1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 19:38:49.50 :OC8luprgO
はじめに
ウマ娘とトレーナーがラーメンを食べに行くスレです。全て地の文で進行します。
実在の店にウマ娘とトレーナーが行き食レポします。店ごとに食べるウマ娘は変わります。
ウマ娘の口調などはうろ覚えなので、その点ご容赦下さい。
なお、レギュラーの専属ウマ娘を最初に設定します。
下1~5でコンマが最も大きいものとします。よろしくお願いいたします。
はじめに
ウマ娘とトレーナーがラーメンを食べに行くスレです。全て地の文で進行します。
実在の店にウマ娘とトレーナーが行き食レポします。店ごとに食べるウマ娘は変わります。
ウマ娘の口調などはうろ覚えなので、その点ご容赦下さい。
なお、レギュラーの専属ウマ娘を最初に設定します。
下1~5でコンマが最も大きいものとします。よろしくお願いいたします。
2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 19:41:53.52 :coRSnfui0
サクラバクシンオー
サクラバクシンオー
3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 19:43:20.12 :83HBnB5Uo
ファインモーション
ファインモーション
4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 20:01:46.22 :IoaNE9Z5o
ファインモーション
ファインモーション
5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 20:07:25.24 :c6m6yTm70
エイシンフラッシュ
エイシンフラッシュ
6:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 20:10:51.22 :xVquxxpno
ダイワスカーレット
ダイワスカーレット
7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 21:27:01.46 :OC8luprgO
ではサクラバクシンオーとします。
続いてトレーナーを設定します。
下1~3でコンマの最も大きいものを採用します。
ではサクラバクシンオーとします。
続いてトレーナーを設定します。
下1~3でコンマの最も大きいものを採用します。
8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 21:27:28.29 :OC8luprgO
上げ忘れました。
上げ忘れました。
9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 21:30:52.73 :IoaNE9Z5o
メッチャ鍛えてて生身でウマ娘と渡り合える系
チートデイ(どか食いしていい日)はラーメン一択のラーメン狂でもある
メッチャ鍛えてて生身でウマ娘と渡り合える系
チートデイ(どか食いしていい日)はラーメン一択のラーメン狂でもある
10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 21:47:33.25 :TYP145p50
大人しく無口だが、聞き上手で色んなタイプの人と仲良くできるタイプ
大人しく無口だが、聞き上手で色んなタイプの人と仲良くできるタイプ
11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 22:14:17.70 :B29ip7ato
ノリのいい[ピザ]
ノリのいい[ピザ]
12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 22:23:42.01 :OC8luprgO
では>>9で決定します。
初回まで少々お待ちください。
では>>9で決定します。
初回まで少々お待ちください。
13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 22:24:34.77 :IoaNE9Z5o
おつ
きたい
おつ
きたい
14:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 22:44:34.05 :OC8luprgO
トレセン学園の朝は早い。
ウマ娘にとって、トレーニングは早朝に行うものだ。朝露が落ちる前から彼女たちはダートを、ウッドチップを、そして坂路を駆ける。
午前6時ともなれば、薄闇の中に彼女たちの靴音……もとい、蹄鉄の音が響き渡る。
そして大抵のウマ娘は、静かに、そして精一杯走るものだ。そう、大抵の場合は。
バクシンバクシン……
バクシンバクシンバクシンバクシン………
坂の下から、その声は段々と近く、大きくなる。そして。
「バックシーン!!」
得意気な、満面の笑顔とともに、彼女は私の前を通り過ぎていった。タイムは……52秒2。良い。
「どうでしたか!トレーナーさんっ!!」
ピコピコと尻尾を揺らしながら、彼女は小走りで駆け寄ってきた。
「素晴らしいぞ。恐らくは今日1のタイムだ」
「ワッハッハ!!そうでしょう、そうでしょう!!なぜなら、私は学級委員長ですからっ!!」
彼女……サクラバクシンオーは両手を腰に当て、胸をそらして笑う。いつも通り、元気で結構。
「うむ。君の毎日の鍛練の成果だ。もっとも、無理は禁物だぞ。オーバートレーニングほど、良くないものはない。
坂路練習の後は丁寧なストレッチとクールダウンだ。水分補給をした上で、食堂に来たまえ。朝食を用意してある」
「はいっ!!トレーナーさんの朝ごはん、楽しみですっ!!」
バクシンオーはそう言うと、またハッハッハと元気に笑い始めた。
手元のメモに視線を落とす。……次のレースまで、あと3週間か。
彼女は元気そうだが、少々無理をさせている自覚はある。体重も、ベストより少し落ちている。
これは……そろそろだな。
トレセン学園の朝は早い。
ウマ娘にとって、トレーニングは早朝に行うものだ。朝露が落ちる前から彼女たちはダートを、ウッドチップを、そして坂路を駆ける。
午前6時ともなれば、薄闇の中に彼女たちの靴音……もとい、蹄鉄の音が響き渡る。
そして大抵のウマ娘は、静かに、そして精一杯走るものだ。そう、大抵の場合は。
バクシンバクシン……
バクシンバクシンバクシンバクシン………
坂の下から、その声は段々と近く、大きくなる。そして。
「バックシーン!!」
得意気な、満面の笑顔とともに、彼女は私の前を通り過ぎていった。タイムは……52秒2。良い。
「どうでしたか!トレーナーさんっ!!」
ピコピコと尻尾を揺らしながら、彼女は小走りで駆け寄ってきた。
「素晴らしいぞ。恐らくは今日1のタイムだ」
「ワッハッハ!!そうでしょう、そうでしょう!!なぜなら、私は学級委員長ですからっ!!」
彼女……サクラバクシンオーは両手を腰に当て、胸をそらして笑う。いつも通り、元気で結構。
「うむ。君の毎日の鍛練の成果だ。もっとも、無理は禁物だぞ。オーバートレーニングほど、良くないものはない。
坂路練習の後は丁寧なストレッチとクールダウンだ。水分補給をした上で、食堂に来たまえ。朝食を用意してある」
「はいっ!!トレーナーさんの朝ごはん、楽しみですっ!!」
バクシンオーはそう言うと、またハッハッハと元気に笑い始めた。
手元のメモに視線を落とす。……次のレースまで、あと3週間か。
彼女は元気そうだが、少々無理をさせている自覚はある。体重も、ベストより少し落ちている。
これは……そろそろだな。
15:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 22:57:54.83 :OC8luprgO
*
彼女が食事に出ている間は、私のトレーニングの時間だ。
「1、2、3……」
レッグプレス、ベンチプレス、スクワットマシーン……決められた負荷で、決められた回数を忠実にこなす。
そして、決められた時間を休み、決められた分量の水分とプロテインを採る。
これが私の、日々のルーティーンだ。
彼女にレースがあるように、私にもコンテストがある。これは、そのために筋肉を育てる重要なプロセスだ。
1日たりとも休んではならない。盆栽が日々の手入れを必要とするように、筋肉もまた日々丁寧に手入れをしなければならない。
それは、日々走ることを求められている、ウマ娘と同じだ。私の生業は、彼女たちのそれと、とても、とても良く似ている。
だから、私はトレーナーになったのだ。
私は天王寺定光。
世界で最もストイックで、最も苦しく、最も美しいスポーツ……ボディービルディングに生涯を捧げた男だ。
*
彼女が食事に出ている間は、私のトレーニングの時間だ。
「1、2、3……」
レッグプレス、ベンチプレス、スクワットマシーン……決められた負荷で、決められた回数を忠実にこなす。
そして、決められた時間を休み、決められた分量の水分とプロテインを採る。
これが私の、日々のルーティーンだ。
彼女にレースがあるように、私にもコンテストがある。これは、そのために筋肉を育てる重要なプロセスだ。
1日たりとも休んではならない。盆栽が日々の手入れを必要とするように、筋肉もまた日々丁寧に手入れをしなければならない。
それは、日々走ることを求められている、ウマ娘と同じだ。私の生業は、彼女たちのそれと、とても、とても良く似ている。
だから、私はトレーナーになったのだ。
私は天王寺定光。
世界で最もストイックで、最も苦しく、最も美しいスポーツ……ボディービルディングに生涯を捧げた男だ。
16:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 23:22:41.57 :OC8luprgO
ピピピピ…………
タイマーの音が鳴った。そろそろ、バクシンオーが戻ってくる頃だろう。
私はシャワーを手早く済ませ、汗を流し落とす。そして制汗剤を吹き掛け、軽く香水を付ける。
バクシンオーは大雑把な性格だが、それでも年頃の娘だ。漢の汗の臭いで、不快にさせてはいけない。
「バックシーン!!トレーナーさんっ、ただいま戻りました!!」
「うむ。食事は全部食べられたかな」
「花丸、ですっ!!」
満足そうに笑う彼女を見てホッとする。万事トラブルなし、良いことだ。
「そうか、なら良かった。時に、今晩は予定があるかな?」
「予定、ですか?」
「そうだ。君の体重は、少々落ちている。私も、そろそろ動かねばなら……」
「ハワワワワ!!デートのお誘いですか!?いかにトレーナーさんでも、不純異性交遊はいかがなものかと……」
顔を真っ赤にしながら慌てるバクシンオーに、私は苦笑した。
「話は最後まで聞きたまえ。君も私とはそれなりに長い付き合いだろう。月に1度の、あれだよ」
「アレ、ですか?」
バクシンオーの頭上に、?が幾つも浮かんでいるのが見えるようだ。
「そうだ。『チートデイ』だよ」
「ちーとでい?」
私は軽く溜め息をついた。彼女は走ることにおいては非常に優秀で、文句のない優等生なのだが、残念なことに物覚えはあまり良くはない。
「そうだ。いい加減覚えてほしいものだが……。
トレーニングをしていると、身体がそれに慣れてしまう。そして的確な栄養素を採っていても、身体がそれを当然のものと感じてしまうようになる。
だから、定期的に好きなものを、思い切り食べて、身体を『自分は不健康だ』と騙すのだよ。そうすることで、トレーニングの効果は高まるのだ。
その、何でも食べていい日こそ『チートデイ』だ。私と君の場合、それは月1回だな」
「はわー。良く分かりませんが、とてもいい日なのですね!!でも、普段からトレーナーさんは考えて美味しい食事を準備してますよね?」
「健康にいいだけで不味い食事ほど害悪はないからな。ストレスを感じさせないよう、そこは考えて作っている。
だが、どんなに美味くしようとしても、栄養素に配慮している以上限界はある。美味いものは健康に悪い。それは悲しいが真実だ。
故に、チートデイでは極力健康に悪いものを食う必要がある。炭水化物、塩分、脂分……多量のそれを摂取できる、最も効率が良く、かつ美味く、しかも安価な食事……それを食べに行こう」
「ハイッ!!で、何を食べるのですか?」
私はニヤリと笑う。……そう、誰より私自身、この日を待ち望んでいたのだ。
「決まっているだろう、ラーメンだよ」
ピピピピ…………
タイマーの音が鳴った。そろそろ、バクシンオーが戻ってくる頃だろう。
私はシャワーを手早く済ませ、汗を流し落とす。そして制汗剤を吹き掛け、軽く香水を付ける。
バクシンオーは大雑把な性格だが、それでも年頃の娘だ。漢の汗の臭いで、不快にさせてはいけない。
「バックシーン!!トレーナーさんっ、ただいま戻りました!!」
「うむ。食事は全部食べられたかな」
「花丸、ですっ!!」
満足そうに笑う彼女を見てホッとする。万事トラブルなし、良いことだ。
「そうか、なら良かった。時に、今晩は予定があるかな?」
「予定、ですか?」
「そうだ。君の体重は、少々落ちている。私も、そろそろ動かねばなら……」
「ハワワワワ!!デートのお誘いですか!?いかにトレーナーさんでも、不純異性交遊はいかがなものかと……」
顔を真っ赤にしながら慌てるバクシンオーに、私は苦笑した。
「話は最後まで聞きたまえ。君も私とはそれなりに長い付き合いだろう。月に1度の、あれだよ」
「アレ、ですか?」
バクシンオーの頭上に、?が幾つも浮かんでいるのが見えるようだ。
「そうだ。『チートデイ』だよ」
「ちーとでい?」
私は軽く溜め息をついた。彼女は走ることにおいては非常に優秀で、文句のない優等生なのだが、残念なことに物覚えはあまり良くはない。
「そうだ。いい加減覚えてほしいものだが……。
トレーニングをしていると、身体がそれに慣れてしまう。そして的確な栄養素を採っていても、身体がそれを当然のものと感じてしまうようになる。
だから、定期的に好きなものを、思い切り食べて、身体を『自分は不健康だ』と騙すのだよ。そうすることで、トレーニングの効果は高まるのだ。
その、何でも食べていい日こそ『チートデイ』だ。私と君の場合、それは月1回だな」
「はわー。良く分かりませんが、とてもいい日なのですね!!でも、普段からトレーナーさんは考えて美味しい食事を準備してますよね?」
「健康にいいだけで不味い食事ほど害悪はないからな。ストレスを感じさせないよう、そこは考えて作っている。
だが、どんなに美味くしようとしても、栄養素に配慮している以上限界はある。美味いものは健康に悪い。それは悲しいが真実だ。
故に、チートデイでは極力健康に悪いものを食う必要がある。炭水化物、塩分、脂分……多量のそれを摂取できる、最も効率が良く、かつ美味く、しかも安価な食事……それを食べに行こう」
「ハイッ!!で、何を食べるのですか?」
