイの言うとおりにするよ」
宗二朗 「うむ。よろしい」
宗二朗 「……と、言うわけで緒方さん。お父さんは二、三日うちで預かるよ」
宗二朗 「話を聞けばお母様も家にいらっしゃらないようだし、その方がいいだろう」
理珠 「すみません。ありがとうございます。父をよろしくお願いします」
親父さん 「リズたま!? リズたまは家にひとりで大丈夫なのかい!?」
理珠 「? 何の問題もありませんが?」
理珠 (……そう。家にひとりなのは問題ない。問題は……)
―――― 『うん! りっちゃん家のうどん楽しみだなぁ~』
―――― 『お祭りで食べると、味わいもヒトシオだよねぇ~』
理珠 「……楽しみにしてくれている人が、いますからね」
親父さん 「……? リズたま?」
理珠 「安心してください、お父さん! お店は無理でも、明日のお祭りくらいなら……」
理珠 「私ひとりでどうにか切り盛りしてみせますから!!」
51:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:29:36 :ZJywfASQ
親父さん 「へ……? い、いや、リズたま……?」
理珠 「……と、なればボーッとしてはいられませんね。明日の仕込みもしておかないと」
理珠 「では、先輩のお父さん! 父をよろしくお願いします!」 ペコリ
宗二朗 「あ、ああ……」
親父さん 「リズたま? ち、ちょっと待って……――」
理珠 「――お父さんはちゃんと安静にしていてくださいね!」
タタタタタ……
親父さん 「リズたまーー!?」
ズキッ
親父さん 「あいたたたた……っ」
宗二朗 「……ふむ。娘からときどき話を聞くが、理珠さんは猪突猛進なところがあるな」
親父さん 「うるせぇやい。それもリズたまのいいところのひとつなんだよ」
宗二朗 「それはそうだろうな。父親の店のために、がんばろうと走り出すくらいなのだから」
親父さん 「……いや、まぁそりゃ嬉しいがな……。出店っていったって、リズたまひとりじゃさすがに……」
親父さん 「………………」
親父さん 「へ……? い、いや、リズたま……?」
理珠 「……と、なればボーッとしてはいられませんね。明日の仕込みもしておかないと」
理珠 「では、先輩のお父さん! 父をよろしくお願いします!」 ペコリ
宗二朗 「あ、ああ……」
親父さん 「リズたま? ち、ちょっと待って……――」
理珠 「――お父さんはちゃんと安静にしていてくださいね!」
タタタタタ……
親父さん 「リズたまーー!?」
ズキッ
親父さん 「あいたたたた……っ」
宗二朗 「……ふむ。娘からときどき話を聞くが、理珠さんは猪突猛進なところがあるな」
親父さん 「うるせぇやい。それもリズたまのいいところのひとつなんだよ」
宗二朗 「それはそうだろうな。父親の店のために、がんばろうと走り出すくらいなのだから」
親父さん 「……いや、まぁそりゃ嬉しいがな……。出店っていったって、リズたまひとりじゃさすがに……」
親父さん 「………………」
52:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:30:09 :ZJywfASQ
宗二朗 「……心配か?」
親父さん 「娘が心配じゃねえ父親なんかいるもんかよ」
宗二朗 「……ふむ。まったくその通りだな」
親父さん 「……なぁ、センセイ。少し頼まれてほしいんだが」
宗二朗 「? なんだ?」
親父さん 「電話を貸しちゃくれねぇか?」
宗二朗 「……わかった。子機を取ってくるから、ちょっと待っててくれ」
親父さん 「………………」
親父さん (……リズたまはナリは小せぇが、意志は強くて一度言い出したら聞かないタチだ)
親父さん (やると言ったらやるんだろう。明日の出店、自分ひとりで……)
親父さん (縁日の出店とはいえ、ひとりでやりきるのは無理だ……)
親父さん (情けねぇ話だが、小美浪センセイの言うとおり、俺にできることはなさそうだし……)
親父さん (ママは一日で帰ってこれる距離じゃねぇ)
親父さん (ああ、ちくしょう。情けねぇ。でも、背に腹は代えられねぇ……)
親父さん (あのヤロウに頼るしかねぇか……)
宗二朗 「……心配か?」
親父さん 「娘が心配じゃねえ父親なんかいるもんかよ」
宗二朗 「……ふむ。まったくその通りだな」
親父さん 「……なぁ、センセイ。少し頼まれてほしいんだが」
宗二朗 「? なんだ?」
親父さん 「電話を貸しちゃくれねぇか?」
宗二朗 「……わかった。子機を取ってくるから、ちょっと待っててくれ」
親父さん 「………………」
親父さん (……リズたまはナリは小せぇが、意志は強くて一度言い出したら聞かないタチだ)
親父さん (やると言ったらやるんだろう。明日の出店、自分ひとりで……)
親父さん (縁日の出店とはいえ、ひとりでやりきるのは無理だ……)
親父さん (情けねぇ話だが、小美浪センセイの言うとおり、俺にできることはなさそうだし……)
親父さん (ママは一日で帰ってこれる距離じゃねぇ)
親父さん (ああ、ちくしょう。情けねぇ。でも、背に腹は代えられねぇ……)
親父さん (あのヤロウに頼るしかねぇか……)
53:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:30:40 :ZJywfASQ
………………緒方うどん
理珠 「………………」
理珠 「……ふん!!」
グググググ……ッ!!!
理珠 「……うぅ」 ペタン
理珠 (ダメです。荷物をリュックに詰め直して見ましたが、重すぎます……)
理珠 (お父さんが入院ということは、車も出せないということですから、)
理珠 (全部の荷物を会場まで徒歩で運ばなければならないというのに、これでは……)
理珠 (食材から小物、寸胴鍋まで運ぶのは、さすがに難しいですよね)
理珠 (どうしたら……)
理珠 「………………」
理珠 (……冷静に考えてみれば、よしんば荷物を運び込めたとしても、)
理珠 (出店とは言え、ひとりでお店を切り盛りするコトなんて私にはできっこないですよね……)
………………緒方うどん
理珠 「………………」
理珠 「……ふん!!」
グググググ……ッ!!!
理珠 「……うぅ」 ペタン
理珠 (ダメです。荷物をリュックに詰め直して見ましたが、重すぎます……)
理珠 (お父さんが入院ということは、車も出せないということですから、)
理珠 (全部の荷物を会場まで徒歩で運ばなければならないというのに、これでは……)
理珠 (食材から小物、寸胴鍋まで運ぶのは、さすがに難しいですよね)
理珠 (どうしたら……)
理珠 「………………」
理珠 (……冷静に考えてみれば、よしんば荷物を運び込めたとしても、)
理珠 (出店とは言え、ひとりでお店を切り盛りするコトなんて私にはできっこないですよね……)
54:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:31:23 :ZJywfASQ
理珠 (……本当は分かっている。私は、意固地になっているだけです)
理珠 (できっこないことに固執して、なんとかしようとあがいているだけ……)
理珠 (……いつもそうです。私は、こうやって、できもしないことを……――)
成幸 「――お邪魔しまーす! 緒方、いるかー?」
理珠 「……へ?」
成幸 「お、いたいた。こんばんはだな、緒方」
理珠 「………………」
理珠 「ど、どうしてうちに成幸さんが!?」
成幸 「いやぁ、まぁ、色々あったというか、なんというか……」
成幸 「とりあえず説明は後だ。準備は終わってるんだな。じゃあ、早速荷物運び込むぞ」
理珠 「へ? へ? 運び込むって、どこに……」
真冬 「疑問。閉店中とはいえ、お店の前に車を止め続けていいものかしら?」
理珠 「……?」 ハッ 「きっ……桐須先生!? なぜ!?」
理珠 (……本当は分かっている。私は、意固地になっているだけです)
理珠 (できっこないことに固執して、なんとかしようとあがいているだけ……)
理珠 (……いつもそうです。私は、こうやって、できもしないことを……――)
成幸 「――お邪魔しまーす! 緒方、いるかー?」
理珠 「……へ?」
成幸 「お、いたいた。こんばんはだな、緒方」
理珠 「………………」
理珠 「ど、どうしてうちに成幸さんが!?」
成幸 「いやぁ、まぁ、色々あったというか、なんというか……」
成幸 「とりあえず説明は後だ。準備は終わってるんだな。じゃあ、早速荷物運び込むぞ」
理珠 「へ? へ? 運び込むって、どこに……」
真冬 「疑問。閉店中とはいえ、お店の前に車を止め続けていいものかしら?」
理珠 「……?」 ハッ 「きっ……桐須先生!? なぜ!?」
55:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:31:55 :ZJywfASQ
うるか 「やっほー! あたしたちもいるよ、リズりーん」
文乃 「やぁやぁ、困ってるって聞いたから来ちゃったよ」
あすみ 「よっ。親父さん大変だったな。手伝いに来たぜー」
理珠 「うるかさんに文乃先輩まで!? い、一体どうして……」
成幸 「まぁまぁ、細かいことは後だ。とりあえず荷物運んじゃうぞ」
うるか 「よしきた! うるかちゃんの力持ちなところ見せちゃうぞー!」
文乃 「じゃ、わたしはこの寸胴鍋運んじゃうねー」
理珠 「は、はい! お願いします、文乃」
理珠 (……? しかし、運び込むとは一体……。それに、さっき桐須先生は……)
―――― 『疑問。閉店中とはいえ、お店の前に車を止め続けていいものかしら?』
理珠 (車……?)
バーーーーン!!!
理珠 「……!? お店の前に本当に車が!?」
うるか 「やっほー! あたしたちもいるよ、リズりーん」
文乃 「やぁやぁ、困ってるって聞いたから来ちゃったよ」
あすみ 「よっ。親父さん大変だったな。手伝いに来たぜー」
理珠 「うるかさんに文乃先輩まで!? い、一体どうして……」
成幸 「まぁまぁ、細かいことは後だ。とりあえず荷物運んじゃうぞ」
うるか 「よしきた! うるかちゃんの力持ちなところ見せちゃうぞー!」
文乃 「じゃ、わたしはこの寸胴鍋運んじゃうねー」
理珠 「は、はい! お願いします、文乃」
理珠 (……? しかし、運び込むとは一体……。それに、さっき桐須先生は……)
―――― 『疑問。閉店中とはいえ、お店の前に車を止め続けていいものかしら?』
理珠 (車……?)
バーーーーン!!!
理珠 「……!? お店の前に本当に車が!?」
56:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:32:55 :ZJywfASQ
真冬 「ええ、私の車よ。小さく見えるでしょうけど、物はたくさん詰めるから安心してちょうだい」
理珠 「先生の車!? 先生、自動車をお持ちだったんですね。意外です……」
理珠 「……いや、というか、」
真冬 「? どうかしたかしら?」
理珠 「えっと、その……先生が、車を出してくださるということ、ですか……?」
真冬 「ええ。それが何か?」
理珠 「な、何かって……なぜ……?」
真冬 「あなたが困っているって聞いたからよ」
真冬 「それとも何かしら」 ジトーーッ 「私の運転が不安?」
真冬 「何なら今からあなたを乗せて走ってみせようかしら?」 フンスフンス
理珠 「ち、違います! 滅相もないです!」
理珠 「そうではなくて、その……先生もお忙しいでしょうし、あの……えっと……」
理珠 「………………」
理珠 「……すみません。ありがとうございます」 ペコリ
真冬 「ええ、私の車よ。小さく見えるでしょうけど、物はたくさん詰めるから安心してちょうだい」
理珠 「先生の車!? 先生、自動車をお持ちだったんですね。意外です……」
理珠 「……いや、というか、」
真冬 「? どうかしたかしら?」
理珠 「えっと、その……先生が、車を出してくださるということ、ですか……?」
真冬 「ええ。それが何か?」
理珠 「な、何かって……なぜ……?」
真冬 「あなたが困っているって聞いたからよ」
真冬 「それとも何かしら」 ジトーーッ 「私の運転が不安?」
真冬 「何なら今からあなたを乗せて走ってみせようかしら?」 フンスフンス
理珠 「ち、違います! 滅相もないです!」
理珠 「そうではなくて、その……先生もお忙しいでしょうし、あの……えっと……」
理珠 「………………」
理珠 「……すみません。ありがとうございます」 ペコリ
57:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:33:39 :ZJywfASQ
真冬 「……車を出すだけだもの。お礼を言われるようなことではないわ」
真冬 「……まぁ、本当であれば、利害関係者である生徒と私的な関係を持つのは厳禁だけれど」
真冬 「仕方ないわ。あれだけ頼み込まれてしまっては、ね」
理珠 「……?」
真冬 「ほら、緒方さんもどんどん運び入れなさい。忘れ物がないようにね」
理珠 「あ……は、はい!」
理珠 「………………」
―――― 『やぁやぁ、困ってるって聞いたから来ちゃったよ』
―――― 『あなたが困っているって聞いたからよ』
―――― 『仕方ないわ。あれだけ頼み込まれてしまっては、ね』
理珠 (……私の窮状を、誰かが皆さんに伝えた?)
理珠 (一体、誰が……いえ、) フルフル (そんなの考えるまでも、ないですよね)
成幸 「うおお……お、重い……」 フラフラ
理珠 「………………」 カァアアアア……
真冬 「……車を出すだけだもの。お礼を言われるようなことではないわ」
真冬 「……まぁ、本当であれば、利害関係者である生徒と私的な関係を持つのは厳禁だけれど」
真冬 「仕方ないわ。あれだけ頼み込まれてしまっては、ね」
理珠 「……?」
真冬 「ほら、緒方さんもどんどん運び入れなさい。忘れ物がないようにね」
理珠 「あ……は、はい!」
理珠 「………………」
―――― 『やぁやぁ、困ってるって聞いたから来ちゃったよ』
―――― 『あなたが困っているって聞いたからよ』
―――― 『仕方ないわ。あれだけ頼み込まれてしまっては、ね』
理珠 (……私の窮状を、誰かが皆さんに伝えた?)
理珠 (一体、誰が……いえ、) フルフル (そんなの考えるまでも、ないですよね)
成幸 「うおお……お、重い……」 フラフラ
理珠 「………………」 カァアアアア……
58:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:34:15 :ZJywfASQ
………………
真冬 「では、たしかに荷物を預かったわ。明日の朝、会場に直接運び入れるわね」
成幸 「先生、分かってますよね? 物積んでますからね? 割れ物もありますからね?」
成幸 「後生だから、安全運転でお願いしますね」
真冬 「失礼。君は私を一体なんだと思っているの?」
成幸 「………………」 ボソッ 「峠の走り屋……」
真冬 「……何か言ったかしら?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
成幸 「ひっ……。な、なんでもないです!」
真冬 「まったく……」 オホン 「では、また明日。緒方さん」
理珠 「はい! よろしくお願いします! 桐須先生!」
あすみ 「じゃ、アタシもそろそろお暇するか。後輩。今日の分と明日の分、貸しだからな。ちゃんと返せよー」
理珠 「……?」
成幸 「分かってますよ。ありがとうございます、先輩」
あすみ 「にひひ、ま、いいってことよ。緒方も、明日がんばれよ」
理珠 「先輩もありがとうございました。助かりました」
………………
真冬 「では、たしかに荷物を預かったわ。明日の朝、会場に直接運び入れるわね」
成幸 「先生、分かってますよね? 物積んでますからね? 割れ物もありますからね?」
成幸 「後生だから、安全運転でお願いしますね」
真冬 「失礼。君は私を一体なんだと思っているの?」
成幸 「………………」 ボソッ 「峠の走り屋……」
真冬 「……何か言ったかしら?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
成幸 「ひっ……。な、なんでもないです!」
真冬 「まったく……」 オホン 「では、また明日。緒方さん」
理珠 「はい! よろしくお願いします! 桐須先生!」
あすみ 「じゃ、アタシもそろそろお暇するか。後輩。今日の分と明日の分、貸しだからな。ちゃんと返せよー」
理珠 「……?」
成幸 「分かってますよ。ありがとうございます、先輩」
あすみ 「にひひ、ま、いいってことよ。緒方も、明日がんばれよ」
理珠 「先輩もありがとうございました。助かりました」
59:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:35:11 :ZJywfASQ
うるか 「じゃ、リズりん。明日も出店手伝いに行くかんね!」
文乃 「わたしも行くよ。明日もがんばろうね!」
理珠 「すみません。助かります。バイト代は後ほどちゃんとお支払いしますので……」
うるか 「そんなん気にしなくていいってー! あたしたち友達じゃん!」
理珠 「うるかさん……」
文乃 「じゃ、また明日ねー!」
うるか 「ばいばい、リズりん。成幸もね」
成幸 「おう。ふたりとも、明日もよろしくな!」
理珠 「あ……よろしくお願いします!」
理珠 「………………」
成幸 「………………」
成幸 「……じゃ、俺も帰るな。また明日……――」
――――――ムンズ……
理珠 「……帰るなら、せめて、」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「説明してからにしてくれませんか?」
うるか 「じゃ、リズりん。明日も出店手伝いに行くかんね!」
文乃 「わたしも行くよ。明日もがんばろうね!」
理珠 「すみません。助かります。バイト代は後ほどちゃんとお支払いしますので……」
うるか 「そんなん気にしなくていいってー! あたしたち友達じゃん!」
理珠 「うるかさん……」
文乃 「じゃ、また明日ねー!」
うるか 「ばいばい、リズりん。成幸もね」
成幸 「おう。ふたりとも、明日もよろしくな!」
理珠 「あ……よろしくお願いします!」
理珠 「………………」
成幸 「………………」
成幸 「……じゃ、俺も帰るな。また明日……――」
――――――ムンズ……
理珠 「……帰るなら、せめて、」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「説明してからにしてくれませんか?」
60:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:35:41 :ZJywfASQ
………………少し前 唯我家
成幸 (受験ももう大詰めだ。反復練習を繰り返していかないとな……)
花枝 「成幸ー、電話よー」 ヒョコッ 「緒方さん? からよ」
成幸 「ああ、ありがと」
成幸 (緒方から電話……? あいつだったらメッセージで済ませそうなもんだけど……)
成幸 「もしもし?」
親父さん 『おう、センセイか。夜分にすまねぇな』
成幸 「へ……? 親父さん!?」
親父さん 『何度も言うが、オメェに親父さんと呼ばれる筋合いはね……いててて……』
成幸 「? どうかしました? 大丈夫ですか?」
親父さん 『おう。実はちょっと腰をやっちまってな……ぎっくり腰ってやつだ』
親父さん 『……でよぅ、センセイ。頼みてぇことがあるんだ』
親父さん 『恥ずかしい話なんだが、頼れる奴がオメェしかいねぇ』
親父さん 『だから、恥を承知で、頼む! リズたまを助けてやってくれねぇか!』
………………少し前 唯我家
成幸 (受験ももう大詰めだ。反復練習を繰り返していかないとな……)
花枝 「成幸ー、電話よー」 ヒョコッ 「緒方さん? からよ」
成幸 「ああ、ありがと」
成幸 (緒方から電話……? あいつだったらメッセージで済ませそうなもんだけど……)
成幸 「もしもし?」
親父さん 『おう、センセイか。夜分にすまねぇな』
成幸 「へ……? 親父さん!?」
親父さん 『何度も言うが、オメェに親父さんと呼ばれる筋合いはね……いててて……』
成幸 「? どうかしました? 大丈夫ですか?」
親父さん 『おう。実はちょっと腰をやっちまってな……ぎっくり腰ってやつだ』
親父さん 『……でよぅ、センセイ。頼みてぇことがあるんだ』
親父さん 『恥ずかしい話なんだが、頼れる奴がオメェしかいねぇ』
親父さん 『だから、恥を承知で、頼む! リズたまを助けてやってくれねぇか!』
61:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:36:16 :ZJywfASQ
………………
成幸 「……って、親父さんに電話で頼まれちゃってさ」
理珠 「お父さんがそんなことを……」
理珠 「すみません。我が家の事情に巻き込んで、成幸さんにご迷惑を……」
成幸 「まぁ、あの親父さんにあんなに必死で頼み込まれたら断れないよ」
成幸 「……で、物を運ぶ必要があるみたいだから、俺ひとりじゃ不安で、古橋たちを呼んで、」
成幸 「タクシーを借りても良かったんだけど、桐須先生に頼んでみたら車出してくれるって言うしさ」
成幸 「だから、こうやってみんなでここに来たんだよ」
理珠 「成幸さんが皆さんに頼み込んでくれたんですね。助かりました」
理珠 「本当に……ひとりでどうしたらいいか分からなくなっていたので……」
成幸 「みんな快く引き受けてくれたよ。だからお前が気にする必要はないと思うぞ」
成幸 「俺も、明日は出店手伝うからさ。みんなで出店がんばろうな」
理珠 「へ……? で、でも、成幸さん、明日はバイトがあるのでは……?」
成幸 「……あー、まぁ、そっちもなんとかなるから大丈夫だよ」
………………
成幸 「……って、親父さんに電話で頼まれちゃってさ」
理珠 「お父さんがそんなことを……」
理珠 「すみません。我が家の事情に巻き込んで、成幸さんにご迷惑を……」
成幸 「まぁ、あの親父さんにあんなに必死で頼み込まれたら断れないよ」
成幸 「……で、物を運ぶ必要があるみたいだから、俺ひとりじゃ不安で、古橋たちを呼んで、」
成幸 「タクシーを借りても良かったんだけど、桐須先生に頼んでみたら車出してくれるって言うしさ」
成幸 「だから、こうやってみんなでここに来たんだよ」
理珠 「成幸さんが皆さんに頼み込んでくれたんですね。助かりました」
理珠 「本当に……ひとりでどうしたらいいか分からなくなっていたので……」
成幸 「みんな快く引き受けてくれたよ。だからお前が気にする必要はないと思うぞ」
成幸 「俺も、明日は出店手伝うからさ。みんなで出店がんばろうな」
理珠 「へ……? で、でも、成幸さん、明日はバイトがあるのでは……?」
成幸 「……あー、まぁ、そっちもなんとかなるから大丈夫だよ」
62:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:36:49 :ZJywfASQ
理珠 「なんとかって……」
成幸 「昼は服屋でバイトする予定だったんだけど、代打を母さんに頼んだし」
―――― 花枝 『えーっ。私明日は一日休みの予定だったのにー』 ブーブー
―――― 花枝 『ま、可愛い息子の頼みじゃ仕方ないわね。引き受けてあげる』
―――― 花枝 『ふふっ。それに、可愛いりっちゃんのためじゃ、ねぇ?』
成幸 (なぜにやついていたのかは分からないが、オーケーしてくれて助かった……)
成幸 「夜はハイステージでバイトだったけど、そっちはあしゅみー先輩に頼んだから」
―――― あすみ 『仕方ねーなぁ。代わってやるよ』
―――― あすみ 『そっ……そんかわし、今度、また勉強教えてくれよ』
―――― あすみ 『へ? いつものことじゃないですか、だって? ばかっ、ちげーよ』
―――― あすみ 『久しぶりに……ふっ、ふたりきりで、って言ってんだよ……///』
成幸 (なぜ先輩が顔を真っ赤にしていたのかは分からんが、とにかく先輩に感謝だな……)
理珠 「………………」
理珠 「なんとかって……」
成幸 「昼は服屋でバイトする予定だったんだけど、代打を母さんに頼んだし」
―――― 花枝 『えーっ。私明日は一日休みの予定だったのにー』 ブーブー
―――― 花枝 『ま、可愛い息子の頼みじゃ仕方ないわね。引き受けてあげる』
―――― 花枝 『ふふっ。それに、可愛いりっちゃんのためじゃ、ねぇ?』
成幸 (なぜにやついていたのかは分からないが、オーケーしてくれて助かった……)
成幸 「夜はハイステージでバイトだったけど、そっちはあしゅみー先輩に頼んだから」
―――― あすみ 『仕方ねーなぁ。代わってやるよ』
―――― あすみ 『そっ……そんかわし、今度、また勉強教えてくれよ』
―――― あすみ 『へ? いつものことじゃないですか、だって? ばかっ、ちげーよ』
―――― あすみ 『久しぶりに……ふっ、ふたりきりで、って言ってんだよ……///』
成幸 (なぜ先輩が顔を真っ赤にしていたのかは分からんが、とにかく先輩に感謝だな……)
理珠 「………………」
63:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:37:24 :ZJywfASQ
成幸 「……ってなわけで、明日は空けておいたから大丈夫だ。俺も手伝うよ」
理珠 「………………」 サー--ーッ……
成幸 「……? 緒方? 顔色悪いけど、どうかしたか?」
理珠 「……す、すみません、成幸さん」
理珠 「私、成幸さんにとんでもないご迷惑を……。本当にごめんなさい!」
成幸 「緒方……?」
理珠 「私、できると、思ったんです」
理珠 「出店くらいなら、ひとりでも大丈夫だって。お父さんがいなくても、私ひとりで……」
理珠 「でも……」
理珠 「……可笑しいですよね。私ひとりじゃ、荷物を詰めたリュックを運ぶことすらできませんでした」
理珠 「でも諦めることもできなくて、どうしようと悩むことしかできなくて……」
理珠 「成幸さんたちが来てくれなければ、私は……」
理珠 「私は今も、何もできず、うずくまっていたんでしょうね……」
成幸 「………………」
成幸 「……ってなわけで、明日は空けておいたから大丈夫だ。俺も手伝うよ」
理珠 「………………」 サー--ーッ……
成幸 「……? 緒方? 顔色悪いけど、どうかしたか?」
理珠 「……す、すみません、成幸さん」
理珠 「私、成幸さんにとんでもないご迷惑を……。本当にごめんなさい!」
成幸 「緒方……?」
理珠 「私、できると、思ったんです」
理珠 「出店くらいなら、ひとりでも大丈夫だって。お父さんがいなくても、私ひとりで……」
理珠 「でも……」
理珠 「……可笑しいですよね。私ひとりじゃ、荷物を詰めたリュックを運ぶことすらできませんでした」
理珠 「でも諦めることもできなくて、どうしようと悩むことしかできなくて……」
理珠 「成幸さんたちが来てくれなければ、私は……」
理珠 「私は今も、何もできず、うずくまっていたんでしょうね……」
成幸 「………………」
64:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:38:25 :ZJywfASQ
理珠 「……成幸さんたちが来てくれて、“良かった” と思いました」
理珠 「“助かった” って。きっと、成幸さんたちがなんとかしてくれる、って」
理珠 「そして実際、なんとかなるような気がしてきました」
理珠 「……その裏で、成幸さんが方々にお願いや頼み事をしてくれていたというのに、」
理珠 「それを薄々勘づいていながら、大したことだと考えていなかった……」
理珠 「……いつもそうです。私は、私ひとりで、問題を解決することができない」
理珠 「だから、また私は……こうやって、迷惑を……――」
成幸 「――……それは違うよ、緒方」
理珠 「え……?」
成幸 「……まぁ、そりゃ、色んな人に声かけて、集まってもらったり、バイト代わってもらったり……」
成幸 「大変じゃなかったって言えばウソになるけどさ」 クスッ
成幸 「でも、そうじゃないんだよ。“なんとかなる” と思えるのは、それが理由じゃないんだよ」
成幸 「それはさ、お前が諦めずがんばってきたからだろ?」
理珠 「……成幸さんたちが来てくれて、“良かった” と思いました」
理珠 「“助かった” って。きっと、成幸さんたちがなんとかしてくれる、って」
理珠 「そして実際、なんとかなるような気がしてきました」
理珠 「……その裏で、成幸さんが方々にお願いや頼み事をしてくれていたというのに、」
理珠 「それを薄々勘づいていながら、大したことだと考えていなかった……」
理珠 「……いつもそうです。私は、私ひとりで、問題を解決することができない」
理珠 「だから、また私は……こうやって、迷惑を……――」
成幸 「――……それは違うよ、緒方」
理珠 「え……?」
成幸 「……まぁ、そりゃ、色んな人に声かけて、集まってもらったり、バイト代わってもらったり……」
成幸 「大変じゃなかったって言えばウソになるけどさ」 クスッ
成幸 「でも、そうじゃないんだよ。“なんとかなる” と思えるのは、それが理由じゃないんだよ」
成幸 「それはさ、お前が諦めずがんばってきたからだろ?」
65:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:38:57 :ZJywfASQ
理珠 「……へ?」
成幸 「緒方が諦めなかったから、親父さんも俺に頼み込んで来たんだろ?」
成幸 「緒方が諦めなかったから、今日だって荷物の積み込みが終わったんだろ?」
成幸 「緒方がいつもがんばってるから、古橋やうるかも、明日手伝おうって思うんだろ」
成幸 「先輩だって母さんだってそうだよ。お前の名前を出したら、二つ返事でオーケーしてくれたんだぞ?」
成幸 「あの “氷の女王” が、生徒のために車を出すと思うか?」
成幸 「お前が何を言ったって諦めないって知ってるからこそ、先生は車を出してくれるんだろ」
理珠 「………………」
成幸 「……たしかに、今回、色んな人に迷惑をかけてしまったかもしれないな」
成幸 「でも、それはみんな分かってて手伝ってくれてるんだよ」
成幸 「お前に協力してあげたい……助けてあげたいって、そう思ってくれてるんだよ」
成幸 「だからさ、そんな気に病むことはないよ。お前は明日、胸張って、」 ニコッ
―――― 『緒方うどんの美味しさをもっと多くの人に知ってもらうためにがんばります!』
成幸 「緒方うどんのうまさを祭りで知ってもらうために、がんばればいいんだよ」
理珠 「……へ?」
成幸 「緒方が諦めなかったから、親父さんも俺に頼み込んで来たんだろ?」
成幸 「緒方が諦めなかったから、今日だって荷物の積み込みが終わったんだろ?」
成幸 「緒方がいつもがんばってるから、古橋やうるかも、明日手伝おうって思うんだろ」
成幸 「先輩だって母さんだってそうだよ。お前の名前を出したら、二つ返事でオーケーしてくれたんだぞ?」
成幸 「あの “氷の女王” が、生徒のために車を出すと思うか?」
成幸 「お前が何を言ったって諦めないって知ってるからこそ、先生は車を出してくれるんだろ」
理珠 「………………」
成幸 「……たしかに、今回、色んな人に迷惑をかけてしまったかもしれないな」
成幸 「でも、それはみんな分かってて手伝ってくれてるんだよ」
成幸 「お前に協力してあげたい……助けてあげたいって、そう思ってくれてるんだよ」
成幸 「だからさ、そんな気に病むことはないよ。お前は明日、胸張って、」 ニコッ
―――― 『緒方うどんの美味しさをもっと多くの人に知ってもらうためにがんばります!』
成幸 「緒方うどんのうまさを祭りで知ってもらうために、がんばればいいんだよ」
66:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:39:34 :ZJywfASQ
理珠 「成幸さん……」
グスッ
理珠 (……私は、本当に果報者です)
理珠 (文乃にうるかさん、小美浪先輩、桐須先生……。たくさんの人に気にかけてもらって……)
理珠 (それが情けなくもあるのですが、それでも……)
―――― 『でも、それはみんな分かってて手伝ってくれてるんだよ』
―――― 『お前に協力してあげたい……助けてあげたいって、そう思ってくれてるんだよ』
理珠 (……その気持ちに応えるために、)
理珠 「……そうですね」
クスッ
理珠 「皆さんの協力に報いるために、最高のうどんを提供しなければなりませんね!」
成幸 「おお! その意気だぞ、緒方!」
理珠 「成幸さん……」
グスッ
理珠 (……私は、本当に果報者です)
理珠 (文乃にうるかさん、小美浪先輩、桐須先生……。たくさんの人に気にかけてもらって……)
理珠 (それが情けなくもあるのですが、それでも……)
―――― 『でも、それはみんな分かってて手伝ってくれてるんだよ』
―――― 『お前に協力してあげたい……助けてあげたいって、そう思ってくれてるんだよ』
理珠 (……その気持ちに応えるために、)
理珠 「……そうですね」
クスッ
理珠 「皆さんの協力に報いるために、最高のうどんを提供しなければなりませんね!」
成幸 「おお! その意気だぞ、緒方!」
67:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:40:11 :ZJywfASQ
理珠 (そして……)
カァアアアア……
理珠 (私のために、たくさんがんばってくれた、この人のために……)
成幸 「明日、がんばろうな、緒方!」
理珠 「はいっ! 成幸さん!」
理珠 (そう。私の……)
理珠 (私の、大好きな、この人の、ために……)
理珠 (そして……)
カァアアアア……
理珠 (私のために、たくさんがんばってくれた、この人のために……)
成幸 「明日、がんばろうな、緒方!」
理珠 「はいっ! 成幸さん!」
理珠 (そう。私の……)
理珠 (私の、大好きな、この人の、ために……)
68:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:40:55 :ZJywfASQ
………………当日
「かけうどん二杯くださーい!」
「こっちは三杯ください!」
文乃 「はーい! 少々お待ちください!」
文乃 「りっちゃん、うるかちゃん! かけうどん五杯よろしく!」
うるか 「あいよー! 任せてー! ……ん、リズりん、器におだしいれたよ!」
理珠 「はい、うどんはもうゆであがります!」
成幸 (さすが緒方うどんの出店。夏に引き続き大人気だな……)
成幸 「600円ちょうど、お預かりします!」
成幸 (……よしっ! 俺も気合いいれてがんばらないと!)
