1: ◆/BueNLs5lw:2014/12/23(火) 22:41:28.43 :jhJhzsou0
ゆゆゆの友奈と東郷さんss
百合 アニメで東郷さんが壁ぶっ壊す直前くらい
書きためなし
その時の私に見えていたこと。
自分の中で出した結論。
ほんの少しの救いもない。
きっと、後々になって、全く知らない誰かが言うのかもしれない。
『こうすれば良かったのに』とか『なぜ、ああしなかった』と。
仕方がないじゃない。
そうするしかなかった。
後、があるかは分からない。
けれど、後を作るつもりはもうない。
瞼の裏の桜吹雪が、色鮮やかに舞っていた。
それは、ただの思い出に過ぎない。
遠い、遠い日々の。
目の前でくうくうと寝息を立てる少女の髪を撫でる。
「ん……」
春も夏も彼女の傍にいて、
甘いぼたもちを作ってあげたかった。
ゆゆゆの友奈と東郷さんss
百合 アニメで東郷さんが壁ぶっ壊す直前くらい
書きためなし
その時の私に見えていたこと。
自分の中で出した結論。
ほんの少しの救いもない。
きっと、後々になって、全く知らない誰かが言うのかもしれない。
『こうすれば良かったのに』とか『なぜ、ああしなかった』と。
仕方がないじゃない。
そうするしかなかった。
後、があるかは分からない。
けれど、後を作るつもりはもうない。
瞼の裏の桜吹雪が、色鮮やかに舞っていた。
それは、ただの思い出に過ぎない。
遠い、遠い日々の。
目の前でくうくうと寝息を立てる少女の髪を撫でる。
「ん……」
春も夏も彼女の傍にいて、
甘いぼたもちを作ってあげたかった。
2: ◆/BueNLs5lw:2014/12/23(火) 22:52:37.28 :jhJhzsou0
ただ、今になって思う。ぼたもち、と言うのは神仏や先祖への供物とされていた。
そんなものを、友奈に食べさせ続けていたこと。
なんて、滑稽なのだろう。
まるで共食いだ。
ぼたもちが悪いわけではない。
全て、神樹様が悪いのだ。
全て、大赦が悪いのだ。
全て、バーテックスが悪いのだ。
全て――。
私は持っていた包みを机の上に置いた。
重箱を取り出す。
勇者部の部室には誰もいない。
窓から差し込む陽気があまりにもうららかで。
友奈が眠ってしまうのもしょうがない。
「友奈ちゃん……」
起こすのも可哀相かと思ったが、
これが最後ならば、
せめて彼女が口にして、
はにかむ顔を見るくらいは、
咎められることはないだろうか。
ただ、今になって思う。ぼたもち、と言うのは神仏や先祖への供物とされていた。
そんなものを、友奈に食べさせ続けていたこと。
なんて、滑稽なのだろう。
まるで共食いだ。
ぼたもちが悪いわけではない。
全て、神樹様が悪いのだ。
全て、大赦が悪いのだ。
全て、バーテックスが悪いのだ。
全て――。
私は持っていた包みを机の上に置いた。
重箱を取り出す。
勇者部の部室には誰もいない。
窓から差し込む陽気があまりにもうららかで。
友奈が眠ってしまうのもしょうがない。
「友奈ちゃん……」
起こすのも可哀相かと思ったが、
これが最後ならば、
せめて彼女が口にして、
はにかむ顔を見るくらいは、
咎められることはないだろうか。
3: ◆/BueNLs5lw:2014/12/23(火) 23:03:07.02 :jhJhzsou0
「ん……」
彼女の口の端が、ぴくりと動いた。
ついで、人差し指が机を掻いた。
目をこすりながら、
「おはよう……東郷さん」
「こんにちは、友奈ちゃん……。疲れてる所ごめんね」
「あ、違うよッ。お昼食べた後だったから……あれ、他のみんなは」
「まだ、来てないみたい」
頭を重そうに揺らして、友奈ははっと重箱を見やった。
「あれ……それ」
「ぼたもちよ」
彼女は目を輝かせた。
「ん……」
彼女の口の端が、ぴくりと動いた。
ついで、人差し指が机を掻いた。