私はニヤリと笑う。……そう、誰より私自身、この日を待ち望んでいたのだ。
「決まっているだろう、ラーメンだよ」
17:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 23:24:55.01 :OC8luprgO
以上、プロローグ終わりです。
ゲストキャラを1人決定します。下1~3で、最もコンマが大きいものとします。
決定後、ラーメンのジャンルを決めて本日は終了です。
以上、プロローグ終わりです。
ゲストキャラを1人決定します。下1~3で、最もコンマが大きいものとします。
決定後、ラーメンのジャンルを決めて本日は終了です。
18:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 23:28:25.48 :83HBnB5Uo
オグリキャップ
オグリキャップ
19:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 23:30:13.95 :TYP145p50
ライスシャワー
ライスシャワー
20:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/19(日) 23:30:43.05 :Io0fTeMDO
ハルウララ
ハルウララ
21:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/20(月) 00:00:37.37 :ASFNLDnCO
ゲストキャラはライスシャワーです。
ラーメンのジャンルを決めます。
下1~3で最もコンマの大きいものとします。
ゲストキャラはライスシャワーです。
ラーメンのジャンルを決めます。
下1~3で最もコンマの大きいものとします。
22:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/20(月) 00:10:40.21 :rKom41EUo
二郎系
二郎系
23:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/20(月) 00:13:21.87 :IwJvJv9Zo
アッサリ目のやつ
アッサリ目のやつ
24:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/20(月) 00:17:07.34 :5WAAH2rl0
富山ブラック
富山ブラック
25:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/20(月) 00:23:43.22 :ASFNLDnCO
ではあっさり淡麗系とします。
初回ということもあり、まずはメジャーな店とします。ヒントはミシュランです。
ではあっさり淡麗系とします。
初回ということもあり、まずはメジャーな店とします。ヒントはミシュランです。
26:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/20(月) 00:26:08.31 :IwJvJv9Zo
おつ
きたい
おつ
きたい
27:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/23(木) 22:01:11.75 :5sgTx3NQO
*
「お待たせしました!!」
いつものデニムの上に薄手のコートを羽織い、バクシンオーが小走りに駆けてきた。年の瀬で夜はかなり冷えるのだが、それでも短パンは崩さないのが彼女らしい。
「うむ。では行くか……!?」
学園を出ようとすると、門の前に女性2人がいるのが見えた。
1人は身長165cmほどで、困惑した表情を浮かべている。そして、あの小柄なウマ娘は……しかも、しくしくと泣いている。……これはどうしたことか。
「ごめんなさい……!!ライスのせいで、折角のお祝いが……」
「いや、ライスのせいじゃないわよ。今日は運が悪かっ」
「違うの!ライスが、またお姉さまに不幸を……」
あれはライスシャワーと、担当トレーナーの三田村嬢か。少し話を聞k
「どうしたのですか!?ライスさん!」
私が話しかけようとする前に、バクシンオーがいつもの調子で彼女たちに訊いた。相変わらず、判断が速い。
「あ……バクシンオーさん……」
「困ったことがあったらなんでも言ってください!学級委員長ですからっ!!」
しょぼんとうつむくライスに代わり、三田村嬢が答える。
「あ……今日は私の誕生日だったの。それで、ライスと2人でちょっと贅沢しようと思ってたのだけど……予約してたお店が、急にお休みになっちゃって……」
「ライスがお店を選んだからこうなっちゃったんだ……本当に、ごめんなさい……!」
「はわわ、これは困りましたね!あ、トレーナーさんっ!」
私が近付くと、ライスシャワーが「ひゃいっ!?」と後退りしてしまった。どうにもこの身長190cmの図体は、威圧感を与えていけない。
三田村嬢が、私を見上げる。
「天王寺トレーナー!?」
「失敬。少しお話は聞かせていただきました。ディナーが中止になってしまった、ということですか」
「え、ええ。今日はしょうがないので、日を改めようかと」
「いやいや、それはいけない。折角の記念日だ。ちょうど我々も食事に出ようかと思ってましてな。よろしかったら、ご一緒にどうですか?」
「……え、いいんですか?」
私は白い歯を見せる。
「無論。今日はチートデイの日でしてな。記念日に相応しい店にご案内しましょう」
「ち、ちーとでい?」
説明しようとした私に、バクシンオーが割り込んできた。
「はいっ!美味しいものを、幾らでも食べていい日だそうです!!今日はラーメンを食べに行きます!!」
「ら、ラーメン……?」
三田村嬢とライスシャワーが、困惑気味の表情になる。これはガッカリさせてしまったか。
だが、この天王寺定光が、チートデイにただのラーメン屋に行こうはずもない。
「心配無用ですよ。行き先は銀座。ミシュラン一ツ星、紛うことなき日本のラーメンの極みです」
*
「お待たせしました!!」
いつものデニムの上に薄手のコートを羽織い、バクシンオーが小走りに駆けてきた。年の瀬で夜はかなり冷えるのだが、それでも短パンは崩さないのが彼女らしい。
「うむ。では行くか……!?」
学園を出ようとすると、門の前に女性2人がいるのが見えた。
1人は身長165cmほどで、困惑した表情を浮かべている。そして、あの小柄なウマ娘は……しかも、しくしくと泣いている。……これはどうしたことか。
「ごめんなさい……!!ライスのせいで、折角のお祝いが……」
「いや、ライスのせいじゃないわよ。今日は運が悪かっ」
「違うの!ライスが、またお姉さまに不幸を……」
あれはライスシャワーと、担当トレーナーの三田村嬢か。少し話を聞k
「どうしたのですか!?ライスさん!」
私が話しかけようとする前に、バクシンオーがいつもの調子で彼女たちに訊いた。相変わらず、判断が速い。
「あ……バクシンオーさん……」
「困ったことがあったらなんでも言ってください!学級委員長ですからっ!!」
しょぼんとうつむくライスに代わり、三田村嬢が答える。
「あ……今日は私の誕生日だったの。それで、ライスと2人でちょっと贅沢しようと思ってたのだけど……予約してたお店が、急にお休みになっちゃって……」
「ライスがお店を選んだからこうなっちゃったんだ……本当に、ごめんなさい……!」
「はわわ、これは困りましたね!あ、トレーナーさんっ!」
私が近付くと、ライスシャワーが「ひゃいっ!?」と後退りしてしまった。どうにもこの身長190cmの図体は、威圧感を与えていけない。
三田村嬢が、私を見上げる。
「天王寺トレーナー!?」
「失敬。少しお話は聞かせていただきました。ディナーが中止になってしまった、ということですか」
「え、ええ。今日はしょうがないので、日を改めようかと」
「いやいや、それはいけない。折角の記念日だ。ちょうど我々も食事に出ようかと思ってましてな。よろしかったら、ご一緒にどうですか?」
「……え、いいんですか?」
私は白い歯を見せる。
「無論。今日はチートデイの日でしてな。記念日に相応しい店にご案内しましょう」
「ち、ちーとでい?」
説明しようとした私に、バクシンオーが割り込んできた。
「はいっ!美味しいものを、幾らでも食べていい日だそうです!!今日はラーメンを食べに行きます!!」
「ら、ラーメン……?」
三田村嬢とライスシャワーが、困惑気味の表情になる。これはガッカリさせてしまったか。
だが、この天王寺定光が、チートデイにただのラーメン屋に行こうはずもない。
「心配無用ですよ。行き先は銀座。ミシュラン一ツ星、紛うことなき日本のラーメンの極みです」
28:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/23(木) 22:01:55.00 :5sgTx3NQO
第1R 銀座「ハ五」
第1R 銀座「ハ五」
29:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/23(木) 22:02:21.76 :5sgTx3NQO
本編は週末に。
本編は週末に。
30:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/23(木) 22:12:33.15 :Pmz6c/5go
おつおつ
トレーナーも付いてくるのかこれはお得()
おつおつ
トレーナーも付いてくるのかこれはお得()
31:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/24(金) 00:12:12.79 :uQAwlPV40
ライスはラーメン好きだったような希ガス
ライスはラーメン好きだったような希ガス
32:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/24(金) 00:58:42.61 :/zfJkOwkO
>>31
お祝いの席の代わりにラーメン?ということと解釈してください。
>>31
お祝いの席の代わりにラーメン?ということと解釈してください。
33:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/26(日) 20:42:52.77 :I6xYV6WtO
今日更新できるかちょっと微妙です。
今日更新できるかちょっと微妙です。
34:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/29(水) 22:17:02.75 :PfUYSjUvO
*
「運転手さん、ここで結構」
タクシーを歌舞伎座の前で停めてもらう。暮れの銀座の夜は、忘年会に向かうサラリーマンで賑わっていた。
私たちは灯りで彩られた表通りから離れ、静かな小道を歩く。
「銀座、来るのははじめてです!ラーメン屋さんもあるのですね!」
目をキラキラさせながら、バクシンオーがスキップするように私の後ろをついてくる。三田村嬢とライスシャワーはというと、まだ少し戸惑い気味だ。
「ミシュラン一ツ星って……割烹、ですか?」
「いやいや、値段は少し高めのラーメン屋ですよ。ミシュランはラーメンも美食として評価しておりましてな。東京では確か、一ツ星ラーメン店は3店あるそうです」
三田村嬢の後ろに、ピタッとライスシャワーがくっついている。彼女も銀座は初めてなのだろうか、どこか所在なさげだ。
「ライス、ラーメン好きだよ。どんなラーメン、なの?」
「そうだな……ジャンルを言うのは難しいな。塩でも醤油でも、豚骨でも味噌でもない。つけ麺でもない。『食えば分かる』としか、言いようがないな。
ただ、洋食党の君には、きっと気に入ってもらえるはずだ。……と、見えてきたぞ」
行列はざっと20人弱、といったところだろうか。夜ならば多少は並びが少ないと思っていたが、それでもかなりの人数だ。
「ややっ?どこにお店があるのですか?」
「そこの角だよ。まあ、見た目は小料理屋にしか見えないだろうな。
三田村トレーナーとライス君には少々悪いが、しばし待とう。待つことに伴うストレスも、チートデイには有効なのだ」
バクシンオーの頭にまた?が浮かんでいる。
「はて?どういうことですか??」
「チートデイとは、苦痛からの解放のためにある。それによって身体を騙すのだよ。
簡単に言えば、我慢して精一杯やったトレーニングの後の水は美味いだろう?それと同じだよ」
「むむ……分かったような、分からないような……でもとにかく美味しいラーメンなのは分かりました!!」
行列はゆっくりと進む。ある程度進むと、店内の券売機で食券を買うよう促された。
*
「運転手さん、ここで結構」
タクシーを歌舞伎座の前で停めてもらう。暮れの銀座の夜は、忘年会に向かうサラリーマンで賑わっていた。
私たちは灯りで彩られた表通りから離れ、静かな小道を歩く。
「銀座、来るのははじめてです!ラーメン屋さんもあるのですね!」
目をキラキラさせながら、バクシンオーがスキップするように私の後ろをついてくる。三田村嬢とライスシャワーはというと、まだ少し戸惑い気味だ。
「ミシュラン一ツ星って……割烹、ですか?」
「いやいや、値段は少し高めのラーメン屋ですよ。ミシュランはラーメンも美食として評価しておりましてな。東京では確か、一ツ星ラーメン店は3店あるそうです」
三田村嬢の後ろに、ピタッとライスシャワーがくっついている。彼女も銀座は初めてなのだろうか、どこか所在なさげだ。
「ライス、ラーメン好きだよ。どんなラーメン、なの?」
「そうだな……ジャンルを言うのは難しいな。塩でも醤油でも、豚骨でも味噌でもない。つけ麺でもない。『食えば分かる』としか、言いようがないな。
ただ、洋食党の君には、きっと気に入ってもらえるはずだ。……と、見えてきたぞ」
行列はざっと20人弱、といったところだろうか。夜ならば多少は並びが少ないと思っていたが、それでもかなりの人数だ。
「ややっ?どこにお店があるのですか?」
「そこの角だよ。まあ、見た目は小料理屋にしか見えないだろうな。
三田村トレーナーとライス君には少々悪いが、しばし待とう。待つことに伴うストレスも、チートデイには有効なのだ」
バクシンオーの頭にまた?が浮かんでいる。
「はて?どういうことですか??」
「チートデイとは、苦痛からの解放のためにある。それによって身体を騙すのだよ。
簡単に言えば、我慢して精一杯やったトレーニングの後の水は美味いだろう?それと同じだよ」
「むむ……分かったような、分からないような……でもとにかく美味しいラーメンなのは分かりました!!」
行列はゆっくりと進む。ある程度進むと、店内の券売機で食券を買うよう促された。
35:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/29(水) 22:25:29.86 :NKasLOiho
来たぁ!