成幸 「ありがとうございましたー!」
………………当日
「かけうどん二杯くださーい!」
「こっちは三杯ください!」
文乃 「はーい! 少々お待ちください!」
文乃 「りっちゃん、うるかちゃん! かけうどん五杯よろしく!」
うるか 「あいよー! 任せてー! ……ん、リズりん、器におだしいれたよ!」
理珠 「はい、うどんはもうゆであがります!」
成幸 (さすが緒方うどんの出店。夏に引き続き大人気だな……)
成幸 「600円ちょうど、お預かりします!」
成幸 (……よしっ! 俺も気合いいれてがんばらないと!)
成幸 「ありがとうございましたー!」
69:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:41:42 :ZJywfASQ
………………
うるか 「ふはーっ。つかれたねー」
文乃 「少しお客さんも落ち着いたかな。お昼時は大変だったねぇ」
成幸 「いつもはこれを親父さんとふたりでやってるんだよな。すごいな、緒方は」
理珠 「いえ。今回は皆さんが手伝ってくれたので、すごく楽です」
理珠 「本当にありがとうございます!」 ペコリ
うるか 「へへーっ。リズりんのためならこれくらい大したことないよー、だ」
理珠 「しばらくは混まないと思いますから、皆さんはお祭りを回ってきて大丈夫ですよ」
理珠 「店には私がいるので」
文乃 「えっ、でも……」
成幸 「………………」 (緒方なりの精一杯の気遣いだろうな。なら……)
成幸 「そうだな。ふたりはお祭り回ってきたらいいよ。俺も緒方と一緒に店番してるからさ」
理珠 「えっ……? で、でも、成幸さんも……」
成幸 「俺は緒方うどんの店員でもあるんだから、いいんだよ」 ニッ
成幸 「ほら、せっかく緒方がいって言ってくれてるんだ。うるかと古橋はちょっと休憩してこいよ」
………………
うるか 「ふはーっ。つかれたねー」
文乃 「少しお客さんも落ち着いたかな。お昼時は大変だったねぇ」
成幸 「いつもはこれを親父さんとふたりでやってるんだよな。すごいな、緒方は」
理珠 「いえ。今回は皆さんが手伝ってくれたので、すごく楽です」
理珠 「本当にありがとうございます!」 ペコリ
うるか 「へへーっ。リズりんのためならこれくらい大したことないよー、だ」
理珠 「しばらくは混まないと思いますから、皆さんはお祭りを回ってきて大丈夫ですよ」
理珠 「店には私がいるので」
文乃 「えっ、でも……」
成幸 「………………」 (緒方なりの精一杯の気遣いだろうな。なら……)
成幸 「そうだな。ふたりはお祭り回ってきたらいいよ。俺も緒方と一緒に店番してるからさ」
理珠 「えっ……? で、でも、成幸さんも……」
成幸 「俺は緒方うどんの店員でもあるんだから、いいんだよ」 ニッ
成幸 「ほら、せっかく緒方がいって言ってくれてるんだ。うるかと古橋はちょっと休憩してこいよ」
70:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:42:19 :ZJywfASQ
………………
―――― 文乃 『じゃあ、お言葉に甘えてお祭りちょっと回ってくるけど、』
―――― うるか 『もしお客さんたくさん来たら、すぐ連絡ちょうだいね!』
成幸 (……本当に義理堅い奴らだな。あの様子じゃ、すぐ戻ってきそうだな)
理珠 「………………」
理珠 「……あ、あの、成幸さん」
成幸 「うん? どうかしたか?」
理珠 「成幸さんは良かったんですか。お祭り、回らなくて……」
成幸 「……ん、まぁ、お祭りって誘惑が多いしな。散財するわけにはいかないから、俺は行かなくていいんだ」
理珠 「そう、ですか……」
理珠 (……本当に優しい人です。私を気遣って、そんな風に言ってくれるんですから)
成幸 「でも良かったな。ちゃんと出店できて。うどんも美味しいって大好評だな」
理珠 「はい。本当に良かったです。皆さんのおかげです」
………………
―――― 文乃 『じゃあ、お言葉に甘えてお祭りちょっと回ってくるけど、』
―――― うるか 『もしお客さんたくさん来たら、すぐ連絡ちょうだいね!』
成幸 (……本当に義理堅い奴らだな。あの様子じゃ、すぐ戻ってきそうだな)
理珠 「………………」
理珠 「……あ、あの、成幸さん」
成幸 「うん? どうかしたか?」
理珠 「成幸さんは良かったんですか。お祭り、回らなくて……」
成幸 「……ん、まぁ、お祭りって誘惑が多いしな。散財するわけにはいかないから、俺は行かなくていいんだ」
理珠 「そう、ですか……」
理珠 (……本当に優しい人です。私を気遣って、そんな風に言ってくれるんですから)
成幸 「でも良かったな。ちゃんと出店できて。うどんも美味しいって大好評だな」
理珠 「はい。本当に良かったです。皆さんのおかげです」
71:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:43:06 :ZJywfASQ
成幸 「でも、ほんと朝はヒヤヒヤしたな。桐須先生の車の中で小物類が散乱しててさ」
理珠 「ふふ、そうですね。幸い、割れ物も無事でしたけど」
理珠 「桐須先生はショックを受けていましたね」
成幸 「“驚愕。私の運転って、そんなにアレなのかしら……” 。ってな」 クスクス
理珠 「あっ、今の声真似ちょっと似てました」
成幸 「そうか? ははっ」
理珠 「ふふふ……」
成幸 「………………」
理珠 「………………」
ドキドキドキドキ……
―――― ((私のために、たくさんがんばってくれた、この人のために……))
―――― ((私の、大好きな、この人の、ために……))
理珠 (不思議な感覚です。ドキドキするだけでなく、どこか、落ち着く……)
理珠 (成幸さんの隣にいると、何とも形容しがたい、幸せな気持ちになります)
成幸 「でも、ほんと朝はヒヤヒヤしたな。桐須先生の車の中で小物類が散乱しててさ」
理珠 「ふふ、そうですね。幸い、割れ物も無事でしたけど」
理珠 「桐須先生はショックを受けていましたね」
成幸 「“驚愕。私の運転って、そんなにアレなのかしら……” 。ってな」 クスクス
理珠 「あっ、今の声真似ちょっと似てました」
成幸 「そうか? ははっ」
理珠 「ふふふ……」
成幸 「………………」
理珠 「………………」
ドキドキドキドキ……
―――― ((私のために、たくさんがんばってくれた、この人のために……))
―――― ((私の、大好きな、この人の、ために……))
理珠 (不思議な感覚です。ドキドキするだけでなく、どこか、落ち着く……)
理珠 (成幸さんの隣にいると、何とも形容しがたい、幸せな気持ちになります)
72:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:43:44 :ZJywfASQ
理珠 (私は……)
―――― 『当然です 何故私が恋愛などしなければならないのですか』
―――― 『好いた惚れたと曖昧なものに過分なエネルギーを割くなど非効率の極みです』
理珠 (非効率であろうと、なんであろうと、この気持ちは、もう……)
理珠 (きっと、止められるものでは、ないから……)
ドキドキドキドキ……
理珠 「……あの、成幸さん」
成幸 「ん?」
理珠 「私、本当に、成幸さんに感謝しているんです」
成幸 「へ……? い、いきなりなんだよ。照れるな」
理珠 「四月からずっと、成幸さんには本当にお世話になりっぱなしです」
理珠 「……それこそ、もう、成幸さん抜きでは、生きていけないかもしれないくらいに」
成幸 「……?」
理珠 (私は……)
―――― 『当然です 何故私が恋愛などしなければならないのですか』
―――― 『好いた惚れたと曖昧なものに過分なエネルギーを割くなど非効率の極みです』
理珠 (非効率であろうと、なんであろうと、この気持ちは、もう……)
理珠 (きっと、止められるものでは、ないから……)
ドキドキドキドキ……
理珠 「……あの、成幸さん」
成幸 「ん?」
理珠 「私、本当に、成幸さんに感謝しているんです」
成幸 「へ……? い、いきなりなんだよ。照れるな」
理珠 「四月からずっと、成幸さんには本当にお世話になりっぱなしです」
理珠 「……それこそ、もう、成幸さん抜きでは、生きていけないかもしれないくらいに」
成幸 「……?」
73:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:44:39 :ZJywfASQ
理珠 「だから、その……」 (そう。だから。私は……)
理珠 「……もし、成幸さんさえよろしければ、これからもずっと、私のそばにいてください」
成幸 「え……?」
カァアアアア……
成幸 「あっ……う、嬉しいな。そういう風に、言ってもらえるのは……///」
成幸 「こちらこそ、よろしくな。俺も、お前と友達になれてよかったよ」
理珠 「………………」 クスッ 「……私が言うのも何ですが、本当に、成幸さんはもっと人の心を理解する訓練が必要ですね」
理珠 「仕方ありません。私が立派な大学生になったら、成幸さんに心理学のイロハをたたき込んであげます」
理珠 (……今は、“友達” でいい)
―――― 『……今は もっと知りたい 人の気持ち 自分の気持ち』
―――― 『成幸さんの………………』
理珠 (でも、いつか……)
理珠 「……そのときは、私の気持ち、知ってもらいますからね。成幸さんっ」
おわり
理珠 「だから、その……」 (そう。だから。私は……)
理珠 「……もし、成幸さんさえよろしければ、これからもずっと、私のそばにいてください」
成幸 「え……?」
カァアアアア……
成幸 「あっ……う、嬉しいな。そういう風に、言ってもらえるのは……///」
成幸 「こちらこそ、よろしくな。俺も、お前と友達になれてよかったよ」
理珠 「………………」 クスッ 「……私が言うのも何ですが、本当に、成幸さんはもっと人の心を理解する訓練が必要ですね」
理珠 「仕方ありません。私が立派な大学生になったら、成幸さんに心理学のイロハをたたき込んであげます」
理珠 (……今は、“友達” でいい)
―――― 『……今は もっと知りたい 人の気持ち 自分の気持ち』
―――― 『成幸さんの………………』
理珠 (でも、いつか……)
理珠 「……そのときは、私の気持ち、知ってもらいますからね。成幸さんっ」
おわり
74:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:45:27 :ZJywfASQ
………………幕間 『ごめん紗和子ちゃん』
紗和子 「……えぐっ、ぐすっ……えぐっ……ひぐっ……」
文乃 「だ、だからごめんってばー、紗和子ちゃん」
うるか 「ごめんねぇ、さわちん。てっきり成幸が誘ってるもんだと思ってさ……」
紗和子 「ひぐっ……えぐっ……おっ……緒方理珠の、危機に駆けつけられない、なんて……」
紗和子 「大親友、失格、だわっ……」
紗和子 「かっ……かくなる……ぐすっ……上は……しんで詫びるしか……」
文乃 「め……めんどくせぇ、だよ……」 (よしよし、紗和子ちゃん。大丈夫だよ)
うるか 「文乃っち、言葉と心の声が逆になってるよ……」
おわり
………………幕間 『ごめん紗和子ちゃん』
紗和子 「……えぐっ、ぐすっ……えぐっ……ひぐっ……」
文乃 「だ、だからごめんってばー、紗和子ちゃん」
うるか 「ごめんねぇ、さわちん。てっきり成幸が誘ってるもんだと思ってさ……」
紗和子 「ひぐっ……えぐっ……おっ……緒方理珠の、危機に駆けつけられない、なんて……」
紗和子 「大親友、失格、だわっ……」
紗和子 「かっ……かくなる……ぐすっ……上は……しんで詫びるしか……」
文乃 「め……めんどくせぇ、だよ……」 (よしよし、紗和子ちゃん。大丈夫だよ)
うるか 「文乃っち、言葉と心の声が逆になってるよ……」
おわり
75:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:52:42 :ZJywfASQ
【ぼく勉】 あすみ 「今週末は高校の先輩の結婚式なんだよ」
【ぼく勉】 あすみ 「今週末は高校の先輩の結婚式なんだよ」
76:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:53:14 :ZJywfASQ
成幸 「へぇー、先輩の結婚式。そろそろそういう年齢なんですねぇ……」
成幸 「あれ? でも先輩の先輩ってことは、まだすごく若い人なんじゃ……」
あすみ 「ああ、あの人はミュージシャンになる! って就職も進学もしなかったからな」
あすみ 「残念ながらメジャーデビューはできなかったみたいだけど」
あすみ 「でもまぁ、音楽活動のおかげでいい人と知り合えたみたいだし、結果オーライなんじゃねーの」
成幸 「……結婚式、かぁ。ちょっと憧れてるんですよね」
あすみ 「へ?」 ドキッ 「お、お前、結婚式に憧れるって……ち、ちと早くねーか……///」
成幸 「へ?」
あすみ 「で、でも、もしこだわりとかあるなら、結婚相手とちゃんと話しておかないとダメだぞ?」
成幸 「……? あの、先輩?」
あすみ 「まぁ、べつに? だから何だってわけじゃねーけど、アタシは特にこだわりねーし?」
あすみ 「神前式だろうがチャペルだろうが、相手に合わせられるっつーか……///」
あすみ 「お前の好きなように決めてくれて構わないっていうか……///」
あすみ 「……アタシは、ウェディングドレスでも白無垢でも、どっちでも構わないけど……」
あすみ 「あ、でもやっぱり、写真撮るだけでもいいから、一度はウェディングドレス着てみたいかな……」
成幸 「へぇー、先輩の結婚式。そろそろそういう年齢なんですねぇ……」
成幸 「あれ? でも先輩の先輩ってことは、まだすごく若い人なんじゃ……」
あすみ 「ああ、あの人はミュージシャンになる! って就職も進学もしなかったからな」
あすみ 「残念ながらメジャーデビューはできなかったみたいだけど」
あすみ 「でもまぁ、音楽活動のおかげでいい人と知り合えたみたいだし、結果オーライなんじゃねーの」
成幸 「……結婚式、かぁ。ちょっと憧れてるんですよね」
あすみ 「へ?」 ドキッ 「お、お前、結婚式に憧れるって……ち、ちと早くねーか……///」
成幸 「へ?」
あすみ 「で、でも、もしこだわりとかあるなら、結婚相手とちゃんと話しておかないとダメだぞ?」
成幸 「……? あの、先輩?」
あすみ 「まぁ、べつに? だから何だってわけじゃねーけど、アタシは特にこだわりねーし?」
あすみ 「神前式だろうがチャペルだろうが、相手に合わせられるっつーか……///」
あすみ 「お前の好きなように決めてくれて構わないっていうか……///」
あすみ 「……アタシは、ウェディングドレスでも白無垢でも、どっちでも構わないけど……」
あすみ 「あ、でもやっぱり、写真撮るだけでもいいから、一度はウェディングドレス着てみたいかな……」
77:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:55:13 :ZJywfASQ
成幸 「いや……いやいやいや、先輩、急に何言ってるんですか。違いますよ」
成幸 「俺、結婚式って小さい頃に行ったきりだから、友達の結婚式とかに出席してみたいな、ってだけですよ」
あすみ 「へ……?」
成幸 「自分の結婚式なわけないじゃないですか……」
あすみ 「………………」
成幸 「……先輩?」
あすみ (……あ、アタシの勘違い? っていうか、アタシ、何言ってんだ……) カァアアアア……
あすみ (いっ、今の物言いじゃまるで、アタシと後輩が結婚するのが前提みたいじゃねーか……)
あすみ (お、親父が悪い! 勝手に後輩との結婚を考えたり、後輩との子どもの名前を考えたりするから!)
あすみ (親父が悪いわけで、アタシが後輩と結婚したいわけじゃないからな!)
成幸 「……?」 (先輩さっきから何やってるんだろう……?)
成幸 「いや……いやいやいや、先輩、急に何言ってるんですか。違いますよ」
成幸 「俺、結婚式って小さい頃に行ったきりだから、友達の結婚式とかに出席してみたいな、ってだけですよ」
あすみ 「へ……?」
成幸 「自分の結婚式なわけないじゃないですか……」
あすみ 「………………」
成幸 「……先輩?」
あすみ (……あ、アタシの勘違い? っていうか、アタシ、何言ってんだ……) カァアアアア……
あすみ (いっ、今の物言いじゃまるで、アタシと後輩が結婚するのが前提みたいじゃねーか……)
あすみ (お、親父が悪い! 勝手に後輩との結婚を考えたり、後輩との子どもの名前を考えたりするから!)
あすみ (親父が悪いわけで、アタシが後輩と結婚したいわけじゃないからな!)
成幸 「……?」 (先輩さっきから何やってるんだろう……?)
78:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:56:13 :ZJywfASQ
成幸 「……まぁ、結婚式ってご祝儀とかあるから、できれば働けるようになってから出席したいですね」
成幸 「友達が多い人はご祝儀だけで相当な出費になるって聞いた事ありますし」
あすみ 「あ、ああ。分からんでもないな。正直、ご祝儀三万は、浪人生的には、きつい」
成幸 「ですよねぇ……」
あすみ 「でもまぁ、先輩には色々お世話になったし、感謝の気持ちも込めて贈るよ」
あすみ 「ついでに、冷やかしたりして遊んで、ご馳走たらふく食ってきてやるって感じだな」
成幸 (いい笑顔だなぁ。その先輩、すごくいい人だったんだろうな)
成幸 「……俺はその先輩のこと知らないですけど、」
成幸 「きっといい結婚式になりますね。先輩も楽しんできてください」
あすみ 「おう!」
成幸 「……まぁ、結婚式ってご祝儀とかあるから、できれば働けるようになってから出席したいですね」
成幸 「友達が多い人はご祝儀だけで相当な出費になるって聞いた事ありますし」
あすみ 「あ、ああ。分からんでもないな。正直、ご祝儀三万は、浪人生的には、きつい」
成幸 「ですよねぇ……」
あすみ 「でもまぁ、先輩には色々お世話になったし、感謝の気持ちも込めて贈るよ」
あすみ 「ついでに、冷やかしたりして遊んで、ご馳走たらふく食ってきてやるって感じだな」
成幸 (いい笑顔だなぁ。その先輩、すごくいい人だったんだろうな)
成幸 「……俺はその先輩のこと知らないですけど、」
成幸 「きっといい結婚式になりますね。先輩も楽しんできてください」
あすみ 「おう!」
79:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:57:04 :ZJywfASQ
………………式前日
あすみ 「………………」
あすみ 「……まぁ、こんなモンか」
あすみ (高校入学くらいのときに仕立ててもらったドレスだけど、ヘンじゃないよな?)
あすみ (化粧もいつもより濃いめで、こんな感じで問題ないだろ……)
あすみ (まぁ、どうせ化粧も髪のセットも美容院でやってもらうんだけどさ)
あすみ (にしても……) ジーーーーーッ
あすみ (自分の身体ながら、恨めしくなるよ。高一のときから全然体型変わってねーのな)
あすみ (多少胸とか尻とかがでかくなったくらいか?)
あすみ (ったく、もう少し身長伸びてくれてもいいじゃねーか) ハァ
あすみ (ま、無い物ねだりしてもしょうがねーか。緒方はあたしより小せぇのに頑張ってるしな)
あすみ 「………………」
あすみ (……まぁ、胸はあいつの方が圧倒的にでけーけど)
prrrr……
あすみ 「ん……?」 (先輩から電話……?)
………………式前日
あすみ 「………………」
あすみ 「……まぁ、こんなモンか」
あすみ (高校入学くらいのときに仕立ててもらったドレスだけど、ヘンじゃないよな?)
あすみ (化粧もいつもより濃いめで、こんな感じで問題ないだろ……)
あすみ (まぁ、どうせ化粧も髪のセットも美容院でやってもらうんだけどさ)
あすみ (にしても……) ジーーーーーッ
あすみ (自分の身体ながら、恨めしくなるよ。高一のときから全然体型変わってねーのな)
あすみ (多少胸とか尻とかがでかくなったくらいか?)
あすみ (ったく、もう少し身長伸びてくれてもいいじゃねーか) ハァ
あすみ (ま、無い物ねだりしてもしょうがねーか。緒方はあたしより小せぇのに頑張ってるしな)
あすみ 「………………」
あすみ (……まぁ、胸はあいつの方が圧倒的にでけーけど)
prrrr……
あすみ 「ん……?」 (先輩から電話……?)
80:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:58:10 :ZJywfASQ
ピッ
あすみ 「もしもし?」
『あっ、良かった! 出てくれた! 助かったー!」
あすみ 「……ちわっす。相変わらずテンション高いっすね、先輩」
『いやいやいや、明日結婚式なのにめっちゃテンション低かったら逆にやばいっしょ』
あすみ 「それもそうっすねー」 クスクス 「……で? どうかしたんですか?」
『そうなのよー。大変なのよ。明日出席予定の軽音部OG、ひとりインフルになっちゃったらしくてさ』
あすみ 「へ……? ああ、まぁ、大変っちゃ大変ですけど……」
あすみ 「明日出席してもらえないのは残念かもしれないですけど、仕方ないんじゃ……」
『そうなんだけどね、欠席されちゃうと困るのよ!』
『披露宴、円卓の人数配分を完ぺきにしすぎちゃって、ひとりでも欠席が出るとそこめっちゃ目立つんだわ!』
あすみ 「……はぁ」
『だからできる限り欠席者をなくしたいのよー!』
あすみ (……またヘンなところ、こだわる人なんだよなぁ)
『でさ、あすみちゃん! カレシ、いるのよね?』
ピッ
あすみ 「もしもし?」
『あっ、良かった! 出てくれた! 助かったー!」
あすみ 「……ちわっす。相変わらずテンション高いっすね、先輩」
『いやいやいや、明日結婚式なのにめっちゃテンション低かったら逆にやばいっしょ』
あすみ 「それもそうっすねー」 クスクス 「……で? どうかしたんですか?」
『そうなのよー。大変なのよ。明日出席予定の軽音部OG、ひとりインフルになっちゃったらしくてさ』
あすみ 「へ……? ああ、まぁ、大変っちゃ大変ですけど……」
あすみ 「明日出席してもらえないのは残念かもしれないですけど、仕方ないんじゃ……」
『そうなんだけどね、欠席されちゃうと困るのよ!』
『披露宴、円卓の人数配分を完ぺきにしすぎちゃって、ひとりでも欠席が出るとそこめっちゃ目立つんだわ!』
あすみ 「……はぁ」
『だからできる限り欠席者をなくしたいのよー!』
あすみ (……またヘンなところ、こだわる人なんだよなぁ)
『でさ、あすみちゃん! カレシ、いるのよね?』
81:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:59:48 :ZJywfASQ
あすみ 「……は?」
『いるのよね、カ・レ・シ』
あすみ 「………………」
―――― 『彼氏の趣味で!!』
―――― 『今…… 設定上一応…… 彼氏なわけですし……』
あすみ 「……ま、まぁ、一応」 カァアアアア…… 「いるっちゃ、いますけど……」
『良かった! それでこそあすみちゃんよ! ナイス! 最高!』
あすみ 「……? あの、要領を得ないんすけど、一体……――」
『――……ってことで、明日その彼氏と一緒に結婚式来てね!』
あすみ 「………………」 ハッ 「……はぁ!? 何でこうは――彼氏を結婚式に!?」
『だいじょぶだいじょーぶ。式出席してもらって、披露宴で座っててもらうだけでいいから!』
『もちろんご祝儀はいらないし、お料理や飲み物、好きだけ飲み食いしてってよ!』
『会場近くのサロンに礼服とか靴、一揃え用意しておくから、後でカレシの諸々のサイズ送ってね!』
あすみ 「……は?」
『いるのよね、カ・レ・シ』
あすみ 「………………」
―――― 『彼氏の趣味で!!』
―――― 『今…… 設定上一応…… 彼氏なわけですし……』
あすみ 「……ま、まぁ、一応」 カァアアアア…… 「いるっちゃ、いますけど……」
『良かった! それでこそあすみちゃんよ! ナイス! 最高!』
あすみ 「……? あの、要領を得ないんすけど、一体……――」
『――……ってことで、明日その彼氏と一緒に結婚式来てね!』
あすみ 「………………」 ハッ 「……はぁ!? 何でこうは――彼氏を結婚式に!?」
『だいじょぶだいじょーぶ。式出席してもらって、披露宴で座っててもらうだけでいいから!』
『もちろんご祝儀はいらないし、お料理や飲み物、好きだけ飲み食いしてってよ!』
『会場近くのサロンに礼服とか靴、一揃え用意しておくから、後でカレシの諸々のサイズ送ってね!』
82:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:00:32 :7uI8KgCw
あすみ 「い、いやいや、ちょっと待ってくださいよ。アタシの彼氏、先輩と何の縁もゆかりもないじゃないですか!」
あすみ 「それが結婚式に出席するって、いくらなんでもおかしいでしょ!」
あすみ 「新郎側の出席者にヘンに思われますよ!」
『大丈夫! その点は抜かりないわ!』
『明日だけでいいからカレシと婚約してるフリをしてちょうだい!』 バーーーン!!!
あすみ 「へ……?」 カァアアアア…… 「へぇぇ……!?」
あすみ 「こ……婚約って、アタシ、浪人生ですよ? あいつだって、高校生だし……」
『だーかーらー、フリだけでいいってば』
『ふたりが婚約してて、私もあすみちゃんのカレシと知り合いって言えば、何もおかしくないでしょ?』
あすみ 「そ、そりゃそうかもしれませんけど……」 ハッ 「いやいやいや! やっぱり無茶苦茶ですよ先輩!!」
『お願い! 先輩一生のお願い! おーねーがーいー!』
あすみ 「………………」
あすみ (……婚約者、かぁ)
あすみ 「い、いやいや、ちょっと待ってくださいよ。アタシの彼氏、先輩と何の縁もゆかりもないじゃないですか!」
あすみ 「それが結婚式に出席するって、いくらなんでもおかしいでしょ!」
あすみ 「新郎側の出席者にヘンに思われますよ!」
『大丈夫! その点は抜かりないわ!』
『明日だけでいいからカレシと婚約してるフリをしてちょうだい!』 バーーーン!!!
