―会社―

男「課長にファックスが届いてます」

女上司「ありがとー！」

女上司「ところで男くん」

男「なんでしょう？」

女上司「子供の頃、ヤギさんの歌ってあったでしょ」

男「ヤギの歌？　ああ、手紙を食べちゃうやつですか」

女上司「そうそう。無限ループするやつ」

女上司「あの歌を聞くたびに私、紙ってそんなにおいしいのかなと思ったものよ」

女上司「今でも疑問に思ってるの」

男「へえ～」

男（さっぱり話が見えない……）

女上司「今届いたファックスの紙……食べちゃおうかしら」

男「え！？」

男「いやいやいや、食べちゃダメですよ！　重要なこと書いてありますから！」

女上司「冗談よ、冗談」

男（ハラハラするなぁ……）

男（この人マジでやりかねないからな……）

女上司「キャハハハハハハッ！」

女上司「えーっ、やだーっ！　ウッソー！」

女上司「信じられなーい！」

女上司「もうバカねー、やめてよー！」



男（私用電話か……）

男（あんまりよくないけど、他に人もいないし、黙っててやるか）

女上司「じゃあねー」ｶﾞﾁｬｯ

男「ずいぶん長かったですね。誰と話してたんです？」

女上司「ああ、取引先のYさん」

男「ええええええええええ！？」

男「超大物じゃないっすか！　あんなフランクに！？」

女上司「うん」

男（重役クラスでも敬語使う相手だぞ……ハラハラするなぁ）

これは確実に性接待して仲良くなったパターン

女上司「あら、メールが来たわ」

男「これは……社外秘のメールですね」

男「間違って消さないようにどこか特別な場所に保存しておいた方がいいかと」

女上司「そうね」

女上司「えーっと、メールを移動させるのはどうやるんだっけ……」

女上司「こうかな？」ｶﾁｶﾁｯ

男「！」

男「ちょっと待ったぁぁぁぁぁ！」

男「そのままクリックしたら、社外秘メールが外部の人に送信されちゃう！」

女上司「えっ、ウッソー！」

男「俺がやります！　俺にやらせて下さい！」

女上司「やってくれる？　助かるわー」

男（ハラハラさせないでくれ……）

ルーチンワークに刺激を与える上司の鑑

女上司「男くん、準備はいい？」

男「バッチリです！」

女上司「あの取引先は難攻不落だけど、今日こそ口説き落とすわよ！」

男「はいっ！」

女上司「景気づけに今日は私が運転しようかしら」

男「いや、俺がやります！」

男（あんたの運転はハラハラするんだよ！）

取引先「分かりました、契約しましょう」

女上司「ありがとうございます！」

男（さすが……若くして課長になるだけあって、仕事はできるんだよなこの人）

女上司「ちょろいもんよね！」

男「え！？」

取引先「ん、ちょろい？」

男「違います、違います！　チョロQっていったんです！」

男「せっかく契約取れたし、チョロQのように突っ走って仕事頑張るぞーって！」

取引先「ほう、チョロQ……懐かしいねえ」ﾆｺﾆｺ…

男（あっぶねー……）

強引だなｗ

女上司「うーん……」ﾎﾟﾁﾎﾟﾁ

男（スマホ片手に悩んでる……）

男「どうしました？」

女上司「これ見てくれる？」

すき

ええやん

『サイト閲覧料として100,000円振り込んで下さい』

女上司「こんなメールが来ちゃって……」

女上司「心当たりないけど、逮捕されるの怖いし、ぱーっと振り込んじゃおうかなって」

男「ダメですよ！　振り込んじゃ！」

男「こんなの典型的な架空請求じゃないですか！　無視して下さい！」

女上司「あ、そうなの？」

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ…

女上司「お電話ありがとうございます」

女上司「え！？」

女上司「なんですって！？　車で事故を！？」

男「えっ！」

男（今、同僚が車使ってるから、同僚が……！？）

女上司「どうしよう、男くん！」

女上司「今、男くんから電話があって、示談にするには1000万必要なんだって！」

男「！？」

女上司「部下はかばってあげたいし、でもそんなお金ないし……」

男「落ち着いて！　俺ここにいますから！」

女上司「あれ！？　男くんが二人！？　なんで！？」

男「今時オレオレ詐欺なんかに引っかからないで下さいよ！」

部会議――

部長「そんなことは不可能だよ。もっと考えて発言したまえ」

同僚「はい……」

男「……」

男（今日の会議はいつになくピリピリしたムードだ……いや、それよりも……）

男（ずれてる……部長のヅラがずれてる……）

部長「……」ｽﾞﾚｯ

ﾑﾁｯ…

男（この中で指摘しちゃいそうなのは……）

女上司「……」

男（やっぱりこの人だよなぁ）

女上司「部長！」

部長「なんだね？」

女上司「アタマ――」

男（いきなりいったぁーっ！！！）

男（ダメだぁーっ！！！）

女上司「頭から否定するのではなく、できる方法を考えましょうよ」

女上司「たとえば、今の同僚くんの案だとこう改善すれば……」

部長「うむ……」

同僚「なるほど……」

男（おお……さすがの課長もそこまでバカじゃなかったか！　ハラハラしてごめんなさい！）

女上司「ああ、それと部長」

部長「ん？」

女上司「カツラがズレてますよ」

部長「あっ」

男「バカーッ！！！」

フェイントやめろ

見てるぞ

女上司「こんなことがあったのよ～」

男「へえ～」

ﾍﾟﾁｬｸﾁｬ…　ﾍﾟﾁｬｸﾁｬ…

