都内撮影スタジオ

未央「お疲れ様でしたー！」

李衣菜「お疲れ様でした～！」

カメラマン「お疲れ～！いやぁ、いい写真が撮れたよ、もう最ッ高！」

未央「おっ！私達の魅力、バッチリ写りましたー？」

カメラマン「バッチリバッチリ！今日のはベストショットじゃないかな？」

未央「やったー！ありがとうございます！！」

李衣菜「ふっふっふ…。まあ、私に流れるロックスピリットが溢れ出ちゃったってことかなぁ～？」

カメラマン「えっ？……ああ、そうそう、ロックだったよ、ロック！はっはっは！」

Ｐ「本日はありがとうございました。では、私達はこれで…」

カメラマン「はいよ、またよろしくね～」

車内


未央「プロデューサー、次はテレビ局で番組の打ち合わせだっけ？」

李衣菜「ああ、あの音楽番組かぁ」

Ｐ「ああ～、それなんだがなぁ……」

李衣菜「うん？」

Ｐ「非常に言い辛いんだが……大手事務所の介入があってだな……」

未央「介入？どういうこと？」

Ｐ「う～ん…。まあようするに、力の強いものには勝てないというか、社会の仕組みというか……」

李衣菜「はっきりしないなぁ。つまり、何が言いたいわけ？」

Ｐ「…すまん、今回の番組出演は流れた」

未央「ええッ！！？」

Ｐ「本ッ当にすまん！」

李衣菜「どうして…！」

Ｐ「先週公開した映画があっただろ？全然期待されてなかったんだが、あれが今、業界の予想を大幅に上回る異例の大ヒットらしくてな」

李衣菜「ああ……まだ観てないけど、そんなに面白いんだ、あれ」

Ｐ「その映画の主題歌を歌っている歌手を急遽、番組に組み込みたいらしくて…。大手事務所のああいう類は事前に多少根回しして世間に印象操作をするもんなんだが、今回は異例も異例だったからなぁ……」