あすみ 「へ……?」 カァアアアア…… 「へぇぇ……!?」
あすみ 「こ……婚約って、アタシ、浪人生ですよ? あいつだって、高校生だし……」
『だーかーらー、フリだけでいいってば』
『ふたりが婚約してて、私もあすみちゃんのカレシと知り合いって言えば、何もおかしくないでしょ?』
あすみ 「そ、そりゃそうかもしれませんけど……」 ハッ 「いやいやいや! やっぱり無茶苦茶ですよ先輩!!」
『お願い! 先輩一生のお願い! おーねーがーいー!』
あすみ 「………………」
あすみ (……婚約者、かぁ)
83:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:01:09 :7uI8KgCw
あすみ 「……わ、わかりましたよ。一応彼氏に聞いてみます」
『ほんと!?』
あすみ 「それで向こうが断ったら諦めてくださいよ? 一応あいつも受験生だし……」
『うんうんうん。そのときはあきらめるよ!』
『じゃあ、カレシと連絡ついたらこっちにも連絡ちょうだいね!』
『カレシの服と靴のサイズ聞くのも忘れずにね!!』
『じゃ、私ほかの手配も色々あるから! じゃね!!』
プツッ……
あすみ 「……はぁ。せわしないひとだなぁ。ったく」
あすみ 「………………」
あすみ 「……一応、電話して聞くだけ聞いてみるか」
あすみ 「ダメ元で、だけど。まぁ、一応、先輩に対しての義理は通すってだけ……」
prrrrr……ピッ
あすみ 「……ん、おう、後輩。突然悪いな。あのさ、ダメ元で聞くんだけどさ、」
あすみ 「……明日、タダで結婚式、出席してみないか?」
あすみ 「……わ、わかりましたよ。一応彼氏に聞いてみます」
『ほんと!?』
あすみ 「それで向こうが断ったら諦めてくださいよ? 一応あいつも受験生だし……」
『うんうんうん。そのときはあきらめるよ!』
『じゃあ、カレシと連絡ついたらこっちにも連絡ちょうだいね!』
『カレシの服と靴のサイズ聞くのも忘れずにね!!』
『じゃ、私ほかの手配も色々あるから! じゃね!!』
プツッ……
あすみ 「……はぁ。せわしないひとだなぁ。ったく」
あすみ 「………………」
あすみ 「……一応、電話して聞くだけ聞いてみるか」
あすみ 「ダメ元で、だけど。まぁ、一応、先輩に対しての義理は通すってだけ……」
prrrrr……ピッ
あすみ 「……ん、おう、後輩。突然悪いな。あのさ、ダメ元で聞くんだけどさ、」
あすみ 「……明日、タダで結婚式、出席してみないか?」
84:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:01:43 :7uI8KgCw
………………当日
あすみ 「………………」
あすみ (うー、やっぱり頭セットしてもらうと落ち着かねーな……)
あすみ (化粧もいつもよりだいぶ濃いし、心なしか息苦しい気がする……)
あすみ (コート羽織ってるとはいえ、ひらひらのドレスだと外は寒いし……)
あすみ (……あー、早く来いよ、後輩)
―――― 成幸 『えっ!? いや、さすがに知らない人の結婚式には出られないですよ!』
―――― 成幸 『……あー、でも、そうですか。困ってるんですか』
―――― 成幸 『………………』
―――― 成幸 『わ、分かりました。先輩がお世話になった人のためですもんね!』
―――― 成幸 『出席します』
あすみ (……いや、まぁ、頼んだのはアタシだけどさ)
あすみ (まさか本当に引き受けてくれるとは思わなかったな……)
あすみ (……婚約者、かぁ) ニヘラ
………………当日
あすみ 「………………」
あすみ (うー、やっぱり頭セットしてもらうと落ち着かねーな……)
あすみ (化粧もいつもよりだいぶ濃いし、心なしか息苦しい気がする……)
あすみ (コート羽織ってるとはいえ、ひらひらのドレスだと外は寒いし……)
あすみ (……あー、早く来いよ、後輩)
―――― 成幸 『えっ!? いや、さすがに知らない人の結婚式には出られないですよ!』
―――― 成幸 『……あー、でも、そうですか。困ってるんですか』
―――― 成幸 『………………』
―――― 成幸 『わ、分かりました。先輩がお世話になった人のためですもんね!』
―――― 成幸 『出席します』
あすみ (……いや、まぁ、頼んだのはアタシだけどさ)
あすみ (まさか本当に引き受けてくれるとは思わなかったな……)
あすみ (……婚約者、かぁ) ニヘラ
85:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:02:14 :7uI8KgCw
あすみ 「ん……?」
成幸 「………………」 キョロキョロキョロ
あすみ (……? 後輩、何やってんだ?)
成幸 「うーん、メッセージだともうここにいるらしいんだけどなぁ……」
成幸 「どこだろ、先輩……」 キョロキョロキョロ
あすみ 「………………」 ガクッ 「……マジか、お前」
成幸 「!? せ、先輩!?」
あすみ 「おう。何やってんだ、お前。アタシずっとそこにいたぞ」
成幸 「いや、えっと、だって……」 カァアアアア…… 「せ、先輩に、見えなくて……」
あすみ 「ほう? 役柄だけとはいえ、彼女の顔を忘れるたぁふてぇ野郎だな」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
成幸 「ち、違いますよ! だって、先輩……その、すごく、綺麗になってるから……///」
あすみ 「……へ?」
あすみ 「………………」
あすみ 「……お、おう///」 カァアアアア…… 「そ、そうか。そりゃ……わ、悪かった、な」
成幸 「い、いえ……///」
あすみ 「ん……?」
成幸 「………………」 キョロキョロキョロ
あすみ (……? 後輩、何やってんだ?)
成幸 「うーん、メッセージだともうここにいるらしいんだけどなぁ……」
成幸 「どこだろ、先輩……」 キョロキョロキョロ
あすみ 「………………」 ガクッ 「……マジか、お前」
成幸 「!? せ、先輩!?」
あすみ 「おう。何やってんだ、お前。アタシずっとそこにいたぞ」
成幸 「いや、えっと、だって……」 カァアアアア…… 「せ、先輩に、見えなくて……」
あすみ 「ほう? 役柄だけとはいえ、彼女の顔を忘れるたぁふてぇ野郎だな」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
成幸 「ち、違いますよ! だって、先輩……その、すごく、綺麗になってるから……///」
あすみ 「……へ?」
あすみ 「………………」
あすみ 「……お、おう///」 カァアアアア…… 「そ、そうか。そりゃ……わ、悪かった、な」
成幸 「い、いえ……///」
86:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:03:00 :7uI8KgCw
あすみ 「き……今日はありがとな。来てくれて……」
成幸 「ど、どういたしまして、です。全然、大したことじゃないですけど……」
あすみ 「……でもお前、少しは、こう……化粧した女とかに耐性つけとけよ」
成幸 「へ?」
あすみ 「アタシみたいなちんちくりん相手で顔真っ赤にしてたら……」
あすみ 「今日の結婚式、アタシと同世代の女ばっかだから、大変だぞ?」
成幸 「いや、それは、多分、大丈夫かと……」
成幸 「先輩がすごく綺麗だから、緊張しちゃっただけですから」
あすみ 「っ……」
成幸 「……先輩くらいの美人さんばっかりだったら、大変かもしれないですけど」
あすみ 「……///」
成幸 「………………」 ハッ
成幸 (……いやいやいやいや!? 俺何言ってるんだ!? 口説いてるみたいになってるぞ!?)
ドキドキドキドキ……
あすみ (こ、後輩のバカ。なんでそんな、ヘンなこと言うんだよ~~~!!)
あすみ 「き……今日はありがとな。来てくれて……」
成幸 「ど、どういたしまして、です。全然、大したことじゃないですけど……」
あすみ 「……でもお前、少しは、こう……化粧した女とかに耐性つけとけよ」
成幸 「へ?」
あすみ 「アタシみたいなちんちくりん相手で顔真っ赤にしてたら……」
あすみ 「今日の結婚式、アタシと同世代の女ばっかだから、大変だぞ?」
成幸 「いや、それは、多分、大丈夫かと……」
成幸 「先輩がすごく綺麗だから、緊張しちゃっただけですから」
あすみ 「っ……」
成幸 「……先輩くらいの美人さんばっかりだったら、大変かもしれないですけど」
あすみ 「……///」
成幸 「………………」 ハッ
成幸 (……いやいやいやいや!? 俺何言ってるんだ!? 口説いてるみたいになってるぞ!?)
ドキドキドキドキ……
あすみ (こ、後輩のバカ。なんでそんな、ヘンなこと言うんだよ~~~!!)
87:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:03:54 :7uI8KgCw
成幸 「………………」
あすみ 「………………」
ドキドキドキドキ……
あすみ 「あっ……お、お前の着替えもあるし! そろそろ行かないとだな!」
成幸 「! そ、そうですね! 行きましょう!」
成幸 (な、なんだろ、今の空気……なんか、ドキドキする……///)
あすみ (うぅ~/// こんな調子で、“婚約者” やるのかよ~……)
成幸 (それにしても、先輩……)
あすみ 「………………」
カツカツカツカツ……
成幸 (高いヒールを履いてるのもあるけど、今日はすごく大人っぽくて……)
ドキドキドキドキ……
成幸 (……本当に、綺麗だな)
成幸 「………………」
あすみ 「………………」
ドキドキドキドキ……
あすみ 「あっ……お、お前の着替えもあるし! そろそろ行かないとだな!」
成幸 「! そ、そうですね! 行きましょう!」
成幸 (な、なんだろ、今の空気……なんか、ドキドキする……///)
あすみ (うぅ~/// こんな調子で、“婚約者” やるのかよ~……)
成幸 (それにしても、先輩……)
あすみ 「………………」
カツカツカツカツ……
成幸 (高いヒールを履いてるのもあるけど、今日はすごく大人っぽくて……)
ドキドキドキドキ……
成幸 (……本当に、綺麗だな)
88:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:04:52 :7uI8KgCw
………………サロン
あすみ 「………………」
ソワソワソワソワ……
あすみ (大丈夫かな、あいつ。こんなところ来慣れてないだろうし……)
あすみ (入ったときも緊張しきりだったしな。ちゃんと着付けてもらってるだろうか……)
成幸 「……あっ、先輩。お待たせしました」
あすみ 「! 終わったか。短かった、な……って……」
成幸 「……えっと、どうですかね? 礼服なんて初めて着ましたけど……」
成幸 「ドレスシャツも、なんだか肌触りがなめらかで不思議な感じだし……」
成幸 「革靴も高そうだから緊張するし、コンタクトもバイトの時よりゴロゴロする気がします……」
成幸 「髪をこんなに整えられたのも初めてだし……。変じゃないですかね?」
あすみ 「………………」 ポーーーーッ
成幸 「……先輩?」
あすみ 「へっ? あ、ああ。いや、うん……えっと、いいんじゃないか?」 プイッ
成幸 (か、感想それだけ!? やっぱり変!?) ガーーン!!!
………………サロン
あすみ 「………………」
ソワソワソワソワ……
あすみ (大丈夫かな、あいつ。こんなところ来慣れてないだろうし……)
あすみ (入ったときも緊張しきりだったしな。ちゃんと着付けてもらってるだろうか……)
成幸 「……あっ、先輩。お待たせしました」
あすみ 「! 終わったか。短かった、な……って……」
成幸 「……えっと、どうですかね? 礼服なんて初めて着ましたけど……」
成幸 「ドレスシャツも、なんだか肌触りがなめらかで不思議な感じだし……」
成幸 「革靴も高そうだから緊張するし、コンタクトもバイトの時よりゴロゴロする気がします……」
成幸 「髪をこんなに整えられたのも初めてだし……。変じゃないですかね?」
あすみ 「………………」 ポーーーーッ
成幸 「……先輩?」
あすみ 「へっ? あ、ああ。いや、うん……えっと、いいんじゃないか?」 プイッ
成幸 (か、感想それだけ!? やっぱり変!?) ガーーン!!!
89:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:05:39 :7uI8KgCw
あすみ 「………………」
ドキドキドキドキ……
あすみ (……な、なんだよ、後輩の奴)
あすみ (けっ……結構、いけてんじゃねーか……)
あすみ (後輩のくせに……)
ドキドキドキドキ……
成幸 「……? 先輩?」
あすみ 「んお!? い、いきなりなんだ!?」
成幸 「へ? いや、何もないですけど……もうそろそろいい時間ですから、行きましょう」
あすみ 「あ、ああ。そうだな。行こう行こう」
ソソクサ
成幸 「……?」 (先輩、何か急に変になったけど、どうしたんだろう……?)
あすみ 「………………」
ドキドキドキドキ……
あすみ (……な、なんだよ、後輩の奴)
あすみ (けっ……結構、いけてんじゃねーか……)
あすみ (後輩のくせに……)
ドキドキドキドキ……
成幸 「……? 先輩?」
あすみ 「んお!? い、いきなりなんだ!?」
成幸 「へ? いや、何もないですけど……もうそろそろいい時間ですから、行きましょう」
あすみ 「あ、ああ。そうだな。行こう行こう」
ソソクサ
成幸 「……?」 (先輩、何か急に変になったけど、どうしたんだろう……?)
90:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:06:34 :7uI8KgCw
………………式場 ラウンジ
あすみ 「………………」
成幸 「………………」
成幸 「……な、なんか緊張しますね、こういうところ」
あすみ 「あんまキョロキョロすんなよ、恥ずかしいから」
あすみ 「……今日はお前、アタシの “婚約者” なんだからな」
成幸 「わ、わかってますよ。彼氏前提の、婚約者の振りですよね。ややこしい……」
「あっ、あすみじゃーん。久しぶりー」
「わー、あすみ、変わってなーい!」
あすみ 「よっ、おひさ。卒業してから一年も経ってないんだから当たり前だろ」
成幸 (? 同級生の人たちかな……?)
「ん……? ね、ねぇねぇ、あすみ。ひょっとしてその人が噂の……」
あすみ 「ん? ああ、そうだよ。アタシの婚約者の……」
成幸 「あっ……ゆ、唯我成幸です。初めまして……」
「まだ高校生なんでしょ? かっわいいー!」
………………式場 ラウンジ
あすみ 「………………」
成幸 「………………」
成幸 「……な、なんか緊張しますね、こういうところ」
あすみ 「あんまキョロキョロすんなよ、恥ずかしいから」
あすみ 「……今日はお前、アタシの “婚約者” なんだからな」
成幸 「わ、わかってますよ。彼氏前提の、婚約者の振りですよね。ややこしい……」
「あっ、あすみじゃーん。久しぶりー」
「わー、あすみ、変わってなーい!」
あすみ 「よっ、おひさ。卒業してから一年も経ってないんだから当たり前だろ」
成幸 (? 同級生の人たちかな……?)
「ん……? ね、ねぇねぇ、あすみ。ひょっとしてその人が噂の……」
あすみ 「ん? ああ、そうだよ。アタシの婚約者の……」
成幸 「あっ……ゆ、唯我成幸です。初めまして……」
「まだ高校生なんでしょ? かっわいいー!」
91:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:08:21 :7uI8KgCw
成幸 「わっ……」 (ち、ちかっ……)
あすみ 「お、おい、あんまからかうなよ」
「ごめんごめん。あすみのカレってどんな子なのかなって思ってたら、ねぇ?」
「うん。予想以上に可愛い男の子だったから、びっくりしちゃってさ」
「じゃ、お邪魔してもアレだから、あたしたち向こう行ってるね」
「また後で、式と披露宴でねー。ばいばい、唯我クンっ」
あすみ 「……行ったか。ったく」
あすみ 「悪いな、後輩。軽音部の連中だから、キャピキャピしてんだよ……」
成幸 「………………」 ポーーーッ
あすみ 「……後輩?」
成幸 「……へ? あ、ああ、はい。大丈夫です!」
あすみ 「………………」
―――― 『……先輩くらいの美人さんばっかりだったら、大変かもしれないですけど』
あすみ 「……へぇ」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
成幸 「わっ……」 (ち、ちかっ……)
あすみ 「お、おい、あんまからかうなよ」
「ごめんごめん。あすみのカレってどんな子なのかなって思ってたら、ねぇ?」
「うん。予想以上に可愛い男の子だったから、びっくりしちゃってさ」
「じゃ、お邪魔してもアレだから、あたしたち向こう行ってるね」
「また後で、式と披露宴でねー。ばいばい、唯我クンっ」
あすみ 「……行ったか。ったく」
あすみ 「悪いな、後輩。軽音部の連中だから、キャピキャピしてんだよ……」
成幸 「………………」 ポーーーッ
あすみ 「……後輩?」
成幸 「……へ? あ、ああ、はい。大丈夫です!」
あすみ 「………………」
―――― 『……先輩くらいの美人さんばっかりだったら、大変かもしれないですけど』
あすみ 「……へぇ」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
92:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:08:55 :7uI8KgCw
あすみ 「……お前、何か? さっきあんなこと言ってくれてた割には、おい?」
あすみ 「結構簡単に他の女に見惚れるんだな? ああん?」
成幸 「ち、違います違います! 誤解ですよ!」
成幸 「ちょっと、こう……急に近づかれたから、ドキッとして……」
成幸 「年上の女性って感じがして、少し緊張しただけで……」
あすみ 「誤解じゃねーじゃねーか!」
成幸 「ひっ……ご、ごめんなさい!」
あすみ 「ったく……」 (……なんだよ、後輩の奴)
―――― 『先輩がすごく綺麗だから、緊張しちゃっただけですから……』
あすみ (さっきはあんなこと言ってくれたくせに……)
あすみ (確かに、あいつら高校のときと比べて、遙かに大人っぽくなってるし、綺麗だけどさ……)
あすみ (それに比べたら、アタシは……)
あすみ (ちっちゃいままかもしれねーけどさ……)
あすみ 「……お前、何か? さっきあんなこと言ってくれてた割には、おい?」
あすみ 「結構簡単に他の女に見惚れるんだな? ああん?」
成幸 「ち、違います違います! 誤解ですよ!」
成幸 「ちょっと、こう……急に近づかれたから、ドキッとして……」
成幸 「年上の女性って感じがして、少し緊張しただけで……」
あすみ 「誤解じゃねーじゃねーか!」
成幸 「ひっ……ご、ごめんなさい!」
あすみ 「ったく……」 (……なんだよ、後輩の奴)
―――― 『先輩がすごく綺麗だから、緊張しちゃっただけですから……』
あすみ (さっきはあんなこと言ってくれたくせに……)
あすみ (確かに、あいつら高校のときと比べて、遙かに大人っぽくなってるし、綺麗だけどさ……)
あすみ (それに比べたら、アタシは……)
あすみ (ちっちゃいままかもしれねーけどさ……)
93:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:14:55 :7uI8KgCw
あすみ 「………………」
―――― 『自分の身体ながら、恨めしくなるよ。高一のときから全然体型変わってねーのな』
―――― 『ったく、もう少し身長伸びてくれてもいいじゃねーか』
あすみ (……でも、そっか)
あすみ (仕方ねーよな。だってアタシは、全然成長してないし。ヒール履いてもこの程度の身長だ)
あすみ (胸だって、そんな大きくねーし。未だに中学生に間違われることもしばしばだ)
あすみ (……仕方ねーんだよな)
成幸 「先輩……?」
あすみ 「………………」
成幸 「……あ、あの、先輩――」
『――お待たせ致しました。式場の準備が整いましたので、参列者の皆様はご移動をお願いします』
あすみ 「……式の準備ができたみたいだな。行こうぜ」
成幸 「あ……は、はい」
あすみ 「………………」
―――― 『自分の身体ながら、恨めしくなるよ。高一のときから全然体型変わってねーのな』
―――― 『ったく、もう少し身長伸びてくれてもいいじゃねーか』
あすみ (……でも、そっか)
あすみ (仕方ねーよな。だってアタシは、全然成長してないし。ヒール履いてもこの程度の身長だ)
あすみ (胸だって、そんな大きくねーし。未だに中学生に間違われることもしばしばだ)
あすみ (……仕方ねーんだよな)
成幸 「先輩……?」
あすみ 「………………」
成幸 「……あ、あの、先輩――」
『――お待たせ致しました。式場の準備が整いましたので、参列者の皆様はご移動をお願いします』
あすみ 「……式の準備ができたみたいだな。行こうぜ」
成幸 「あ……は、はい」
94:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:15:43 :7uI8KgCw
………………披露宴
あすみ 「先輩、綺麗だったなー」
「ほんとにねー! 私写真めっちゃ撮っちゃった!」
「あ、それあとでグループ送っといてよ」
「オッケー」
あすみ (……ほんと、綺麗だったな。先輩のウェディングドレス)
成幸 「………………」
成幸 (うーん……。さすがに、お友達と談笑しているときに話しかけるのはアレだよな)
成幸 (後でいいか。でもなぁ……)
あすみ 「………………」 プイッ
成幸 「……うっ」 (さっきから目も合わせてくれないし、気まずい……)
あすみ 「……悪い、ちょっと出てくるわ」
成幸 「へ? 先輩、どちらに……?」
あすみ 「聞くな、バカ。お手洗いだよ」
成幸 「あっ……」 シュン 「す、すみません……」
………………披露宴
あすみ 「先輩、綺麗だったなー」
「ほんとにねー! 私写真めっちゃ撮っちゃった!」
「あ、それあとでグループ送っといてよ」
「オッケー」
あすみ (……ほんと、綺麗だったな。先輩のウェディングドレス)
成幸 「………………」
成幸 (うーん……。さすがに、お友達と談笑しているときに話しかけるのはアレだよな)
成幸 (後でいいか。でもなぁ……)
あすみ 「………………」 プイッ
成幸 「……うっ」 (さっきから目も合わせてくれないし、気まずい……)
あすみ 「……悪い、ちょっと出てくるわ」
成幸 「へ? 先輩、どちらに……?」
あすみ 「聞くな、バカ。お手洗いだよ」
成幸 「あっ……」 シュン 「す、すみません……」
95:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:16:34 :7uI8KgCw
………………お手洗い
あすみ 「……はぁ」
あすみ (さすがに大人げないよな。何やってんだ、アタシ……)
あすみ (これじゃまるで……)
カァアアアア……
あすみ (後輩に、本気でヤキモチ妬いてるみたいじゃねーか……)
あすみ (……まぁ、何にせよ、だ)
あすみ (後輩はアタシのお願いを聞いて付き合ってくれてるんだから、)
あすみ (変な態度取ってたらバチ当たっちまうよな……)
あすみ 「……よしっ、と」
あすみ (とりあえず、席に戻って後輩に謝ろう。話はそれからだな……――)
「――……いやー、花嫁さんめっちゃ綺麗だったねー」
「ほんとにね。あいつにはもったいないくらいだよね」
あすみ (ん……? 新郎側の参列者か……)
………………お手洗い
あすみ 「……はぁ」
あすみ (さすがに大人げないよな。何やってんだ、アタシ……)
あすみ (これじゃまるで……)
カァアアアア……
あすみ (後輩に、本気でヤキモチ妬いてるみたいじゃねーか……)
あすみ (……まぁ、何にせよ、だ)
あすみ (後輩はアタシのお願いを聞いて付き合ってくれてるんだから、)
あすみ (変な態度取ってたらバチ当たっちまうよな……)
あすみ 「……よしっ、と」
あすみ (とりあえず、席に戻って後輩に謝ろう。話はそれからだな……――)
「――……いやー、花嫁さんめっちゃ綺麗だったねー」
「ほんとにね。あいつにはもったいないくらいだよね」
あすみ (ん……? 新郎側の参列者か……)
96:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:17:10 :7uI8KgCw
「ウェディングドレスめっちゃ似合ってたよね。あのスタイルうらやましいわー」
「あんなスラッとしたドレス、わたしが着たら絶対おかしなことになるし」
「あんたなんかまだマシでしょ。あたしが着たらお遊戯会の子どもだよ」
「もう少し足長くなんないかなー。10cmくらい?」
「あたしはそんな贅沢言わないから、もう2、3cmだけでも身長ほしかったわ」
………………
あすみ 「………………」
あすみ (今のふたり、どっちもアタシより身長高いけどな)
あすみ (まぁ、自分の身体のことだから、自分でどんな感想持つのも自由なんだけど、)
あすみ 「………………」
「ウェディングドレスめっちゃ似合ってたよね。あのスタイルうらやましいわー」
「あんなスラッとしたドレス、わたしが着たら絶対おかしなことになるし」
「あんたなんかまだマシでしょ。あたしが着たらお遊戯会の子どもだよ」
「もう少し足長くなんないかなー。10cmくらい?」
「あたしはそんな贅沢言わないから、もう2、3cmだけでも身長ほしかったわ」
………………
あすみ 「………………」
あすみ (今のふたり、どっちもアタシより身長高いけどな)
あすみ (まぁ、自分の身体のことだから、自分でどんな感想持つのも自由なんだけど、)
あすみ 「………………」
97:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:18:03 :7uI8KgCw
あすみ (……アタシは、)
―――― 『ちょっと、こう……急に近づかれたから、ドキッとして……』
―――― 『年上の女性って感じがして、少し緊張しただけで……』
あすみ (ヒールを履いたところで、ちんちくりんのままで)
あすみ (ウェディングドレスなんか着たって、きっと……)
あすみ (……きっと、似合わないんだろうな)
あすみ (嫌だな……)
あすみ (身長が低い自分が。それを恨めしく思う自分が……)
あすみ (……本当に、嫌だ……――)
あすみ (……アタシは、)
―――― 『ちょっと、こう……急に近づかれたから、ドキッとして……』
―――― 『年上の女性って感じがして、少し緊張しただけで……』
あすみ (ヒールを履いたところで、ちんちくりんのままで)
あすみ (ウェディングドレスなんか着たって、きっと……)
あすみ (……きっと、似合わないんだろうな)
あすみ (嫌だな……)
あすみ (身長が低い自分が。それを恨めしく思う自分が……)
あすみ (……本当に、嫌だ……――)
98:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:18:37 :7uI8KgCw
………………
あすみ 「………………」
モグモグモグ……
あすみ (……お料理は、とてつもなくウマい……けど、)
あすみ (味がよく分からない……)
成幸 「はぁ……美味しい……」 ウルウルウル 「葉月と和樹にも食べさせてあげたい……」
あすみ (……結局、まだ後輩にも謝れてないし)
あすみ (そもそも、そんな気分にならねーし……)
「ね、ね、あすみ」 コソッ
あすみ 「ん? あんだよ? コソコソと……」
「いや、ね。あすみは婚約者クンに愛されてるな、って」
あすみ 「はぁ? いきなり何だよ?」
「さっき、あすみがトイレ行ってる間、ちょっとカレシと話したんだよ。そしたらね……――」
………………
あすみ 「………………」
モグモグモグ……
あすみ (……お料理は、とてつもなくウマい……けど、)
あすみ (味がよく分からない……)
成幸 「はぁ……美味しい……」 ウルウルウル 「葉月と和樹にも食べさせてあげたい……」
あすみ (……結局、まだ後輩にも謝れてないし)
あすみ (そもそも、そんな気分にならねーし……)
「ね、ね、あすみ」 コソッ
あすみ 「ん? あんだよ? コソコソと……」
「いや、ね。あすみは婚約者クンに愛されてるな、って」
あすみ 「はぁ? いきなり何だよ?」
「さっき、あすみがトイレ行ってる間、ちょっとカレシと話したんだよ。そしたらね……――」
99:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:19:15 :7uI8KgCw
………………少し前
『ねぇねぇ、カレシくんはさ、あすみのどんなところが好きなの?』
成幸 『へ……!? い、いきなり何ですか?』
『いやー、気になっちゃってさ。ねぇ?』
『うんうん。あたしもめっちゃ気になるよ。あすみもいないし、ぶっちゃけちゃいなよ』
成幸 『そ、そんなこと言われても……うーん……』
成幸 『せんぱ――あすみさんの好きなところかぁ……』
『……あれ? そんなに悩む感じ?』
『あすみちっちゃくて可愛くて美人だし、そういうトコじゃないのー?』
『うんうん。あすみちっちゃくて子どもみたいで可愛いよねぇ』
成幸 『いや、まぁ、あすみさんが可愛くて美人なのはその通りなんですけど……』
成幸 『………………』
成幸 『……でも、あんまりちっちゃいって思ったことはないですかね』
『へ……?』
………………少し前
『ねぇねぇ、カレシくんはさ、あすみのどんなところが好きなの?』
成幸 『へ……!? い、いきなり何ですか?』
『いやー、気になっちゃってさ。ねぇ?』
『うんうん。あたしもめっちゃ気になるよ。あすみもいないし、ぶっちゃけちゃいなよ』
成幸 『そ、そんなこと言われても……うーん……』
成幸 『せんぱ――あすみさんの好きなところかぁ……』
『……あれ? そんなに悩む感じ?』
『あすみちっちゃくて可愛くて美人だし、そういうトコじゃないのー?』
『うんうん。あすみちっちゃくて子どもみたいで可愛いよねぇ』
成幸 『いや、まぁ、あすみさんが可愛くて美人なのはその通りなんですけど……』
成幸 『………………』
成幸 『……でも、あんまりちっちゃいって思ったことはないですかね』
『へ……?』
100:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:19:48 :7uI8KgCw
成幸 『いや、出会ったときはそれこそ中学生と勘違いしたりもしましたけど、』
成幸 『知り合って、お付き合いをさせてもらっているうちに、あんまり小さいと思わなくなって……』
成幸 『あすみさんって、すごいんですよ。リアリストで、考え方も大人で……』
―――― 『塾の授業聞くだけで成績伸びる奴なんて一部の天才だけだ』
―――― 『自分で努力せずに 結果なんて出るわけねーのにな』
成幸 『自分の夢のために一生懸命で、いつもいつも、本当に頑張っていて』
成幸 『……なのに、俺のことも気にかけてくれて』
―――― 『塾ってのは自分で勉強することを軸に 必要なものを捕捉するために存在するんだ』
―――― 『その位置づけは間違うなよ後輩』
成幸 『いや、出会ったときはそれこそ中学生と勘違いしたりもしましたけど、』
成幸 『知り合って、お付き合いをさせてもらっているうちに、あんまり小さいと思わなくなって……』
成幸 『あすみさんって、すごいんですよ。リアリストで、考え方も大人で……』
―――― 『塾の授業聞くだけで成績伸びる奴なんて一部の天才だけだ』
―――― 『自分で努力せずに 結果なんて出るわけねーのにな』
成幸 『自分の夢のために一生懸命で、いつもいつも、本当に頑張っていて』
成幸 『……なのに、俺のことも気にかけてくれて』
―――― 『塾ってのは自分で勉強することを軸に 必要なものを捕捉するために存在するんだ』
―――― 『その位置づけは間違うなよ後輩』
101:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:20:39 :7uI8KgCw
成幸 『俺だけじゃない。他の人のことも、いつも……』
―――― 『……世話やかせやがって…… できれば触らずに助けたかったのに……』
―――― 『でもま ガキ泣かせとくような医者にゃ なりたくねーからな』
成幸 『だから……』
成幸 『すごく “おっきいな” って感じるんです』
成幸 『だから、えっと、その……』
成幸 『恥ずかしいですけど、俺があすみさんを好きなのは……』
成幸 『綺麗で、可愛くて、美人なところ……でも、それ以上に……』
成幸 『頼りになるところ。大人なところ。優しくて、人のためにがんばれるところ』
成幸 『……そういう、“おっきい” ところなんだと思います』
『へ、へぇー……///』
『そ、そっか。あすみのこと、よく見てるんだね……///』
成幸 「……あっ! だ、ダメですよ!? 今の、絶対先輩――あすみさんに言わないでくださいね!』
成幸 『俺だけじゃない。他の人のことも、いつも……』
―――― 『……世話やかせやがって…… できれば触らずに助けたかったのに……』
―――― 『でもま ガキ泣かせとくような医者にゃ なりたくねーからな』
成幸 『だから……』
成幸 『すごく “おっきいな” って感じるんです』
成幸 『だから、えっと、その……』
成幸 『恥ずかしいですけど、俺があすみさんを好きなのは……』
成幸 『綺麗で、可愛くて、美人なところ……でも、それ以上に……』
成幸 『頼りになるところ。大人なところ。優しくて、人のためにがんばれるところ』
成幸 『……そういう、“おっきい” ところなんだと思います』
『へ、へぇー……///』
『そ、そっか。あすみのこと、よく見てるんだね……///』
成幸 「……あっ! だ、ダメですよ!? 今の、絶対先輩――あすみさんに言わないでくださいね!』
102:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:21:36 :7uI8KgCw
………………
「――……って感じでさぁ。聞いてるこっちが恥ずかしくなっちゃったよ」
「ほんとほんと。ごちそうさま、って感じ」
あすみ 「お、お前ら、アタシがいない間に後輩で遊んでじゃねーよ」
あすみ 「ったく……」
あすみ 「………………」
あすみ (……へ、へぇ。ふーん。なるほどねぇ)
あすみ (“おっきい” とこ、かぁ……///)
カァアアアア……
「あれぇ?」 ニヤァ 「あすみ、顔真っ赤だよ?」
あすみ 「……!? はぁ!?」
「わっ、あすみ可愛い~! 照れてんの?」
あすみ 「て、照れてねーよ!」
成幸 「? どうしたんです、先輩?」
あすみ 「っ……な、なんでもねーよ!」
………………
「――……って感じでさぁ。聞いてるこっちが恥ずかしくなっちゃったよ」
「ほんとほんと。ごちそうさま、って感じ」
あすみ 「お、お前ら、アタシがいない間に後輩で遊んでじゃねーよ」
あすみ 「ったく……」
あすみ 「………………」
あすみ (……へ、へぇ。ふーん。なるほどねぇ)
あすみ (“おっきい” とこ、かぁ……///)
カァアアアア……
「あれぇ?」 ニヤァ 「あすみ、顔真っ赤だよ?」
あすみ 「……!? はぁ!?」
「わっ、あすみ可愛い~! 照れてんの?」
あすみ 「て、照れてねーよ!」
成幸 「? どうしたんです、先輩?」
あすみ 「っ……な、なんでもねーよ!」
103:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:22:24 :7uI8KgCw
………………お見送り
先輩 「今日は来てくれてありがとね、あすみちゃん。それから、唯我クンも」
成幸 「いえ、こちらこそお招きいただいてありがとうございました」
あすみ 「……ったく」 コソッ 「こんな無茶はこれきりにしてくださいよ、先輩」
先輩 「ごめんって。そっちのときはご祝儀はずむからさ」
あすみ 「……そっちのとき?」
先輩 「えぇ? 何とぼけてんのー?」 ニヤァ 「あすみちゃんと唯我クンの結婚式に決まってんじゃん」
成幸 「っ……///」
あすみ 「………………」
あすみ (……アタシと後輩の結婚式、ね) ジーーーーッ
成幸 「……?」
ムギュッ
成幸 「……へ? あ、あすみさん? 何で、腕、組んで……///」
成幸 (ど、ドレスで腕組まれると、素肌に触れちゃって、や、ヤバい……)
………………お見送り
先輩 「今日は来てくれてありがとね、あすみちゃん。それから、唯我クンも」
成幸 「いえ、こちらこそお招きいただいてありがとうございました」
あすみ 「……ったく」 コソッ 「こんな無茶はこれきりにしてくださいよ、先輩」
先輩 「ごめんって。そっちのときはご祝儀はずむからさ」
あすみ 「……そっちのとき?」
先輩 「えぇ? 何とぼけてんのー?」 ニヤァ 「あすみちゃんと唯我クンの結婚式に決まってんじゃん」
成幸 「っ……///」
あすみ 「………………」
あすみ (……アタシと後輩の結婚式、ね) ジーーーーッ
成幸 「……?」
ムギュッ
成幸 「……へ? あ、あすみさん? 何で、腕、組んで……///」
成幸 (ど、ドレスで腕組まれると、素肌に触れちゃって、や、ヤバい……)
104:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:23:15 :7uI8KgCw
あすみ (アタシと後輩は、ただの、役だけの、恋人)
―――― ((いっ、今の物言いじゃまるで、アタシと後輩が結婚するのが前提みたいじゃねーか……))
―――― ((お、親父が悪い! 勝手に後輩との結婚を考えたり、後輩との子どもの名前を考えたりするから!))
