～事務所にて


モバＰ（※以下表記Ｐ）「おーい、アーニャ」

アーニャ「ダー。プロデューサー、なんですか？」

芽衣子「……」

P「ヘレンさん、ちょっといいですか」

ヘレン「世界レベルの話かしら。いいわよ、受けて立つわ！」

芽衣子「……」

P「早苗さん、にじり寄ってくるのやめてください。仕事中です」

早苗「昨日覚えた締め技をちょおっと試したいだけよ？」

芽衣子「……」

P「並木、明後日のロケのことで……」

芽衣子「……」

P「並木？」

芽衣子「……んで」

P「ん？」

芽衣子「なんでっ！」

P「なにが」

芽衣子「なんで名前で呼んでくれないの！？」

P「……はぁ？」

芽衣子「結構大事なことだよ！」

P「俺からすると些細なことなんだけど」

芽衣子「アーニャちゃんやヘレンさんはわかるよ？」

P「ファミリーネームよりファーストネームで呼びたいところあるからな」

芽衣子「だから私もそれは言わないよ。けど……」

P「けど？」

芽衣子「片桐さん、じゃないんだ」

P「早苗さん？」

芽衣子「それ！」

P「なんだ、今日はテンション高いな」

芽衣子「こうもなっちゃうよ！」

P「元気があってよろしい」

芽衣子「えへ、それほどでも……じゃなくて！」

P「忙しいな」

芽衣子「芽衣子さんは怒ってるの！」ﾌﾟﾝﾌﾟﾝ

P「そう？」

芽衣子「見てわかるでしょー！」ﾌﾟﾝﾌﾟﾝ

P「よくわからないな」

芽衣子「頬もふくらませるんだからっ！」ﾌﾟｸｰ

P「……」ﾂﾝ

芽衣子「ぷぅ」ﾌﾟｽｰ

P「ふっ」

芽衣子「もーっ！　おさわり禁止だよ！　めっ！」

P「はいはい」

P「名前で呼んでほしいと」

芽衣子「やっぱり名字呼びって壁を感じないかな？」

P「特にそうおもわないから並木呼びしてるんだけど」

芽衣子「芽衣子」

P「並木」

芽衣子「ユーセイめーこ？」

P「アイセイ並木」

芽衣子「めーこ。リピートアフターミー」

P「並木」

芽衣子「むむぅーん」

裕子「サイキック美少女の出番と聞いて！」ﾆｭｯ

P「まだだから、むこうでお茶でも飲んでなさい」

芽衣子「プロデューサー、強情！」ﾌﾟﾝﾌﾟﾝ

P「それはこっちのセリフだよ」

芽衣子「なんでめーこって呼んでくれないの？」

P「なんで芽衣子って呼ばせたいの……」

芽衣子「ほら！　言えるじゃん！」

P「え？」

芽衣子「私の名前！」

P「並木」

芽衣子「もー、なんでー！」

P「事務所に同じ名字がいるならともかく」

芽衣子「むぅ～……大事なことなんだってばぁ」

P「……並木芽衣子さんのお仕事は？」

芽衣子「……アイドル」

P「そう、人に夢を与えるアイドルって仕事。それで俺は？」

芽衣子「私のプロデューサー」

P「うん、他も担当してるけど間違いじゃない。並木芽衣子のプロデューサーだ」

P「アイドルとプロデューサー。プロデューサーとアイドル。パートナーだ、仕事のな」

芽衣子「うん」

Ｐ「距離感は大事。俺はこれが適切な距離だとおもってるよ」

芽衣子「じゃあなんで早苗さんは早苗さん呼びなの？」

Ｐ「……あれはな」

芽衣子「あれは？」

Ｐ「スカウトしたとき、名前で呼ぶことがアイドルになる条件のひとつでな……」

芽衣子「なにそれ、ズルい～」

Ｐ「本当だから。聞いてくれたっていい。Ｐチャンウソつかない」

芽衣子「うぅ～……私もそう言っておくんだった……」

Ｐ「こだわるなぁ」

芽衣子「だって、プロデューサーも言ったでしょ。パートナーだって」

Ｐ「仕事のな」

