デート当日――

男「今日はよろしくお願いします」

女「お願いします」

男「ああそれと友達を連れてきたんです」

イケメン「よろしく」

女「まぁっ……」

イケメン「邪魔にならないようにしますので」

女「はいっ！　よろしくお願いします！」

男「どこかで座りながら話しましょうか」

女「そうですね」

男「じゃあ、公園のベンチで」

女「ええ、天気もいいですし」

イケメン「それより向こうのレストランに行きませんか？　もちろんおごりますよ」

女「まぁっ、ありがとうございます！」

女「いきなり失礼ですけど、これは婚活のデートですので思いきって聞いちゃいます」

男「どうぞ」

女「年収はどのぐらいですか？」

男「今は……400万ぐらいです」

女「そうですか」

イケメン「僕は1000万です。近いうち昇進する予定です」

女「まぁっ……」

女「ご趣味は？」

男「仕事が忙しくて……スマホいじりが趣味になっちゃってますよ」

女「イケメンさんは？」

イケメン「スポーツをよくやりますね」

イケメン「フットサルにテニス、夏はサーフィン……フィットネスクラブにも通っています」

女「お体がっしりしてらっしゃいますもんね」

イケメン「よかったら、今度一緒にどうです？」

女「ええ、是非……」

実話？

しかし何号さんにされる

女「お車はお持ちですか？」

男「免許はありますけど、持ってませんね。あんなの維持費かかるだけだしいらないですよ」

イケメン「外車を持ってます。いわゆるスポーツカーを」

女「まぁっ……」

イケメン「休みの日にドライブすると、すーっと気分が落ち着くんですよ」

女「スポーツといい、優雅な休日を過ごしてらっしゃるのね」

男「……」

女「じゃあ、今日のデートはこれぐらいということで」

男「え、もう終わりですか？」

女「はい、あとは私とイケメンさんの二人でということで」

男「え？」

イケメン「それじゃ行きましょうか」

女「はいっ！」

男「……」

男「こないだのデート……大失敗だったよ」

友人「そっかー……ドンマイ」

男「だけどまた次の人とデートすることになってさ。今度はOLさんだ」

友人「頑張れよ」

イケメン「そのデート、僕もついていくよ」

男「またお前か！　こないだはよくも……！」

イケメン「この間は悪かった。今度こそ君を立てるようにするからさ」

男「……頼むぞ！」

OL「結婚した女性が専業主婦になりたいっていったらどうします？」

男「うーん、専業は困るかなぁ。ある程度は共働きしてもらいたいね」

イケメン「僕は専業主婦賛成です」

イケメン「女性には家庭を守ってもらって、旦那はジャンジャン稼ぐ」

イケメン「これが夫婦のあるべき姿だと思ってますので」

イケメン「ただし束縛するつもりはありません。仕事を続けたいのならもちろん続けてもらいます」

OL「あらステキ！」

OL「子供が出来た後のビジョンってあります？」

男「特にないなぁ。元気に育ってくれれば……」

イケメン「のびのびと育てつつ、幼少期からしっかりと教育を施していきたいですね」

イケメン「そうすることで、将来の選択肢も自然と増えていき、子供も将来困らないでしょうから」

イケメン「ロードマップも無しに子供を産むことは、親にとっても子にとっても不幸ですよ」

OL「そうですよね！」

OL「今仕事で悩みがあるんですけど……」

男「悩み？」

OL「会社でこういう仕事をしてて……」

男「うーん、他の会社の業務はよく分からないから……」

イケメン「これなら分かる。僕でよかったら相談に乗るよ」

OL「ホントですか！」

長い

OL「今日はありがとうございました！」

イケメン「いやいや」

男「……」

OL「また……会えますか？」

イケメン「ああ、いいとも」

男「……」

男「デート……ダメだったよ」

友人「あちゃー……」

男「今度は……この子とデートだ」

友人「先の二人に比べると明らかにグレード落ちるというか……地味だな」

男「この際高望みしてらんないよ」

イケメン「僕もついていくよ」

男「またお前か！」

イケメン「今度こそ……今度こそ大丈夫だから！」

男「分かったよ……」

嫌な予感しかしない

男「よろしくお願いします」

地味子「こちらこそ」

イケメン「よろしく」

地味子「？　なんですかこの人？」

男「このデートにどうしてもついてきたいっていうので……すみません」

地味子「別にかまいませんけど……」

なんで分かっちゃうんだよ

男（どうせどこかで話さなきゃいけないことだし、先に話しちゃおう）

男「実は俺、年収400万ぐらいで……」

地味子「あら、そうなんですか」

男「ちょっと不安かもしれないけど……」

地味子「……」

イケメン「ちなみに僕は年収1000万で、近々昇進予定です」