―――― ((親父が悪いわけで、アタシが後輩と結婚したいわけじゃないからな!))
あすみ (親父を誤魔化すためだけの、ニセモノの、恋人)
あすみ (……でも)
あすみ (アタシのことをしっかりと見てくれる……アタシのことをいつも助けてくれる、相手)
あすみ (もう、きっと、否定することなんて、できない、アタシの……)
あすみ (好きな、人……)
あすみ 「……じゃ、約束ですよ。先輩」
クスッ
あすみ 「アタシたちの結婚式、絶対来てくださいねっ」
おわり
あすみ (アタシと後輩は、ただの、役だけの、恋人)
―――― ((いっ、今の物言いじゃまるで、アタシと後輩が結婚するのが前提みたいじゃねーか……))
―――― ((お、親父が悪い! 勝手に後輩との結婚を考えたり、後輩との子どもの名前を考えたりするから!))
―――― ((親父が悪いわけで、アタシが後輩と結婚したいわけじゃないからな!))
あすみ (親父を誤魔化すためだけの、ニセモノの、恋人)
あすみ (……でも)
あすみ (アタシのことをしっかりと見てくれる……アタシのことをいつも助けてくれる、相手)
あすみ (もう、きっと、否定することなんて、できない、アタシの……)
あすみ (好きな、人……)
あすみ 「……じゃ、約束ですよ。先輩」
クスッ
あすみ 「アタシたちの結婚式、絶対来てくださいねっ」
おわり
105:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:23:51 :7uI8KgCw
………………幕間 『小美浪家にて、つい』
あすみ 「ん、そろそろ昼飯の時間だな。作ったら食うか? 後輩」
成幸 「あ、ほんとですか。助かります、あすみさん」
宗二朗 (ナチュラルに名前呼びだと!?)
おわり
………………幕間 『小美浪家にて、つい』
あすみ 「ん、そろそろ昼飯の時間だな。作ったら食うか? 後輩」
成幸 「あ、ほんとですか。助かります、あすみさん」
宗二朗 (ナチュラルに名前呼びだと!?)
おわり
106:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:24:28 :7uI8KgCw
読んでくださった方ありがとうございました。
読んでくださった方ありがとうございました。
107:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 01:27:26 :DlsPH506
超乙!
超乙!
108:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 12:53:31 :bslqJdkU
おつんこ
おつんこ
109:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 18:38:44 :8nynuKFY
おつ
おつ
110:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 19:48:16 :20t1F.Ek
ワイトは先輩も好きです。
ワイトは先輩も好きです。
111:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/08(水) 12:54:38 :f/auRlPw
乙
先輩の長編はどう落ち着くだろう
乙
先輩の長編はどう落ち着くだろう
112:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/08(水) 23:49:38 :8fDF2L2Q
あしゅみー先輩のデレは良いなあ
あしゅみー先輩のデレは良いなあ
113:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/10(金) 16:07:28 :gizsFNOQ
書いてくれてありがとう
書いてくれてありがとう
114:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:59:28 :UawLMgbI
【ぼく勉】 うるか 「今週末、ちびっ子向けの水泳教室をやるんだ」
【ぼく勉】 うるか 「今週末、ちびっ子向けの水泳教室をやるんだ」
115:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:00:02 :UawLMgbI
文乃 「へぇ? 水泳教室?」
うるか 「うん。なんかこのあたりの子どもを集めて学校で教室を開くんだって」
うるか 「水泳部がやることになってさ。なんでも、地域コーケン活動ってやつらしいよ?」
理珠 「なるほど。感心なことですね」
成幸 「……うーん。まぁ、感心なことではあるけどなぁ」
成幸 「受験が差し迫った受験生にやらせることか、それ……?」
うるか 「あたしは息抜きになるからいいんだけどね」
うるか 「でも、滝沢先生もなんかぼやいてたなぁ……」
文乃 「へぇ? 水泳教室?」
うるか 「うん。なんかこのあたりの子どもを集めて学校で教室を開くんだって」
うるか 「水泳部がやることになってさ。なんでも、地域コーケン活動ってやつらしいよ?」
理珠 「なるほど。感心なことですね」
成幸 「……うーん。まぁ、感心なことではあるけどなぁ」
成幸 「受験が差し迫った受験生にやらせることか、それ……?」
うるか 「あたしは息抜きになるからいいんだけどね」
うるか 「でも、滝沢先生もなんかぼやいてたなぁ……」
116:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:00:37 :UawLMgbI
………………少し前
滝沢先生 「……ってわけで、悪いが全員で水泳教室の講師役をやってくれ」
あゆ子 「えー? それほんとですかー?」
あゆ子 「私たち、一応受験生なんですけどー」 ブーブー
滝沢先生 「ああ、そうなる気持ちも分かるが、さすがに一、二年生だけじゃ足りないしな」
滝沢先生 「協力してくれ。頼む。この通りだ」
智波 「先生にそこまで言われちゃったら、協力せざるを得ないよねぇ」
うるか 「? あたしは元々協力するつもりだよ?」
あゆ子 「うぐっ……まぁ、私もべつに、構わないですけど……」
滝沢先生 「悪いな、お前ら。助かるよ」
あゆ子 「にしても、近隣の子ども向け水泳教室ねぇ。去年はこんなのやらなかったのに」
滝沢先生 「ああ、まぁ……」
滝沢先生 「今年は、色々あったからな。主に、武元がらみで」
うるか 「へ? あたし? あたしなんかしたっけ?」
………………少し前
滝沢先生 「……ってわけで、悪いが全員で水泳教室の講師役をやってくれ」
あゆ子 「えー? それほんとですかー?」
あゆ子 「私たち、一応受験生なんですけどー」 ブーブー
滝沢先生 「ああ、そうなる気持ちも分かるが、さすがに一、二年生だけじゃ足りないしな」
滝沢先生 「協力してくれ。頼む。この通りだ」
智波 「先生にそこまで言われちゃったら、協力せざるを得ないよねぇ」
うるか 「? あたしは元々協力するつもりだよ?」
あゆ子 「うぐっ……まぁ、私もべつに、構わないですけど……」
滝沢先生 「悪いな、お前ら。助かるよ」
あゆ子 「にしても、近隣の子ども向け水泳教室ねぇ。去年はこんなのやらなかったのに」
滝沢先生 「ああ、まぁ……」
滝沢先生 「今年は、色々あったからな。主に、武元がらみで」
うるか 「へ? あたし? あたしなんかしたっけ?」
117:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:02:01 :UawLMgbI
智波 「ああ……」 あゆ子 「なるほど……」
あゆ子 「つまり、うるかが軽く有名人になったから、学園の広報に利用しようって算段ですね」
滝沢先生 「うぐっ……。そうずけずけと言ってくれるなよ。学園長命令なんだよ」
智波 「先生も辛い立場ですよねぇ」
滝沢先生 「いや、逆に理解を示されても反応に困るんだけどな……」
うるか 「??? あたしがユーメイジン? どういうこと???」
あゆ子 「あ、うん。あんたはわかんなくていいよ」
智波 「うん。うるかはわかんなくていいよ。大丈夫だよ」
うるか 「?」
滝沢先生 (……ったく、学園長め。生徒に頼み込まなきゃいけないこっちの身にもなれっての)
滝沢先生 (武元のがんばりを大人の事情で利用するようで癪だが……)
滝沢先生 (水泳教室に来た子どもが、武元に憧れて学園に入学してくれれば……という広報の気持ちも分かる)
滝沢先生 (まぁ何にせよ、引き受けてしまった以上、最善を尽くさなきゃな)
滝沢先生 「……じゃあ、悪いが、今週末頼むな」
うるか 「はーい!」
智波 「ああ……」 あゆ子 「なるほど……」
あゆ子 「つまり、うるかが軽く有名人になったから、学園の広報に利用しようって算段ですね」
滝沢先生 「うぐっ……。そうずけずけと言ってくれるなよ。学園長命令なんだよ」
智波 「先生も辛い立場ですよねぇ」
滝沢先生 「いや、逆に理解を示されても反応に困るんだけどな……」
うるか 「??? あたしがユーメイジン? どういうこと???」
あゆ子 「あ、うん。あんたはわかんなくていいよ」
智波 「うん。うるかはわかんなくていいよ。大丈夫だよ」
うるか 「?」
滝沢先生 (……ったく、学園長め。生徒に頼み込まなきゃいけないこっちの身にもなれっての)
滝沢先生 (武元のがんばりを大人の事情で利用するようで癪だが……)
滝沢先生 (水泳教室に来た子どもが、武元に憧れて学園に入学してくれれば……という広報の気持ちも分かる)
滝沢先生 (まぁ何にせよ、引き受けてしまった以上、最善を尽くさなきゃな)
滝沢先生 「……じゃあ、悪いが、今週末頼むな」
うるか 「はーい!」
118:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:02:41 :UawLMgbI
………………
うるか 「って感じでさぁ」
文乃 「あ、うん……」
理珠 「そうですか……」
成幸 「………………」
うるか 「? 何でみんなちょっと渋い顔をしてるの?」
文乃 「いや、何でもないよ。うるかちゃんはいつまでもそんなうるかちゃんのままでいてね」 ギュッ
理珠 「今日だけはよしよししてあげます。よしよし。うるかさんはいい子ですね」 ナデナデ
うるか 「へ? へ? 何これ何これ? 何のゲーム?」 ワクワク
成幸 (……ったく。あの学園長、ほんと利用するものは全部利用する、って感じだよな)
成幸 (あの人だけは、教育者っていうよりは経営者って感じだな)
成幸 (……まぁ、一ノ瀬学園の全教職員のことを考えれば、管理職としては妥当なのかな)
成幸 (うるかのがんばりを利用するみたいで、俺はあんまり、好きになれないけど……)
成幸 「……ま、何にせよ、やるならがんばれよ、うるか」
うるか 「へ? そんなのトーゼンっしょ! うるかちゃんがんばっちゃうかんね!」
………………
うるか 「って感じでさぁ」
文乃 「あ、うん……」
理珠 「そうですか……」
成幸 「………………」
うるか 「? 何でみんなちょっと渋い顔をしてるの?」
文乃 「いや、何でもないよ。うるかちゃんはいつまでもそんなうるかちゃんのままでいてね」 ギュッ
理珠 「今日だけはよしよししてあげます。よしよし。うるかさんはいい子ですね」 ナデナデ
うるか 「へ? へ? 何これ何これ? 何のゲーム?」 ワクワク
成幸 (……ったく。あの学園長、ほんと利用するものは全部利用する、って感じだよな)
成幸 (あの人だけは、教育者っていうよりは経営者って感じだな)
成幸 (……まぁ、一ノ瀬学園の全教職員のことを考えれば、管理職としては妥当なのかな)
成幸 (うるかのがんばりを利用するみたいで、俺はあんまり、好きになれないけど……)
成幸 「……ま、何にせよ、やるならがんばれよ、うるか」
うるか 「へ? そんなのトーゼンっしょ! うるかちゃんがんばっちゃうかんね!」
119:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:03:38 :UawLMgbI
………………前日 唯我家
和樹 「行きたい行きたい行きたいー!」
葉月 「お願いー! かーちゃーん!!」
花枝 「そう言われてもね……。私は明日仕事だし、水希は登校日だし」
花枝 「一緒に行ってくれる人がいないのよ。ごめんね」
葉月 「うぅ……」 和樹 「でも、行きたい……」
成幸 「? 母さん、どうかしたのか?」
花枝 「ああ、成幸。こんなチラシがポストに入っててね」
花枝 「それで、ふたりが行きたいって言って聞かないのよ……」
成幸 「チラシ……?」
『武元うるか選手にの泳ぎを見よう! 一ノ瀬学園主催、ちびっ子水泳教室!』 バーーーーン!!!
成幸 「………………」
成幸 (こ、これ、うるかが言ってたやつじゃないか……)
成幸 (学園長、露骨にうるかを推してきたな。こりゃ明日大変だぞ、うるか……)
成幸 (……ほんと、大変だろうな。きっと)
………………前日 唯我家
和樹 「行きたい行きたい行きたいー!」
葉月 「お願いー! かーちゃーん!!」
花枝 「そう言われてもね……。私は明日仕事だし、水希は登校日だし」
花枝 「一緒に行ってくれる人がいないのよ。ごめんね」
葉月 「うぅ……」 和樹 「でも、行きたい……」
成幸 「? 母さん、どうかしたのか?」
花枝 「ああ、成幸。こんなチラシがポストに入っててね」
花枝 「それで、ふたりが行きたいって言って聞かないのよ……」
成幸 「チラシ……?」
『武元うるか選手にの泳ぎを見よう! 一ノ瀬学園主催、ちびっ子水泳教室!』 バーーーーン!!!
成幸 「………………」
成幸 (こ、これ、うるかが言ってたやつじゃないか……)
成幸 (学園長、露骨にうるかを推してきたな。こりゃ明日大変だぞ、うるか……)
成幸 (……ほんと、大変だろうな。きっと)
120:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:04:10 :UawLMgbI
成幸 「……で、葉月と和樹はこれに行きたいのか?」
葉月 「うん! うるか姉ちゃんに水泳教わりたい!」
成幸 「そうか……」 ニッ 「わかった。じゃあ、兄ちゃんが連れてってやるよ」
和樹 「!? ほんとに!?」
花枝 「成幸、行ってくれるの? 勉強は大丈夫なの?」
成幸 「ああ、まぁ。明日一日くらいなら問題ないよ」
花枝 「それに、あんた泳げないけど、大丈夫……?」 ジトーーーッ
成幸 「そ、その辺はまぁ、こいつらに万が一がないように、十分気をつけるよ……」
花枝 「……そう」 ニコッ 「じゃあ、よろしくね、成幸」
成幸 「おう!」
葉月 「やったー!!」 和樹 「明日はプール! プール!」
成幸 「………………」 (……まぁ、葉月と和樹のお願いを聞いてやりたいっていうのも、もちろんあるけど、)
―――― 『そんなのトーゼンっしょ! うるかちゃんがんばっちゃうかんね!』
成幸 (……こんなチラシ作られて、うるかが大丈夫かも、気になるしな)
成幸 「……で、葉月と和樹はこれに行きたいのか?」
葉月 「うん! うるか姉ちゃんに水泳教わりたい!」
成幸 「そうか……」 ニッ 「わかった。じゃあ、兄ちゃんが連れてってやるよ」
和樹 「!? ほんとに!?」
花枝 「成幸、行ってくれるの? 勉強は大丈夫なの?」
成幸 「ああ、まぁ。明日一日くらいなら問題ないよ」
花枝 「それに、あんた泳げないけど、大丈夫……?」 ジトーーーッ
成幸 「そ、その辺はまぁ、こいつらに万が一がないように、十分気をつけるよ……」
花枝 「……そう」 ニコッ 「じゃあ、よろしくね、成幸」
成幸 「おう!」
葉月 「やったー!!」 和樹 「明日はプール! プール!」
成幸 「………………」 (……まぁ、葉月と和樹のお願いを聞いてやりたいっていうのも、もちろんあるけど、)
―――― 『そんなのトーゼンっしょ! うるかちゃんがんばっちゃうかんね!』
成幸 (……こんなチラシ作られて、うるかが大丈夫かも、気になるしな)
121:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:06:21 :UawLMgbI
………………当日
ザワザワザワザワザワ……
うるか 「うおう……」
あゆ子 「うわぁ、こりゃまたすごい数のちびっ子たちだな……」
智波 「プールに入りきるのかな。こりゃ大変だよ」
池田 「先輩方が来てくれて良かったです。こんなの現役生だけじゃ絶対無理ですよぅ……」
あゆ子 (……まぁ、逆にうるかが来るって大々的に触れ込んだせいでもあるんだけどな)
あゆ子 (ったく、学校側はいい広報になってウハウハだろうな。バイト代くらいよこせっての)
うるか 「へへ、腕が鳴るぜー! 今日はみんなで力を合わせてがんばろうね!」
あゆ子 「ん? あ、ああ」 (うーむ。素直なうるかを見ると、自分が嫌なやつみたいに思えてくるな……)
あゆ子 「……よしっ、いっちょやるとするかー……って、ん?」
智波 「? あゆ子、どうかしたの?」
あゆ子 「いや……私の見間違いか? あの奥にいる、ちびっ子ふたりを連れた若い男……」
あゆ子 「あれ、唯我じゃないか?」
うるか 「………………」 ハッ 「……へぇ!? 成幸!?」
………………当日
ザワザワザワザワザワ……
うるか 「うおう……」
あゆ子 「うわぁ、こりゃまたすごい数のちびっ子たちだな……」
智波 「プールに入りきるのかな。こりゃ大変だよ」
池田 「先輩方が来てくれて良かったです。こんなの現役生だけじゃ絶対無理ですよぅ……」
あゆ子 (……まぁ、逆にうるかが来るって大々的に触れ込んだせいでもあるんだけどな)
あゆ子 (ったく、学校側はいい広報になってウハウハだろうな。バイト代くらいよこせっての)
うるか 「へへ、腕が鳴るぜー! 今日はみんなで力を合わせてがんばろうね!」
あゆ子 「ん? あ、ああ」 (うーむ。素直なうるかを見ると、自分が嫌なやつみたいに思えてくるな……)
あゆ子 「……よしっ、いっちょやるとするかー……って、ん?」
智波 「? あゆ子、どうかしたの?」
あゆ子 「いや……私の見間違いか? あの奥にいる、ちびっ子ふたりを連れた若い男……」
あゆ子 「あれ、唯我じゃないか?」
うるか 「………………」 ハッ 「……へぇ!? 成幸!?」
122:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:07:14 :UawLMgbI
………………
成幸 「すごい人数だな。改めて、うるかってすごいんだな……」
葉月 「とーぜん! だって、うるか姉ちゃんは有名人だから!」
成幸 「ほんとになぁ。近隣の子どもたち、うるかのことみんな知ってるんだなぁ」
成幸 「……ほんと、すごい奴だな、うるかは……――」
うるか 「――えへへ。改めて言われると、さすがに照れるね」
成幸 「へ……?」 ビクッ 「う、うるか!? びっくりした!」
うるか 「それはこっちの台詞だよ成幸ー! 来るなら来るって教えてくれればよかったのにー!」
成幸 「あ、ああ。悪い悪い。あんまり意識させない方がいいかな、って思ってさ」
和樹 「うるか姉ちゃんだー!」 葉月 「有名人だー!」
成幸 「俺は葉月と和樹の付き添いだから、気にするなよ」
「ほんものだー!」 「かわいいー!」 「あくしゅしてー!」 「あとでサインくださいー!」
うるか 「わっ……わわっ……」 (ち、ちびっ子たちに囲まれちった……)
成幸 「ほら、うるかは有名人なんだから、お客さんのほうに来たらそりゃ大変だろ」
うるか 「そ、そだね。じゃあ、あたし一回戻るね。また後でね、成幸!」
………………
成幸 「すごい人数だな。改めて、うるかってすごいんだな……」
葉月 「とーぜん! だって、うるか姉ちゃんは有名人だから!」
成幸 「ほんとになぁ。近隣の子どもたち、うるかのことみんな知ってるんだなぁ」
成幸 「……ほんと、すごい奴だな、うるかは……――」
うるか 「――えへへ。改めて言われると、さすがに照れるね」
成幸 「へ……?」 ビクッ 「う、うるか!? びっくりした!」
うるか 「それはこっちの台詞だよ成幸ー! 来るなら来るって教えてくれればよかったのにー!」
成幸 「あ、ああ。悪い悪い。あんまり意識させない方がいいかな、って思ってさ」
和樹 「うるか姉ちゃんだー!」 葉月 「有名人だー!」
成幸 「俺は葉月と和樹の付き添いだから、気にするなよ」
「ほんものだー!」 「かわいいー!」 「あくしゅしてー!」 「あとでサインくださいー!」
うるか 「わっ……わわっ……」 (ち、ちびっ子たちに囲まれちった……)
成幸 「ほら、うるかは有名人なんだから、お客さんのほうに来たらそりゃ大変だろ」
うるか 「そ、そだね。じゃあ、あたし一回戻るね。また後でね、成幸!」
123:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:08:03 :UawLMgbI
………………水泳教室開始
あゆ子 「ほーら、まず水バシャバシャして……」
あゆ子 「冷たくない? じゃあ、とりあえず入ってみようか。おいで」
智波 「ふふ、あゆ子って子どもには優しいんだね」
あゆ子 「う、うるさいな。ほら、智波の担当の子たちも来たぞ」
智波 「はいはーい。じゃあきみたちもバシャバシャして水に慣れよー。おいでー」
うるか (川っちも海っちも頑張ってるなぁ。よーし、あたしもがんばるぞー)
うるか 「あたしの担当の子どもたちは……」
和樹 「はーい!」 葉月 「わたしたち!」
うるか 「!?」 (成幸とみずきんとこのチビちゃんたち!)
うるか (これは……)
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
うるか (上手に教えられれば、成幸の好感度アップも狙えるかも……!?) ギラリ
うるか (よーし! がんばっちゃうぞー!)
………………水泳教室開始
あゆ子 「ほーら、まず水バシャバシャして……」
あゆ子 「冷たくない? じゃあ、とりあえず入ってみようか。おいで」
智波 「ふふ、あゆ子って子どもには優しいんだね」
あゆ子 「う、うるさいな。ほら、智波の担当の子たちも来たぞ」
智波 「はいはーい。じゃあきみたちもバシャバシャして水に慣れよー。おいでー」
うるか (川っちも海っちも頑張ってるなぁ。よーし、あたしもがんばるぞー)
うるか 「あたしの担当の子どもたちは……」
和樹 「はーい!」 葉月 「わたしたち!」
うるか 「!?」 (成幸とみずきんとこのチビちゃんたち!)
うるか (これは……)
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
うるか (上手に教えられれば、成幸の好感度アップも狙えるかも……!?) ギラリ
うるか (よーし! がんばっちゃうぞー!)
124:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:08:48 :UawLMgbI
………………プールサイド 保護者席
成幸 (うるかの奴、すごい張り切ってるな)
成幸 (それにしても、うるかが教えるのが葉月と和樹とは。変な因果だな……)
滝沢先生 「よう、唯我。お前も来てたのか」
成幸 「あ、滝沢先生。おはようございます」
成幸 「今うるかに教わってる子どもたち、うちの弟妹なんですよ」
滝沢先生 「ああ、葉月ちゃんと和樹ちゃんか。大きくなったな」
成幸 「……? 何であのふたりの名前を……?」
滝沢先生 「ああ、いや、な……」
滝沢先生 「こういう物言いは適切ではないかもしれないが……まぁ、お前ももう三年生だから、いいか」
滝沢先生 「唯我先生――お前のお父上には、私も新任の頃散々お世話になってな」
成幸 「あっ……」 (そっか。滝沢先生も父さんのこと……)
滝沢先生 「葬儀のとき以来だが、元気に育っているようで何よりだ」
成幸 「……はい。おかげさまで」
………………プールサイド 保護者席
成幸 (うるかの奴、すごい張り切ってるな)
成幸 (それにしても、うるかが教えるのが葉月と和樹とは。変な因果だな……)
滝沢先生 「よう、唯我。お前も来てたのか」
成幸 「あ、滝沢先生。おはようございます」
成幸 「今うるかに教わってる子どもたち、うちの弟妹なんですよ」
滝沢先生 「ああ、葉月ちゃんと和樹ちゃんか。大きくなったな」
成幸 「……? 何であのふたりの名前を……?」
滝沢先生 「ああ、いや、な……」
滝沢先生 「こういう物言いは適切ではないかもしれないが……まぁ、お前ももう三年生だから、いいか」
滝沢先生 「唯我先生――お前のお父上には、私も新任の頃散々お世話になってな」
成幸 「あっ……」 (そっか。滝沢先生も父さんのこと……)
滝沢先生 「葬儀のとき以来だが、元気に育っているようで何よりだ」
成幸 「……はい。おかげさまで」
125:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:09:42 :UawLMgbI
滝沢先生 「……唯我、お前、教育大学を目指しているんだってな」
成幸 「……はい」
成幸 「なれるか分からないですけど、学校の先生になりたいので」
―――― 『ある人が そうしてくれたように』
―――― 『人に寄り添って教えられるような教育者を目指したい』
滝沢先生 「……そうか」
ニコッ
滝沢先生 「なれるさ。お前なら。お前は、唯我先生にそっくりだからな」
成幸 「滝沢先生……」
滝沢先生 「……ま、教職取るには、大学でも体育は必須だからな」
滝沢先生 「高校卒業までに、少しは運動神経磨いとけよ?」
成幸 「うっ……ぜ、善処します……」
成幸 「ん……?」
滝沢先生 「……唯我、お前、教育大学を目指しているんだってな」
成幸 「……はい」
成幸 「なれるか分からないですけど、学校の先生になりたいので」
―――― 『ある人が そうしてくれたように』
―――― 『人に寄り添って教えられるような教育者を目指したい』
滝沢先生 「……そうか」
ニコッ
滝沢先生 「なれるさ。お前なら。お前は、唯我先生にそっくりだからな」
成幸 「滝沢先生……」
滝沢先生 「……ま、教職取るには、大学でも体育は必須だからな」
滝沢先生 「高校卒業までに、少しは運動神経磨いとけよ?」
成幸 「うっ……ぜ、善処します……」
成幸 「ん……?」
126:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:10:17 :UawLMgbI
………………プール
うるか 「よーし、プールに顔はつけられるみたいだから、身体を伸ばして浮かんでみようか」
葉月&和樹 「「はーい!」」
ザブン……
ブクブクブクブク……
うるか 「わー! 沈んでるー!」
ザバァ!!!