来たぁ!
36:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/29(水) 22:37:25.16 :PfUYSjUvO
店内は薄明かりで照らされ、サラ・ブライトマンの曲が流れている。
ここをラーメン屋だと知らず入った人は、ここが高級小料理屋だとしか思わないだろう。
「天王寺トレーナー、何を頼めば……って、メニューは中華そばだけですか?」
「そうです。それだけです。トッピングで味玉を入れるか、チャーシューを増量するかだけですな」
「あ……じゃあ特製で」
「ライスも……」
せっかくのお祝いだ、私たちも特製中華そばを注文することにした。
食券を店員に渡してさらに外で待つこと10分弱。ようやく、私たちはカウンター席についた。
「いらっしゃいませ……天王寺さん!?久し振りですね」
頭の禿げ上がった初老の男が、カウンター越しに呼び掛ける。
「半年振りですね。今日は私の教え子たちも一緒ですが、宜しいですか?」
「ああそれはもう。しかしウマ娘さんたちだと、少々量が少ないかもしれませんね……大盛りができればよかったのですが、今は休止中で」
「構いませんよ。チートデイで重要なのは量より質。その観点からは、こちら以上の店はそうはない」
「いえいえ……それは恐縮です。ともあれ、精一杯作らせて頂きます」
一礼して、店主が寸胴に向かった。三田村嬢が、驚いたように私を見る。
「お知り合いなんですか?」
「いやまあ、古い付き合いですよ。彼は昔、某大ホテルチェーンを取りまとめていた総料理長でしてな。引退後にラーメン職人に転じ、開いたのがここというわけです」
奥から芳しいスープの香りが漂ってくる。胃が、そして筋肉が、待ちきれんとばかりに蠢くのが分かった。
そして、程なくして、4つの丼が私たちの前に供された。
「お待たせしました、特製中華そばです」
店内は薄明かりで照らされ、サラ・ブライトマンの曲が流れている。
ここをラーメン屋だと知らず入った人は、ここが高級小料理屋だとしか思わないだろう。
「天王寺トレーナー、何を頼めば……って、メニューは中華そばだけですか?」
「そうです。それだけです。トッピングで味玉を入れるか、チャーシューを増量するかだけですな」
「あ……じゃあ特製で」
「ライスも……」
せっかくのお祝いだ、私たちも特製中華そばを注文することにした。
食券を店員に渡してさらに外で待つこと10分弱。ようやく、私たちはカウンター席についた。
「いらっしゃいませ……天王寺さん!?久し振りですね」
頭の禿げ上がった初老の男が、カウンター越しに呼び掛ける。
「半年振りですね。今日は私の教え子たちも一緒ですが、宜しいですか?」
「ああそれはもう。しかしウマ娘さんたちだと、少々量が少ないかもしれませんね……大盛りができればよかったのですが、今は休止中で」
「構いませんよ。チートデイで重要なのは量より質。その観点からは、こちら以上の店はそうはない」
「いえいえ……それは恐縮です。ともあれ、精一杯作らせて頂きます」
一礼して、店主が寸胴に向かった。三田村嬢が、驚いたように私を見る。
「お知り合いなんですか?」
「いやまあ、古い付き合いですよ。彼は昔、某大ホテルチェーンを取りまとめていた総料理長でしてな。引退後にラーメン職人に転じ、開いたのがここというわけです」
奥から芳しいスープの香りが漂ってくる。胃が、そして筋肉が、待ちきれんとばかりに蠢くのが分かった。
そして、程なくして、4つの丼が私たちの前に供された。
「お待たせしました、特製中華そばです」
37:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/29(水) 23:38:03.96 :PfUYSjUvO
丼には黄金色のスープ。その中を細ストレート麺が、行儀よく漂っている。
さらにその上にはチャーシュー。チャーシューに乗せられた茶色の粒々からは、えもしれぬ刺激的な香りが広がっている。
「やや、美味しそうですね!しかしこれは……何ラーメンなのですか?」
ライスシャワーが、蓮華でスープを掬い、一口飲む。その刹那、ハッしたように目を見開いた。
「これ……コンソメ!?でも、何か違う……複雑で、でもとても深い……」
三田村嬢も、「美味しい!」と言ったまま少し固まった。
「……なんでしょう、これ。天王寺トレーナーの言う通り、塩でも醤油でもない。もちろん味噌でも豚骨でもない……」
店主が微笑みながら彼女に語りかけた。
「うち、『かえし』を使ってないんですよ」
「『かえし』?」
私は頷く。
「ラーメンの味、ひいてはジャンルを決定づけるタレのことですな。塩タレなら塩ラーメン、醤油ベースなら醤油ラーメンになる。それをここでは使っていない」
「えっ、何でですか?」
「それはこのスープにある。極めて複雑かつ深い旨味。このスープの力を生かすには、かえしはむしろ邪魔。……そういうことですな?」
店主が微笑み、私に同意した。
「そこまで理解して頂けると光栄です」
私は寸胴の方を見た。表面は香味野菜で覆われている。
「彼が昔、某大ホテルチェーンの総料理長だったのは説明しましたな。そして彼の専門はフレンチ。スープを取るのにも、その技法は使われている。
ライス君の言った通り、コンソメに近い味わいなのはそこから来ているわけですな。
味の決め手は、スープの出汁を取るのに使われているプロシュート」
「ぷろしゅーと?」
「高級生ハムのことだよ、バクシンオー君。スープをハムで取るのは、高級中華ではよくあることだ。
ただ、そこで使われる金華ハムはあまりに高い。ラーメンで金華ハムを使っているのは、『家元』がスペシャルでやるくらいしか聞いたことがない。
そこでここ『八五』は、プロシュートを使った。それがフレンチに通じる独特のスープを作り上げたわけだよ」
「むむむ……よく分かりませんがとにかくすごいのですね!麺が伸びてしまいますから早く食べましょう!」
「ははは、つい熱が入ってしまったな。バクシンオー君の言う通りだ、頂くとしようか」
私は箸を取り、勢いよく麺を啜る。パツパツとした細麺にスープが絡む。
上品、かつ個性的。どこにもありそうで、しかしどこにもない。
ただ、旨味のみが、喉を通り抜けていく。旨味は筋肉の隅々まで広がり、「飢え」を満たしていく。
……うむ、満足。
「バックシーン!!!」
バクシンオーが大声で叫ぶと同時に、私のワイシャツのボタンが全て弾け飛んだ。
丼には黄金色のスープ。その中を細ストレート麺が、行儀よく漂っている。
さらにその上にはチャーシュー。チャーシューに乗せられた茶色の粒々からは、えもしれぬ刺激的な香りが広がっている。
「やや、美味しそうですね!しかしこれは……何ラーメンなのですか?」
ライスシャワーが、蓮華でスープを掬い、一口飲む。その刹那、ハッしたように目を見開いた。
「これ……コンソメ!?でも、何か違う……複雑で、でもとても深い……」
三田村嬢も、「美味しい!」と言ったまま少し固まった。
「……なんでしょう、これ。天王寺トレーナーの言う通り、塩でも醤油でもない。もちろん味噌でも豚骨でもない……」
店主が微笑みながら彼女に語りかけた。
「うち、『かえし』を使ってないんですよ」
「『かえし』?」
私は頷く。
「ラーメンの味、ひいてはジャンルを決定づけるタレのことですな。塩タレなら塩ラーメン、醤油ベースなら醤油ラーメンになる。それをここでは使っていない」
「えっ、何でですか?」
「それはこのスープにある。極めて複雑かつ深い旨味。このスープの力を生かすには、かえしはむしろ邪魔。……そういうことですな?」
店主が微笑み、私に同意した。
「そこまで理解して頂けると光栄です」
私は寸胴の方を見た。表面は香味野菜で覆われている。
「彼が昔、某大ホテルチェーンの総料理長だったのは説明しましたな。そして彼の専門はフレンチ。スープを取るのにも、その技法は使われている。
ライス君の言った通り、コンソメに近い味わいなのはそこから来ているわけですな。
味の決め手は、スープの出汁を取るのに使われているプロシュート」
「ぷろしゅーと?」
「高級生ハムのことだよ、バクシンオー君。スープをハムで取るのは、高級中華ではよくあることだ。
ただ、そこで使われる金華ハムはあまりに高い。ラーメンで金華ハムを使っているのは、『家元』がスペシャルでやるくらいしか聞いたことがない。
そこでここ『八五』は、プロシュートを使った。それがフレンチに通じる独特のスープを作り上げたわけだよ」
「むむむ……よく分かりませんがとにかくすごいのですね!麺が伸びてしまいますから早く食べましょう!」
「ははは、つい熱が入ってしまったな。バクシンオー君の言う通りだ、頂くとしようか」
私は箸を取り、勢いよく麺を啜る。パツパツとした細麺にスープが絡む。
上品、かつ個性的。どこにもありそうで、しかしどこにもない。
ただ、旨味のみが、喉を通り抜けていく。旨味は筋肉の隅々まで広がり、「飢え」を満たしていく。
……うむ、満足。
「バックシーン!!!」
バクシンオーが大声で叫ぶと同時に、私のワイシャツのボタンが全て弾け飛んだ。
38:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 00:03:25.18 :7W+mlsx/O
「ひいっ!!?」
ライスシャワーが驚いた声をあげる。バクシンオーも目を丸くした。
「ちょわっ!?これはどうしたことですかっ!?」
「ハッハッハ、すまないね。美味さで筋肉が満足すると、こうなるのだよ」
カウンターの奥の店主も苦笑する。
「天王寺さんのそれ、久々に見ました」
「お恥ずかしい。チートデイで美味いものを食うと、どうしてもこうなってしまうのですよ。
ともあれ皆、私のことは気にせず食べたまえ」
バクシンオーは一心不乱に麺を啜り始めた。
「美味しいっ!美味しいでふトレーナーさんっ!!こんな美味しいラーメンは初めてです!!」
「ライスも同じだよ?本当に、今まで食べたことのないラーメン……
それに、この粒々。胡椒みたいだけど、とても複雑な味がする」
三田村嬢が首を縦に振る。
「それ、気になってたの。何なのですか?」
「マダガスカル産の最高級胡椒『ペッパーキャビア』ですよ。これもフレンチならではの薬味ですな」
端麗系のラーメンは、往々にして味が単調になりがちだ。そしてえてして、上品なだけの味になり、印象がぼやけやすい。
それをペッパーキャビアが封じている。しかも、食べ進めるごとにそれはスープに溶け出し、スープ自体の味を変えていく。故に、飽きない。
「チャーシューも、柔らかくて美味しいです!」
バクシンオーはほとんどスープも飲み干そうとしている。脚だけでなく、食べるのも速い。
ライスシャワーはというと、味わうようにゆっくりと食べている。これもスプリンターとステイヤーの違いというものか。
「本当に、美味しい……!天王寺トレーナーさん、ありがとうございます」
「いやいや、礼には及ばないよ。お祝いの穴埋めにはなったかな?」
「うんっ……!」
嬉しそうなライスシャワーを見て、私も思わず笑顔になる。そうしていると、私たちの前にグラスが出された。
「これは……?」
「ほうじ茶です。よろしければ」
「……!!」
三田村嬢が絶句した。バクシンオーも「ややっ!!」と声をあげる。
「これは濃い、美味しいお茶ですね!」
「スープの味を、クリアに流していく……まるで完成された、フルコースの最後のデザートみたい」
三田村嬢に私は頷いた。
「その通り。それこそが、この店のコンセプトですからな」
「コンセプト……あっ!!確か、フレンチ出身って……」
「そういうことです。元々、フレンチレストランに行くおつもりだったのでしょう?