男「！」

男（またこのパターンかよ……）

地味子「そうですか」

男（あれ？　あまり食い付かない？）

地味子「収入が多いに越したことはないけど、結局結婚って人間同士の繋がりだと思うんですよね」

地味子「だから、助け合っていけば何とかなりますよ。私だって働いてますし」

男「ど、どうも」

イケメン「……」

お前ら勝利の展開くる？

イケメンが実は真の…

男「趣味は？」

地味子「絵を描いてるんですけど……」

男「これは……なかなか変わった絵を描くね」

地味子「ですよね。感性が独特っていわれちゃって」

イケメン「ああ、これは芸術家の○○にインスピレーションを得てると見た」

イケメン「彼もまた、独創性の強い作風だったからね」

イケメン「この感性を大事にした方がいい。君はきっと伸びるよ！」

地味子「そうですか」

イケメン「あ、あれ？」

男「せっかくだし映画でも見ようか」

地味子「はい」

男「じゃあワリカンで……」

イケメン「僕がおごらせてもらうよ」

地味子「いえ、自分の分は自分で払います。おごられるってあまり好きじゃないので」

イケメン「そ、そうかい」

地味子「映画……どうでした？」

男「なんだかよく分からなかったな。映像がすごいってのは分かるんだけど……」

地味子「イケメンさんは？」

イケメン「この映画の監督××はこういう映像で魅せる映画が得意でね」

イケメン「ストーリーは難解ではあるけど、伏線やメッセージが至る所に散らばっていて……」

地味子「はぁ、そうですか」

イケメン「！？」

地味子「私もよく分かりませんでした！」

男「一緒だね！」

ホモスレか

男「こんなに楽しいデートは生まれて初めてだよ！」

地味子「私もです！」

男「そろそろ夜になるけど、もうちょっと時間ある？」

地味子「はい、大丈夫です！」

男「じゃあ、どこかファミレスにでも……」

地味子「いいですね！　私ファミレスにはうるさいんですよ！」

イケメン「……」

イケメン「じゃあ、僕はこれで……」

男「え、もういいのか？」

イケメン「ああ、あとは二人で楽しくやってくれよ」

男「分かった。じゃあな」

地味子「今日はありがとうございました」

男「！」ﾊｯ

男（イケメンってもしかして――）

これがイケメンなりの優しさ

男（俺が自分に合う人を見つけられるよう、デートについてきてたのか？）

男（もし、俺が最初の二人と付き合ってたら、多分結婚まで行くのは難しかっただろう。どこかでボロが出る）

男（いけたとしても、遠からず破局を迎えるような気がする）

男（だけど、今日会ったこの子はなにからなにまで俺とフィーリングが合ってる！）

男（だから潔く身を引いてくれたんだ……）

男（ありがとう、イケメン……！）

…………

……

イケメン…

ヤンホモルート

……

地味子「ふんふ～ん♪」

地味子「今日はいい人と出会えたな……あの人こそ運命の人かも……」

地味子「！？」

イケメン「……」ｷﾞﾛｯ

地味子「あなたは……さっきの……！？」

地味子（ものすごい殺気を感じる……！　なぜ！？　私に何の用なの！？）

イケメン「彼を……」

地味子「？」

イケメン「彼を……幸せにして、あ゛け゛て゛く゛れ゛……！」ｸﾞｽｯ

地味子「……！」

地味子（そうか、分かった――）

地味子「あなた……彼のこと好きだったのね」

イケメン「……」ｺｸｯ

イケメン「僕は彼が好きだった」

イケメン「だけど、彼が男を好きになることはないのは分かり切ってる」

イケメン「だから僕は……彼に近づく女は次々に僕に惹かれさせる形で排除していった」

イケメン「むろん、惹かれさせた女性たちとは穏便にお別れする」

イケメン「だが……君だけは出来なかった……」

イケメン「悔しいけど……僕の……負けだ……」

地味子「あなたの想い受け取ったわ。必ず幸せにする」

イケメン「頼むよ……」ｸﾞｽｯ…

…………

……

じゃあ地味子とイケメンと一緒に暮らせばいいじゃん

ﾜｧｧｧｧｧ…

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ…

男「皆さん、お集まり頂きありがとうございます！」

地味子「私たち幸せになります！」



友人（結局、あの地味な子と結婚することになったか……）

友人（だけど、こうして並んでるとこ見ると、こいつら幸せになれそうって気がするよ）

俺ねえ…
以前の職場に凄い当たりのキツイ営業の女が居てねえ…


止めよう…

イケメン「おめでとう！」

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ…



式場には二人のために心からの拍手をするイケメンの姿があった……。







おわり