葉月 「ぷはぁ! ふ、不思議だわ……」
和樹 「水に沈むのって楽しいな!」
うるか 「え、えっとね、チビっこたち。くるっとすると水に沈んじゃうんだよ」
うるか 「だから、顔を水につけたら、ピーンってしてみようか」
葉月 「くるっ?」 和樹 「ピーン?」
うるか 「……えっと、えっと……」
うるか (そ、そういえばあたし、成幸に泳ぎを教えたときも上手くできなかったんだったー!)
うるか (ど、どどど、どうしよう!?)
………………プール
うるか 「よーし、プールに顔はつけられるみたいだから、身体を伸ばして浮かんでみようか」
葉月&和樹 「「はーい!」」
ザブン……
ブクブクブクブク……
うるか 「わー! 沈んでるー!」
ザバァ!!!
葉月 「ぷはぁ! ふ、不思議だわ……」
和樹 「水に沈むのって楽しいな!」
うるか 「え、えっとね、チビっこたち。くるっとすると水に沈んじゃうんだよ」
うるか 「だから、顔を水につけたら、ピーンってしてみようか」
葉月 「くるっ?」 和樹 「ピーン?」
うるか 「……えっと、えっと……」
うるか (そ、そういえばあたし、成幸に泳ぎを教えたときも上手くできなかったんだったー!)
うるか (ど、どどど、どうしよう!?)
127:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:11:54 :UawLMgbI
………………プールサイド
成幸 「………………」
滝沢先生 「………………」
ハァ……
滝沢先生 「……まぁ、分かってたことだけどな」
成幸 「だったらうるかひとりにしないであげてくださいよ……」
滝沢先生 「あいつには人に教える能力も必要だよ。将来を見据えるならな」
滝沢先生 「そのいい訓練になってくれればと思ったが……うーむ。難しいな」
滝沢先生 「とはいえ、私は全体を見ていなければならないし、水泳部で空いている奴もいない」
滝沢先生 「さて、どこかに、泳ぎは苦手だけど、困ってる人を見ると放っておけない奴はいないかな」
成幸 「……言われるまでもないですよ。俺、手伝ってもいいんですね?」
滝沢先生 「助かるよ、唯我。頼む」
タタタタタ……
滝沢先生 「……はぁ、嫌なもんだな」
滝沢先生 「生徒を利用している時点で、私も結局学園長先生と同じ穴の狢、か」
………………プールサイド
成幸 「………………」
滝沢先生 「………………」
ハァ……
滝沢先生 「……まぁ、分かってたことだけどな」
成幸 「だったらうるかひとりにしないであげてくださいよ……」
滝沢先生 「あいつには人に教える能力も必要だよ。将来を見据えるならな」
滝沢先生 「そのいい訓練になってくれればと思ったが……うーむ。難しいな」
滝沢先生 「とはいえ、私は全体を見ていなければならないし、水泳部で空いている奴もいない」
滝沢先生 「さて、どこかに、泳ぎは苦手だけど、困ってる人を見ると放っておけない奴はいないかな」
成幸 「……言われるまでもないですよ。俺、手伝ってもいいんですね?」
滝沢先生 「助かるよ、唯我。頼む」
タタタタタ……
滝沢先生 「……はぁ、嫌なもんだな」
滝沢先生 「生徒を利用している時点で、私も結局学園長先生と同じ穴の狢、か」
128:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:13:04 :UawLMgbI
………………プール
葉月&和樹 「「うるか姉ちゃん、次は、次は?」」 キラキラキラ……!!!!
うるか (うぅ……純粋な視線が痛いよ……)
うるか (まだ浮くこともできてないのに、次も何もないよー!)
ザブン……
うるか 「へ? ざぶん?」
成幸 「よう、うるか」
葉月&和樹 「「兄ちゃんだー!!」」
うるか 「へぇ!? 成幸!? プール入って大丈夫なの!?」
うるか 「っていうか何でプール入ってきたの!?」
成幸 「さすがに子ども用に浅くしたプールだから大丈夫だよ。多分……」
うるか (それでも多分なんだ……)
成幸 「俺もお前らを見てたらプール入りたくなっちゃってさ。ついでに手伝うよ」
うるか 「えっ、で、でも……」
成幸 「俺もこの学園の生徒なんだから、いいんだよ。手伝わせてくれ、うるか」
………………プール
葉月&和樹 「「うるか姉ちゃん、次は、次は?」」 キラキラキラ……!!!!
うるか (うぅ……純粋な視線が痛いよ……)
うるか (まだ浮くこともできてないのに、次も何もないよー!)
ザブン……
うるか 「へ? ざぶん?」
成幸 「よう、うるか」
葉月&和樹 「「兄ちゃんだー!!」」
うるか 「へぇ!? 成幸!? プール入って大丈夫なの!?」
うるか 「っていうか何でプール入ってきたの!?」
成幸 「さすがに子ども用に浅くしたプールだから大丈夫だよ。多分……」
うるか (それでも多分なんだ……)
成幸 「俺もお前らを見てたらプール入りたくなっちゃってさ。ついでに手伝うよ」
うるか 「えっ、で、でも……」
成幸 「俺もこの学園の生徒なんだから、いいんだよ。手伝わせてくれ、うるか」
129:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:13:43 :UawLMgbI
うるか 「……う、うん。そこまで言うなら……」
成幸 「よし、じゃあ、まずは伸びて浮くところからだな」
葉月 「うん。でも、沈んじゃうの」
和樹 「ぶくぶくぶくー、って!」
成幸 「うんうん。じゃあ、とりあえず顔をつけたら、手足を伸ばしてみな。お腹を支えてあげるから」
成幸 「よいしょっ、と……」
プカプカプカプカ……
葉月 「……ぷはっ」 キャッキャ 「沈まなかったー! ちゃんとできたー!」
成幸 「多分、身体が丸まっちゃうから沈んじゃうんだよ」
成幸 「もう一回お腹支えてあげるから、手足を伸ばす感覚を覚えるんだぞ」
葉月 「はーい!」
成幸 「……ほら、うるかも、和樹にやってあげてくれ」
うるか 「へ……!? あ、うん! じゃあ、かずきんも」
和樹 「うん!」
うるか 「……う、うん。そこまで言うなら……」
成幸 「よし、じゃあ、まずは伸びて浮くところからだな」
葉月 「うん。でも、沈んじゃうの」
和樹 「ぶくぶくぶくー、って!」
成幸 「うんうん。じゃあ、とりあえず顔をつけたら、手足を伸ばしてみな。お腹を支えてあげるから」
成幸 「よいしょっ、と……」
プカプカプカプカ……
葉月 「……ぷはっ」 キャッキャ 「沈まなかったー! ちゃんとできたー!」
成幸 「多分、身体が丸まっちゃうから沈んじゃうんだよ」
成幸 「もう一回お腹支えてあげるから、手足を伸ばす感覚を覚えるんだぞ」
葉月 「はーい!」
成幸 「……ほら、うるかも、和樹にやってあげてくれ」
うるか 「へ……!? あ、うん! じゃあ、かずきんも」
和樹 「うん!」
130:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:14:26 :UawLMgbI
プカプカプカプカ……
成幸 「おー、ふたりとも上手だぞー……ん?」
うるか 「………………」 ジーーーッ
成幸 「ん? どうかしたか、うるか?」
うるか 「……成幸、泳ぐの苦手だよね?」
うるか 「なのに、どうしてちゃんと教えられるの……?」
成幸 「へ? いや、ちゃんと教えられてはいないと思うけど……」
成幸 「……逆に、まともに泳げないから、かな」
うるか 「……?」
成幸 「俺はそもそも運動神経が足りてないからまともに泳げないけど、こいつらは違うから」
成幸 「補講で散々教えてもらったことを、こいつらに分かりやすく伝えるだけだからさ」
成幸 「それは逆に、泳げない俺だからこそできることかな、って」
うるか 「そっか……」
プカプカプカプカ……
成幸 「おー、ふたりとも上手だぞー……ん?」
うるか 「………………」 ジーーーッ
成幸 「ん? どうかしたか、うるか?」
うるか 「……成幸、泳ぐの苦手だよね?」
うるか 「なのに、どうしてちゃんと教えられるの……?」
成幸 「へ? いや、ちゃんと教えられてはいないと思うけど……」
成幸 「……逆に、まともに泳げないから、かな」
うるか 「……?」
成幸 「俺はそもそも運動神経が足りてないからまともに泳げないけど、こいつらは違うから」
成幸 「補講で散々教えてもらったことを、こいつらに分かりやすく伝えるだけだからさ」
成幸 「それは逆に、泳げない俺だからこそできることかな、って」
うるか 「そっか……」
131:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:15:11 :UawLMgbI
葉月 「ぷはっ! ちゃんと浮いたよ、兄ちゃん!」
成幸 「そうだな。すごいぞ、葉月」
成幸 「じゃあ、次はお腹の支えなしで浮いてみようか」
葉月 「うん!」
うるか 「………………」
うるか (やっぱり、成幸はすごいな……)
うるか (……それに比べて、あたしは……)
ハッ
うるか (……いやいやいや! 落ち込んでる暇はないっしょ! がんばんないと!!)
葉月 「ぷはっ! ちゃんと浮いたよ、兄ちゃん!」
成幸 「そうだな。すごいぞ、葉月」
成幸 「じゃあ、次はお腹の支えなしで浮いてみようか」
葉月 「うん!」
うるか 「………………」
うるか (やっぱり、成幸はすごいな……)
うるか (……それに比べて、あたしは……)
ハッ
うるか (……いやいやいや! 落ち込んでる暇はないっしょ! がんばんないと!!)
132:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:16:03 :UawLMgbI
………………
うるか 「次は手を引くから、少し進んでみよう!」
葉月 「はーい!! がぼがぼがぼ……」
うるか 「わー! また沈んでるー!」
成幸 「ほら、葉月。手足を伸ばした感覚を忘れるなー?」
葉月 「はーい、兄ちゃん!」
プカプカプカ……
成幸 「おお、葉月。上手だぞ。和樹もちゃんと浮けてるな。すごいすごい」
和樹 「ぷはぁ! やった、兄ちゃん! 少し進んだよ!」
成幸 「そうだな。手を引いてもらえれば、もうちゃんと伸びて浮けるようになったな」
うるか 「むぐぐぐ……」
うるか (ま、まだまだ! 次はもっとうまくやるぞー!)
………………
うるか 「次は手を引くから、少し進んでみよう!」
葉月 「はーい!! がぼがぼがぼ……」
うるか 「わー! また沈んでるー!」
成幸 「ほら、葉月。手足を伸ばした感覚を忘れるなー?」
葉月 「はーい、兄ちゃん!」
プカプカプカ……
成幸 「おお、葉月。上手だぞ。和樹もちゃんと浮けてるな。すごいすごい」
和樹 「ぷはぁ! やった、兄ちゃん! 少し進んだよ!」
成幸 「そうだな。手を引いてもらえれば、もうちゃんと伸びて浮けるようになったな」
うるか 「むぐぐぐ……」
うるか (ま、まだまだ! 次はもっとうまくやるぞー!)
133:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:16:49 :UawLMgbI
………………
うるか 「じゃあ、ひとりで浮けるようになったところで、次はバタ足の練習だよ!」
バチャバチャバチャバチャ……
和樹 「ぷはっ……。あり? あんまり進んでない……」
うるか 「かずきん、バタ足がね、バチャバチャって感じなんだよ」
うるか 「それだと進まないから、パシャパシャって感じにしてみて」
和樹 「???」
うるか 「あ、えっと……えっと……」
成幸 「……俺が昔よく言われたのは、こんな感じかな」
成幸 「和樹、ちょっとプールサイドに手をついてみな」
和樹 「はーい!」
成幸 「で、ちょっと足の先持つぞー? 足の先を、こうやって……」
成幸 「親指と親指を擦り合わせる感じで……」
成幸 「ここを曲げないで、ここを動かして、バタ足するんだ」
………………
うるか 「じゃあ、ひとりで浮けるようになったところで、次はバタ足の練習だよ!」
バチャバチャバチャバチャ……
和樹 「ぷはっ……。あり? あんまり進んでない……」
うるか 「かずきん、バタ足がね、バチャバチャって感じなんだよ」
うるか 「それだと進まないから、パシャパシャって感じにしてみて」
和樹 「???」
うるか 「あ、えっと……えっと……」
成幸 「……俺が昔よく言われたのは、こんな感じかな」
成幸 「和樹、ちょっとプールサイドに手をついてみな」
和樹 「はーい!」
成幸 「で、ちょっと足の先持つぞー? 足の先を、こうやって……」
成幸 「親指と親指を擦り合わせる感じで……」
成幸 「ここを曲げないで、ここを動かして、バタ足するんだ」
134:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:17:28 :UawLMgbI
和樹 「……? えっと、こう?」
バシャバシャバシャ……
成幸 「そうそう。そんな感じだ。良い調子だぞ、和樹」
コソッ
成幸 「……子ども相手だから、難しい言葉とか表現は分からないし、こんな風に身体に触って直接教えてもいいかもな」
成幸 「大人相手にはできないかもしれないけど」
うるか 「あ……う、うん。じゃあ、はづきんもバタ足の練習してみようか!」
葉月 「はーい!」
うるか 「足を伸ばして……伸ばしたまま、こうやって……」
葉月 「おー……」
バシャバシャバシャ……
うるか 「……うん。良い感じだよ、はづきん!」
和樹 「……? えっと、こう?」
バシャバシャバシャ……
成幸 「そうそう。そんな感じだ。良い調子だぞ、和樹」
コソッ
成幸 「……子ども相手だから、難しい言葉とか表現は分からないし、こんな風に身体に触って直接教えてもいいかもな」
成幸 「大人相手にはできないかもしれないけど」
うるか 「あ……う、うん。じゃあ、はづきんもバタ足の練習してみようか!」
葉月 「はーい!」
うるか 「足を伸ばして……伸ばしたまま、こうやって……」
葉月 「おー……」
バシャバシャバシャ……
うるか 「……うん。良い感じだよ、はづきん!」
135:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:18:09 :UawLMgbI
………………
うるか 「………………」
うるか (……はぁ。あたし、やっぱりダメダメだな)
うるか (がんばってもがんばっても、空回りしてる気しかしないよ……)
成幸 「おー! ふたりともバタ足で進めるようになってきたなー。すごいすごい!」
葉月&和樹 「「えへへー」」
ピンポンパンポン
『休憩時間に入ります。プールから上がってください』
成幸 「ん、もう休憩時間か。じゃあプールから上がろうか」
葉月&和樹 「「はーい!」」
成幸 「ほら、うるかも」
うるか 「へ? あ、う、うん。そだね……」
成幸 「……?」
成幸 (うるか……?)
………………
うるか 「………………」
うるか (……はぁ。あたし、やっぱりダメダメだな)
うるか (がんばってもがんばっても、空回りしてる気しかしないよ……)
成幸 「おー! ふたりともバタ足で進めるようになってきたなー。すごいすごい!」
葉月&和樹 「「えへへー」」
ピンポンパンポン
『休憩時間に入ります。プールから上がってください』
成幸 「ん、もう休憩時間か。じゃあプールから上がろうか」
葉月&和樹 「「はーい!」」
成幸 「ほら、うるかも」
うるか 「へ? あ、う、うん。そだね……」
成幸 「……?」
成幸 (うるか……?)
136:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:18:48 :UawLMgbI
………………ベンチ
うるか 「………………」
うるか 「……はぁ」
うるか (あたし、何やってんだろ。全然うまくできなかったよ……)
智波 「うーるかっ」 あゆ子 「よっ」
うるか 「? 海っち、川っち……」
智波 「見てたよー、うるか」 ワクワク 「唯我くんと一緒に子どもたちに教えてたでしょー」
あゆ子 「どうだ? ちゃんと唯我にアピールできたか?」
うるか 「………………」
うるか 「……えへへ、むつかしいかな。なかなかうまくいかないね」
うるか 「成幸に手伝ってもらって、なんとかなったって感じだよ。それどころじゃなかった、かな」
あゆ子 「うるか……」
智波 「あ……ご、ごめんね? 浮かれたこと聞いちゃって……」
うるか 「ううん。大丈夫。こっちこそごめんね」
うるか 「……ちょっと飲み物でも買ってくる。またね、海っち、川っち」
………………ベンチ
うるか 「………………」
うるか 「……はぁ」
うるか (あたし、何やってんだろ。全然うまくできなかったよ……)
智波 「うーるかっ」 あゆ子 「よっ」
うるか 「? 海っち、川っち……」
智波 「見てたよー、うるか」 ワクワク 「唯我くんと一緒に子どもたちに教えてたでしょー」
あゆ子 「どうだ? ちゃんと唯我にアピールできたか?」
うるか 「………………」
うるか 「……えへへ、むつかしいかな。なかなかうまくいかないね」
うるか 「成幸に手伝ってもらって、なんとかなったって感じだよ。それどころじゃなかった、かな」
あゆ子 「うるか……」
智波 「あ……ご、ごめんね? 浮かれたこと聞いちゃって……」
うるか 「ううん。大丈夫。こっちこそごめんね」
うるか 「……ちょっと飲み物でも買ってくる。またね、海っち、川っち」
137:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:19:33 :UawLMgbI
………………
うるか 「……はぁ。ふたりに変なところ見せちゃったな」
うるか 「あたしから元気取ったら何が残るんだよー、ってね……」
うるか 「はは……」 ズーン (……自分で言っててヘコんできたよ)
―――― 『……逆に、まともに泳げないから、かな』
―――― 『補講で散々教えてもらったことを、こいつらに分かりやすく伝えるだけだからさ』
―――― 『それは逆に、泳げない俺だからこそできることかな、って』
うるか 「………………」
うるか 「……ほんと、成幸はすごいな……――」
成幸 「――へ? 俺がどうかしたか?」
うるか 「へぇ!?」 ガバッ 「な、成幸!?」
成幸 「よっ。どうした、うるか?」
うるか 「……ベ、べつに、何もないよ」
………………
うるか 「……はぁ。ふたりに変なところ見せちゃったな」
うるか 「あたしから元気取ったら何が残るんだよー、ってね……」
うるか 「はは……」 ズーン (……自分で言っててヘコんできたよ)
―――― 『……逆に、まともに泳げないから、かな』
―――― 『補講で散々教えてもらったことを、こいつらに分かりやすく伝えるだけだからさ』
―――― 『それは逆に、泳げない俺だからこそできることかな、って』
うるか 「………………」
うるか 「……ほんと、成幸はすごいな……――」
成幸 「――へ? 俺がどうかしたか?」
うるか 「へぇ!?」 ガバッ 「な、成幸!?」
成幸 「よっ。どうした、うるか?」
うるか 「……ベ、べつに、何もないよ」
138:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:20:08 :UawLMgbI
成幸 「そうか? ならいいけど……」
成幸 「……ほら、葉月と和樹がお世話になったお礼に奢ってやるよ。スポドリでいいか?」
うるか 「へ? い、いいよ。あたし何にもしてないし……」
成幸 「何もしてないことはないだろ。ふたりとも大喜びだったぜ?」
成幸 「ちなみに今は海原と川瀬に遊んでもらってて大喜びだ。ほんと、連れてきてよかったよ」
うるか 「でも、あたしは、ほんとに何もできてないし……」
成幸 「………………」 フゥ 「……じゃ、スポドリでいいな」
スッ
成幸 「……ほら」
うるか 「あっ……」
うるか 「……ありがと、成幸」
成幸 「どういたしまして」
成幸 「そうか? ならいいけど……」
成幸 「……ほら、葉月と和樹がお世話になったお礼に奢ってやるよ。スポドリでいいか?」
うるか 「へ? い、いいよ。あたし何にもしてないし……」
成幸 「何もしてないことはないだろ。ふたりとも大喜びだったぜ?」
成幸 「ちなみに今は海原と川瀬に遊んでもらってて大喜びだ。ほんと、連れてきてよかったよ」
うるか 「でも、あたしは、ほんとに何もできてないし……」
成幸 「………………」 フゥ 「……じゃ、スポドリでいいな」
スッ
成幸 「……ほら」
うるか 「あっ……」
うるか 「……ありがと、成幸」
成幸 「どういたしまして」
139:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:20:42 :UawLMgbI
………………
成幸 「………………」
うるか 「………………」
成幸 「……何に落ち込んでるんだ?」
うるか 「………………」 ハァ 「……やっぱり分かる? さすが成幸だね」
成幸 「いつも元気なお前が静かだからな。そりゃ分かるよ」
成幸 「……どうしたんだ?」
うるか 「反省中、なんだ……」
成幸 「反省?」
うるか 「……全然、うまく教えられなかったな、って」
うるか 「トクイな水泳のはずなのに、全然うまく教えられなかったな、って」
うるか 「せっかく来てくれた子どもたちなのに、成幸がいなかったら大変なことになってたよ……」
うるか 「だから、反省してるんだ」
成幸 「……そっか」
………………
成幸 「………………」
うるか 「………………」
成幸 「……何に落ち込んでるんだ?」
うるか 「………………」 ハァ 「……やっぱり分かる? さすが成幸だね」
成幸 「いつも元気なお前が静かだからな。そりゃ分かるよ」
成幸 「……どうしたんだ?」
うるか 「反省中、なんだ……」
成幸 「反省?」
うるか 「……全然、うまく教えられなかったな、って」
うるか 「トクイな水泳のはずなのに、全然うまく教えられなかったな、って」
うるか 「せっかく来てくれた子どもたちなのに、成幸がいなかったら大変なことになってたよ……」
うるか 「だから、反省してるんだ」
成幸 「……そっか」
140:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:21:19 :UawLMgbI
うるか 「……もっと、成幸みたいに」
成幸 「ん?」
うるか 「成幸みたいに教えられたらいいな、って思うのに、全然だね」
うるか 「へへへ、やっぱり無理なのかな。あたしバカだし」
うるか 「がんばってみたけど、うまくいかないし、やっぱりあたしは……」
うるか 「……成幸みたいには、なれないのかな」
成幸 「………………」
成幸 「……まぁ、俺みたいになる必要はないと思うけどさ、」
成幸 「できるよ。うるかなら。うるかなら、絶対教えられるようになるよ」
うるか 「……? 成幸?」
成幸 「だってうるかはさ、」
ニコッ
成幸 「“できない奴” の気持ちが分かるじゃないか」
うるか 「“できない奴” ……?」
うるか 「……もっと、成幸みたいに」
成幸 「ん?」
うるか 「成幸みたいに教えられたらいいな、って思うのに、全然だね」
うるか 「へへへ、やっぱり無理なのかな。あたしバカだし」
うるか 「がんばってみたけど、うまくいかないし、やっぱりあたしは……」
うるか 「……成幸みたいには、なれないのかな」
成幸 「………………」
成幸 「……まぁ、俺みたいになる必要はないと思うけどさ、」
成幸 「できるよ。うるかなら。うるかなら、絶対教えられるようになるよ」
うるか 「……? 成幸?」
成幸 「だってうるかはさ、」
ニコッ
成幸 「“できない奴” の気持ちが分かるじゃないか」
うるか 「“できない奴” ……?」
141:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:22:01 :UawLMgbI
成幸 「うん。うるかも、英語が苦手で、なかなか勉強進まなかっただろ?」
成幸 「水泳で伸び悩んだときもあっただろ?」
うるか 「う、うん。そうだけど……」
成幸 「そのとき辛かっただろ? 大変だっただろ? 悔しかっただろ?」
うるか 「……うん」
成幸 「それが分かるなら大丈夫だよ。お前はその気持ちが分かるから、大丈夫」
―――― 『なあ成幸 今の悔しさだけは忘れちゃならねえぞ』
―――― 『お前は できない奴をわかってやれる男になれ』
―――― 『「できない」 気持ちがわかるのは できなかった奴だけだからな』
成幸 「……今日はうまくいかなかったかもしれないけど、いつかきっとうまくできるよ、うるか」
ニッ
成幸 「だからまた、葉月と和樹に泳ぎを教えてやってくれよ」
うるか 「成幸……」
うるか 「うん、わかったよ! うるかちゃんに任せなさい!」
成幸 「うん。うるかも、英語が苦手で、なかなか勉強進まなかっただろ?」
成幸 「水泳で伸び悩んだときもあっただろ?」
うるか 「う、うん。そうだけど……」
成幸 「そのとき辛かっただろ? 大変だっただろ? 悔しかっただろ?」
うるか 「……うん」
成幸 「それが分かるなら大丈夫だよ。お前はその気持ちが分かるから、大丈夫」
―――― 『なあ成幸 今の悔しさだけは忘れちゃならねえぞ』
―――― 『お前は できない奴をわかってやれる男になれ』
―――― 『「できない」 気持ちがわかるのは できなかった奴だけだからな』
成幸 「……今日はうまくいかなかったかもしれないけど、いつかきっとうまくできるよ、うるか」
ニッ
成幸 「だからまた、葉月と和樹に泳ぎを教えてやってくれよ」
うるか 「成幸……」
うるか 「うん、わかったよ! うるかちゃんに任せなさい!」
142:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:22:31 :UawLMgbI
うるか 「………………」
ドキドキドキドキ……
うるか 「……あのときと、同じだ」
成幸 「へ?」
―――― 『一度負けたくらいで そこまで悔しがれるなんて すごく価値のある才能だと思うけどな』
―――― 『俺には何もないから うらやましいよ』
―――― 『そこまで本気になれるものがあるって すげぇ幸せなことだもんな』
うるか (……あのときと、同じ。成幸は、いつだってあたしが本当にほしい言葉をくれるんだ)
うるか (あたしのこと、励まして、勇気づけて……元気をくれるんだ……)
うるか 「……ううん。なんでもない。えへへ、ありがとね、成幸」
成幸 「? ん、おう……」
うるか (……だから、好きだよ)
カァアアアア……
うるか (大好きだよっ、成幸!)
うるか 「………………」
ドキドキドキドキ……
うるか 「……あのときと、同じだ」
成幸 「へ?」
―――― 『一度負けたくらいで そこまで悔しがれるなんて すごく価値のある才能だと思うけどな』
―――― 『俺には何もないから うらやましいよ』
―――― 『そこまで本気になれるものがあるって すげぇ幸せなことだもんな』
うるか (……あのときと、同じ。成幸は、いつだってあたしが本当にほしい言葉をくれるんだ)
うるか (あたしのこと、励まして、勇気づけて……元気をくれるんだ……)
うるか 「……ううん。なんでもない。えへへ、ありがとね、成幸」
成幸 「? ん、おう……」
うるか (……だから、好きだよ)
カァアアアア……
うるか (大好きだよっ、成幸!)
143:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:24:17 :UawLMgbI
………………
学園長 『皆様、本日の水泳教室は楽しんでいただけたでしょうか?』
学園長 『未来のトップアスリートを目指して、皆さんが本校に入学してくれるのを待っています』
滝沢先生 (……ったく。急に来たかと思えば、広報活動か)
滝沢先生 (熱心なことだね、ほんと。まぁ、学園のためといえば、何も言えないんだけどな)
学園長 『それでは、最後になりますが、本校が誇るトップスイマー、武元うるか選手によるデモンストレーションです!』
ワーワーワー!!! カッコイイーー!! カワイイー!! タケモトセンシュー!!! ガンバレーーー!!!
うるか 「やぁやぁー! どうもありがとうー!」
成幸 (ほんと、すごい人気だな、うるかの奴……)
うるか 「………………」
シーーーーン
成幸 (……真剣な泳ぎとなるや、表情が変わるんだもんなぁ)
成幸 (大人も子どもたちも、一斉に静かになった。その場を変えるような雰囲気を持っている、)
成幸 (ホンモノの、アスリート――――)
――――――ピッ…………パシャン……
………………
学園長 『皆様、本日の水泳教室は楽しんでいただけたでしょうか?』
学園長 『未来のトップアスリートを目指して、皆さんが本校に入学してくれるのを待っています』
滝沢先生 (……ったく。急に来たかと思えば、広報活動か)
滝沢先生 (熱心なことだね、ほんと。まぁ、学園のためといえば、何も言えないんだけどな)
学園長 『それでは、最後になりますが、本校が誇るトップスイマー、武元うるか選手によるデモンストレーションです!』
ワーワーワー!!! カッコイイーー!! カワイイー!! タケモトセンシュー!!! ガンバレーーー!!!
うるか 「やぁやぁー! どうもありがとうー!」
成幸 (ほんと、すごい人気だな、うるかの奴……)
うるか 「………………」
シーーーーン
成幸 (……真剣な泳ぎとなるや、表情が変わるんだもんなぁ)
成幸 (大人も子どもたちも、一斉に静かになった。その場を変えるような雰囲気を持っている、)
成幸 (ホンモノの、アスリート――――)
――――――ピッ…………パシャン……
144:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:25:07 :UawLMgbI
成幸 「………………」
ゴクリ
成幸 「……すげぇ」
葉月 「ふぁー……」 和樹 「はやいなぁ……」
成幸 (……それは、その場を支配するような泳ぎだった)
成幸 (競技会のときとは違う、ある種余裕のある伸びやかな泳ぎは、むしろ、)
成幸 (うるかの強さを誇示するかのようで……)
成幸 (そしてそれは、それ以上に……)
成幸 (……ただただ、美しくて)
成幸 (きっと、その場にいた誰もが、改めて垣間見ただろう)
成幸 (武元うるかというアスリートの、輝かしい未来を)
成幸 「………………」
ゴクリ
成幸 「……すげぇ」
葉月 「ふぁー……」 和樹 「はやいなぁ……」
成幸 (……それは、その場を支配するような泳ぎだった)
成幸 (競技会のときとは違う、ある種余裕のある伸びやかな泳ぎは、むしろ、)
成幸 (うるかの強さを誇示するかのようで……)
成幸 (そしてそれは、それ以上に……)
成幸 (……ただただ、美しくて)
成幸 (きっと、その場にいた誰もが、改めて垣間見ただろう)
成幸 (武元うるかというアスリートの、輝かしい未来を)
145:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:25:46 :UawLMgbI
………………
うるか 「……ぷはぁ」
うるか (まー、こんなもんかなー)
うるか (滝沢先生には、それなりに本気で泳げって言われたから、まぁまぁがんばったつもりだけど……――)
パチパチパチパチパチパチ!!!!