ここを選んだのには、然るべき理由があったわけですよ」
「そういうことでしたか……!心遣い、本当にありがとうございます!」
「いやいや、たまたまチートデイにラーメンをと思っただけですよ。そして狙い通り、筋肉も満足した。
あまり長居すると、待っているお客さんに悪いですな。そろそろ出ましょうか」
「ひいっ!!?」
ライスシャワーが驚いた声をあげる。バクシンオーも目を丸くした。
「ちょわっ!?これはどうしたことですかっ!?」
「ハッハッハ、すまないね。美味さで筋肉が満足すると、こうなるのだよ」
カウンターの奥の店主も苦笑する。
「天王寺さんのそれ、久々に見ました」
「お恥ずかしい。チートデイで美味いものを食うと、どうしてもこうなってしまうのですよ。
ともあれ皆、私のことは気にせず食べたまえ」
バクシンオーは一心不乱に麺を啜り始めた。
「美味しいっ!美味しいでふトレーナーさんっ!!こんな美味しいラーメンは初めてです!!」
「ライスも同じだよ?本当に、今まで食べたことのないラーメン……
それに、この粒々。胡椒みたいだけど、とても複雑な味がする」
三田村嬢が首を縦に振る。
「それ、気になってたの。何なのですか?」
「マダガスカル産の最高級胡椒『ペッパーキャビア』ですよ。これもフレンチならではの薬味ですな」
端麗系のラーメンは、往々にして味が単調になりがちだ。そしてえてして、上品なだけの味になり、印象がぼやけやすい。
それをペッパーキャビアが封じている。しかも、食べ進めるごとにそれはスープに溶け出し、スープ自体の味を変えていく。故に、飽きない。
「チャーシューも、柔らかくて美味しいです!」
バクシンオーはほとんどスープも飲み干そうとしている。脚だけでなく、食べるのも速い。
ライスシャワーはというと、味わうようにゆっくりと食べている。これもスプリンターとステイヤーの違いというものか。
「本当に、美味しい……!天王寺トレーナーさん、ありがとうございます」
「いやいや、礼には及ばないよ。お祝いの穴埋めにはなったかな?」
「うんっ……!」
嬉しそうなライスシャワーを見て、私も思わず笑顔になる。そうしていると、私たちの前にグラスが出された。
「これは……?」
「ほうじ茶です。よろしければ」
「……!!」
三田村嬢が絶句した。バクシンオーも「ややっ!!」と声をあげる。
「これは濃い、美味しいお茶ですね!」
「スープの味を、クリアに流していく……まるで完成された、フルコースの最後のデザートみたい」
三田村嬢に私は頷いた。
「その通り。それこそが、この店のコンセプトですからな」
「コンセプト……あっ!!確か、フレンチ出身って……」
「そういうことです。元々、フレンチレストランに行くおつもりだったのでしょう?
ここを選んだのには、然るべき理由があったわけですよ」
「そういうことでしたか……!心遣い、本当にありがとうございます!」
「いやいや、たまたまチートデイにラーメンをと思っただけですよ。そして狙い通り、筋肉も満足した。
あまり長居すると、待っているお客さんに悪いですな。そろそろ出ましょうか」
39:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 00:15:48.67 :7W+mlsx/O
*
「本当に今日は、ありがとうございます……!ご馳走にまでなってしまって」
「いやいや、困った時はお互い様ですからな。当然のことをしたまでです」
三田村嬢に続いて、ライスシャワーも一礼した。
「トレーナーさん、ありがとう……!とってもいいお祝いになったよ……!」
「そう言ってもらえるとありがたい。……ところで、どうして急に店が休みになったのかな?」
「ライスも分からな「ちょわーっ!!」」
横でバクシンオーが奇声を挙げた。何やらスマホを見ているが……
「どうかしたのかな?」
「トレーナーさんっ!!これを見て下さいっ!!」
私は彼女の桜色のスマホを覗き込む。ニュースサイトのようだが……
「何々……?」
『オグリキャップ、とんだ優勝祝い 店の食材を食べ尽くす』
まさか、これは……
スマホを見せると三田村嬢とライスシャワーの顔色が青ざめ、引きつった笑いが浮かんだ。
「「あ、ああ、そういう……」」
「やはり、行く予定のお店でしたか……」
私は、あの時門の前にいたのがオグリキャップではなく、彼女たちだったことに深く感謝するのであった。
第一話 完
*
「本当に今日は、ありがとうございます……!ご馳走にまでなってしまって」
「いやいや、困った時はお互い様ですからな。当然のことをしたまでです」
三田村嬢に続いて、ライスシャワーも一礼した。
「トレーナーさん、ありがとう……!とってもいいお祝いになったよ……!」
「そう言ってもらえるとありがたい。……ところで、どうして急に店が休みになったのかな?」
「ライスも分からな「ちょわーっ!!」」
横でバクシンオーが奇声を挙げた。何やらスマホを見ているが……
「どうかしたのかな?」
「トレーナーさんっ!!これを見て下さいっ!!」
私は彼女の桜色のスマホを覗き込む。ニュースサイトのようだが……
「何々……?」
『オグリキャップ、とんだ優勝祝い 店の食材を食べ尽くす』
まさか、これは……
スマホを見せると三田村嬢とライスシャワーの顔色が青ざめ、引きつった笑いが浮かんだ。
「「あ、ああ、そういう……」」
「やはり、行く予定のお店でしたか……」
私は、あの時門の前にいたのがオグリキャップではなく、彼女たちだったことに深く感謝するのであった。
第一話 完
40:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 00:17:56.48 :7W+mlsx/O
以上です。このために今日1時間半並んで食べてきました。
久々なので記憶をリフレッシュするためでしたが、やはりハ五は美味いですね。
早速次回のお題です。まず、ゲストのウマ娘を決めます。
安価下1~5で、最もコンマが大きいものとします。
以上です。このために今日1時間半並んで食べてきました。
久々なので記憶をリフレッシュするためでしたが、やはりハ五は美味いですね。
早速次回のお題です。まず、ゲストのウマ娘を決めます。
安価下1~5で、最もコンマが大きいものとします。
41:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 00:30:15.42 :lIMH2DI6o
セイウンスカイ
セイウンスカイ
42:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 00:39:04.27 :SaqYcGMpO
ファインモォォーーションッッッ!
ファインモォォーーションッッッ!
43:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 00:41:34.83 :Tn5CMADBo
おつおつ
ファインモーション
おつおつ
ファインモーション
44:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 00:56:22.13 :PJyCGCD7o
オグリキャップ
オグリキャップ
45:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 00:57:12.38 :7KG988H5o
ミホノブルボン
ミホノブルボン
46:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 01:12:07.98 :7W+mlsx/O
それではファインモーションとします。
続いてラーメンのジャンルを決めます。同じく安価下1~5で最も大きいものとします。
それではファインモーションとします。
続いてラーメンのジャンルを決めます。同じく安価下1~5で最も大きいものとします。
47:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 01:45:51.48 :7KG988H5o
二郎系
二郎系
48:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 02:23:27.32 :hhnTll5S0
一風堂みたいな博多系とんこつラーメン
一風堂みたいな博多系とんこつラーメン
49:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 02:25:16.63 :7KG988H5o
えん寺
固有店名はあれならつけ麺系
えん寺
固有店名はあれならつけ麺系
50:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 02:26:04.09 :7KG988H5o
書き込めてたすまん
書き込めてたすまん
51:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 03:22:45.79 :uXmy1Lkjo
ファインといえば札幌記念
北海道ラーメン系
ファインといえば札幌記念
北海道ラーメン系
52:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 05:21:23.70 :Tn5CMADBo
>>51
>>51
53:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 07:36:44.53 :08Rqc2IZO
北海道ラーメン系で決定しました。
多分少し変化球で行きます。
北海道ラーメン系で決定しました。
多分少し変化球で行きます。
54:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2021/12/30(木) 19:08:50.11 :Tn5CMADBo
おつおつ
良いお年を
おつおつ
良いお年を
55:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 14:38:59.49 :+AqJxiVOO
明けましておめでとうございます。
更新は明日までに行う予定です。
なお、オリジナルウマ娘(?)が出ますのでご注意下さい。
(一応ゲーム本編には出てますが)
明けましておめでとうございます。
更新は明日までに行う予定です。
なお、オリジナルウマ娘(?)が出ますのでご注意下さい。
(一応ゲーム本編には出てますが)
56:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 14:44:07.58 :wRRx+65vo
了解
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
了解
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
57:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 16:52:37.14 :+AqJxiVOO
「6、7、8……」
丁寧に焦らず、大胸筋と上腕三頭筋に力を込める。頭上のバーベルはわずかな震えもなく、静かに上下動を繰り返した。
15回を数えた所で私はバーベルを起き、タオルで汗を拭いた。ベンチプレスの負荷は、もう少し高めてもよいかもしれない。
時計を見ると昼手前だ。そろそろ昼食の時間か。
バクシンオーには弁当を持たせてある。スプリンターである彼女には、エネルギーの変換効率が高い食事が望ましい。
学園の食堂でも充分なのだが、私が自ら作った方がより効果的だ。トレーナーには、私のように担当ウマ娘の食事まで作る者が少なくない。
私は冷蔵庫を開け、ホエイプロテインの袋と牛乳を取り出す。シェイカーでそれらを混ぜ、喉に流し込む。
そして、サラダチキンとバナナ、ビタミングミにエネルギーバー。これで昼食は終了だ。
味気ない食事ではあるが、私にとってはこれで充分だ。何より、チートデイは近い。不満に耐えた先のカタルシスこそ、チートデイでは重要なのだ。
「さて……」
午後は高等部で栄養学の授業がある。教員も兼ねている以上、準備は怠れない。シャワーを浴び、教科書を確認せねば……
コンコン
ノックの音だ。すぐに飛び込んでこない所からして、バクシンオーではない。
なら誰だろうか。またライアン君が、筋トレの指導をお願いしに来たか。10分程度なら、余裕はある。
「入りたまえ」
「失礼します」
ペコリと頭を下げたその顔が誰か認識するのに、わずかに時間がかかった。
見慣れないのと、彼女がここに来る理由が分からなかったからだ。
両耳の耳飾り……昨夏に編入してきた、彼女か。
「どうかしたかな?ファインモーション君」
「6、7、8……」
丁寧に焦らず、大胸筋と上腕三頭筋に力を込める。頭上のバーベルはわずかな震えもなく、静かに上下動を繰り返した。
15回を数えた所で私はバーベルを起き、タオルで汗を拭いた。ベンチプレスの負荷は、もう少し高めてもよいかもしれない。
時計を見ると昼手前だ。そろそろ昼食の時間か。
バクシンオーには弁当を持たせてある。スプリンターである彼女には、エネルギーの変換効率が高い食事が望ましい。
学園の食堂でも充分なのだが、私が自ら作った方がより効果的だ。トレーナーには、私のように担当ウマ娘の食事まで作る者が少なくない。
私は冷蔵庫を開け、ホエイプロテインの袋と牛乳を取り出す。シェイカーでそれらを混ぜ、喉に流し込む。
そして、サラダチキンとバナナ、ビタミングミにエネルギーバー。これで昼食は終了だ。
味気ない食事ではあるが、私にとってはこれで充分だ。何より、チートデイは近い。不満に耐えた先のカタルシスこそ、チートデイでは重要なのだ。
「さて……」
午後は高等部で栄養学の授業がある。教員も兼ねている以上、準備は怠れない。シャワーを浴び、教科書を確認せねば……
コンコン
ノックの音だ。すぐに飛び込んでこない所からして、バクシンオーではない。
なら誰だろうか。またライアン君が、筋トレの指導をお願いしに来たか。10分程度なら、余裕はある。
「入りたまえ」
「失礼します」
ペコリと頭を下げたその顔が誰か認識するのに、わずかに時間がかかった。
見慣れないのと、彼女がここに来る理由が分からなかったからだ。
両耳の耳飾り……昨夏に編入してきた、彼女か。
「どうかしたかな?ファインモーション君」
58:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 17:13:26.17 :+AqJxiVOO
パアッと彼女の顔が明るくなった。
「あ、私の顔を覚えて下さったんですね。感激だなあ」
「授業以外で1対1で会うのは初めてだがね。バクシンオーと同じクラスだったな」
「はい!バクちゃんにはいつもお世話になってます」
ニコニコとファインモーションは弾んだ様子で話す。アイルランドの王族ということだが、とてもフランクな子だ。尻尾は上機嫌そうにパタパタ揺れている。
彼女は上流階級が多い学園でも最高レベルのVIPと聞いているが、その気さくさはバクシンオーからも聞いていた。
「バクシンオーなら食堂だが?」
「ええ。実は天王寺トレーナーに用事があって」
「私に?授業内容の質問かな」
フルフルと彼女が首を振る。
「違うの。年末、バクちゃんとライスちゃんとで、一緒にラーメン屋さんに行ったって話を聞いて」
「まあ、そうだが」
「うん。せっかくだから、私にもラーメン屋さん、教えてほしいんだ」
「……は?」
予想だにしない質問に、頭が一瞬真っ白になる。ラーメン?
「だからラーメン屋さんだよー。美味しいラーメン屋さん、色々探してるんだ。天王寺トレーナーなら、美味しいお店を知ってるんじゃないかって思って」
「意外だな。ラーメンがそこまで好きか」
「うんっ!!」
ファインモーションの尻尾の揺れが、さらに激しくなった。
「ラーメンはね、一杯の中に宇宙があるんだ。言ってみれば、それだけで完結したフルコース、みたいな?
色々美味しいものを食べてきたけど、ラーメンより美味しいものなんてないよー。日本にいるうちに、美味しいお店は行けるだけ行っておきたくて」
そうか、彼女は王族だ。日本に骨を埋めるわけにはいかない。
さりとて、アイルランドにマトモなラーメン屋があるとは思えない。なぜラーメンがそこまで好きなのかという疑問はあれ、気持ちは理解する。
「なるほど。ジャンルに希望はあるか?」
「希望……そうだ!北海道ラーメン!」
パン、と手を叩いてファインモーションが言う。
……これは、なかなか難しいミッションだぞ。
パアッと彼女の顔が明るくなった。
「あ、私の顔を覚えて下さったんですね。感激だなあ」
「授業以外で1対1で会うのは初めてだがね。バクシンオーと同じクラスだったな」
「はい!バクちゃんにはいつもお世話になってます」
ニコニコとファインモーションは弾んだ様子で話す。アイルランドの王族ということだが、とてもフランクな子だ。尻尾は上機嫌そうにパタパタ揺れている。
彼女は上流階級が多い学園でも最高レベルのVIPと聞いているが、その気さくさはバクシンオーからも聞いていた。
「バクシンオーなら食堂だが?」
「ええ。実は天王寺トレーナーに用事があって」
「私に?授業内容の質問かな」
フルフルと彼女が首を振る。
「違うの。年末、バクちゃんとライスちゃんとで、一緒にラーメン屋さんに行ったって話を聞いて」
「まあ、そうだが」
「うん。せっかくだから、私にもラーメン屋さん、教えてほしいんだ」
「……は?」
予想だにしない質問に、頭が一瞬真っ白になる。ラーメン?
「だからラーメン屋さんだよー。美味しいラーメン屋さん、色々探してるんだ。天王寺トレーナーなら、美味しいお店を知ってるんじゃないかって思って」
「意外だな。ラーメンがそこまで好きか」
「うんっ!!」
ファインモーションの尻尾の揺れが、さらに激しくなった。
「ラーメンはね、一杯の中に宇宙があるんだ。言ってみれば、それだけで完結したフルコース、みたいな?
色々美味しいものを食べてきたけど、ラーメンより美味しいものなんてないよー。日本にいるうちに、美味しいお店は行けるだけ行っておきたくて」
そうか、彼女は王族だ。日本に骨を埋めるわけにはいかない。
さりとて、アイルランドにマトモなラーメン屋があるとは思えない。なぜラーメンがそこまで好きなのかという疑問はあれ、気持ちは理解する。
「なるほど。ジャンルに希望はあるか?」
「希望……そうだ!北海道ラーメン!」
パン、と手を叩いてファインモーションが言う。
……これは、なかなか難しいミッションだぞ。
59:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 17:42:56.22 :0x9fhWilO
夜に再開します。
夜に再開します。
60:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 18:23:54.05 :wRRx+65vo
たんおつ
王族に食わせに行く店……難易度高い
たんおつ
王族に食わせに行く店……難易度高い
61:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 21:56:25.25 :0x9fhWilO
北海道ラーメンと一口に言っても、種類は多種多様だ。
有名なのが味噌ベースの札幌ラーメン。ラードでスープに蓋をする技法を採る店が多く、北海道ラーメンといえばまず味噌が思い浮かぶ。
しかし、醤油ベースの旭川ラーメンはそれとは全く異なる。濃厚で塩分強めのダブルスープが特徴で、札幌に住む人はむしろこちらを好む、らしい。
函館の塩ラーメンも有名だ。清湯のあっさりした味が特徴で、昆布を使ったスープが多い。
この他にも、鰹節の風味が強い釧路ラーメン、利尻昆布の旨味を前面に出した稚内ラーメンなど、広大な北海道に相応しく味もまた多種多様だ。
ファインモーションがこのうちのどれを望んでいるかで、連れていくべき店は大きく変わってしまう。
もう少し細かく訊きたいが、日本に来てまだ半年の彼女にそこまでの知識があるのかどうか。
事前に日本語を猛特訓したというだけあり言葉は驚くほど流暢だが、正直確信は持てない。
「……そもそも、なぜ北海道ラーメンなんだ?」
んー、と人差し指を口に当て、ファインモーションが考える素振りをした。
「日本に来て、デビューが札幌だったの。そこで浦安トレーナーに連れていってもらった、路地裏の店にあるラーメンが美味しくて!
世の中には、こんなに美味しいものがあるんだって知ったんだ。
それで、色々ラーメンを食べ歩くようになったの。最近は自分でも作ろうと思ってるけど、まだまだかな」
「路地裏、か……」
おそらくはラーメン横丁だろう。あそこは観光客向けの店が多く、味はピンキリだ。当たりの店の方が少ない。
王族である彼女の舌を満足させる店となると……
私はニィと笑った。東京にその流れを汲む店がある。恐らくは、あそこだ。
「分かった。君にピッタリの店が六本木にある」
「六本木?あ、明日近くまで行く用事があるよ!ミッドタウンで、◯◯国の大臣とお会いするの。夜は予定ないから、ついでに行ってみようかな。
天王寺トレーナー、案内してくださる?」
明日か、チートデイには丁度いいだろう。バクシンオーも連れて、行くとしようか。
「無論、構わないよ」
北海道ラーメンと一口に言っても、種類は多種多様だ。
有名なのが味噌ベースの札幌ラーメン。ラードでスープに蓋をする技法を採る店が多く、北海道ラーメンといえばまず味噌が思い浮かぶ。
しかし、醤油ベースの旭川ラーメンはそれとは全く異なる。濃厚で塩分強めのダブルスープが特徴で、札幌に住む人はむしろこちらを好む、らしい。
函館の塩ラーメンも有名だ。清湯のあっさりした味が特徴で、昆布を使ったスープが多い。
この他にも、鰹節の風味が強い釧路ラーメン、利尻昆布の旨味を前面に出した稚内ラーメンなど、広大な北海道に相応しく味もまた多種多様だ。
ファインモーションがこのうちのどれを望んでいるかで、連れていくべき店は大きく変わってしまう。
もう少し細かく訊きたいが、日本に来てまだ半年の彼女にそこまでの知識があるのかどうか。
事前に日本語を猛特訓したというだけあり言葉は驚くほど流暢だが、正直確信は持てない。
「……そもそも、なぜ北海道ラーメンなんだ?」
んー、と人差し指を口に当て、ファインモーションが考える素振りをした。
「日本に来て、デビューが札幌だったの。そこで浦安トレーナーに連れていってもらった、路地裏の店にあるラーメンが美味しくて!