目をこすりながら、
「おはよう……東郷さん」
「こんにちは、友奈ちゃん……。疲れてる所ごめんね」
「あ、違うよッ。お昼食べた後だったから……あれ、他のみんなは」
「まだ、来てないみたい」
頭を重そうに揺らして、友奈ははっと重箱を見やった。
「あれ……それ」
「ぼたもちよ」
彼女は目を輝かせた。
4: ◆/BueNLs5lw:2014/12/23(火) 23:13:20.07 :jhJhzsou0
他の部員を待とうかとも考えたが、昼休みはそう長くはない。
それに、二人きりの時間を大切にしたい。
早く友奈に食べてもらいたくて、私はお茶を淹れる。
昼下がりのティータイムに、友奈が舌鼓を打った。
「おーいしー!」
大げさなくらいの賛辞を述べる。
これが聞きたいから、作っていると言っても過言じゃない。
「お茶もどうぞ」
「うんッ」
彼女は優しくて。
私は心が痛い。
臆病な私。
彼女の本当の感想を聞くのが怖い。
けれど、あえて彼女は言うのだ。
私も分かっているから。
彼女の欠損部位のこと。
他の部員がいなくて、ほっとしているのはお互いなのかもしれない。
気を遣わせてしまうかもしれないから。
他の部員を待とうかとも考えたが、昼休みはそう長くはない。
それに、二人きりの時間を大切にしたい。
早く友奈に食べてもらいたくて、私はお茶を淹れる。
昼下がりのティータイムに、友奈が舌鼓を打った。
「おーいしー!」
大げさなくらいの賛辞を述べる。
これが聞きたいから、作っていると言っても過言じゃない。
「お茶もどうぞ」
「うんッ」
彼女は優しくて。
私は心が痛い。
臆病な私。
彼女の本当の感想を聞くのが怖い。
けれど、あえて彼女は言うのだ。
私も分かっているから。
彼女の欠損部位のこと。
他の部員がいなくて、ほっとしているのはお互いなのかもしれない。
気を遣わせてしまうかもしれないから。
5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2014/12/23(火) 23:22:09.19 :BdpGyhSio
期待
期待
6: ◆/BueNLs5lw:2014/12/23(火) 23:29:04.63 :jhJhzsou0
「友奈ちゃん……」
「なあに?」
口の端に着いたあんこを友奈がぺろりと舐めとった。
「私ね、友奈ちゃんのこと好きよ」
彼女は目を瞬く。
「うん、ありがとう! 私も好きだよ!」
彼女は呆気らかんと言って、私の瞳を見て、
「……東郷さん?」
首を捻る。
「ごめんねッ……ありがと。これからもずっと、友奈ちゃんの隣にいたいなって思ったの」
「任せて! 私も、東郷さんの傍にいるからね」
威勢が良い。
誰にでも、彼女は優しい。
でも、可能だろうか。
いや、無理だろう。
このまま、乃木園子のように、
ぼたもちみたいに、
神への供物として、
祀られる。
あの、大赦の奥へ安置される。
幾度、そんなことを繰り返してきたのか。
「友奈ちゃん……」
「なあに?」
口の端に着いたあんこを友奈がぺろりと舐めとった。
「私ね、友奈ちゃんのこと好きよ」
彼女は目を瞬く。
「うん、ありがとう! 私も好きだよ!」
彼女は呆気らかんと言って、私の瞳を見て、
「……東郷さん?」
首を捻る。
「ごめんねッ……ありがと。これからもずっと、友奈ちゃんの隣にいたいなって思ったの」
「任せて! 私も、東郷さんの傍にいるからね」
威勢が良い。
誰にでも、彼女は優しい。
でも、可能だろうか。
いや、無理だろう。
このまま、乃木園子のように、
ぼたもちみたいに、
神への供物として、
祀られる。
あの、大赦の奥へ安置される。
幾度、そんなことを繰り返してきたのか。
7: ◆/BueNLs5lw:2014/12/23(火) 23:41:51.49 :jhJhzsou0