うるか 「……へ?」 (拍手……!?)
うるか (お、泳いで拍手されるって初めてだよ。なんか……恥ずかしいな……///)
うるか 「あっ……」
成幸 「……」 グッ
うるか (……成幸。ちゃんと見ててくれたんだ)
うるか 「………………」
うるか 「えへへっ……」
………………
うるか 「……ぷはぁ」
うるか (まー、こんなもんかなー)
うるか (滝沢先生には、それなりに本気で泳げって言われたから、まぁまぁがんばったつもりだけど……――)
パチパチパチパチパチパチ!!!!
うるか 「……へ?」 (拍手……!?)
うるか (お、泳いで拍手されるって初めてだよ。なんか……恥ずかしいな……///)
うるか 「あっ……」
成幸 「……」 グッ
うるか (……成幸。ちゃんと見ててくれたんだ)
うるか 「………………」
うるか 「えへへっ……」
146:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:26:17 :UawLMgbI
………………
「すごいね、たけもとせんしゅ!」 「かっこいいね!」
「それなのにきれいでかわいくて、アイドルみたい……」
「ねえねえお母さん! わたし、たけもとせんしゅみたいになりたい!」
葉月 「……うーん。わたしも目指そうかな……」
和樹 「ならまずは水希姉ちゃん越えないとなー」
成幸 「………………」 クスッ (……なんだよ、もうできてるじゃないか、うるか)
成幸 (今日は、あんまりうまく教えられなかったかもしれないけど、それでも……)
成幸 (泳いだだけで、こんなに多くの子どもたちに、たくさんのことを教えられてるんだ)
成幸 (……なぁ、うるか。お前は俺みたいになりたいなんて、嬉しいこと言ってくれるけどさ、)
成幸 (俺は……)
グッ
成幸 (……お前みたいになれるように、がんばってるんだよ)
成幸 (お前は俺の、憧れる人の、ひとりだから)
おわり
………………
「すごいね、たけもとせんしゅ!」 「かっこいいね!」
「それなのにきれいでかわいくて、アイドルみたい……」
「ねえねえお母さん! わたし、たけもとせんしゅみたいになりたい!」
葉月 「……うーん。わたしも目指そうかな……」
和樹 「ならまずは水希姉ちゃん越えないとなー」
成幸 「………………」 クスッ (……なんだよ、もうできてるじゃないか、うるか)
成幸 (今日は、あんまりうまく教えられなかったかもしれないけど、それでも……)
成幸 (泳いだだけで、こんなに多くの子どもたちに、たくさんのことを教えられてるんだ)
成幸 (……なぁ、うるか。お前は俺みたいになりたいなんて、嬉しいこと言ってくれるけどさ、)
成幸 (俺は……)
グッ
成幸 (……お前みたいになれるように、がんばってるんだよ)
成幸 (お前は俺の、憧れる人の、ひとりだから)
おわり
147:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:26:58 :UawLMgbI
………………幕間 「逆」
水希 「………………」 ブスーーーッ
成幸 「? 水希の奴不機嫌そうだけど、どうしたんだ?」
花枝 「どうも、葉月と和樹に自分が教える前に他人に水泳を教えられたから、ご機嫌ナナメみたいなの」
成幸 「我が妹ながらめんどくさい奴だな……」 (なるほどなぁ……)
花枝 「成幸。逆、逆」
成幸 (……うーん。仕方ない。ちょっとご機嫌取ってやるか)
成幸 「……あーあ、葉月と和樹も少し泳げるようになったし、俺が泳げないままじゃ長男の沽券に関わるなぁ」
成幸 「水希、今度水泳教えてくれないか?」
水希 「!?」 パァアアアアアア……!!! 「プールデート!? それとも海デート!?」
水希 「とりあえず室内プールデートだね! 来年の夏は海に行こうね!!」
成幸 「……お、おう」
花枝 「我が娘ながら少し怖いわね……」 (ほんと、仲良いわね)
葉月 「母ちゃん、」 和樹 「逆、逆」
おわり
………………幕間 「逆」
水希 「………………」 ブスーーーッ
成幸 「? 水希の奴不機嫌そうだけど、どうしたんだ?」
花枝 「どうも、葉月と和樹に自分が教える前に他人に水泳を教えられたから、ご機嫌ナナメみたいなの」
成幸 「我が妹ながらめんどくさい奴だな……」 (なるほどなぁ……)
花枝 「成幸。逆、逆」
成幸 (……うーん。仕方ない。ちょっとご機嫌取ってやるか)
成幸 「……あーあ、葉月と和樹も少し泳げるようになったし、俺が泳げないままじゃ長男の沽券に関わるなぁ」
成幸 「水希、今度水泳教えてくれないか?」
水希 「!?」 パァアアアアアア……!!! 「プールデート!? それとも海デート!?」
水希 「とりあえず室内プールデートだね! 来年の夏は海に行こうね!!」
成幸 「……お、おう」
花枝 「我が娘ながら少し怖いわね……」 (ほんと、仲良いわね)
葉月 「母ちゃん、」 和樹 「逆、逆」
おわり
148:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:27:36 :UawLMgbI
読んでくださった方ありがとうございました。
読んでくださった方ありがとうございました。
149:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/12(日) 01:40:34 :A/pleFt.
アニメ見て改めて思ったがあれだよな
妹ぐうかわ
アニメ見て改めて思ったがあれだよな
妹ぐうかわ
150:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/12(日) 02:30:12 :ejYXBOmc
おつ
おつ
151:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/12(日) 21:13:54 :WeWBxLmg
あすみー先輩もっともっと読みたいな
あすみー先輩もっともっと読みたいな
152:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/13(月) 00:36:13 :IV/CI4Dg
向こうに書けなかったからこっちに乙
脳内再生余裕過ぎてビビる
母の日との相性最悪だと思ってたけど、そういうパターンがあるのね
流石だわ
向こうに書けなかったからこっちに乙
脳内再生余裕過ぎてビビる
母の日との相性最悪だと思ってたけど、そういうパターンがあるのね
流石だわ
153:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/21(火) 23:22:03 :fSGKTlJQ
おつやで
おつやで
154:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/27(月) 00:19:52 :CjO02D7I
すまん、妹かわいすぎんか?
すまん、妹かわいすぎんか?
155:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:53:02 :AmFXmFmY
【ぼく勉】 真冬 「今週末、家を徹底的に掃除しようと思うの」
【ぼく勉】 真冬 「今週末、家を徹底的に掃除しようと思うの」
156:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:53:37 :AmFXmFmY
成幸 「あ、はい、分かりました。何時に伺えばいいですか?」
真冬 「……?」 ジトッ 「……君は、私のことを何だと思っているのかしら」
成幸 「へ?」
真冬 「私は教員よ? これ以上、生徒に家事の手伝いをさせるわけにはいかないわ」
真冬 「当然、やるのは私ひとりで、よ。私の部屋なのだから当たり前ね」
成幸 「はぁ……? まぁ、自分で掃除するのはいいことだと思いますけど……」
成幸 「なぜそれを俺に……?」
真冬 「これは私なりの、あなたに甘えることへの決別の決意表明なの」
真冬 「あなたに宣言することで、これ以上あなたに甘えることがないように自分を戒めるのよ」
真冬 「……と、いうことで」
真冬 「覚悟しておきなさい、唯我くん。私はもう、きみに惨めな姿をさらすことはないのよ」
成幸 (何を覚悟しろというんだろう……?)
真冬 「今度、きれいになった部屋にご招待して差し上げるわ」
成幸 (あ、掃除の手伝い抜きで家に伺うのはありなんだ……)
成幸 「あ、はい、分かりました。何時に伺えばいいですか?」
真冬 「……?」 ジトッ 「……君は、私のことを何だと思っているのかしら」
成幸 「へ?」
真冬 「私は教員よ? これ以上、生徒に家事の手伝いをさせるわけにはいかないわ」
真冬 「当然、やるのは私ひとりで、よ。私の部屋なのだから当たり前ね」
成幸 「はぁ……? まぁ、自分で掃除するのはいいことだと思いますけど……」
成幸 「なぜそれを俺に……?」
真冬 「これは私なりの、あなたに甘えることへの決別の決意表明なの」
真冬 「あなたに宣言することで、これ以上あなたに甘えることがないように自分を戒めるのよ」
真冬 「……と、いうことで」
真冬 「覚悟しておきなさい、唯我くん。私はもう、きみに惨めな姿をさらすことはないのよ」
成幸 (何を覚悟しろというんだろう……?)
真冬 「今度、きれいになった部屋にご招待して差し上げるわ」
成幸 (あ、掃除の手伝い抜きで家に伺うのはありなんだ……)
157:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:54:14 :AmFXmFmY
………………週末 HighStage
成幸 「ありがとうございましたー! いってらっしゃいませー!」
成幸 「ふー……」 (今日は本当にお客さん多いな。急に呼ばれるわけだよ……)
あすみ 「よ、後輩。雨だってのに、忙しいからって急に呼んで悪かったな」
成幸 「いえ、気にしないでください。頼られるのは嬉しいですから」
成幸 「最近、緒方たちもできるだけ自分で勉強しようとして、なかなか頼ってくれなくて……」
成幸 「桐須先生も……」
―――― 『これは私なりの、あなたとに甘えることへの決別の決意表明なの』
あすみ 「あん? 真冬センセがどうかしたのか?」
成幸 「あ、いえ、なんでもないです」
成幸 「とにかく、最近頼られることが少なくて落ち着かなかったのでちょうど良かったです」
あすみ 「お、おう。そうか、そりゃ良かった……のか?」
あすみ (なんかこいつ、将来付き合う女を次から次へとダメ人間にしそうだな……)
あすみ (……し、仕方ねーなぁ。被害者を出さないためにも、アタシがこいつのこともらってやるしかねーか///)
………………週末 HighStage
成幸 「ありがとうございましたー! いってらっしゃいませー!」
成幸 「ふー……」 (今日は本当にお客さん多いな。急に呼ばれるわけだよ……)
あすみ 「よ、後輩。雨だってのに、忙しいからって急に呼んで悪かったな」
成幸 「いえ、気にしないでください。頼られるのは嬉しいですから」
成幸 「最近、緒方たちもできるだけ自分で勉強しようとして、なかなか頼ってくれなくて……」
成幸 「桐須先生も……」
―――― 『これは私なりの、あなたとに甘えることへの決別の決意表明なの』
あすみ 「あん? 真冬センセがどうかしたのか?」
成幸 「あ、いえ、なんでもないです」
成幸 「とにかく、最近頼られることが少なくて落ち着かなかったのでちょうど良かったです」
あすみ 「お、おう。そうか、そりゃ良かった……のか?」
あすみ (なんかこいつ、将来付き合う女を次から次へとダメ人間にしそうだな……)
あすみ (……し、仕方ねーなぁ。被害者を出さないためにも、アタシがこいつのこともらってやるしかねーか///)
158:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:55:11 :AmFXmFmY
成幸 「じゃあ、俺そろそろトイレ掃除入りますね!」
あすみ 「ん、おう。じゃあ頼むわ」
成幸 (危ない危ない。先生のことを話すところだった……)
成幸 (小美浪先輩に話したら、また先生がからかわれてしまう)
成幸 「………………」
―――― 『今週末、家を徹底的に掃除しようと思うの』
成幸 (……先生、大丈夫かな。ちゃんとできてるかな)
成幸 (また部屋が嵐の後のようにならないといいんだけど……)
成幸 (って、人の心配してる場合じゃないな。急に呼ばれたとはいえ、バイト中なんだから)
成幸 (がんばらないと。よーし、トイレ掃除気合い入れてピッカピカにするぞ!)
成幸 「じゃあ、俺そろそろトイレ掃除入りますね!」
あすみ 「ん、おう。じゃあ頼むわ」
成幸 (危ない危ない。先生のことを話すところだった……)
成幸 (小美浪先輩に話したら、また先生がからかわれてしまう)
成幸 「………………」
―――― 『今週末、家を徹底的に掃除しようと思うの』
成幸 (……先生、大丈夫かな。ちゃんとできてるかな)
成幸 (また部屋が嵐の後のようにならないといいんだけど……)
成幸 (って、人の心配してる場合じゃないな。急に呼ばれたとはいえ、バイト中なんだから)
成幸 (がんばらないと。よーし、トイレ掃除気合い入れてピッカピカにするぞ!)
159:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:56:11 :AmFXmFmY
………………閉店後
成幸 (結構雨降ってたけど、結局閉店まで店は混み合ったままだったな……)
ヘトヘト
成幸 (……つかれた)
マチコ 「ごめんね、唯我クン。せっかくのお休みなのに、ずっとバイト入ってもらっちゃって……」
マチコ 「受験生なのに、悪いことしちゃったよね……」
成幸 「いえ、気にしないでください。お役に立てたなら何よりです」
マチコ 「唯我クン……」 キューン 「本当にいい子だねぇ、唯我クンは。そういうところ、大好きっ」
成幸 「は、はい。ありがとうございます……」 ドキドキ (気軽に大好きとか言わないでほしいなぁ……)
マチコ 「今日の出勤分、特別手当も足しておくからね。進学費用の足しにしてね」
店長 「えっ!?」
成幸 「へ? いいんですか?」
マチコ 「もちろん!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「いいですよね、店長?」
店長 「あ、ああ。もちろんだ。好きにつけてくれ……」 ガックリ
成幸 (マチコさん強い!!) キラキラキラ
………………閉店後
成幸 (結構雨降ってたけど、結局閉店まで店は混み合ったままだったな……)
ヘトヘト
成幸 (……つかれた)
マチコ 「ごめんね、唯我クン。せっかくのお休みなのに、ずっとバイト入ってもらっちゃって……」
マチコ 「受験生なのに、悪いことしちゃったよね……」
成幸 「いえ、気にしないでください。お役に立てたなら何よりです」
マチコ 「唯我クン……」 キューン 「本当にいい子だねぇ、唯我クンは。そういうところ、大好きっ」
成幸 「は、はい。ありがとうございます……」 ドキドキ (気軽に大好きとか言わないでほしいなぁ……)
マチコ 「今日の出勤分、特別手当も足しておくからね。進学費用の足しにしてね」
店長 「えっ!?」
成幸 「へ? いいんですか?」
マチコ 「もちろん!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「いいですよね、店長?」
店長 「あ、ああ。もちろんだ。好きにつけてくれ……」 ガックリ
成幸 (マチコさん強い!!) キラキラキラ
160:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:56:41 :AmFXmFmY
マチコ 「店内もトイレも、忙しいのにピッカピカにしてくれたしね」
マチコ 「給料日楽しみにしててね、唯我クンっ」
成幸 「はい、ありがとうございます、マチコさん!」
成幸 (……ピッカピカ、かぁ)
成幸 (大丈夫かな、桐須先生。ちゃんと掃除できてるかな……)
あすみ 「ほら、受験生だなんだっていうなら、もう解放してやれよ、マチコ」
あすみ 「……っていうか、それ言うならアタシも受験生なんだけどな?」
マチコ 「やだなぁあしゅみー。ナンバーワンのあしゅみーの給料をこれ以上上げたら、うちの店潰れちゃうよ」
あすみ 「……調子いいこと言いやがって。ま、いいけどな」
あすみ 「で、後輩、どうだ? この後、どこかで一緒に勉強、とか……」
あすみ 「今日親父は学会で遅くまで帰ってこないから、うち来るか?」
ドキドキドキドキ……
あすみ 「今日の詫びに晩飯も作るし、何だったら泊まってってくれてもいいし……」
マチコ (!? 今日のあしゅみー積極的! かわいい~!)
マチコ 「店内もトイレも、忙しいのにピッカピカにしてくれたしね」
マチコ 「給料日楽しみにしててね、唯我クンっ」
成幸 「はい、ありがとうございます、マチコさん!」
成幸 (……ピッカピカ、かぁ)
成幸 (大丈夫かな、桐須先生。ちゃんと掃除できてるかな……)
あすみ 「ほら、受験生だなんだっていうなら、もう解放してやれよ、マチコ」
あすみ 「……っていうか、それ言うならアタシも受験生なんだけどな?」
マチコ 「やだなぁあしゅみー。ナンバーワンのあしゅみーの給料をこれ以上上げたら、うちの店潰れちゃうよ」
あすみ 「……調子いいこと言いやがって。ま、いいけどな」
あすみ 「で、後輩、どうだ? この後、どこかで一緒に勉強、とか……」
あすみ 「今日親父は学会で遅くまで帰ってこないから、うち来るか?」
ドキドキドキドキ……
あすみ 「今日の詫びに晩飯も作るし、何だったら泊まってってくれてもいいし……」
マチコ (!? 今日のあしゅみー積極的! かわいい~!)
161:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:57:31 :AmFXmFmY
成幸 「………………」 (心配だ。また部屋をグチャグチャにしてないだろうか……)
あすみ 「……? 後輩?」
成幸 「……へ?」 ハッ 「あ……すみません。少し考え事してて、聞いてませんでした」
成幸 「もう一回言ってもらってもいいですか?」
あすみ 「………………」
成幸 「……先輩?」
あすみ 「……ふん。知らねー」 スタスタスタスタ……
成幸 「へ? 先輩? どうしたんですか?」
あすみ 「知らねーって言ってるだろ。ついてくんな。また今度な!」 スタスタスタスタ……
成幸 「行っちゃった……なんだったんだろ……?」
ポン
成幸 「……? マチコさん?」
マチコ 「今のは唯我クンが悪いよ……」 シミジミ……
店長 「……うむ」 シミジミ……
成幸 「店長まで!?」
成幸 「………………」 (心配だ。また部屋をグチャグチャにしてないだろうか……)
あすみ 「……? 後輩?」
成幸 「……へ?」 ハッ 「あ……すみません。少し考え事してて、聞いてませんでした」
成幸 「もう一回言ってもらってもいいですか?」
あすみ 「………………」
成幸 「……先輩?」
あすみ 「……ふん。知らねー」 スタスタスタスタ……
成幸 「へ? 先輩? どうしたんですか?」
あすみ 「知らねーって言ってるだろ。ついてくんな。また今度な!」 スタスタスタスタ……
成幸 「行っちゃった……なんだったんだろ……?」
ポン
成幸 「……? マチコさん?」
マチコ 「今のは唯我クンが悪いよ……」 シミジミ……
店長 「……うむ」 シミジミ……
成幸 「店長まで!?」
162:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:58:03 :AmFXmFmY
………………帰路
成幸 (あしゅみー先輩、何だったんだろ)
成幸 (俺が話を聞いてなかったせいで怒らせちゃったし、悪いことしちゃったな……)
成幸 (今度謝らないと……)
成幸 「………………」
テクテクテクテク……
成幸 「……ああ、もう」
成幸 (ここ通ったら家まで遠回りのはずなのに。雨も降ってるから、早く帰りたいってのに、何で俺は……)
成幸 (……まぁ、理由なんて分かりきってるけどさ)
―――― 『今週末、家を徹底的に掃除しようと思うの』
成幸 (この角を折れたら、マンションの入り口だ)
成幸 (もしあの人が困り果てていたら、きっと、入り口前に腰かけているはず……)
スッ………………
成幸 「………………」 (……いない、か。まぁ、雨だしな)
………………帰路
成幸 (あしゅみー先輩、何だったんだろ)
成幸 (俺が話を聞いてなかったせいで怒らせちゃったし、悪いことしちゃったな……)
成幸 (今度謝らないと……)
成幸 「………………」
テクテクテクテク……
成幸 「……ああ、もう」
成幸 (ここ通ったら家まで遠回りのはずなのに。雨も降ってるから、早く帰りたいってのに、何で俺は……)
成幸 (……まぁ、理由なんて分かりきってるけどさ)
―――― 『今週末、家を徹底的に掃除しようと思うの』
成幸 (この角を折れたら、マンションの入り口だ)
成幸 (もしあの人が困り果てていたら、きっと、入り口前に腰かけているはず……)
スッ………………
成幸 「………………」 (……いない、か。まぁ、雨だしな)
163:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:58:44 :AmFXmFmY
成幸 (……不思議な気持ちだ)
成幸 (ホッとしたような、肩すかしを食らったような……複雑な気分)
―――― 『私は教員よ? これ以上、生徒に家事の手伝いをさせるわけにはいかないわ』
―――― 『当然、やるのは私ひとりで、よ。私の部屋なのだから当たり前ね』
―――― 『これは私なりの、あなたに甘えることへの決別の決意表明なの』
―――― 『あなたに宣言することで、これ以上あなたに甘えることがないように自分を戒めるのよ』
成幸 (まぁ、あそこまで言っておいて、俺に頼るようなことはしないか……)
成幸 (……何やってんだ、俺は。早く帰ろ……)
成幸 「………………」 (でも、本当に大丈夫だろうか……)
トコトコトコトコ……
成幸 「………………」 (逆に、俺に頼ることができないから、余計とんでもないことになっているんじゃ……)
…………ピタッ
成幸 「……ちょっとだけ」
成幸 「ちょっとだけ、様子を見るだけだから……」
成幸 (……不思議な気持ちだ)
成幸 (ホッとしたような、肩すかしを食らったような……複雑な気分)
―――― 『私は教員よ? これ以上、生徒に家事の手伝いをさせるわけにはいかないわ』
―――― 『当然、やるのは私ひとりで、よ。私の部屋なのだから当たり前ね』
―――― 『これは私なりの、あなたに甘えることへの決別の決意表明なの』
―――― 『あなたに宣言することで、これ以上あなたに甘えることがないように自分を戒めるのよ』
成幸 (まぁ、あそこまで言っておいて、俺に頼るようなことはしないか……)
成幸 (……何やってんだ、俺は。早く帰ろ……)
成幸 「………………」 (でも、本当に大丈夫だろうか……)
トコトコトコトコ……
成幸 「………………」 (逆に、俺に頼ることができないから、余計とんでもないことになっているんじゃ……)
…………ピタッ
成幸 「……ちょっとだけ」
成幸 「ちょっとだけ、様子を見るだけだから……」
164:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:59:27 :AmFXmFmY
………………マンション二階廊下 201号室前
成幸 「………………」
成幸 (……いやいやいや!? 結局部屋の前まで来ちゃったぞ!?)
―――― 『違います誤解です!! 俺はここの住人の友人で……ッ!!』
―――― 『ストーカーはみんなそう言うんだよ!』
成幸 (いかん! 人の家の前で突っ立ってるなんて……)
成幸 (古橋のときみたいに、またいらん誤解を受けるかもしれない)
成幸 (もう帰ろう……)
成幸 「………………」
ボソッ
成幸 「……大丈夫、だよな」
『キャーーーーーーーー!!』
成幸 「……へ?」
………………マンション二階廊下 201号室前
成幸 「………………」
成幸 (……いやいやいや!? 結局部屋の前まで来ちゃったぞ!?)
―――― 『違います誤解です!! 俺はここの住人の友人で……ッ!!』
―――― 『ストーカーはみんなそう言うんだよ!』
成幸 (いかん! 人の家の前で突っ立ってるなんて……)
成幸 (古橋のときみたいに、またいらん誤解を受けるかもしれない)
成幸 (もう帰ろう……)
成幸 「………………」
ボソッ
成幸 「……大丈夫、だよな」
『キャーーーーーーーー!!』
成幸 「……へ?」
165:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:00:05 :AmFXmFmY
成幸 (先生の部屋から、悲鳴……?)
成幸 「………………」
成幸 「……いやいやいや! 迷ってる場合じゃない!!」
成幸 「先生!? 先生、大丈夫ですか!?」
ガチャッ!!
成幸 (あっ、鍵空いてる!!)
成幸 「すみません、先生! 入ります!!」
バン!!!!
成幸 「先生!」
真冬 「あ……唯我くん!!」
成幸 「……!?」
成幸 「せ……先生?」
カァアアアア……
成幸 「な、何で、バスタオル一枚なんで……――」
――――――タタタタタ……!!! ガバッ!!!! ムギュッ!!!
成幸 (先生の部屋から、悲鳴……?)
成幸 「………………」
成幸 「……いやいやいや! 迷ってる場合じゃない!!」
成幸 「先生!? 先生、大丈夫ですか!?」
ガチャッ!!
成幸 (あっ、鍵空いてる!!)
成幸 「すみません、先生! 入ります!!」
バン!!!!
成幸 「先生!」
真冬 「あ……唯我くん!!」
成幸 「……!?」
成幸 「せ……先生?」
カァアアアア……
成幸 「な、何で、バスタオル一枚なんで……――」
――――――タタタタタ……!!! ガバッ!!!! ムギュッ!!!
166:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:00:44 :AmFXmFmY
成幸 「うぺぇ!?」
真冬 「お……おおお、恐ろしいわ……」
ムギュッムギュッ!!!!
成幸 (れ、冷静に、今の状況を、分析すると……)
成幸 (バスタオル一枚を身体に巻き付けた、先生が……)
成幸 (俺の姿を認めるや否や、走り寄ってきて、抱きついて……)
成幸 (げ……玄関で、押し倒されて……いる……)
成幸 「………………」
成幸 (……なんだこの状況!?)
成幸 「きっ、桐須先生! 一体どうしたんですか!?」
成幸 「……っていうか、離れてください! 色々とマズいです!」
真冬 「む、無理……。腰が抜けてしまったわ……」
成幸 「な、なんかすごくデジャヴるんですが……まさか……」
カサカサカサカサカサカサ……
成幸 「……ああ、やっぱり出たんですね、G……」
成幸 「うぺぇ!?」
真冬 「お……おおお、恐ろしいわ……」
ムギュッムギュッ!!!!
成幸 (れ、冷静に、今の状況を、分析すると……)
成幸 (バスタオル一枚を身体に巻き付けた、先生が……)
成幸 (俺の姿を認めるや否や、走り寄ってきて、抱きついて……)
成幸 (げ……玄関で、押し倒されて……いる……)
成幸 「………………」
成幸 (……なんだこの状況!?)
成幸 「きっ、桐須先生! 一体どうしたんですか!?」
成幸 「……っていうか、離れてください! 色々とマズいです!」
真冬 「む、無理……。腰が抜けてしまったわ……」
成幸 「な、なんかすごくデジャヴるんですが……まさか……」
カサカサカサカサカサカサ……
成幸 「……ああ、やっぱり出たんですね、G……」
167:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:01:31 :AmFXmFmY
成幸 「っていうか、それにしたって、何で裸なんですか!?」
真冬 「シャワーを浴びていたのよ! そうしたら排水溝から……」
―――― G『やぁ』
真冬 「って……」 ガタガタガタガタ
成幸 「ああ、あいつら水回り移動しますからね。マンションとかだと排水溝から出てくるらしいですね」
真冬 「戦慄! 恐ろしいことを言わないで!!」
ハラ……ハラハラリ……
成幸 「……!?」 (せ、先生のバスタオルの締めがゆるくなりつつある……)
成幸 (これはマズい! 色々な意味でまずい!)
成幸 (っていうか今まさにダイレクトに感じられる先生のやわらかい肌とか濡れた髪とかがヤバいのに!)
成幸 (その上バスタオルがはだけたりしたら……それ以前に、ないとは思うけどこんなところを誰かに見られたら……――)
美春 「――――――こんにちはー、姉さまー!! 美春がサプライズで参りましたよー!」 バーーーン!!!
成幸 「!?」
成幸 「っていうか、それにしたって、何で裸なんですか!?」
真冬 「シャワーを浴びていたのよ! そうしたら排水溝から……」
―――― G『やぁ』
真冬 「って……」 ガタガタガタガタ
成幸 「ああ、あいつら水回り移動しますからね。マンションとかだと排水溝から出てくるらしいですね」
真冬 「戦慄! 恐ろしいことを言わないで!!」
ハラ……ハラハラリ……
成幸 「……!?」 (せ、先生のバスタオルの締めがゆるくなりつつある……)
成幸 (これはマズい! 色々な意味でまずい!)
成幸 (っていうか今まさにダイレクトに感じられる先生のやわらかい肌とか濡れた髪とかがヤバいのに!)
成幸 (その上バスタオルがはだけたりしたら……それ以前に、ないとは思うけどこんなところを誰かに見られたら……――)
美春 「――――――こんにちはー、姉さまー!! 美春がサプライズで参りましたよー!」 バーーーン!!!
成幸 「!?」
168:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:02:12 :AmFXmFmY
美春 「……へ?」
美春 「ね……姉、さま……? 唯我、成幸、さん……?」
ポワンポワンポワンポワン……
―――― 成幸 『せ、先生、ダメですよ。こんなところで……///』
―――― 真冬 『ふふ。ダメなことないわ、唯我くん。私、もうベッドまで我慢できないもの……』
―――― 成幸 『あっ……せ、先生……』
―――― 真冬 『ベッドではできない悪いコト、教えてアゲル……』
……ポワンポワンポワンポワン
美春 「………………」
成幸 「み、美春さん? 違います。これは、違うんですよ?」
美春 「………………」
成幸 「……あ、あの、美春さん?」
美春 「……へ?」
美春 「ね……姉、さま……? 唯我、成幸、さん……?」
ポワンポワンポワンポワン……
―――― 成幸 『せ、先生、ダメですよ。こんなところで……///』
―――― 真冬 『ふふ。ダメなことないわ、唯我くん。私、もうベッドまで我慢できないもの……』
―――― 成幸 『あっ……せ、先生……』
―――― 真冬 『ベッドではできない悪いコト、教えてアゲル……』
……ポワンポワンポワンポワン
美春 「………………」
成幸 「み、美春さん? 違います。これは、違うんですよ?」
美春 「………………」
成幸 「……あ、あの、美春さん?」
169:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:03:02 :AmFXmFmY
美春 「……うわぁああああああああああん!!! 美春の姉さまがーーーー!!」
美春 「すっかりイケない女教師になってしまいましたーーーーー!!!」
美春 「悪いコトってどんなコトですかーーーーーーー!?」
タタタタタタ……!!!
成幸 「えっ、ちょっ、待って!! 待ってください!! 美春さん!!」
成幸 「悪いコトって何の話ですかーーーー!!」
ムギュッ
成幸 「はうぁ!?」
真冬 「き、禁止! 何でもするから!! 私を置いていかないで!!」
成幸 (この人はこの人で何でもとか言い出したぞ!?)
