2ストは環境にいくない

格闘家「ぬんっ！」ﾊﾞﾘﾝｯ

男「わあっ、窓ガラスが！」

格闘家「ふんっ！」ﾎﾞｺｯ

男「ボンネットが凹んだ！」

格闘家「せいやぁっ！」ﾊﾞｷｯ

男「ああっ……ドアがっ！　サイドミラーがっ！　タイヤがっ！」

ﾄﾞｶｯ!　ｶﾞｼｬﾝｯ!　ﾒｷｯ!　ﾎﾞｺﾞｯ!　ﾊﾞﾘｨﾝ!　…　…

男「やめろっ、やめてくれえええっ！」

ﾌﾟｼｭｩｩｩｩ…

男「俺の車が……スクラップに……」

格闘家「パーフェクト」

男「パーフェクトじゃねえよ！」

格闘家「では、さらばだ」

男「……」

男「こういうのって……保険下りるのかなぁ……」

男「……というわけで、謎の格闘家に車を破壊されまして」

男「保険って……下りるんでしょうか？」

女社員「はい、下りますよ」ﾆｺｯ

男「ホントですか！？」

女社員「もちろんです。こういう時のための保険ではないですか」

男「あ……ありがとうございます！」

男「ふんふ～ん」ﾌｷﾌｷ

男「保険も下りて、新しい車を手に入れたぞ！」

男「今度こそ、ちゃんと乗るからな」

格闘家「失礼する」

男「え！？　あ、あんたは……」

格闘家「この車を……破壊する」

男「や、やめろぉ！」

格闘家「ぬんっ！」ﾎﾞｺｯ

格闘家「むうんっ！」ﾒｷｯ

格闘家「ハァッ！」ﾄﾞﾑｯ

ﾎﾞｺﾞｯ!　ｸﾞｼｬｯ!　ﾊﾞｷｯ!　ｺﾞｯ!　…　…　…

男「あああ……俺の車……」

男（それにこの格闘家の破壊、明らかに前より早くなってる！）

ﾌﾟｼｭｩｩｩｩｩ…

男「ああ……またもスクラップに……」

格闘家「最初よりも12秒も縮んだ。パーフェクト」

男「ふざけるな！」

格闘家「では……さらばだ」ﾀﾞｯ

男「あっ、待てーっ！」

男「あの……またこんなことになってしまって……」

女社員「これは災難でしたね」

男「昔からどうも車に関するトラブルが絶えないんです」

女社員「そうなんですか？」

男「雨の日に泥をひっかけられるなんてのは日常茶飯事、バックしてくる車にぶつかったり」

男「車に轢かれそうな女の子を助けて代わりに轢かれたり、車にボールをぶつけたら中から怖い人が出てきたり……」

女社員「まぁ……」

男「だからこそ、マイカーに憧れたってのもあるんですけど……」

男「流石にもう……保険……下りないですよね？」

女社員「下りますよ」ﾆｺｯ

男「助かります！　ありがとうございます！」

ママママウスでFPSwwwwwwww

戦士だろ？
ならこの大荷物持ってくれ

男「よし……車ゲット！」

男「さすがにもう、あの謎の格闘家もやってこないだろう」

格闘家「二度あることは三度ある！」

男「こ、この声は……！」

格闘家「この車……破壊する！」

男「またかよぉ！」

ﾄﾞｶﾞｯ!　ﾎﾞｸﾞｼｬｯ!　ﾍﾞｷｯ!　ﾒｷﾒｷﾒｷ…　…　…

男（ああっ、前よりさらに早く……）

格闘家「トドメは……」ｶﾞｼｯ

男「おいおい、まさか……」

格闘家「ぐぬうううう……！」ｸﾞｸﾞｸﾞｯ…

男「ウソだろ！？」

ｺﾞﾛﾝ…

男「車を……ひっくり返した！」

格闘家「パーフェクト」

男「……」

女社員「……」

男「いくらなんでも……もう無理ですよね……これで三度目……」

女社員「大丈夫、下りますよ」ﾆｺｯ

男「あなた……最高だぁ！」

女社員「最高だなんてそんな……」ﾎﾟｯ

セルシオ買うな

男「保険は下りたが、今度壊されたらもう絶対ダメだ……」

男「俺がこの車を死守してみせる！」

格闘家「破壊しにきたぞ」

男「させるかぁっ！」

格闘家「邪魔」ﾊﾟｼｯ

男「あうっ」ﾄﾞｻｯ

格闘家「ぬうん！」ﾄﾞｺﾞｯ!