世の中には、こんなに美味しいものがあるんだって知ったんだ。
それで、色々ラーメンを食べ歩くようになったの。最近は自分でも作ろうと思ってるけど、まだまだかな」
「路地裏、か……」
おそらくはラーメン横丁だろう。あそこは観光客向けの店が多く、味はピンキリだ。当たりの店の方が少ない。
王族である彼女の舌を満足させる店となると……
私はニィと笑った。東京にその流れを汲む店がある。恐らくは、あそこだ。
「分かった。君にピッタリの店が六本木にある」
「六本木?あ、明日近くまで行く用事があるよ!ミッドタウンで、◯◯国の大臣とお会いするの。夜は予定ないから、ついでに行ってみようかな。
天王寺トレーナー、案内してくださる?」
明日か、チートデイには丁度いいだろう。バクシンオーも連れて、行くとしようか。
「無論、構わないよ」
62:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 21:57:36.12 :0x9fhWilO
第2R 六本木「天鳳」
第2R 六本木「天鳳」
63:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 22:20:47.53 :0x9fhWilO
*
「ややっ!ここが六本木ですか!!」
バクシンオーがキョロキョロと辺りを見渡す。待ち合わせはミッドタウンの1階。時間より少し早めに着いてしまったようだ。
ファインモーションは、リッツ・カールトンにいるらしい。私にはあまり縁の無さそうなホテルではある。
エントランスから、2人の女性の姿が見えた。1人は正装のファインモーション。もう一人は背の高い、黒いスーツに身を包んでいる。……ウマ娘か?
「お待たせしました!」
「おおっ!ファインモーションさんっ!こんばんはっ!!」
スーツのウマ娘は、険しい目で私を見つめている。何か、気に障ることでもしただろうか?
「お疲れ様。彼女は?」
「あっ、彼女はSPのハリィ。外出する時は、いつも一緒なのよ」
「…………」
まだ私を睨んでいる。これはやりにくい。
「私はトレセン学園のトレーナー、天王寺定光です。よろしく」
握手しようと手を差し出したが、「フン」ととりつく島もない。
ファインモーションが「むう」と頬を膨らませた。
「いい加減にしてよ、ハリィ。男の人が苦手なのは分かるけれど」
「……お言葉ですが殿下。男の勧める店、それもラーメン店などロクなものではございません。行って後悔してからでは、遅いかと」
「天王寺トレーナーはいい人よ?ボディビルの世界では、世界的にも有名な方なのに」
「そんなことなど、私は知りません。とにかく、この男が何か妙な真似をしたら、腕の1本や2本、へし折ってご覧にいれます」
はあ、とファインモーションが溜め息をつく。
「ごめんなさいね。彼女、男性が苦手なの。とても有能なSPだし、ウマ娘としても大きなレースを幾つも勝っていたのだけど……」
「過去の話です。何より、殿下の姉上には、一度も勝てず仕舞いだった」
「でも最後まで諦めず食らいついた。だからお姉さまはハリィが大のお気に入りなんだけど……。
あ、ごめんなさい!ラーメンだったね。ここから近いのかな?」
私は頷く。
「ここから3分も掛からないよ。じゃあ、行こうか」
ハリィの険しい視線を背中に受け、私は歩き出した。すぐに、店の目印になるドラム缶が見えてくる。
「……ドラム缶ラーメン?」
「実際にドラム缶では作ってないから、安心してくれ。では、入ろう」
*
「ややっ!ここが六本木ですか!!」
バクシンオーがキョロキョロと辺りを見渡す。待ち合わせはミッドタウンの1階。時間より少し早めに着いてしまったようだ。
ファインモーションは、リッツ・カールトンにいるらしい。私にはあまり縁の無さそうなホテルではある。
エントランスから、2人の女性の姿が見えた。1人は正装のファインモーション。もう一人は背の高い、黒いスーツに身を包んでいる。……ウマ娘か?
「お待たせしました!」
「おおっ!ファインモーションさんっ!こんばんはっ!!」
スーツのウマ娘は、険しい目で私を見つめている。何か、気に障ることでもしただろうか?
「お疲れ様。彼女は?」
「あっ、彼女はSPのハリィ。外出する時は、いつも一緒なのよ」
「…………」
まだ私を睨んでいる。これはやりにくい。
「私はトレセン学園のトレーナー、天王寺定光です。よろしく」
握手しようと手を差し出したが、「フン」ととりつく島もない。
ファインモーションが「むう」と頬を膨らませた。
「いい加減にしてよ、ハリィ。男の人が苦手なのは分かるけれど」
「……お言葉ですが殿下。男の勧める店、それもラーメン店などロクなものではございません。行って後悔してからでは、遅いかと」
「天王寺トレーナーはいい人よ?ボディビルの世界では、世界的にも有名な方なのに」
「そんなことなど、私は知りません。とにかく、この男が何か妙な真似をしたら、腕の1本や2本、へし折ってご覧にいれます」
はあ、とファインモーションが溜め息をつく。
「ごめんなさいね。彼女、男性が苦手なの。とても有能なSPだし、ウマ娘としても大きなレースを幾つも勝っていたのだけど……」
「過去の話です。何より、殿下の姉上には、一度も勝てず仕舞いだった」
「でも最後まで諦めず食らいついた。だからお姉さまはハリィが大のお気に入りなんだけど……。
あ、ごめんなさい!ラーメンだったね。ここから近いのかな?」
私は頷く。
「ここから3分も掛からないよ。じゃあ、行こうか」
ハリィの険しい視線を背中に受け、私は歩き出した。すぐに、店の目印になるドラム缶が見えてくる。
「……ドラム缶ラーメン?」
「実際にドラム缶では作ってないから、安心してくれ。では、入ろう」
64:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 22:22:09.12 :0x9fhWilO
少し休憩。
ハリィには一応元ネタがあります。
元ネタの馬はファインモーションより年下ですが。
少し休憩。
ハリィには一応元ネタがあります。
元ネタの馬はファインモーションより年下ですが。
65:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 23:14:52.07 :wRRx+65vo
おつー
おつー
66:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:12:47.35 :/CyxYZTNO
店の前には数人ほどの列ができていた。振り向くとハリィが険しい顔をしている。
「あれで作っているのでなければ、何のためにあの缶はあるのだ」
「昔の名残だよ。遥か昔、数十年前にこの店のルーツができた時には、実際にドラム缶を寸胴代わりにしていたらしいな。
元々、この店は旭川にあった。そして初代の親父の息子たちが、札幌と六本木に店を出したってわけだ」
パン、とファインモーションが手を叩いた。
「だからお店の名前が同じなんだね!ドラム缶を見て、思い出したよ」
「そういうことだ。ただ、味は少し違うらしいが」
横のバクシンオーがソワソワと落ち着かない様子で店内を見ている。
「トレーナーさん!私、お腹が空きました!お勧めは何ですか?」
「えっと、醤油も味噌もあるねー。確か、札幌で食べた時は味噌だったかな」
そう言うファインモーションに、私は微笑みながら首を横に振る。
「六本木の天鳳では、ほとんどの客が『135』を注文するな」
「……135?」
「うむ、135というのは……っと、席が空いたようだ」
テーブル席に通されると、周囲の目線が一斉にこちらに向いた。見目麗しいウマ娘3人に、屈強なスキンヘッドの大男とくれば嫌でも目立つ。
そこにハリィが鋭い眼光で客を睨むと、視線が逸れて行くのが分かった。なるほど、令嬢の護衛には確かに向いた人物らしい。
向こうから東南アジア系と思われる店員がやってきた。
「ゴ注文は」
「135大盛り、それにライスを。君たちは?」
「トレーナーさんと同じのにします!」
「私もそうするよー」
ハリィは暫し黙った後、「殿下と同じもので」と不機嫌そうに言った。
「それで、135って何なの?」
「メニューにも書いてあるが、醤油ラーメンの『麺硬め』『油多め』『しょっぱめ』を指す。
これよりさらに味が濃く、油っぽく、しょっぱい『めんばり』もあるが、こちらの方が万人向けだ」
ハリィが私を不満そうに見ている。
「そんな健康に悪そうなものを、よく殿下に食わせようとしているな」
「これは『チートデイ』だ。健康に悪い、大いに結構。ただ旨ければいい。
ファインモーション君も、うちのバクシンオーも私も、日々激しいトレーニングを行っている。旨いものを好きなだけ食うことが、何よりのストレス解消になるのだよ。
そして、旨いものは健康には必ずしも良くはない」
私は静かにハリィに微笑んだ。
「そして、トレーニングを熱心に行っているのは、君もじゃないかね?その鍛え上げられた肉体を見れば分かる。
君にとっても、この店はチートデイにはもってこいだと思うが」
「……不味かったら承知せんぞ」
そう言う彼女の前に、丼が置かれた。
「135とライスデス」
店の前には数人ほどの列ができていた。振り向くとハリィが険しい顔をしている。
「あれで作っているのでなければ、何のためにあの缶はあるのだ」
「昔の名残だよ。遥か昔、数十年前にこの店のルーツができた時には、実際にドラム缶を寸胴代わりにしていたらしいな。
元々、この店は旭川にあった。そして初代の親父の息子たちが、札幌と六本木に店を出したってわけだ」
パン、とファインモーションが手を叩いた。
「だからお店の名前が同じなんだね!ドラム缶を見て、思い出したよ」
「そういうことだ。ただ、味は少し違うらしいが」
横のバクシンオーがソワソワと落ち着かない様子で店内を見ている。
「トレーナーさん!私、お腹が空きました!お勧めは何ですか?」
「えっと、醤油も味噌もあるねー。確か、札幌で食べた時は味噌だったかな」
そう言うファインモーションに、私は微笑みながら首を横に振る。
「六本木の天鳳では、ほとんどの客が『135』を注文するな」
「……135?」
「うむ、135というのは……っと、席が空いたようだ」
テーブル席に通されると、周囲の目線が一斉にこちらに向いた。見目麗しいウマ娘3人に、屈強なスキンヘッドの大男とくれば嫌でも目立つ。
そこにハリィが鋭い眼光で客を睨むと、視線が逸れて行くのが分かった。なるほど、令嬢の護衛には確かに向いた人物らしい。
向こうから東南アジア系と思われる店員がやってきた。
「ゴ注文は」
「135大盛り、それにライスを。君たちは?」
「トレーナーさんと同じのにします!」
「私もそうするよー」
ハリィは暫し黙った後、「殿下と同じもので」と不機嫌そうに言った。
「それで、135って何なの?」
「メニューにも書いてあるが、醤油ラーメンの『麺硬め』『油多め』『しょっぱめ』を指す。
これよりさらに味が濃く、油っぽく、しょっぱい『めんばり』もあるが、こちらの方が万人向けだ」
ハリィが私を不満そうに見ている。
「そんな健康に悪そうなものを、よく殿下に食わせようとしているな」
「これは『チートデイ』だ。健康に悪い、大いに結構。ただ旨ければいい。
ファインモーション君も、うちのバクシンオーも私も、日々激しいトレーニングを行っている。旨いものを好きなだけ食うことが、何よりのストレス解消になるのだよ。
そして、旨いものは健康には必ずしも良くはない」
私は静かにハリィに微笑んだ。
「そして、トレーニングを熱心に行っているのは、君もじゃないかね?その鍛え上げられた肉体を見れば分かる。
君にとっても、この店はチートデイにはもってこいだと思うが」
「……不味かったら承知せんぞ」
そう言う彼女の前に、丼が置かれた。
「135とライスデス」
67:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:34:11.43 :/CyxYZTNO
スープはやや少なく、麺が一部顔を覗かせている。そしてメンマとネギに、硬めのチャーシュー。
スープの色は茶色に濁っており、透明度はほとんどない。
「これ、味噌じゃないの?」
「れっきとした醤油ラーメンだ。さあ、頂こ「バックシーン!!!」」
着丼と共に、バクシンオーが凄まじい勢いでラーメンを食べ始めている。
「美味しいですトレーナーさん!!しょっぱくて、美味しくて、箸が止まりません!!」
「……改めて、頂こうか」
リフトアップされたのは、西山製麺の縮れ麺。これに油を纏った濃厚なスープがガッツリと絡んでいる。
それを勢いよく啜ると、動物系の旨味と塩分の暴力が、味蕾に突き刺さる!