成幸 (っていうか……///)
成幸 「せ、先生、どこも行かないですから、あんまりしがみつかないでください!!」
成幸 「い、色々と……!! 当たってますから!!」
美春 「……うわぁああああああああああん!!! 美春の姉さまがーーーー!!」
美春 「すっかりイケない女教師になってしまいましたーーーーー!!!」
美春 「悪いコトってどんなコトですかーーーーーーー!?」
タタタタタタ……!!!
成幸 「えっ、ちょっ、待って!! 待ってください!! 美春さん!!」
成幸 「悪いコトって何の話ですかーーーー!!」
ムギュッ
成幸 「はうぁ!?」
真冬 「き、禁止! 何でもするから!! 私を置いていかないで!!」
成幸 (この人はこの人で何でもとか言い出したぞ!?)
成幸 (っていうか……///)
成幸 「せ、先生、どこも行かないですから、あんまりしがみつかないでください!!」
成幸 「い、色々と……!! 当たってますから!!」
170:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:03:39 :AmFXmFmY
カサカサカサカサカサカサ……
真冬 「ヒッ!? 音がするわ! 動いてるわね!? 動いてるのね!?」
ムギュムギュムギュムギュッ!!!!
成幸 「い、いやいや、変に動かないでください!! 当たってるんですってば!!」
真冬 「当たってる!? (Gが)当たっているの!?」
成幸 「はい! ですから当たってます!! (Eが)当たってるんですって!!」
真冬 「きゅうっ……」
……クタッ
成幸 「へ……? 先生!? ちょっと、しっかりしてください! 先生!?」
真冬 「………………」
成幸 「先生ーーーー!! しっかりしてください!!!」
カサカサカサカサカサカサ……
真冬 「ヒッ!? 音がするわ! 動いてるわね!? 動いてるのね!?」
ムギュムギュムギュムギュッ!!!!
成幸 「い、いやいや、変に動かないでください!! 当たってるんですってば!!」
真冬 「当たってる!? (Gが)当たっているの!?」
成幸 「はい! ですから当たってます!! (Eが)当たってるんですって!!」
真冬 「きゅうっ……」
……クタッ
成幸 「へ……? 先生!? ちょっと、しっかりしてください! 先生!?」
真冬 「………………」
成幸 「先生ーーーー!! しっかりしてください!!!」
171:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:04:25 :AmFXmFmY
………………
真冬 「………………」
成幸 「………………」
オホン
真冬 「さっきは取り乱してしまって申し訳なかったわね」
成幸 (身だしなみを整えて、今さら体裁を保とうとしている……)
成幸 (まぁ、ゴキは退治したし、もう大丈夫だとは思うけど……)
真冬 「虫が出て、少し動揺してしまったわね。もう大丈夫よ」
成幸 「いや、えっと……」
グッチャァァアアア……
成幸 「何も大丈夫じゃないと思うんですが……。あの、今日は掃除をしていたのでは……?」
真冬 「し、していたわ。していたけれど……」
真冬 「やっぱり、なかなかどうして、うまくいかなくて……」
成幸 「……いや、掃除終わってないのに何でシャワーを浴びようとしたんですか」
真冬 「!? それは、その……」
………………
真冬 「………………」
成幸 「………………」
オホン
真冬 「さっきは取り乱してしまって申し訳なかったわね」
成幸 (身だしなみを整えて、今さら体裁を保とうとしている……)
成幸 (まぁ、ゴキは退治したし、もう大丈夫だとは思うけど……)
真冬 「虫が出て、少し動揺してしまったわね。もう大丈夫よ」
成幸 「いや、えっと……」
グッチャァァアアア……
成幸 「何も大丈夫じゃないと思うんですが……。あの、今日は掃除をしていたのでは……?」
真冬 「し、していたわ。していたけれど……」
真冬 「やっぱり、なかなかどうして、うまくいかなくて……」
成幸 「……いや、掃除終わってないのに何でシャワーを浴びようとしたんですか」
真冬 「!? それは、その……」
172:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:05:14 :AmFXmFmY
真冬 「そ、掃除中にバケツをひっくり返してしまって、水をかぶってしまったの」
真冬 「だから一度シャワーを浴びていたのよ」
成幸 「なるほど……」
成幸 (……いや、なるほどとか言ってるけどまったく理解はできないけど。本当に、器用に不器用な人だな……)
成幸 「………………」 ウズウズ (しっ……仕方ないなぁ……)
ニコニコニコニコ
成幸 「先生、俺、掃除手伝いますよ」
真冬 「えっ、いや、でも……」
成幸 「このままじゃ日をまたいでも終わらないですよ、掃除」
真冬 「うっ……」 モジモジ 「でも、今日こそ、あなたの手を借りずに……」
成幸 (まじめな人だもんなぁ。一度決めたことを曲げたくないんだよな……)
成幸 (その気持ちは汲んであげたいし、偉いと思うけど……)
成幸 (さすがに、この部屋の惨状をこのままにはできないし……)
真冬 「そ、掃除中にバケツをひっくり返してしまって、水をかぶってしまったの」
真冬 「だから一度シャワーを浴びていたのよ」
成幸 「なるほど……」
成幸 (……いや、なるほどとか言ってるけどまったく理解はできないけど。本当に、器用に不器用な人だな……)
成幸 「………………」 ウズウズ (しっ……仕方ないなぁ……)
ニコニコニコニコ
成幸 「先生、俺、掃除手伝いますよ」
真冬 「えっ、いや、でも……」
成幸 「このままじゃ日をまたいでも終わらないですよ、掃除」
真冬 「うっ……」 モジモジ 「でも、今日こそ、あなたの手を借りずに……」
成幸 (まじめな人だもんなぁ。一度決めたことを曲げたくないんだよな……)
成幸 (その気持ちは汲んであげたいし、偉いと思うけど……)
成幸 (さすがに、この部屋の惨状をこのままにはできないし……)
173:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:05:55 :AmFXmFmY
成幸 「………………」
成幸 「……分かりました。では、」
真冬 「……?」
成幸 「俺が勝手に手伝います。先生は、嫌だって言ってるのに、俺が勝手に手伝うだけなら、いいでしょう?」
真冬 「へ? あ……えっと……」
成幸 「あっ、先生はいいと言ったらダメですね。俺が勝手にやるんだから」
成幸 「ってことで、勝手に掃除始めます。迷惑だと思いますけど、ごめんなさい」
イソイソイソイソ……
真冬 「あっ……」
真冬 「………………」
真冬 「……ごめんなさい。お願いするわ」
成幸 「いえいえ、謝ることじゃないです」 ニコニコニコニコ
真冬 「……?」 (唯我くん、どうしてあんなに嬉しそうなのかしら……?)
成幸 「………………」
成幸 「……分かりました。では、」
真冬 「……?」
成幸 「俺が勝手に手伝います。先生は、嫌だって言ってるのに、俺が勝手に手伝うだけなら、いいでしょう?」
真冬 「へ? あ……えっと……」
成幸 「あっ、先生はいいと言ったらダメですね。俺が勝手にやるんだから」
成幸 「ってことで、勝手に掃除始めます。迷惑だと思いますけど、ごめんなさい」
イソイソイソイソ……
真冬 「あっ……」
真冬 「………………」
真冬 「……ごめんなさい。お願いするわ」
成幸 「いえいえ、謝ることじゃないです」 ニコニコニコニコ
真冬 「……?」 (唯我くん、どうしてあんなに嬉しそうなのかしら……?)
174:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:06:40 :AmFXmFmY
………………
真冬 「……おお」
ピカピカピカピカ……
成幸 「ふー。こんなもんですかね」
成幸 (なんとか日をまたぐ前には終わったな。良かった良かった……)
成幸 (一日中バイトしてからの掃除……結構ハードだったな……)
真冬 「……結局、今回もきみに頼ってしまったわね。唯我くん」
真冬 「生徒に――受験生にさせることじゃないわ。本当にごめんなさい……」
成幸 「いえ、気にしないでください。俺が好きでやったことですから」
真冬 「……そういうわけにはいかないわ」
成幸 「へ……?」
真冬 「私は教員で、あなたは生徒。そこは明確な線引きがなされなければならない」
真冬 「なのに私は、生徒であるあなたに、毎度毎度頼ってしまって……」
真冬 「……情けないわ」 ズーーン
………………
真冬 「……おお」
ピカピカピカピカ……
成幸 「ふー。こんなもんですかね」
成幸 (なんとか日をまたぐ前には終わったな。良かった良かった……)
成幸 (一日中バイトしてからの掃除……結構ハードだったな……)
真冬 「……結局、今回もきみに頼ってしまったわね。唯我くん」
真冬 「生徒に――受験生にさせることじゃないわ。本当にごめんなさい……」
成幸 「いえ、気にしないでください。俺が好きでやったことですから」
真冬 「……そういうわけにはいかないわ」
成幸 「へ……?」
真冬 「私は教員で、あなたは生徒。そこは明確な線引きがなされなければならない」
真冬 「なのに私は、生徒であるあなたに、毎度毎度頼ってしまって……」
真冬 「……情けないわ」 ズーーン
175:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:07:40 :AmFXmFmY
成幸 (あー……)
―――― 『あっ、先生はいいとら言ったダメですね。俺が勝手にやるんだから』
―――― 『ってことで、勝手に掃除始めます。迷惑だと思いますけど、ごめんなさい』
成幸 (まさかこんなに気に病んでいたなんて、申し訳ないことしてしまったな……)
成幸 「……あの、ごめんなさい。先生がそんなことまで考えているとは思わなくて……」
成幸 「勝手にお手伝いをしてしまって……」
真冬 「!? ち、違うのよ? きみを責めているわけではないの」
真冬 「ただ、自分が情けないだけで……」
成幸 「いや、でも俺……最初から、先生のこと、手伝うつもりでここに来たので……」
真冬 「え……?」 ハッ
―――― 『先生!』
―――― 『あ……唯我くん!!』
真冬 「そういえば、どうして唯我くんはうちに……?」
成幸 (あー……)
―――― 『あっ、先生はいいとら言ったダメですね。俺が勝手にやるんだから』
―――― 『ってことで、勝手に掃除始めます。迷惑だと思いますけど、ごめんなさい』
成幸 (まさかこんなに気に病んでいたなんて、申し訳ないことしてしまったな……)
成幸 「……あの、ごめんなさい。先生がそんなことまで考えているとは思わなくて……」
成幸 「勝手にお手伝いをしてしまって……」
真冬 「!? ち、違うのよ? きみを責めているわけではないの」
真冬 「ただ、自分が情けないだけで……」
成幸 「いや、でも俺……最初から、先生のこと、手伝うつもりでここに来たので……」
真冬 「え……?」 ハッ
―――― 『先生!』
―――― 『あ……唯我くん!!』
真冬 「そういえば、どうして唯我くんはうちに……?」
176:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:08:10 :AmFXmFmY
成幸 「……すみません、先生。俺、先生のことが心配で、家まで来てしまったんです」
成幸 「俺、今日一日、先生のことが頭から離れなくて……」
成幸 「大丈夫かなって、何度も考えてしまって……」
成幸 「こんなこと言うと気持ち悪いと思われるかもしれませんけど、」
成幸 「……わざと遠回りして、このマンションの前を通って……」
成幸 「先生がいないから大丈夫だろうって思ったんですけど、気づいたら部屋の前まで行ってて……」
成幸 「悲鳴が聞こえたから中に入ったんです」
真冬 「………………」
成幸 (……いやいやいや!! 冷静に考えてみると、俺、ストーカーそのものじゃないか!?)
成幸 「す、すみません! 家まで押しかけちゃって……」
成幸 「先生はもう俺の手伝いはいらないって言ってたのに、迷惑ですよね……」 ペコリ 「本当に、ごめんなさい!!」
成幸 (こ、怖い……。先生、どんな顔をしているんだろう。きっと、軽蔑するような顔を……)
真冬 「………………」
真冬 「……顔を上げなさい、唯我くん」
成幸 「……すみません、先生。俺、先生のことが心配で、家まで来てしまったんです」
成幸 「俺、今日一日、先生のことが頭から離れなくて……」
成幸 「大丈夫かなって、何度も考えてしまって……」
成幸 「こんなこと言うと気持ち悪いと思われるかもしれませんけど、」
成幸 「……わざと遠回りして、このマンションの前を通って……」
成幸 「先生がいないから大丈夫だろうって思ったんですけど、気づいたら部屋の前まで行ってて……」
成幸 「悲鳴が聞こえたから中に入ったんです」
真冬 「………………」
成幸 (……いやいやいや!! 冷静に考えてみると、俺、ストーカーそのものじゃないか!?)
成幸 「す、すみません! 家まで押しかけちゃって……」
成幸 「先生はもう俺の手伝いはいらないって言ってたのに、迷惑ですよね……」 ペコリ 「本当に、ごめんなさい!!」
成幸 (こ、怖い……。先生、どんな顔をしているんだろう。きっと、軽蔑するような顔を……)
真冬 「………………」
真冬 「……顔を上げなさい、唯我くん」
177:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:08:49 :AmFXmFmY
成幸 (あれ……? 先生、怒ってないのかな……?)
真冬 「謝る必要はないわ、唯我くん。私も同じだもの」
成幸 「同じ……?」
真冬 「ええ。恥ずかしい話だけど、白状するわ。私がシャワーを浴びていた本当の理由」
真冬 「バケツをひっくり返したなんてウソよ。本当は、表で自動車に水を浴びせられたの」
成幸 「……? え、でも、何でそんなウソを……?」
真冬 「それは、その……」
真冬 「……――みを、…………って、いた、から……」
成幸 「え? すみません、よく聞こえないんですが……」
真冬 「だっ、だから……! 君を……待っていたから、って言ったのよ……」
成幸 「へっ?」
真冬 「……君が来てくれるんじゃないかと期待して、外で待っていて……」
真冬 「そのときに自動車に水を浴びせられて、そんなこととても君には言えないから……」
真冬 「だから、ウソをついたの。ごめんなさい……」
成幸 (あれ……? 先生、怒ってないのかな……?)
真冬 「謝る必要はないわ、唯我くん。私も同じだもの」
成幸 「同じ……?」
真冬 「ええ。恥ずかしい話だけど、白状するわ。私がシャワーを浴びていた本当の理由」
真冬 「バケツをひっくり返したなんてウソよ。本当は、表で自動車に水を浴びせられたの」
成幸 「……? え、でも、何でそんなウソを……?」
真冬 「それは、その……」
真冬 「……――みを、…………って、いた、から……」
成幸 「え? すみません、よく聞こえないんですが……」
真冬 「だっ、だから……! 君を……待っていたから、って言ったのよ……」
成幸 「へっ?」
真冬 「……君が来てくれるんじゃないかと期待して、外で待っていて……」
真冬 「そのときに自動車に水を浴びせられて、そんなこととても君には言えないから……」
真冬 「だから、ウソをついたの。ごめんなさい……」
178:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:09:28 :AmFXmFmY
成幸 「い、いやいや、謝ることではないですよ。そんなの……」
成幸 (え……? でも、先生、俺を、待っていてくれた……?)
成幸 (俺を……///)
真冬 「恥ずかしいわ。私、教師だというのに、結局あなたを頼ろうとしてしまったわ」
―――― 『これは私なりの、あなたに甘えることへの決別の決意表明なの』
―――― 『あなたに宣言することで、これ以上あなたに甘えることがないように自分を戒めるの』
真冬 「あんなことまで言ったというのに、私は結局……」 ズーン
成幸 「………………」
成幸 「……えっと、あの、どう言ったらいいのか分からないので、思ったことをそのまま言いますね」
真冬 「……?」
成幸 「……すごく、嬉しいです」
真冬 「う、嬉しい……?」
成幸 「はい、さっきも言いましたけど、俺、先生のこと心配していたので……」
成幸 「先生が俺のことを頼ろうとしてくれたのが、とても嬉しいんです」
成幸 「い、いやいや、謝ることではないですよ。そんなの……」
成幸 (え……? でも、先生、俺を、待っていてくれた……?)
成幸 (俺を……///)
真冬 「恥ずかしいわ。私、教師だというのに、結局あなたを頼ろうとしてしまったわ」
―――― 『これは私なりの、あなたに甘えることへの決別の決意表明なの』
―――― 『あなたに宣言することで、これ以上あなたに甘えることがないように自分を戒めるの』
真冬 「あんなことまで言ったというのに、私は結局……」 ズーン
成幸 「………………」
成幸 「……えっと、あの、どう言ったらいいのか分からないので、思ったことをそのまま言いますね」
真冬 「……?」
成幸 「……すごく、嬉しいです」
真冬 「う、嬉しい……?」
成幸 「はい、さっきも言いましたけど、俺、先生のこと心配していたので……」
成幸 「先生が俺のことを頼ろうとしてくれたのが、とても嬉しいんです」
179:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:10:12 :AmFXmFmY
成幸 「……もちろん、俺と先生は生徒と教師で、線引きは必要でしょうけど、」
成幸 「でも、俺は、こうやって先生の部屋を片付けるの嫌いじゃないです。だから……」
成幸 「もし先生が嫌でないなら、これからもずっと先生の部屋の掃除をしたいです!」
真冬 「ずっ……ずっと……?」
成幸 「はい! むしろ、高校を卒業してからの方が健全ですよね!」
真冬 「そ、それはその通りだと思うけど……」
真冬 「君は、高校を卒業した後も、私の家に来て、掃除をしてくれるというの?」
成幸 「はい!」
真冬 「っ……」
真冬 (まっすぐ返事をしてくれるものだわ。まったく、こっちの気も知らないで……)
―――― 『最愛の息子が…… 親のいぬ間に半裸の年上女性を連れ込んで…… 私は一体どうしたら……』
―――― 『あぁぁやっぱりダメエェ!! そういうのはせめて!! せめてしっかり卒業してからに……』
―――― 『あ でもなんにせよそういうのはちゃんと卒業してからね』
真冬 (お母さんを心配させないように配慮したこっちの気も知らないで……まったく……)
成幸 「……もちろん、俺と先生は生徒と教師で、線引きは必要でしょうけど、」
成幸 「でも、俺は、こうやって先生の部屋を片付けるの嫌いじゃないです。だから……」
成幸 「もし先生が嫌でないなら、これからもずっと先生の部屋の掃除をしたいです!」
真冬 「ずっ……ずっと……?」
成幸 「はい! むしろ、高校を卒業してからの方が健全ですよね!」
真冬 「そ、それはその通りだと思うけど……」
真冬 「君は、高校を卒業した後も、私の家に来て、掃除をしてくれるというの?」
成幸 「はい!」
真冬 「っ……」
真冬 (まっすぐ返事をしてくれるものだわ。まったく、こっちの気も知らないで……)
―――― 『最愛の息子が…… 親のいぬ間に半裸の年上女性を連れ込んで…… 私は一体どうしたら……』
―――― 『あぁぁやっぱりダメエェ!! そういうのはせめて!! せめてしっかり卒業してからに……』
―――― 『あ でもなんにせよそういうのはちゃんと卒業してからね』
真冬 (お母さんを心配させないように配慮したこっちの気も知らないで……まったく……)
180:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:11:04 :AmFXmFmY
真冬 (お母さんを不安にさせまいと、君を家から遠ざけようとしたというのに……)
成幸 (? 先生、黙り込んじゃってどうしたんだろ……?)
真冬 (あ、でも……)
真冬 (“卒業” してからなら、いいのかしら……?)
真冬 「………………」
ハッ
真冬 (教師である私が、一体何を考えているのかしら!?)
真冬 (でも、もし……もしも……)
―――― 『でも、俺は、こうやって先生の部屋を片付けるの嫌いじゃないです。だから……』
―――― 『もし先生が嫌でないなら、これからもずっと先生の部屋の掃除をしたいです!』
真冬 (卒業した後も、本当に彼が同じように言ってくれるなら……)
真冬 (……少し、お言葉に甘えても、いいのかしら)
おわり
真冬 (お母さんを不安にさせまいと、君を家から遠ざけようとしたというのに……)
成幸 (? 先生、黙り込んじゃってどうしたんだろ……?)
真冬 (あ、でも……)
真冬 (“卒業” してからなら、いいのかしら……?)
真冬 「………………」
ハッ
真冬 (教師である私が、一体何を考えているのかしら!?)
真冬 (でも、もし……もしも……)
―――― 『でも、俺は、こうやって先生の部屋を片付けるの嫌いじゃないです。だから……』
―――― 『もし先生が嫌でないなら、これからもずっと先生の部屋の掃除をしたいです!』
真冬 (卒業した後も、本当に彼が同じように言ってくれるなら……)
真冬 (……少し、お言葉に甘えても、いいのかしら)
おわり
181:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:11:54 :AmFXmFmY
………………幕間 『責任』
真冬 (!? でも、このまま受験生の彼の勉強の邪魔ばかりしていては……)
―――― 成幸 『うぅ……第一志望に落ちてしまった……』
真冬 「………………」 ワナワナワナ (それはまずいわ! 絶対ダメよ!)
真冬 (そんなことになったら、“先生” にも顔向けできないわ!)
真冬 (でも、もし、万が一そういうことになったら……)
成幸 「……? あの、先生? どうかしましたか?」
真冬 「………………」
ガシッ
成幸 「!? せ、先生……? ど、どうして手を……///」
真冬 「安心して、唯我くん!」
真冬 「万が一のことがあったら、私が責任を取ってあげるから!!」
成幸 「!?」
おわり
………………幕間 『責任』
真冬 (!? でも、このまま受験生の彼の勉強の邪魔ばかりしていては……)
―――― 成幸 『うぅ……第一志望に落ちてしまった……』
真冬 「………………」 ワナワナワナ (それはまずいわ! 絶対ダメよ!)
真冬 (そんなことになったら、“先生” にも顔向けできないわ!)
真冬 (でも、もし、万が一そういうことになったら……)
成幸 「……? あの、先生? どうかしましたか?」
真冬 「………………」
ガシッ
成幸 「!? せ、先生……? ど、どうして手を……///」
真冬 「安心して、唯我くん!」
真冬 「万が一のことがあったら、私が責任を取ってあげるから!!」
成幸 「!?」
おわり
182:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:12:31 :AmFXmFmY
読んでくださった方ありがとうございました。
読んでくださった方ありがとうございました。
183:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:18:21 :AmFXmFmY
184:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:19:49 :AmFXmFmY
185:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:57:29 :XaFv5NuY
来てるやんけ!!
来てるやんけ!!
186:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 00:03:50 :Ca35RFNY
おつんこ
文乃が好きだから文乃で、
と思ったけど水希ちゃんでお願いします!
おつんこ
文乃が好きだから文乃で、
と思ったけど水希ちゃんでお願いします!
189:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 00:27:13 :WO/bOOK.
乙です
乙です
190:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:23:58 :cxG0DenQ
【ぼく勉】 成幸 「今週末は、水希と出かける約束なんだ」
【ぼく勉】 成幸 「今週末は、水希と出かける約束なんだ」
191:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:24:28 :cxG0DenQ
うるか 「ほへー、みずきんと?」
成幸 「ああ、買い物に付き合ってほしいらしいんだ」
成幸 「勉強もあるけど、最近あんまりあいつに構えてないしな」
成幸 「ま、たまの家族サービスかな」
理珠 「サラリーマンみたいなことを言いますね……」
文乃 (ふふ、成幸くん、微笑ましいなぁ。パパみたい)
ハッ
文乃 (……ん? 今週末?)
ペラッ……ペラッ……
文乃 「………………」
文乃 「……えっと、成幸くん、あの、水を差すようで悪いんだけど、」
成幸 「ん? どうした、古橋?」
文乃 「今週末、わたしの新しい問題集選びに付き合ってくれる約束をしていたような……」
成幸 「え……?」
うるか 「ほへー、みずきんと?」
成幸 「ああ、買い物に付き合ってほしいらしいんだ」
成幸 「勉強もあるけど、最近あんまりあいつに構えてないしな」
成幸 「ま、たまの家族サービスかな」
理珠 「サラリーマンみたいなことを言いますね……」
文乃 (ふふ、成幸くん、微笑ましいなぁ。パパみたい)
ハッ
文乃 (……ん? 今週末?)
ペラッ……ペラッ……
文乃 「………………」
文乃 「……えっと、成幸くん、あの、水を差すようで悪いんだけど、」
成幸 「ん? どうした、古橋?」
文乃 「今週末、わたしの新しい問題集選びに付き合ってくれる約束をしていたような……」
成幸 「え……?」
192:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:25:20 :cxG0DenQ
成幸 「!? そういやそんな約束してたような気がするぞ……」
ペラッ……ペラッ……
成幸 「で、でも、手帳の予定表には何も書いてないぞ。おかしいな……」
文乃 「えっと、その約束したとき、たしか成幸くんは、」
文乃 「……手帳じゃなくて、スマートフォンの方に予定を登録していたような……」
成幸 「へ……?」
スッ……
成幸 「うわっ、ほんとだ。しっかりカレンダーに予定登録してある……」
理珠 「……まったく。機械オンチなのに無理してスマホの機能を使うからです」
うるか 「あちゃー。完全にブッキングしちゃってるねぇ」
成幸 「ど、どうしよう。水希とは昨日約束してしまったし……」
成幸 「古橋とはもっと前から約束してるわけだし……」
オロオロオロオロ……
文乃 「………………」 ハァ 「……まったくもう、仕方ない弟だよ、君は」
文乃 「わたしのことは気にしなくていいよ。また別の日に付き合ってよ」
成幸 「!? そういやそんな約束してたような気がするぞ……」
ペラッ……ペラッ……
成幸 「で、でも、手帳の予定表には何も書いてないぞ。おかしいな……」
文乃 「えっと、その約束したとき、たしか成幸くんは、」
文乃 「……手帳じゃなくて、スマートフォンの方に予定を登録していたような……」
成幸 「へ……?」
スッ……
成幸 「うわっ、ほんとだ。しっかりカレンダーに予定登録してある……」
理珠 「……まったく。機械オンチなのに無理してスマホの機能を使うからです」
うるか 「あちゃー。完全にブッキングしちゃってるねぇ」
成幸 「ど、どうしよう。水希とは昨日約束してしまったし……」
成幸 「古橋とはもっと前から約束してるわけだし……」
オロオロオロオロ……
文乃 「………………」 ハァ 「……まったくもう、仕方ない弟だよ、君は」
文乃 「わたしのことは気にしなくていいよ。また別の日に付き合ってよ」
193:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:26:00 :cxG0DenQ
成幸 「いや、しかしな。お前の勉強を円滑に進めるために、できるだけ早く参考書は買っておきたいし……」
成幸 「何より、お前の方が先に約束をしていたんだから、そっちをなくすというのも道義的にな……」
文乃 「そ、そこまで深刻に考えなくても……」
成幸 「………………」
成幸 「よしっ、決めた! 古橋、週末はやっぱり一緒に参考書選びをしよう!」
文乃 「えっ、でも水希ちゃんは?」
成幸 「水希も一緒に買い物に行く! 三人で一緒に行けば全部解決だ!」
文乃 「………………」
文乃 (……さも名案を思いついたような顔で何を言い出すのかな!?)
うるか 「まぁ、そうすれば問題ないよね」 理珠 「ですね」
文乃 (君たちもどうしてしたり顔でうなずけるのかな!?)
文乃 (相手はあの水希ちゃんだよ!? お兄ちゃんとのデートにわたしが着いていったりしたら……)
―――― 水希 『……へぇ。お兄ちゃんと私のデートを邪魔するつもりですか。いい度胸ですね』 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
文乃 (ってなるに決まってるじゃない!!)
成幸 「いや、しかしな。お前の勉強を円滑に進めるために、できるだけ早く参考書は買っておきたいし……」
成幸 「何より、お前の方が先に約束をしていたんだから、そっちをなくすというのも道義的にな……」
文乃 「そ、そこまで深刻に考えなくても……」
成幸 「………………」
成幸 「よしっ、決めた! 古橋、週末はやっぱり一緒に参考書選びをしよう!」
文乃 「えっ、でも水希ちゃんは?」
成幸 「水希も一緒に買い物に行く! 三人で一緒に行けば全部解決だ!」
文乃 「………………」
文乃 (……さも名案を思いついたような顔で何を言い出すのかな!?)
うるか 「まぁ、そうすれば問題ないよね」 理珠 「ですね」
文乃 (君たちもどうしてしたり顔でうなずけるのかな!?)
文乃 (相手はあの水希ちゃんだよ!? お兄ちゃんとのデートにわたしが着いていったりしたら……)
―――― 水希 『……へぇ。お兄ちゃんと私のデートを邪魔するつもりですか。いい度胸ですね』 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
文乃 (ってなるに決まってるじゃない!!)
194:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:26:37 :cxG0DenQ
成幸 「とりあえず帰ったら水希に聞いてみるから、またメッセージで伝えるな!」
文乃 「あっ、ちょっと、成幸くん!?」
成幸 「じゃあ、また明日な!」
ビューン!!!!
文乃 「……あー、もうっ。行っちゃったよ」
理珠 「? どうかしましたか、文乃?」
うるか 「文乃っち元気ない?」
文乃 「いや、うん、まぁ……大丈夫だよ……」
シュン……
文乃 「………………」
文乃 (……ふんだ。成幸くんの、バカ)
文乃 (参考書選びとはいえ、久々にふたりきりでのお出かけだって、楽しみにしてたのに)
文乃 (……楽しみに、してたのにな)
成幸 「とりあえず帰ったら水希に聞いてみるから、またメッセージで伝えるな!」
文乃 「あっ、ちょっと、成幸くん!?」
成幸 「じゃあ、また明日な!」
ビューン!!!!