これから、幾度繰り返される予定だったのか。
それにだけは抗いたいと思う。
それだけは耐えられない。
敵は誰だ。
親友を傷つける者は一体何なのか。
私たちはなんのために、
あの化け物を排除してきたのか。
いつか救われる。
全ての希望のために、勇者になった。
彼女を守るために。
「ねえ、友奈ちゃんはどうして勇者になったのか……覚えてる?」
今さらになって、
こんな質問に、
ぱっと答えてくれるのは、
彼女だけだろう。
「それは……親友を守りたいって思ったからだよ」
「そっか……」
その言葉に迷いはなかった。
これから、幾度繰り返される予定だったのか。
それにだけは抗いたいと思う。
それだけは耐えられない。
敵は誰だ。
親友を傷つける者は一体何なのか。
私たちはなんのために、
あの化け物を排除してきたのか。
いつか救われる。
全ての希望のために、勇者になった。
彼女を守るために。
「ねえ、友奈ちゃんはどうして勇者になったのか……覚えてる?」
今さらになって、
こんな質問に、
ぱっと答えてくれるのは、
彼女だけだろう。
「それは……親友を守りたいって思ったからだよ」
「そっか……」
その言葉に迷いはなかった。
8: ◆/BueNLs5lw:2014/12/23(火) 23:54:27.53 :jhJhzsou0
「東郷さんは覚えてる?」
「私は……」
どうだったのだろう。
お国のために、使命を全うしたかったのか。
この身を神樹様に捧げたかったのか。
それでも、最初は戦う意思なんてどこにもなかった。
愛国心は忠義は弱さに隠れてしまった。
「最初……怖くてたまらなかった。勇者になんてなれないって思ったわ」
「東郷さん……」
「臆病者だった……一番最初のこと覚えてる?」
「うん……でも、東郷さんは頑張ったよ」
それは、あなたがいたから。
勇者システムという存在があったから。
本当の私は――。
システムは、きっと心もどこか狂わせてしまうのだ。
人間の臆病な部分を一時的に忘れさせてしまうのだ。
麻薬のようなものだ。
痛みも、恐怖も、死も。
神樹様が、奪っていった。
「東郷さんは覚えてる?」
「私は……」
どうだったのだろう。
お国のために、使命を全うしたかったのか。
この身を神樹様に捧げたかったのか。
それでも、最初は戦う意思なんてどこにもなかった。
愛国心は忠義は弱さに隠れてしまった。
「最初……怖くてたまらなかった。勇者になんてなれないって思ったわ」
「東郷さん……」
「臆病者だった……一番最初のこと覚えてる?」
「うん……でも、東郷さんは頑張ったよ」
それは、あなたがいたから。
勇者システムという存在があったから。
本当の私は――。
システムは、きっと心もどこか狂わせてしまうのだ。
人間の臆病な部分を一時的に忘れさせてしまうのだ。
麻薬のようなものだ。
痛みも、恐怖も、死も。
神樹様が、奪っていった。
9: ◆/BueNLs5lw:2014/12/24(水) 00:09:16.34 :ucTpAZWH0
「そうね。でも、私は、友奈ちゃんのような勇気はなかった……」
「私だって、そんなのないよ……」
「勇者になんてならなければ良かったって、思う……今考えると、なんて無謀だったのかしら」
裏切られた悔しさは、
まだこの国にこの国の神に、
未練があるからなのか。
否、未練があるのはたった一人だけ。
「東郷さん……私たちは、私たちしかできないことを勇んでやってるんだ。無謀かもしれない……だから、たまに怖くなって逃げ出したってかまわない。それも勇気なんじゃないかな……」
「逃げてもいいの……?」
「うん」
友奈は少し間を置いて微笑んだ。
温かくて、涙が出そうになった。
「そうね。でも、私は、友奈ちゃんのような勇気はなかった……」
「私だって、そんなのないよ……」
「勇者になんてならなければ良かったって、思う……今考えると、なんて無謀だったのかしら」