……これだ。これを身体は待っていたのだ。
パシーンッッ!!!
ワイシャツからボタンが弾け飛んだ。そう、チートデイはこうでなくてはならぬ。
「美味しいっ!!しょっぱいんだけど、それが不快な塩気じゃなく……まろやかですらある。
スープが少ないのは、これだけで充分だからね!?量が多かったら、きっとしつこくなってしまう」
ファインモーションも熱心に丼にかじりついた。ハリィはというと、まだ訝しげに丼を見ている。
「どうした?食べないのか」
「……なぜライスも頼んだ」
「食えば分かる。スープを飲んだ後、ライスを食べてみてくれ。抵抗がないなら、スープをライスにかけるのもお勧めだ」
渋々ラーメンを啜ると、ハリィの目の色が変わった。
「…………!?」
そして、スープを蓮華で飲んだ後、ライスを口にした瞬間。終始不機嫌そうな仏頂面だった彼女の表情が変わった。
「……So, delicious!!!何だこれはっ!?ライスが、甘いぞ!!?」
私はニヤリと笑う。
「135にはライスが必要なのだよ。過剰な塩分は、ライスの甘みを際立たせる。
そしてそれがさらに箸を進ませる。よく考えられた一杯だ」
「……う、うむ。確かに、旨い……」
ハリィもラーメンに夢中になったようだ。135の中毒性に勝るラーメンは、都内でもそうはあるまい。
……同じ北海道ラーメンを祖とする、あの店以外は……
スープはやや少なく、麺が一部顔を覗かせている。そしてメンマとネギに、硬めのチャーシュー。
スープの色は茶色に濁っており、透明度はほとんどない。
「これ、味噌じゃないの?」
「れっきとした醤油ラーメンだ。さあ、頂こ「バックシーン!!!」」
着丼と共に、バクシンオーが凄まじい勢いでラーメンを食べ始めている。
「美味しいですトレーナーさん!!しょっぱくて、美味しくて、箸が止まりません!!」
「……改めて、頂こうか」
リフトアップされたのは、西山製麺の縮れ麺。これに油を纏った濃厚なスープがガッツリと絡んでいる。
それを勢いよく啜ると、動物系の旨味と塩分の暴力が、味蕾に突き刺さる!
……これだ。これを身体は待っていたのだ。
パシーンッッ!!!
ワイシャツからボタンが弾け飛んだ。そう、チートデイはこうでなくてはならぬ。
「美味しいっ!!しょっぱいんだけど、それが不快な塩気じゃなく……まろやかですらある。
スープが少ないのは、これだけで充分だからね!?量が多かったら、きっとしつこくなってしまう」
ファインモーションも熱心に丼にかじりついた。ハリィはというと、まだ訝しげに丼を見ている。
「どうした?食べないのか」
「……なぜライスも頼んだ」
「食えば分かる。スープを飲んだ後、ライスを食べてみてくれ。抵抗がないなら、スープをライスにかけるのもお勧めだ」
渋々ラーメンを啜ると、ハリィの目の色が変わった。
「…………!?」
そして、スープを蓮華で飲んだ後、ライスを口にした瞬間。終始不機嫌そうな仏頂面だった彼女の表情が変わった。
「……So, delicious!!!何だこれはっ!?ライスが、甘いぞ!!?」
私はニヤリと笑う。
「135にはライスが必要なのだよ。過剰な塩分は、ライスの甘みを際立たせる。
そしてそれがさらに箸を進ませる。よく考えられた一杯だ」
「……う、うむ。確かに、旨い……」
ハリィもラーメンに夢中になったようだ。135の中毒性に勝るラーメンは、都内でもそうはあるまい。
……同じ北海道ラーメンを祖とする、あの店以外は……
68:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:42:12.74 :/CyxYZTNO
*
「大・満・足、ですっ!!」
店から出ると、ハッハッハと腰に手を当ててバクシンオーが笑う。ファインモーションも上機嫌な様子で、ハンカチで口を拭った。
「本当に美味しかったよー。札幌のお店もいいけど、ここも美味しかったね。
六本木は大使館とかあるからよく来るけど、行きつけになるかも」
ハリィが私に頭を下げた。
「ミスター天王寺……無礼をお許し下さい。確かに、美味でした。殿下を充分に満足せしめるとは……」
「いや、私は単に旨いラーメンを紹介したまでだよ。そんな大層なことはしていない」
「だが、この埋め合わせは何かしらの形でしなければなりません。何をすべきでしょうか……」
ファインモーションが「むう」と頬を膨らませる。
「もう、ハリィは大袈裟なんだよー。天王寺トレーナーも気にしてないみたいだし、いいじゃない」
「ですがっ!!私の気が収まりません。ここは一つ……」
※コンマ下が60以上で追加の店舗紹介
*
「大・満・足、ですっ!!」
店から出ると、ハッハッハと腰に手を当ててバクシンオーが笑う。ファインモーションも上機嫌な様子で、ハンカチで口を拭った。
「本当に美味しかったよー。札幌のお店もいいけど、ここも美味しかったね。
六本木は大使館とかあるからよく来るけど、行きつけになるかも」
ハリィが私に頭を下げた。
「ミスター天王寺……無礼をお許し下さい。確かに、美味でした。殿下を充分に満足せしめるとは……」
「いや、私は単に旨いラーメンを紹介したまでだよ。そんな大層なことはしていない」
「だが、この埋め合わせは何かしらの形でしなければなりません。何をすべきでしょうか……」
ファインモーションが「むう」と頬を膨らませる。
「もう、ハリィは大袈裟なんだよー。天王寺トレーナーも気にしてないみたいだし、いいじゃない」
「ですがっ!!私の気が収まりません。ここは一つ……」
※コンマ下が60以上で追加の店舗紹介
69:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:42:29.52 :zAsIrhFv0
あ
あ
70:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:47:37.06 :/CyxYZTNO
ファインモーションが溜め息をつく。
「もう、ハリィったら……じゃあ、今度機会があったら、私のお勧めのお店に天王寺トレーナーとバクちゃんを連れていってあげるね。ハリィはそれでいい?」
「はっ、分かりました」
ハリィが恐縮したように頭を下げる。
さて、どんな店を彼女は紹介してくれるのだろう。その時が今から楽しみになってきた。
第二話 完
ファインモーションが溜め息をつく。
「もう、ハリィったら……じゃあ、今度機会があったら、私のお勧めのお店に天王寺トレーナーとバクちゃんを連れていってあげるね。ハリィはそれでいい?」
「はっ、分かりました」
ハリィが恐縮したように頭を下げる。
さて、どんな店を彼女は紹介してくれるのだろう。その時が今から楽しみになってきた。
第二話 完
71:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:50:49.67 :/CyxYZTNO
以上です。新年早々天鳳に行こうとしたら臨時休業でした……。
追加の店舗紹介としたのは、その際に代わりに行ったお店です。こちらもかなりのインパクトがあるお店だったので、いつか登場させたいですね。
さて、次回のお題です。まず、ゲストのウマ娘を決めます(今回はファインモーション以外で)。
安価下1~5で、最もコンマの大きいものとします。
以上です。新年早々天鳳に行こうとしたら臨時休業でした……。
追加の店舗紹介としたのは、その際に代わりに行ったお店です。こちらもかなりのインパクトがあるお店だったので、いつか登場させたいですね。
さて、次回のお題です。まず、ゲストのウマ娘を決めます(今回はファインモーション以外で)。
安価下1~5で、最もコンマの大きいものとします。
72:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:51:38.48 :+VUuXkqxo
おつおつ
本当に食べたくなる
ゲストはエアシャカール
おつおつ
本当に食べたくなる
ゲストはエアシャカール
73:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:51:46.00 :YFtBc2//O
カレンチャン
カレンチャン
74:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:52:27.56 :zAsIrhFv0
ゼンノロブロイ
ゼンノロブロイ
75:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:53:10.44 :JdmKVAcDO
メイショウドトウ
メイショウドトウ
76:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:53:14.98 :Y8fG/jIIO
メジロマックイーン
メジロマックイーン
77:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:56:55.11 :/CyxYZTNO
>>73
00をどうするか考えていませんでした。
安価下が奇数なら>>76、偶数なら>>73とした上でもう一人追加します。
>>73
00をどうするか考えていませんでした。
安価下が奇数なら>>76、偶数なら>>73とした上でもう一人追加します。
78:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:57:23.37 :nyn0RK5q0
ほ
ほ
79:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:59:42.03 :/CyxYZTNO
メジロマックイーンとします。甘味が美味しいラーメン屋ですかね……
続いてジャンルを決めます。同じく安価下1~5で最も大きいものとします。
固有店名でも構いませんが、行ったことのない店の場合リサーチにお時間を頂くことになります。
メジロマックイーンとします。甘味が美味しいラーメン屋ですかね……
続いてジャンルを決めます。同じく安価下1~5で最も大きいものとします。
固有店名でも構いませんが、行ったことのない店の場合リサーチにお時間を頂くことになります。
80:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 23:00:38.89 :+VUuXkqxo
チョコレートらーめん
チョコレートらーめん
81:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 23:00:47.58 :Zr0u/y4LO
煮干系
煮干系
82:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 23:01:32.26 :nyn0RK5q0
>>80
>>80
83:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 23:01:57.89 :/CyxYZTNO
>>80
さすがに思い付かないので除外します……すみません。
>>80
さすがに思い付かないので除外します……すみません。
84:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 23:02:53.92 :nyn0RK5q0
あら、じゃあ下の>>81(コンマはそのままで)
あら、じゃあ下の>>81(コンマはそのままで)
85:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 23:03:29.13 :+VUuXkqxo
すまねぇ
すまねぇ
86:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 23:07:05.80 :/CyxYZTNO
有効票は
>>81
>>82(煮干扱い)
です。
有効票は
>>81
>>82(煮干扱い)
です。
87:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 23:09:43.87 :x/Aik72to
鶏そば系
鶏そば系
88:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 23:09:51.45 :WejkOssvO
鶏白湯
鶏白湯
89:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 23:14:12.84 :R/Fy+EtaO
魚介醤油
魚介醤油
90:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 23:23:25.09 :/CyxYZTNO
鶏そば系に決定します。
鶏そばならここしかない、という店からがあるのですが、サイドメニューにスイーツがあったかどうか……
もう一つの候補はスイーツはあるのですが、鶏そばがあるかは未確認です。行ってから考えます。
鶏そば系に決定します。
鶏そばならここしかない、という店からがあるのですが、サイドメニューにスイーツがあったかどうか……
もう一つの候補はスイーツはあるのですが、鶏そばがあるかは未確認です。行ってから考えます。
91:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 23:26:38.97 :/CyxYZTNO
少し文章が変になっていました。
場合によっては、ラーメン紹介+スイーツ店紹介にするかもです。
少し文章が変になっていました。
場合によっては、ラーメン紹介+スイーツ店紹介にするかもです。
92:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/10(月) 01:48:49.35 :BKCKS5iLo
おつ
おつ
93:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/10(月) 11:08:12.42 :a5ebB3haO
展開を思い付いたので、横浜のあの店にします。
なお、余談ですがハリィ=ハリケーンランです。アイルランド繋がりですね。
展開を思い付いたので、横浜のあの店にします。
なお、余談ですがハリィ=ハリケーンランです。アイルランド繋がりですね。
94:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/11(火) 02:38:45.77 :ohMVBuJb0
もしかして前にでちでち言うピンク髪スク水で書いてた?