未央「大人の事情ってやつかぁ……」

李衣菜「じゃあテレビ局のお仕事はなしで…次のお仕事は？」

Ｐ「次の仕事まで…五時間くらい時間が空いちゃうな」

未央「五時間！？」

李衣菜「だいぶ空くなあ」

Ｐ「どうする？いったん事務所に戻ろうか？」

李衣菜「う～ん…」

未央「………リーナ、ちょっと散歩していかない？」

李衣菜「散歩？……あぁ～、いいかも」

未央「プロデューサー、この辺で降ろしてよ。私達、ちょっと歩いてくからさ！」

Ｐ「おっ、そうか？じゃあ、そこのコンビニの前で…」

Ｐ「じゃあ、あとで連絡してくれ。車で拾いに来るから」

未央「はいはーい！」

李衣菜「またね～」

未央「ふぅ…さてと！どこ行こっか？」

李衣菜「ええっ、決めてないの！？」

未央「散歩ってそういうものだよ。あーちゃんと散歩するときも大体そんな感じだし」

李衣菜「そういうものなのかあ……まあ、とらえ方によってはロックだよね！」

未央「そ、そうかなぁ……」

未央「とりあえず、コンビニ入ろっか」

李衣菜「うん」

ｳｨｰﾝ

＜ﾗｯｼｬｰｾｰ

李衣菜「あっ、このチーズケーキ、かな子ちゃんが絶賛してたやつだ」

未央「最近のコンビニスイーツはレベルが高いよね～」

李衣菜「特にかな子ちゃんのオススメはハズレないからねぇ」

李衣菜「買ってこ」

未央「未央ちゃんも～♪」

李衣菜「かな子ちゃん、このカステラもオススメしてたよ。お茶請けにいいって」

未央「じゃあ、それも！」

李衣菜「飲み物は…カフェオレでいいかな」

未央「気まぐれカフェオレ？」

李衣菜「そうそう。フンフンフフーンフンフフー♪タダリーナ～♪……なんて」

未央「あははっ！」

未央「私は…お茶か、コーヒーか。迷うなあ」

李衣菜「コンビニコーヒーも侮れないよね」

未央「そうそう。でも、お茶も捨てがたい…！」

李衣菜「そんなにお茶好きだったっけ？」

未央「いやぁ、茜ちんの影響で……。好きな食べ物は、お茶です！！」

李衣菜「茜ちゃんに初めて会ったときに、自己紹介でそれ言われた時はどう反応すればいいのか分からなかったよ…」

未央「茜ちんらしいよね！今日はお茶にしとこーっと」

未央「あっ、ねえこれ見てよ。ロックスターだって！菓子パンかな？」

李衣菜「あ～、それかぁ…」

未央「リーナ、買っていくでしょ？」

李衣菜「いや、それ前にみくちゃんが買ってきてくれてさ」

未央「やっぱりみくにゃんもリーナ用だと思ったんだね」

李衣菜「なにさ、私用って…。で、一緒に食べてみたんだけど、なんか不自然なバナナ味であんまり美味しくなかった…」

未央「バナナ系は当たり外れが極端だからなぁ…」

李衣菜「食感は好きなんだけどね、ロックで」

李衣菜「私はもういいかな。先にレジ行ってるね？」

未央「あー……私も会計済ませちゃおう」

＜ｱｻﾞｰｯｼﾀｰ

未央「今日は天気が良いねぇ。絶好の散歩日和だ！」

李衣菜「どこ行く？」

未央「とりあえず歩こう！あっち行ってみようか」


未央「最近は気温も高くなって、空気が変わってきた気がするよ。なんか、こう…身体に染み込んでくるようなさあ」

李衣菜「あー、なんかわかるなぁ。スッキリするよね」

未央「そうそう……あ、土手があるよ」

李衣菜「行ってみる？」

未央「あんまり人がいないね」

李衣菜「平日だからねぇ」

未央「あぁー……皐月が咲いてる。暖かいからなー」

李衣菜「……未央ちゃんさ」

未央「んー？」

李衣菜「なんで突然散歩しようなんて言ったの？」

未央「えっ…うーん、なんでだろ？」

未央「わからないけど……なんだろう、リーナと散歩しなくちゃいけない。そんな気がしたんだー」

李衣菜「なにそれ…。わからないなぁ……」

未央「うん、なんだろうね。私にもわからないや！」ｹﾗｹﾗ

未央「わっ、なにこれ、家？」

李衣菜「ホームレスの家じゃない？」

未央「あっちにもある。あっちにも。なんか小さな村みたいだね」

李衣菜「そういえば、前になつきちが『ホームレスはロックだ』って言ってたなあ……」

未央「なにそれ？」

李衣菜「さあ…私もよくわからなかったけど。でも、なつきちが言うんだからきっとそうなんじゃない？」

未央「うーむ……わからないなあ」

李衣菜「……さっきさ、急遽収録が流れたじゃん？」

未央「ん……うん」

李衣菜「あれを聞いたときに、しょうがないのかな、って思っちゃったんだよね」

未央「しょうがない？」

李衣菜「うん……。だんだん人気が出てきたけど、やっぱりまだまだなのかなって思うし……」

李衣菜「こういう世界だから、大人の事情が絡んでくるっていうのもよくわかる」

未央「……………」

李衣菜「でも、悔しいっていう気持ちもあるんだよね。有名な番組だもん。私だって出たかったよ」

李衣菜「なんだろう、二つの気持ちが同時にある…みたいな」

未央「うん……なんとなくわかるよ」

李衣菜「はぁ……大人の事情をとれば、私の気持ちが折れる。私の気持ちをとれば、大人たちの顔が渋る」

李衣菜「あーもう！人生ってムズカシイよぅ！」

未央「わからないなぁ……」

李衣菜「わからないねぇ……」

未央「でもさ、過ぎたことはしょうがないじゃん？」

未央「私はこのお仕事が流れた時、また面白くなってきたな、って思ったよ」

李衣菜「面白い？」

未央「うん。確かに悔しかったけど、今回はタイミングが合わなかっただけなのかなって。また、いいタイミングのときに運命は訪れる……」

未央「そこをすかさずキャーッチ！運命をこの手で掴み取るのだー！」

李衣菜「あははっ！」

未央「運命を掴み取るためには、もっと練習して、もっとファンのみんなと触れ合って、もっと事務所のみんなと楽しいことをしないとね！そういうことが最近は面白いなって思うようになってきたんだ」

李衣菜「……なんか、未央ちゃんらしいね」

未央「えっ、私らしい…？」

李衣菜「うん。一言でいうなら…ポジティブなところ？」

未央「ポジティブか……。うんうん、なるほどね！」

李衣菜「そうそう、ロックだと思うよ！」

未央「あはは！」

李衣菜「チーズケーキ食べよっか」

未央「おっ、いいね～」

李衣菜「あむ……美味しい」

未央「うん……むぐっ……美味しいね」

李衣菜「あー……いい風～」

未央「よし、この後もお仕事頑張ろう！」

李衣菜「よっしゃあ！ロックに行くぜ！……むぐっ…ホント、美味しいね、このチーズケーキ」


終了

これにて終了ですー
駄文失礼いたしました

乙、いい話だった

良いなー
乙！