女上司「それでね……」

男「……」

男「喋るのに夢中になって、男子トイレまで入ってこないで下さい！」

女上司「あ、いっけない！」

女上司「男子トイレのこの形の便器ってどうやって用を足せばいいのかしら」

男「女子トイレ行けや！」

―課長の家―

男「こんにちは～」

同僚「いやぁ、嬉しいなぁ。課長が手料理作ってくれるなんて」

女上司「こう見えても料理には自信あるんだから」

男「ちなみにどんな料理です？」

女上司「魚料理よ」

同僚「魚の種類は？」

女上司「ジャーン！　フグ！」ﾋﾞﾁﾋﾞﾁｯ

男「え！？」

同僚「は！？」

女上司「刺身にするとおいしいらしいわよ」

男「フグはダメーッ！」

同僚「俺ら三人とも死んじゃいますって！」

女上司「今日の外回りはこんなとこかしら。喫茶店でも寄らない？」

男「いいですね。さっきの打ち合わせの内容を整理したいですし」


ｶﾗﾝｶﾗﾝ…


女上司「なかなかいい雰囲気の店だわ」

男「……ん」

男「あれは……！」


友「……」

上司「……」


男（なんて偶然だ！）

ここで出てくるのか

アンジャッシュｗｗｗｗ

ワロタ

上司「君はコーヒーにミルクを入れるのかね？」

友「は、はい」

上司「ああ、いやだいやだ。せっかくのコーヒーが台無しじゃないか」

上司「そんなんだから仕事ができないんだよ、君は。甘ったれというか、ゆとりというか……」

友「す、すみません……」



男（あれがパワハラ上司か……）

男（たしかにひどいもんだ。さっきからずーっとあんな感じで嫌みばっかりいってやがる）

男（コーヒーにミルク入れると仕事ができないとか意味不明だし……）

男（俺は恵まれてるよなぁ。ハラハラはするけど、理不尽に怒ったりはしないから……）

女上司「ちょっとあなた」

上司「え、誰？」

女上司「さっきから聞いてたけど、ネチネチと部下をいじめて、恥ずかしいと思わないの？」

女上司「ここは公衆の場なのよ。少しはわきまえなさい」

上司「な、なんだと……」



男（えええええ！？）

男（何してんの、この人！？　いくらムカついても、よその会社のことに口出しちゃダメだって！）

ハラハラさせられたい

上司「反省します……」ｼｭﾝ…

女上司「よろしい」

女上司「あなたも、今後何かあったら私に連絡しなさい」ｻｯ

友「ど、どうも……」



男「しかも勝ってるし！」

ちょっと好き

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ…

男「ん？　あいつからだ……」

友『おう、俺だ』

男「ああ、この前は悪かったな。うちの上司が余計なことを……」

友『とんでもない！　あれから俺の上司、すっかりへこんじゃってさ……』

友『嘘のようにパワハラがなくなったんだ。どうもありがとう！』

友『あの女上司さんにもありがとうって伝えておいてくれ！』

男「う、うん」

悪化しなくてよかった

―居酒屋―

女上司「カンパーイ！」

男「カンパーイ！」

同僚「カンパーイ！」

ﾜｲﾜｲ…　ｶﾞﾔｶﾞﾔ…

女上司「あー……酔ってきちゃった」

男（弱いくせにペース早いんだよなこの人……ハラハラするなぁ）

そろそろズボン脱いでいいですか

女上司「あ～……あっつい」ﾊﾟﾀﾊﾟﾀ

男「水飲みます？」

女上司「そうだ、脱いじゃおう！」

男「ちょっ、ダメですよ！」

女上司「……うっ」

男「今度は気持ち悪くなってきたんですか。忙しい人だな」

男「気持ち悪いのなら、吐いた方がいいですよ」

女上司「え、吐いていいの？」

男「いや、俺に吐いちゃダメーッ！　トイレ行ってーッ！」

女上司「冗談よ、冗談」ｽﾀｽﾀ…

男（ったく……）

男「わーっ！　そっちは男子トイレーっ！！！」

女上司「ウ～イ……飲みすぎちゃった……」

男「世話が焼けるなぁ……」

女上司「いつもいつもありがとうね……」

男「いえ、ハラハラしつつも、楽しんでる部分もありますから」

男「……」

男「……あの」

女上司「なに？」

男「俺……あなたのこと、ハラハラして見てられないんで……」

男「いつも目の届くとこに置いておきたいんで……」

男「結婚しましょう」

女上司「いいわよ」

男「えーっ！？」

男「少しは悩んでくれ！　ハラハラするから！　裏があるんじゃねーかってなるから！」

女上司「じゃあ、今日はあそこに泊まる？」

男「ラブホじゃねーか！」

男「今日は大人しく帰りましょう！　うん、そうしましょう！」

女上司「分かったわー……」

男「ああもう、せっかくプロポーズ成功したのに、ムードもクソもない……」

パンツになった

―会社―

部長「いやぁ、まさか二人が結婚することになるとはな」

同僚「おめでとう！」

男「ありがとうございます」

女上司「幸せになります！」

同僚「ところで……子供はどうなんです？」ﾆﾔｯ

女上司「ああ、もう出来てるわよ。この人、夜はすごいんだから」

同僚「え……」

男「そういう報告しなくていいからぁ！」

女上司「だいぶ、お腹大きくなってきたわ」

男「そろそろ産休取った方がいいかもしれないね」

女上司「そうね……」

女上司「あ、そうだ。お腹の子供のためにパラパラでも踊ってみようかしら」

男「だからハラハラすることはやめてくれぇ！！！」





おわり

乙
出産子育てと更にハラハラしそう