文乃 「……あー、もうっ。行っちゃったよ」
理珠 「? どうかしましたか、文乃?」
うるか 「文乃っち元気ない?」
文乃 「いや、うん、まぁ……大丈夫だよ……」
シュン……
文乃 「………………」
文乃 (……ふんだ。成幸くんの、バカ)
文乃 (参考書選びとはいえ、久々にふたりきりでのお出かけだって、楽しみにしてたのに)
文乃 (……楽しみに、してたのにな)
195:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:27:08 :cxG0DenQ
………………週末 デパート
成幸 「……あ、古橋。悪い、待たせたな」
文乃 「成幸くん。ううん、今来たトコだよ。大丈夫」
成幸 「そうか。ならよかった」
文乃 「えへへ……」
文乃 (……なんか、デートみたいな受け答えしちゃった)
文乃 (これで……)
水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
水希 「……どうも、こんにちは、古橋さん」
文乃 「こ、こんにちは、水希ちゃん」
文乃 (……圧たっぷりの水希ちゃんがいなければなぁ、なんて)
ハッ
文乃 (いけないいけない。今日のわたしは、兄妹水入らずを邪魔してしまっている立場なんだから)
文乃 (謙虚な気持ちを忘れないようにしないと……)
文乃 「水希ちゃん、今日はごめんね。せっかく兄妹でのお出かけなのに、邪魔しちゃって……」
………………週末 デパート
成幸 「……あ、古橋。悪い、待たせたな」
文乃 「成幸くん。ううん、今来たトコだよ。大丈夫」
成幸 「そうか。ならよかった」
文乃 「えへへ……」
文乃 (……なんか、デートみたいな受け答えしちゃった)
文乃 (これで……)
水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
水希 「……どうも、こんにちは、古橋さん」
文乃 「こ、こんにちは、水希ちゃん」
文乃 (……圧たっぷりの水希ちゃんがいなければなぁ、なんて)
ハッ
文乃 (いけないいけない。今日のわたしは、兄妹水入らずを邪魔してしまっている立場なんだから)
文乃 (謙虚な気持ちを忘れないようにしないと……)
文乃 「水希ちゃん、今日はごめんね。せっかく兄妹でのお出かけなのに、邪魔しちゃって……」
196:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:27:41 :cxG0DenQ
水希 「ふふ、可笑しなことを言いますね、古橋さん」 ニコッ
文乃 (……? あれ、意外と怒ってないのかな……?)
水希 「しっかりと邪魔をしておいて、“ごめんね” なんて、ああ可笑しい……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
文乃 (あ、うん。しっかり怒ってるね、これは)
成幸 「こ、こらこら、水希。悪いのは約束をブッキングさせてしまった俺なんだから、古橋を責めるなよ」
水希 「………………」
ニコッ
水希 「……そうだね、お兄ちゃん。ごめんなさい、古橋さん。変なこと言っちゃって」
文乃 「う、ううん。大丈夫だよ。邪魔しちゃってるのは事実だし……」
成幸 「邪魔なんかじゃないよ。ほら、まずは古橋の問題集選びだ。行こうぜ」
水希 「うん、お兄ちゃん♪」
文乃 「うん、成幸くん。よろしくね」
水希 「ふふ、可笑しなことを言いますね、古橋さん」 ニコッ
文乃 (……? あれ、意外と怒ってないのかな……?)
水希 「しっかりと邪魔をしておいて、“ごめんね” なんて、ああ可笑しい……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
文乃 (あ、うん。しっかり怒ってるね、これは)
成幸 「こ、こらこら、水希。悪いのは約束をブッキングさせてしまった俺なんだから、古橋を責めるなよ」
水希 「………………」
ニコッ
水希 「……そうだね、お兄ちゃん。ごめんなさい、古橋さん。変なこと言っちゃって」
文乃 「う、ううん。大丈夫だよ。邪魔しちゃってるのは事実だし……」
成幸 「邪魔なんかじゃないよ。ほら、まずは古橋の問題集選びだ。行こうぜ」
水希 「うん、お兄ちゃん♪」
文乃 「うん、成幸くん。よろしくね」
197:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:28:42 :cxG0DenQ
………………書店
成幸 「うーん、古橋もだいぶ応用がきくようになってきたからな」
成幸 「ちょっと難しい問題集にするべきか……」
成幸 「いやしかし、受験も近い。今から応用を鍛えるよりは、基礎を固めた方が堅実か……」
成幸 「うーむ……」
水希 「………………」
文乃 「………………」
文乃 (うー……。問題集選びを手伝ってもらうと言えば聞こえはいいけど、実質選ぶのは成幸くんだし……)
文乃 (水希ちゃんとふたりきりは、少し気まずいな……)
文乃 「そ、そういえば、水希ちゃんも高校受験だよね」
文乃 「どこを受けるのかな?」
水希 「……一応、水泳のスポーツ推薦を狙っているので、取ってくれるところなら、どこでも」
水希 「二ツ葉でも、一ノ瀬でも、どこでも……」
文乃 「スポーツ推薦かぁ。大変だね、それは」
………………書店
成幸 「うーん、古橋もだいぶ応用がきくようになってきたからな」
成幸 「ちょっと難しい問題集にするべきか……」
成幸 「いやしかし、受験も近い。今から応用を鍛えるよりは、基礎を固めた方が堅実か……」
成幸 「うーむ……」
水希 「………………」
文乃 「………………」
文乃 (うー……。問題集選びを手伝ってもらうと言えば聞こえはいいけど、実質選ぶのは成幸くんだし……)
文乃 (水希ちゃんとふたりきりは、少し気まずいな……)
文乃 「そ、そういえば、水希ちゃんも高校受験だよね」
文乃 「どこを受けるのかな?」
水希 「……一応、水泳のスポーツ推薦を狙っているので、取ってくれるところなら、どこでも」
水希 「二ツ葉でも、一ノ瀬でも、どこでも……」
文乃 「スポーツ推薦かぁ。大変だね、それは」
198:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:29:25 :cxG0DenQ
水希 「大変でも、頑張らないと。武元先輩みたいになりたいですし、何より……」
文乃 「? 何より?」
水希 「……お兄ちゃんに、これ以上負担をかけられないから」
水希 「お兄ちゃんが、大学で伸び伸びと、がんばりたいことをがんばれるように……」
水希 「せめて私の高校の学費は、できる限り減らしたいから……」
文乃 「水希ちゃん……」
成幸 「……よし、決めた。この問題集がいいな!」
成幸 「おーい、古橋。ちょっと見てくれ。これがいいと思うんだけど、どうだー?」
文乃 「あ、うん! いま行くよ!」
文乃 (……そっか。そうだよね。成幸くんの家、裕福ってわけじゃないもんね)
―――― 『まぁそりゃ あなたの境遇には同情しますけど』
文乃 (……それなのに、あのとき……、あんな風に言ってくれたんだよね)
文乃 (本当に、優しくて良い子。成幸くんの妹って感じだよね……)
水希 「大変でも、頑張らないと。武元先輩みたいになりたいですし、何より……」
文乃 「? 何より?」
水希 「……お兄ちゃんに、これ以上負担をかけられないから」
水希 「お兄ちゃんが、大学で伸び伸びと、がんばりたいことをがんばれるように……」
水希 「せめて私の高校の学費は、できる限り減らしたいから……」
文乃 「水希ちゃん……」
成幸 「……よし、決めた。この問題集がいいな!」
成幸 「おーい、古橋。ちょっと見てくれ。これがいいと思うんだけど、どうだー?」
文乃 「あ、うん! いま行くよ!」
文乃 (……そっか。そうだよね。成幸くんの家、裕福ってわけじゃないもんね)
―――― 『まぁそりゃ あなたの境遇には同情しますけど』
文乃 (……それなのに、あのとき……、あんな風に言ってくれたんだよね)
文乃 (本当に、優しくて良い子。成幸くんの妹って感じだよね……)
199:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:30:22 :cxG0DenQ
………………水着店
成幸 「………………」
文乃 「………………」
成幸 「……買いたいものって、水着?」
水希 「うん! 実は、そろそろ部活用の水着がきつくてね。どこがとは言わないけど!」 ジーーーーッ
文乃 (めっちゃ見てくる! めっちゃ見てくる!)
文乃 (くぅぅぅ!! 中学生のくせにぃ~~~!!)
水希 「だから、新しい水着を買わなきゃなんだ。わたしひとりじゃ不安だから、お兄ちゃん、付き合って♪」
成幸 「不安も何も、サイズ合うの買うだけだろ!? しかも競泳用だろ!?」
水希 「いやぁ、ほら、間違えて古橋さんサイズのを買っちゃうとさ、」 ニコッ 「私には絶対入らないからさ」
文乃 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「……うん、そうだね、水希ちゃん。間違えたら大変だね」
ガシッ
水希 「へ……?」
文乃 「じゃあ、お姉さんが一緒に見てあげようかな。間違いなくサイズが合う水着を……」 ニコッ
………………水着店
成幸 「………………」
文乃 「………………」
成幸 「……買いたいものって、水着?」
水希 「うん! 実は、そろそろ部活用の水着がきつくてね。どこがとは言わないけど!」 ジーーーーッ
文乃 (めっちゃ見てくる! めっちゃ見てくる!)
文乃 (くぅぅぅ!! 中学生のくせにぃ~~~!!)
水希 「だから、新しい水着を買わなきゃなんだ。わたしひとりじゃ不安だから、お兄ちゃん、付き合って♪」
成幸 「不安も何も、サイズ合うの買うだけだろ!? しかも競泳用だろ!?」
水希 「いやぁ、ほら、間違えて古橋さんサイズのを買っちゃうとさ、」 ニコッ 「私には絶対入らないからさ」
文乃 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「……うん、そうだね、水希ちゃん。間違えたら大変だね」
ガシッ
水希 「へ……?」
文乃 「じゃあ、お姉さんが一緒に見てあげようかな。間違いなくサイズが合う水着を……」 ニコッ
200:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:31:04 :cxG0DenQ
………………数分後
水希 「………………」 ズーーーーン 「……お兄ちゃんに、見てもらう予定が……」
文乃 「………………」 ズーーーーン 「で、でけえ、だよ……。一ノ瀬に入ったら間違いなくC組以上だよ……」
成幸 「お前ら、何で水着店に入っただけでそんな満身創痍なんだ……?」
水希 「やってくれましたね、古橋さん……」
文乃 「ふふふ……。無為に年上に喧嘩を売るからこうなるんだよ、水希ちゃん……」
成幸 (……まぁなんか楽しそうだからいいか)
成幸 「そろそろお昼だな。せっかくデパートまで来たんだから、何か食べて行こうぜ」
水希 「で、デパートでお昼!? 私、そんなお金持ってないよ」
成幸 「心配するなよ。今日のお詫びだ。ふたりとも俺が奢ってやるよ」
水希 「お兄ちゃん、そんなお金あるの……?」
成幸 「バイトで貯めたお金があるよ。それにこんなことするのは今日だけだし、大丈夫だよ」
文乃 「でも、わたしまでご馳走になるのは悪いよ」
成幸 「水希の水着選び手伝ってくれたんだろ? そのお礼もあるから気にするなよ」
………………数分後
水希 「………………」 ズーーーーン 「……お兄ちゃんに、見てもらう予定が……」
文乃 「………………」 ズーーーーン 「で、でけえ、だよ……。一ノ瀬に入ったら間違いなくC組以上だよ……」
成幸 「お前ら、何で水着店に入っただけでそんな満身創痍なんだ……?」
水希 「やってくれましたね、古橋さん……」
文乃 「ふふふ……。無為に年上に喧嘩を売るからこうなるんだよ、水希ちゃん……」
成幸 (……まぁなんか楽しそうだからいいか)
成幸 「そろそろお昼だな。せっかくデパートまで来たんだから、何か食べて行こうぜ」
水希 「で、デパートでお昼!? 私、そんなお金持ってないよ」
成幸 「心配するなよ。今日のお詫びだ。ふたりとも俺が奢ってやるよ」
水希 「お兄ちゃん、そんなお金あるの……?」
成幸 「バイトで貯めたお金があるよ。それにこんなことするのは今日だけだし、大丈夫だよ」
文乃 「でも、わたしまでご馳走になるのは悪いよ」
成幸 「水希の水着選び手伝ってくれたんだろ? そのお礼もあるから気にするなよ」
201:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:31:41 :cxG0DenQ
文乃 「でも……」
水希 「………………」
水希 「……うん。じゃあ、ご馳走になろうかな」
水希 「もちろん、古橋さんも行きますよね?」
文乃 「へ……?」
文乃 「あ……えっと……」
文乃 「……じゃあ、わたしも、お言葉に甘えて……」
成幸 「決まりだな。じゃあ行こうぜ」
文乃 「……?」
文乃 (水希ちゃん、どうして……?)
文乃 「でも……」
水希 「………………」
水希 「……うん。じゃあ、ご馳走になろうかな」
水希 「もちろん、古橋さんも行きますよね?」
文乃 「へ……?」
文乃 「あ……えっと……」
文乃 「……じゃあ、わたしも、お言葉に甘えて……」
成幸 「決まりだな。じゃあ行こうぜ」
文乃 「……?」
文乃 (水希ちゃん、どうして……?)
202:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:32:16 :cxG0DenQ
………………
文乃 「ごちそうさまでした、成幸くん。美味しかったよ」
水希 「ごちそうさま、お兄ちゃん! ありがとね」
成幸 「いやいや、どういたしまして。ふたりとも、今日は悪かったな」
水希 「気にしてないよ。また今度、埋め合わせでデートしてくれればね」
成幸 「はは、さすがに受験が終わってからにしてくれよ……」
成幸 「……ん、ちょっとお手洗いに行ってくるな。待っててくれ」
水希 「はーい」
文乃 「いってらっしゃい、成幸くん」
水希 「………………」
水希 「……座って待ちましょうか」
文乃 「あ……うん」
………………
文乃 「ごちそうさまでした、成幸くん。美味しかったよ」
水希 「ごちそうさま、お兄ちゃん! ありがとね」
成幸 「いやいや、どういたしまして。ふたりとも、今日は悪かったな」
水希 「気にしてないよ。また今度、埋め合わせでデートしてくれればね」
成幸 「はは、さすがに受験が終わってからにしてくれよ……」
成幸 「……ん、ちょっとお手洗いに行ってくるな。待っててくれ」
水希 「はーい」
文乃 「いってらっしゃい、成幸くん」
水希 「………………」
水希 「……座って待ちましょうか」
文乃 「あ……うん」
203:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:32:52 :cxG0DenQ
水希 「………………」
水希 「……ふたりきりになれて良かったです。今日は、古橋さんとお話もしたかったので」
文乃 「ん……。だからお昼ご飯、わたしも一緒にって言ってくれたの?」
水希 「……それもあります」
文乃 「? それ “も” ?」
水希 「……気にしないでください。言葉の綾です」
オホン
水希 「そんなことより、お兄ちゃんが戻ってくる前に、聞きたいことがあるんです」
文乃 「……何かな?」
水希 「………………」
水希 「……古橋さんが家に泊まったとき、お風呂場で言っていた言葉は、本当ですか?」
文乃 「へ……?」
―――― 『わたしと…… お兄さんは 絶対そんな関係にはならないから』
文乃 「あっ……」 (あ、あのときの、あれか……)
水希 「………………」
水希 「……ふたりきりになれて良かったです。今日は、古橋さんとお話もしたかったので」
文乃 「ん……。だからお昼ご飯、わたしも一緒にって言ってくれたの?」
水希 「……それもあります」
文乃 「? それ “も” ?」
水希 「……気にしないでください。言葉の綾です」
オホン
水希 「そんなことより、お兄ちゃんが戻ってくる前に、聞きたいことがあるんです」
文乃 「……何かな?」
水希 「………………」
水希 「……古橋さんが家に泊まったとき、お風呂場で言っていた言葉は、本当ですか?」
文乃 「へ……?」
―――― 『わたしと…… お兄さんは 絶対そんな関係にはならないから』
文乃 「あっ……」 (あ、あのときの、あれか……)
204:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:33:25 :cxG0DenQ
水希 「………………」
文乃 「……えっと、その……」
文乃 「……もちろん、本当だよ。うそじゃないよ」
水希 「……本当ですか?」
水希 「本当に、兄のことを好きになったり、ましてや恋人になったりなんてこと、ないんですね?」
文乃 「………………」
文乃 「……うん。もちろん、そうだよ。わたしは……」
―――― 『天文学の前は…… 幸せなお嫁さんになるのも夢だったから!!』
―――― 『じゃあさ古橋…… 今からデートしないか』
―――― 『星のこと話してる古橋 俺は好きだけどな』
―――― 『お前が本当にやりたいこと 俺が 全力で応援してるからな』
文乃 「わ、わたし……は……」
―――― 『起きてる』
水希 「………………」
文乃 「……えっと、その……」
文乃 「……もちろん、本当だよ。うそじゃないよ」
水希 「……本当ですか?」
水希 「本当に、兄のことを好きになったり、ましてや恋人になったりなんてこと、ないんですね?」
文乃 「………………」
文乃 「……うん。もちろん、そうだよ。わたしは……」
―――― 『天文学の前は…… 幸せなお嫁さんになるのも夢だったから!!』
―――― 『じゃあさ古橋…… 今からデートしないか』
―――― 『星のこと話してる古橋 俺は好きだけどな』
―――― 『お前が本当にやりたいこと 俺が 全力で応援してるからな』
文乃 「わ、わたし……は……」
―――― 『起きてる』
205:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:34:04 :cxG0DenQ
文乃 「………………」
水希 「……古橋さん?」
文乃 「………………」
スッ……
文乃 「……ごめん、水希ちゃん」
水希 「……?」
文乃 「わたし、うそついたね。うそに、なっちゃったんだね……」
文乃 「ごめん、水希ちゃん。わたし、お兄さんのこと……成幸くんのこと、好き」
文乃 「大好き、なの……」
水希 「………………」
文乃 「……だから、そういう関係になりたい。恋人になりたい。成幸くんの……」
文乃 「お嫁さんに、なりたいっ……!」
水希 「………………」
文乃 「………………」
文乃 「………………」
水希 「……古橋さん?」
文乃 「………………」
スッ……
文乃 「……ごめん、水希ちゃん」
水希 「……?」
文乃 「わたし、うそついたね。うそに、なっちゃったんだね……」
文乃 「ごめん、水希ちゃん。わたし、お兄さんのこと……成幸くんのこと、好き」
文乃 「大好き、なの……」
水希 「………………」
文乃 「……だから、そういう関係になりたい。恋人になりたい。成幸くんの……」
文乃 「お嫁さんに、なりたいっ……!」
水希 「………………」
文乃 「………………」
206:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:34:48 :cxG0DenQ
水希 「………………」
フゥ
水希 「……そう。そうですか」
水希 「そう、ですよね」
文乃 「へ……?」
文乃 「怒らないの……?」
水希 「はぁ?」 ジロリ 「怒って欲しいんですか?」
文乃 「い、いや、そういうわけじゃないけど……」
水希 「怒りませんよ。怒れるわけないじゃないですか。お兄ちゃんのこと、好きになったことを」
水希 「仕方ないです。お兄ちゃんは本当に魅力的な人ですから」
文乃 「そっか……」
水希 「わたしはただ、煮え切らない態度を取っているあなたに怒っていただけです」
水希 「あなたは、好きになることを遠慮しているような、ためらっているような……」
水希 「……そんな風に、見えたから」
文乃 「んっ……」
水希 「………………」
フゥ
水希 「……そう。そうですか」
水希 「そう、ですよね」
文乃 「へ……?」
文乃 「怒らないの……?」
水希 「はぁ?」 ジロリ 「怒って欲しいんですか?」
文乃 「い、いや、そういうわけじゃないけど……」
水希 「怒りませんよ。怒れるわけないじゃないですか。お兄ちゃんのこと、好きになったことを」
水希 「仕方ないです。お兄ちゃんは本当に魅力的な人ですから」
文乃 「そっか……」
水希 「わたしはただ、煮え切らない態度を取っているあなたに怒っていただけです」
水希 「あなたは、好きになることを遠慮しているような、ためらっているような……」
水希 「……そんな風に、見えたから」
文乃 「んっ……」
207:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:35:30 :cxG0DenQ
文乃 「……そうだね。そうかもしれない」
文乃 「でも、決めたよ。わたし、もう逃げない。わたしは、“起きてる” から」
文乃 「わたし、負けたくない。成幸くんのこと、大好きだから」
水希 「……そうですか」
水希 「………………」
ギリッ
水希 「……私は……――」
文乃 「――――だからわたしたち、今からライバルだね!!」
水希 「……へ?」
文乃 「え? だってそうでしょ? わたしは成幸くんのことが好き。水希ちゃんも成幸くんのことが好き」
文乃 「ってことは、ライバルでしょ?」
水希 「………………」
水希 「……へぇ!?」 カァアアアア……
水希 「わ、わたしは、べ、べべべべべべつに!? お兄ちゃんのことなんか好きじゃないですけど!?」
文乃 「……そうだね。そうかもしれない」
文乃 「でも、決めたよ。わたし、もう逃げない。わたしは、“起きてる” から」
文乃 「わたし、負けたくない。成幸くんのこと、大好きだから」
水希 「……そうですか」
水希 「………………」
ギリッ
水希 「……私は……――」
文乃 「――――だからわたしたち、今からライバルだね!!」
水希 「……へ?」
文乃 「え? だってそうでしょ? わたしは成幸くんのことが好き。水希ちゃんも成幸くんのことが好き」
文乃 「ってことは、ライバルでしょ?」
水希 「………………」
水希 「……へぇ!?」 カァアアアア……
水希 「わ、わたしは、べ、べべべべべべつに!? お兄ちゃんのことなんか好きじゃないですけど!?」
208:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:36:04 :cxG0DenQ
文乃 「………………」
文乃 「え、えぇぇええ~~……今さらツンデレ妹キャラ出しちゃう……?」
水希 「だ、だってそんな、わたし、妹だし……」
水希 「お兄ちゃんは、お兄ちゃんだし……そんなの……」
文乃 「? でも、水希ちゃん、お兄ちゃんのこと好きなんでしょ?」
水希 「……そ、それは、まぁ……その……」
コクリ
水希 「……好き、です、けど」 ボソッ
文乃 「じゃあわたしたちライバルだよ! 負けないからね!」
水希 「ら、ライバルって……古橋さんは、変だと思わないんですか?」
水希 「気持ち悪いって思わないんですか? 私のこと……」
文乃 「へぇ? 何で?」
水希 「何でって……実の、血の繋がった兄が好きって、変でしょう……?」
文乃 「んー……まぁ、一般的な社会通念的にはズレてるかな、とは思うけど」
文乃 「でも、成幸くんのこと好きなんでしょ?」
文乃 「………………」
文乃 「え、えぇぇええ~~……今さらツンデレ妹キャラ出しちゃう……?」
水希 「だ、だってそんな、わたし、妹だし……」
水希 「お兄ちゃんは、お兄ちゃんだし……そんなの……」
文乃 「? でも、水希ちゃん、お兄ちゃんのこと好きなんでしょ?」
水希 「……そ、それは、まぁ……その……」
コクリ
水希 「……好き、です、けど」 ボソッ
文乃 「じゃあわたしたちライバルだよ! 負けないからね!」
水希 「ら、ライバルって……古橋さんは、変だと思わないんですか?」
水希 「気持ち悪いって思わないんですか? 私のこと……」
文乃 「へぇ? 何で?」
水希 「何でって……実の、血の繋がった兄が好きって、変でしょう……?」
文乃 「んー……まぁ、一般的な社会通念的にはズレてるかな、とは思うけど」
文乃 「でも、成幸くんのこと好きなんでしょ?」
209:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:36:57 :cxG0DenQ
水希 「す、好き……ですけど……」
文乃 「じゃあいいじゃない。マイノリティが尊重される時代だよ」
文乃 「妹がお兄ちゃんを好きでも、べつに問題ないじゃない。まぁ、遺伝子的にはちょっとアレかもしれないけど……」
グッ
文乃 「なんにせよ、がんばれ、水希ちゃん! 応援してるよ!」
水希 「………………」
クスッ
水希 「応援って……。それ、まずいんじゃないですか?」
文乃 「はっ!? そ、そういえば、わたしも成幸くんのこと好きなんだった!」
文乃 「い、今の取り消し! やっぱり応援はしない!」
文乃 「負けないからね、水希ちゃん!」
水希 「………………」 ニヤリ 「こちらこそ、です」
水希 「絶対負けませんからね、古橋さん!」
水希 「す、好き……ですけど……」
文乃 「じゃあいいじゃない。マイノリティが尊重される時代だよ」
文乃 「妹がお兄ちゃんを好きでも、べつに問題ないじゃない。まぁ、遺伝子的にはちょっとアレかもしれないけど……」
グッ
文乃 「なんにせよ、がんばれ、水希ちゃん! 応援してるよ!」
水希 「………………」
クスッ
水希 「応援って……。それ、まずいんじゃないですか?」
文乃 「はっ!? そ、そういえば、わたしも成幸くんのこと好きなんだった!」
文乃 「い、今の取り消し! やっぱり応援はしない!」
文乃 「負けないからね、水希ちゃん!」
水希 「………………」 ニヤリ 「こちらこそ、です」
水希 「絶対負けませんからね、古橋さん!」
210:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:37:49 :cxG0DenQ
水希 「………………」
水希 (ああ、この人は、こういう人だ……)
水希 (だからわたしは、この人のことが、好きなんだ……)
水希 (お兄ちゃんから約束のブッキングのことを聞いて、悔しくて、でも……)
水希 (同時に、古橋さんと一緒に出かけられるのが、少し楽しみで……)
水希 (そう、わかってたんだ。この人は、優しくて、とてもいい人)
水希 (わたしの、お兄ちゃんへの、拙い愛情すら、肯定してくれる人
―――― 『……それもあります』
―――― 『? それ “も” ?』
水希 (ああ、もう。バレてないよね)
水希 (“あなたにだったら、お兄ちゃんを任せてもいいよ” って……)
水希 (思いかけてしまっていること、バレていないよね……)
おわり
水希 「………………」
水希 (ああ、この人は、こういう人だ……)
水希 (だからわたしは、この人のことが、好きなんだ……)
水希 (お兄ちゃんから約束のブッキングのことを聞いて、悔しくて、でも……)
水希 (同時に、古橋さんと一緒に出かけられるのが、少し楽しみで……)
水希 (そう、わかってたんだ。この人は、優しくて、とてもいい人)
水希 (わたしの、お兄ちゃんへの、拙い愛情すら、肯定してくれる人
―――― 『……それもあります』
―――― 『? それ “も” ?』
水希 (ああ、もう。バレてないよね)
水希 (“あなたにだったら、お兄ちゃんを任せてもいいよ” って……)
水希 (思いかけてしまっていること、バレていないよね……)
おわり
211:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:38:38 :cxG0DenQ
………………幕間 『最強の敵』
水希 「それにしても、誰も彼も、お兄ちゃんのことを好きになりますね」
文乃 「ああ、りっちゃんたちのこと?」
水希 「そうです。緒方さんや、この前家に来ていた先輩と先生もです」
水希 「まったく。お兄ちゃんの魅力に気づくのはいいですが、虫みたいにたからないでほしいです」
文乃 「虫って……」
水希 「でも、大丈夫です。お兄ちゃんと私には、とてても心強い味方がいますから」
文乃 「味方?」
水希 「もちろん、武元先輩です!」
文乃 「えっ」
水希 「武元先輩は、いつもお兄ちゃんのことを気にかけてくれて、変化があるとすぐに教えてくれるんです!」
水希 「武元先輩だけは、私の味方なんです!」 キラキラキラキラ……
文乃 「あー……」
文乃 (……ごめん、水希ちゃん。うるかちゃんは多分、最強の敵だよ)
おわり
………………幕間 『最強の敵』
水希 「それにしても、誰も彼も、お兄ちゃんのことを好きになりますね」
文乃 「ああ、りっちゃんたちのこと?」
水希 「そうです。緒方さんや、この前家に来ていた先輩と先生もです」
水希 「まったく。お兄ちゃんの魅力に気づくのはいいですが、虫みたいにたからないでほしいです」
文乃 「虫って……」
水希 「でも、大丈夫です。お兄ちゃんと私には、とてても心強い味方がいますから」
文乃 「味方?」
水希 「もちろん、武元先輩です!」
文乃 「えっ」
水希 「武元先輩は、いつもお兄ちゃんのことを気にかけてくれて、変化があるとすぐに教えてくれるんです!」
水希 「武元先輩だけは、私の味方なんです!」 キラキラキラキラ……
文乃 「あー……」
文乃 (……ごめん、水希ちゃん。うるかちゃんは多分、最強の敵だよ)
おわり
212:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:39:48 :cxG0DenQ
読んでくださった方ありがとうございました。
安価もありがとうございました。
文乃さんと迷われているようだったので余計なお世話とは思いつつ文乃さんも入れてしまいました。
読んでくださった方ありがとうございました。
安価もありがとうございました。
文乃さんと迷われているようだったので余計なお世話とは思いつつ文乃さんも入れてしまいました。
213:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:45:27 :cxG0DenQ
214:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 14:06:48 :WO/bOOK.
乙
美春
乙
美春
215:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 17:42:01 :/Jb6XPw.
せんせー
せんせー
216:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 18:16:44 :szoPGfYA
乙
智波ちゃん
乙
智波ちゃん
217:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 18:22:43 :qv24418c
真冬先生
真冬先生
218:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 19:41:45 :s9TtTp0U
色々と早すぎてビビるわ?
色々と早すぎてビビるわ?
219:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 20:03:23 :7hh4/SuM
おつつつつ
文乃お姉ちゃんだからね、そら妹ともセットになるよ(錯乱)
おつつつつ
文乃お姉ちゃんだからね、そら妹ともセットになるよ(錯乱)
220:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 21:05:49 :0kLsBePI
乙
妹と文系の関係好きよ
乙
妹と文系の関係好きよ
221:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 22:30:19 :WO/bOOK.
サプライズ
サプライズ
222:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/31(金) 12:11:16 :dNyovOrg
誰得だよ
誰得だよ
223:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/31(金) 22:02:39 :M0/tNEls
公式で姉妹してて草
http://i.imgur.com/BR6EOIo.jpg
公式で姉妹してて草
http://i.imgur.com/BR6EOIo.jpg
225:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/02(日) 22:55:40 :.H2ShQb.
A組ですね…
http://i.imgur.com/JT0YSng.jpg
A組ですね…
http://i.imgur.com/JT0YSng.jpg
226:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/05(水) 00:14:15 :Kp9YTYeQ
12巻記念で誰か先生SS書いてくれないかなぁ
12巻記念で誰か先生SS書いてくれないかなぁ
227:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/05(水) 01:46:17 :1mj172Qg
シエンタ
シエンタ
228:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/06(木) 00:10:26 :35cU.sxE
1は小説版読んだのかな
1は小説版読んだのかな