男（目が覚めると……）

格闘家「パーフェクト」



ﾌﾞｼｭｩｩｩｩｩ…



男「あ……ああああああああああああっ！！！」

格闘家「ではさらばだ」

男（また……守れなかった……）

男（もう終わりだ……これで四度目……保険会社も激怒するに決まってる……）

女社員「保険ですが……」

男「はい……」

女社員「下りますよ」ﾆｺｯ

男「ああっ……！　俺にはまるであなたが女神のように見える……」

女社員「まあ、女神だなんて……」ﾎﾟｯ

男「いえ、本当に！　あなたにはなんてお礼をいえばいいか……」

http://i.imgur.com/7LUW6Oc.jpg

女社員「あ、あの……」

男「はい？」

女社員「お車を壊されて傷心の方にこんなこというのは、心苦しいんですけど……」

女社員「私とお付き合いしてくれないでしょうか？」

男「俺が……あなたと……？」

女社員「はい……」

男「喜んで！」

……

男「今日は俺の車でドライブしない？」

女社員「いいですね！」

男「じゃ、俺の運転テクニックを見ててくれよ！」

女社員「楽しみです！」

男「といってもメチャ安全運転だけど」

女社員「安全運転が一番ですよ」

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…

男（あれ以来、あの謎の格闘家は姿を現さなくなった）

男（五度目の襲撃はなかったということだ。本当によかった……）

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…

男「ところで、君の勤めてる保険会社は豪帝保険だったよね」

女社員「はい、そうです」

男「すごいよな。最大手の保険会社の一つだし、君って優秀なんだなぁ」

女社員「優秀というより……コネもありますけど」

男「え、そうなの？」

女社員「私のお父さん……豪帝グループの総帥なんです」

男「えっ、そうだったの！？」

女社員「驚きましたか？」

男「ああ、まあね……」

男（マジかよ……豪帝グループといったら、日本経済を背負ってるレベルの大組織……）

男（その総帥の娘っていったら、令嬢もいいとこじゃないか）

女社員「すみません、今まで隠してて」

男「いや、君の正体が何者だろうと、俺が君を好きなことに変わりないから安心してよ」

女社員「ありがとうございます」

男（むしろ、別の心配が出てきたけど。俺なんて絶対この子に相応しくないだろ……）

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…

男「あ、ひょっとして！」

女社員「なんです？」

男「俺の車、よく分からん奴に何度も壊されたけど、保険下りたじゃない？」

男「それも君が……」

女社員「はい……。あなたを助けたくて、お父さんにかけ合って……」

男（これでやっと、あんな無茶な保険の下り方が何度も成立した理由も分かった）

女社員「すみませんっ！」

男「いや、いいんだよ……。ありがとう」

男（これで残る疑問は一つ。なんでこの子は俺にここまでしてくれるのかってことだ）

レストラン――

男「今日は俺のおごりだよ」

男「といっても、大したディナーじゃないけど」

女社員「いいえ、とってもおいしいです！」

男「そういってもらえると嬉しいよ」

女社員「あなたとこうしてお食事できるなんて夢みたい……」

男「……」

男「ごめん、どうしても聞きたいことがあるんだ」

女社員「なんでしょう？」

男「どうして、君は俺にここまでしてくれるんだ？」

男「君は俺に惚れてるようだけど、俺にそんな要素があるとは思えない」

男「君の愛情や優しさを疑うようで悪いけど、どうしても……知りたいんだ」

女社員「それは……あなたが私の初恋の人だからです」