芽衣子「やっぱりちゃんと信頼を築かないと。いいお仕事するために」

Ｐ「俺は100%の信頼を並木に寄せてるんだけどな」

芽衣子「120%にしたいの！」

Ｐ「強欲か」

芽衣子「だ・か・ら」

Ｐ「呼び方以外で20%埋めればいいだろ」

芽衣子「よくご飯連れてってくれるし」

P「お疲れも兼ねてね」

芽衣子「送り迎えだってしてくれて」

P「帰宅中にふらっと旅行いかれたら困る」

芽衣子「ちゃんと話だって聞いてくれる」

P「長電話に毎回は付き合えんがな」

芽衣子「じゃあ、あとは呼び方かなーってなるじゃない？」

P「並木」

芽衣子「頑固！」

P「あきらめなさい。ほら、予定の確認を……」

芽衣子「め」

P「あぁ？」

芽衣子「め！」

P「……め？」

芽衣子「い！」

P「い」

芽衣子「こ！」

P「こ」

芽衣子「私は？」

P「並木」

芽衣子「うぅ～！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

芽衣子「絶対遊んでる！」

P「いつだって大真面目だ」

芽衣子「じゃあなんでー」

P「譲れないものは誰にだってあるだろ。男の子なら尚更」

芽衣子「名前呼ぶだけだよ？」

P「俺にとってはそれだけじゃ済まないことなの」

芽衣子「ぶーぶー」

P「抗議は受け付けません」

芽衣子「プロデューサーのケチ！」

P「おーおー、どうとでも言いなさい」

芽衣子「イジワル！」

P「はいはい、予定の確認するぞ」

芽衣子「アホー！」

P「ははは、言うなー」

芽衣子「キライ！」

P「……」

芽衣子「……キライだもーん」

P「……」

芽衣子「キラーイ……」

P「……そうか」

芽衣子「……」

P「……」

芽衣子「……」

芽衣子「……なーんて。なーんて！　ウソウソ！　キライじゃないよー」

P「……」

芽衣子「え、えーっと、プロデューサー？」

P「……」

芽衣子「もしかして……怒ってる？」

P「……」

芽衣子「……」

P「……」

芽衣子「ご、ごめんなさい……」

P「……いや、別に怒ってないけど」

芽衣子「ほ、本当に？」

P「どういう反応するんだろうって」

芽衣子「……やっぱりイジワル！」

P「そうしたくなる並木に問題がある」

芽衣子「ぶーぶー」

ｶﾞﾀｯ

芽衣子「うん？」

ﾆｬｱ

芽衣子「なんだネコかー」

P「いや、ここ事務所だぞ。猫なわけあるか。あの声は……間中か」

ぐぅ～……

P「ん？」

芽衣子「ん、んんっ、げふんげふん」

P「ごまかし方がヘタクソだな」

芽衣子「な、なんのことかなー？」

P「確かにいい時間だな。なんだ、食べに行くか、昼」

芽衣子「プロデューサーのおごり？」

P「1000円以内な」

芽衣子「やった♪」

P「じゃあ行くか、芽衣子」

芽衣子「はぁい」

芽衣子「……」

芽衣子「……あれっ？　今、名前……」

P「ん？」

芽衣子「も、もう1回」

P「なにが？」

芽衣子「もう1回呼んで！」

P「……」

P「並木」

芽衣子「絶対わざとだよー！」

惠「……甘いわ」

美里「本当にねぇ」

裕子「そんなにお砂糖入れたんですか？」

惠「無糖よ」

美里「ブラックなんだけどぉ……あんなのを見せられたら、ねぇ？」

惠「後を引く甘さよ、まったく……」

裕子「？？？」

志乃「ふふ……たまには甘いのもいいじゃない」

美里「志乃さぁん、それ何杯目？」

志乃「まだ3本目を開けたところよ」ｸﾞﾋﾞｰ

おわり


めーこさんはめーちゃんって呼びたい