裏切られた悔しさは、
まだこの国にこの国の神に、
未練があるからなのか。
否、未練があるのはたった一人だけ。
「東郷さん……私たちは、私たちしかできないことを勇んでやってるんだ。無謀かもしれない……だから、たまに怖くなって逃げ出したってかまわない。それも勇気なんじゃないかな……」
「逃げてもいいの……?」
「うん」
友奈は少し間を置いて微笑んだ。
温かくて、涙が出そうになった。
10: ◆/BueNLs5lw:2014/12/24(水) 00:21:37.39 :ucTpAZWH0
逃げたい。
彼女と共に。
彼女と生きるために。
たった二人だけ、生き延びることになろうとも。
たった一人だけ、生かすことになろうとも。
全て無くなっても。
この生き地獄から彼女が解放されるなら。
「それでも東郷さんは、この役目を誰かに押し付けることはしないでしょ?」
「……」
「誰もができることじゃないから、私たちはいる。バーテックスと戦うことは、犠牲なんかじゃないよ。私たちにしかできないことだからやるんだよ」
彼女の言っていることは、私には理解できない。
理解した所で、彼女と同じ心境になれるだろうか。
無理だ。
きっと。
私の世界は、あなたが中心なのだ。
彼女の世界は――。
逃げたい。
彼女と共に。
彼女と生きるために。
たった二人だけ、生き延びることになろうとも。
たった一人だけ、生かすことになろうとも。
全て無くなっても。
この生き地獄から彼女が解放されるなら。
「それでも東郷さんは、この役目を誰かに押し付けることはしないでしょ?」
「……」
「誰もができることじゃないから、私たちはいる。バーテックスと戦うことは、犠牲なんかじゃないよ。私たちにしかできないことだからやるんだよ」
彼女の言っていることは、私には理解できない。
理解した所で、彼女と同じ心境になれるだろうか。
無理だ。
きっと。
私の世界は、あなたが中心なのだ。
彼女の世界は――。
11: ◆/BueNLs5lw:2014/12/24(水) 00:30:56.58 :ucTpAZWH0
キンコーンカンコーン。
「予鈴だね……」
彼女が言った。
「ええ、行きましょうか」
「よっと……」
誰かがやらなければならない。
誰もそれをやりたがらないだろうけれど。
車輪のロックを外す。
キイキイと車椅子の車輪が音を立てた。
車椅子を押す彼女の顔をもう一度、見た。
「なあに?」
「ありがとう……いつも」
「な、なに、改まって、照れるなあ。好きでやってるんだからいいの!」
「うん……」
私も。
あなたが好きだから。
大胆にも、臆病にもなれる。
勇気をくれるあなたがいたから。
終わり
キンコーンカンコーン。
「予鈴だね……」
彼女が言った。
「ええ、行きましょうか」
「よっと……」
誰かがやらなければならない。
誰もそれをやりたがらないだろうけれど。
車輪のロックを外す。
キイキイと車椅子の車輪が音を立てた。
車椅子を押す彼女の顔をもう一度、見た。
「なあに?」
「ありがとう……いつも」
「な、なに、改まって、照れるなあ。好きでやってるんだからいいの!」
「うん……」
私も。
あなたが好きだから。
大胆にも、臆病にもなれる。
勇気をくれるあなたがいたから。
終わり
12: ◆/BueNLs5lw:2014/12/24(水) 00:32:41.50 :ucTpAZWH0
東郷さんの豆腐メンタルを守れるんは友奈さんだけ
東郷さんの豆腐メンタルを守れるんは友奈さんだけ
13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2014/12/24(水) 04:02:37.80 :p4zOMecwo
乙
どうかハッピーエンドになってほしい
どうかハッピーエンドになってほしい