男「え？　どこかで……会ったっけ？」

女社員「私が小学生で、あなたが中学生の時かな……あなたは轢かれそうな私を助けてくれたんです」

女社員「自分が轢かれてまで……」

男「あ……！」

女社員「それ以来、会いたくて会いたくて……。恋心は膨れ上がるばかりで……」

女社員「私があなたの保険担当になった時は、これは運命だと感じました」

女社員「だから……はりきって仕事をしてしまったのです」

男「……そうだったのか」

女社員「私にとって……あなたはヒーローでした。いえ、過去系でなく今も」

男「あの時の子が……よくこんなに美しくなったね」

男「さ、乾杯しよう。ただし、俺はジュースだけど」

女社員「はいっ！」

ｶﾁﾝｯ

ええ話だ

ある日――

女社員「今日は折り入ってお願いがあるんです」

男「なんだい？」

女社員「父と……会ってくれませんか？」

男「君のお父さんと？　それってつまり……」

女社員「はい、交際してることを正式に伝えたいんです」

男「……！」ｺﾞｸｯ

男（豪帝グループの総帥……俺からすれば雲の上の存在……！）

男（だけど、逃げるわけにはいかない……）

男「いいよ、行こう！」

女社員「ありがとうございます！」

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…

男「しかし、大丈夫かなぁ？」

女社員「何がです？」

男「君のお父さん、俺のこと認めてくれるかな？」

女社員「大丈夫ですよ！　お父さん、私にはとっても優しいですから！」

男（だから不安なんだ……）

豪帝グループ・本部ビル――

男（でかいビルだ……ビルというか要塞だな）

秘書「まもなく総帥が来られます。少々お待ち下さい」

男「は、はい」

女社員「そんなに緊張することないですよ」

男「緊張するって……下手すりゃ日本で一番影響力ある人なんだぞ」

女社員「父はそこまでの人じゃありませんよ」

男（とにかく平身低頭、頭を下げまくってやり過ごすしかない……！）

総帥「失礼する」

男「……初めましてっ！」ﾊﾞﾊﾞｯ

総帥「君が娘の交際相手かね」

男「そ、そうでございます！」

男（あれ……？　この声、どこかで聞いたことが……）

総帥「まぁ、そう緊張せず、顔を上げなさい」

男「は、はいっ！」ﾊﾞｯ

男「……」

男「あーっ！！？」

男「あ、あんた……何度も俺の車をブチ壊した……謎の格闘家！」

総帥「やぁ、その節はどうも」

女社員「お父さん……どういうこと！？」

総帥「あ、いや、お前がこの青年のことを好きなのは分かっていたが」

総帥「どうにも親しくなるきっかけを見いだせないようだったので、私がひと肌脱いだのだ」

総帥「私がこの青年の車を壊しまくり、娘がそのたびに青年を助けてやれば、いいきっかけになると思ってね」

総帥「おかげでいいトレーニングにもなったよ。ワッハッハ」

女社員「もう！　お父さんったら！」

男「……ちょっといいですか」

総帥「なんだね？」

男「いくらなんでもやっていいことと悪いことがあるだろ！」

男「娘のために車を壊すって……壊された車や壊された車に携わった人の気持ち、考えたことあるのか！？」

男「俺は娘さんのことは大好きだけど、あなたのことは大嫌いだ！」

総帥「す、すまん！　つい……。壊した車はきちんと再利用するから、どうか許してくれぇ……」

秘書「総帥が頭を下げてるところなど初めて見た……」

男「ああ、もう……まさかこっちが頭下げさせる側になるとは思わなかった」

女社員「YOU WINですね！」






―　完　―

乙
３万点貰えそう

まーん

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