もしかして前にでちでち言うピンク髪スク水で書いてた?
95:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/11(火) 03:03:16.00 :zZrgF2x40
あったなあそんなスレ
あったなあそんなスレ
96:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/11(火) 17:38:58.12 :TofSKLWHO
訂正です。
>>16で「月1回」とありましたが、「週1回」が正しいものです。
(アスリートのチートデイは頻繁に行うもののようです)
謹んでお詫び申し上げます。
更新頻度も、当面はこんな感じです。極力食べた後に書きたいので。
>>94
よくご存じですね。その通りです。
訂正です。
>>16で「月1回」とありましたが、「週1回」が正しいものです。
(アスリートのチートデイは頻繁に行うもののようです)
謹んでお詫び申し上げます。
更新頻度も、当面はこんな感じです。極力食べた後に書きたいので。
>>94
よくご存じですね。その通りです。
97:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/11(火) 17:47:29.80 :cDyb2KW3o
あいー
あいー
98:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/11(火) 18:02:06.43 :KSP9odIv0
続きはまだ?
スレ作っておいて、そのままエタるのはどうかとおもいますが?
続きはまだ?
スレ作っておいて、そのままエタるのはどうかとおもいますが?
99:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/11(火) 21:53:48.02 :BaqsE2OLO
明星×パックインソフト共同開発
ラーメンを売る
経営シミュレーションゲーム
『PS/チャルメラ(ゲーム)1999年』実況プレイ
(22:00~放送開始)
https://youtube.com/watch?v=hQ0MFd5-tT4
明星×パックインソフト共同開発
ラーメンを売る
経営シミュレーションゲーム
『PS/チャルメラ(ゲーム)1999年』実況プレイ
(22:00~放送開始)
https://youtube.com/watch?v=hQ0MFd5-tT4
100:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/14(金) 06:45:15.52 :TLFqdSMz0
3日経った亀レスだけど、そっかやっぱりでち公のラーメンの人だったか。酉付いてないけど書き方似てるなと思ってたのよ。これ以降はROMるけど、
お前を見ているぞ?
3日経った亀レスだけど、そっかやっぱりでち公のラーメンの人だったか。酉付いてないけど書き方似てるなと思ってたのよ。これ以降はROMるけど、
お前を見ているぞ?
101:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/15(土) 16:45:27.65 :TDjsODSLO
2回に分けて更新します。
>>98
これについては申し訳ありませんとしか……
仕事が多忙になると更新が途切れ、そのままエタる傾向があるのは本当に良くないですね。
基本勢いで書いているので、途切れると構想や設定が飛んでしまうのです……
差し当たり、ショタの方は単独で読めるものにリメイクしようとは考えています。かなり色々設定も展開も変えますが。
2回に分けて更新します。
>>98
これについては申し訳ありませんとしか……
仕事が多忙になると更新が途切れ、そのままエタる傾向があるのは本当に良くないですね。
基本勢いで書いているので、途切れると構想や設定が飛んでしまうのです……
差し当たり、ショタの方は単独で読めるものにリメイクしようとは考えています。かなり色々設定も展開も変えますが。
102:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/15(土) 16:56:17.34 :qNHKlakGo
了解待機
了解待機
103:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/15(土) 17:10:32.99 :TDjsODSLO
※今回は独自設定が幾つかあります。ご注意下さい。
※今回は独自設定が幾つかあります。ご注意下さい。
104:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/15(土) 17:12:34.86 :TDjsODSLO
トレセン学園のトレーナーには、色々な人物がいる。
トレーナー専業という者はもちろん多い。彼らの多くは、数人のチームを組んでウマ娘たちを指導する。「スピカ」や「シリウス」はその代表格と言えるだろう。
名門チームのトレーナーともなれば、一般のエリートサラリーマンが裸足で逃げ出すほどの給料が貰える。
もっとも、トレーナー職はそれだけに狭き門だ。医学的知識はもちろん、教育者としても優れていることが要求される。
数十倍とも言われるトレーナー試験の倍率は、それを物語っていると言えるだろう。
故に、先祖代々トレーナーをやっている家系というものが存在する。親から子へと受け継がれるノウハウは、試験において大きなアドバンテージとなるのだ。
そして、目の前にいる褐色の肌をした少年……いや、青年もまた、その一人だ。
「ご多忙な中すみません」
流暢な日本語で彼……アリーム・アルナシームは頭を下げた。
「いや、構わないよ。して、用件は何かな?」
私はコーヒーを口にする。アリーム君は少し恐縮した様子だ。
「えっと、その……」
「ハハ、怖がらなくていい。私は秘密主義ではない。トレーニングの方法なら、幾らでも教えよう。
私がトレーナーをやっているのは、私自らの研究も兼ねてのことだからね」
「えと、トレーニングのことじゃないんです。ボクの担当の、メジロマックイーンのことで」
「彼女か」
話には聞いている。アリーム君がUAEから赴任してきたのは1年前。最初に受け持ったのが彼女だ。
前任から引き継ぎを受けたマックイーンはたちまち結果を残し、目下菊花賞含む3連勝。春の天皇賞では早くも大本命との呼び声が高い。
そして、彼女の快進撃の背景に彼、アリーム君の存在を指摘する声は少なくない。
アリーム君はUAE王族の出身だ。身内にも大レースを勝ったウマ娘が多いと聞く。
王家であり、名門トレーナーの一族。それがUAE王族、アルナシーム家なのだ。
若干19歳で年若く見えるが、私など及びもつかぬエリート。それが彼だ。
トレセン学園のトレーナーには、色々な人物がいる。
トレーナー専業という者はもちろん多い。彼らの多くは、数人のチームを組んでウマ娘たちを指導する。「スピカ」や「シリウス」はその代表格と言えるだろう。
名門チームのトレーナーともなれば、一般のエリートサラリーマンが裸足で逃げ出すほどの給料が貰える。
もっとも、トレーナー職はそれだけに狭き門だ。医学的知識はもちろん、教育者としても優れていることが要求される。
数十倍とも言われるトレーナー試験の倍率は、それを物語っていると言えるだろう。
故に、先祖代々トレーナーをやっている家系というものが存在する。親から子へと受け継がれるノウハウは、試験において大きなアドバンテージとなるのだ。
そして、目の前にいる褐色の肌をした少年……いや、青年もまた、その一人だ。
「ご多忙な中すみません」
流暢な日本語で彼……アリーム・アルナシームは頭を下げた。
「いや、構わないよ。して、用件は何かな?」
私はコーヒーを口にする。アリーム君は少し恐縮した様子だ。
「えっと、その……」
「ハハ、怖がらなくていい。私は秘密主義ではない。トレーニングの方法なら、幾らでも教えよう。
私がトレーナーをやっているのは、私自らの研究も兼ねてのことだからね」
「えと、トレーニングのことじゃないんです。ボクの担当の、メジロマックイーンのことで」
「彼女か」
話には聞いている。アリーム君がUAEから赴任してきたのは1年前。最初に受け持ったのが彼女だ。
前任から引き継ぎを受けたマックイーンはたちまち結果を残し、目下菊花賞含む3連勝。春の天皇賞では早くも大本命との呼び声が高い。
そして、彼女の快進撃の背景に彼、アリーム君の存在を指摘する声は少なくない。
アリーム君はUAE王族の出身だ。身内にも大レースを勝ったウマ娘が多いと聞く。
王家であり、名門トレーナーの一族。それがUAE王族、アルナシーム家なのだ。
若干19歳で年若く見えるが、私など及びもつかぬエリート。それが彼だ。
105:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/15(土) 17:45:26.07 :TDjsODSLO
「君ならウマ娘の扱いは慣れたものではないのかな?」
顔を真っ赤にしてアリーム君が否定する。
「とんでもない!女の子とどう接したらいいか、よく分からないんです。
母さんや姉さんならともかく、赤の他人のウマ娘と接したのは、マックイーンが初めてで……」
「そういうことなら適任は別にいると思うが?沖野君とかに聞けば早いだろう」
「いえ、天王寺トレーナーに是非、と思いまして……天王寺トレーナー、食通なんですよね?」
思わずコーヒーを吹き出しそうになった。
「誰だね、そんなことを言っているのは?」
「ファインモーション殿下です。この前、大使館でお会いした時に天王寺トレーナーとご飯を食べたとお聞きしまして……。その知識に感服した、と」
私は苦笑した。ラーメン屋に連れていっただけなのに、どうしてそんなに尾ひれが付いているのか?
「私の知識など、たかが知れているぞ?メジロ家のご令嬢を満足させるような店なら、君の方がなんぼか詳しいだろう」
「いえいえ、まだ日本に来て日が浅いですし……何より、スイーツは専門外なんです」
「スイーツ」
アリーム君が頷いた。
「マックイーンは素直でとてもいい子なんです。優秀ですし、話も合う。
ただ、スイーツにだけは目がなくて……よくパティシエールの食べ歩きに同行させられるんですが、都内のめぼしい所は大体行き尽くしちゃいまして。
天王寺トレーナーなら、どこか彼女の知らない名店をご存じかと」
「そこまでか」
「ええ。スイーツの食べ過ぎで体重管理が大変ですよ……」
アリーム君が深い溜め息をつく。私は腕を組んで唸った。
「スイーツは、私もそこまで詳しいわけではないぞ?」
暫しトレーナー室の天井を見ながら考える。パティシエールのように若い女性が好むような店は、悲しいかなあまり知らない。
ボディービルと肉体研究にかまけて34年。恋愛経験が豊富というわけではないのだ。
かといって無下にアリーム君を追い出すわけには行かない。何か助けになってやれないものか……
グゥ
不意に腹が鳴った。そうか、食事の時間が近いのか。
よく考えれば、チートデイの日は明日だ。あの店に行くつもりだったが……
……ん?あの店の近くには……
「君ならウマ娘の扱いは慣れたものではないのかな?」
顔を真っ赤にしてアリーム君が否定する。
「とんでもない!女の子とどう接したらいいか、よく分からないんです。
母さんや姉さんならともかく、赤の他人のウマ娘と接したのは、マックイーンが初めてで……」
「そういうことなら適任は別にいると思うが?沖野君とかに聞けば早いだろう」
「いえ、天王寺トレーナーに是非、と思いまして……天王寺トレーナー、食通なんですよね?」
思わずコーヒーを吹き出しそうになった。
「誰だね、そんなことを言っているのは?」
「ファインモーション殿下です。この前、大使館でお会いした時に天王寺トレーナーとご飯を食べたとお聞きしまして……。その知識に感服した、と」
私は苦笑した。ラーメン屋に連れていっただけなのに、どうしてそんなに尾ひれが付いているのか?
「私の知識など、たかが知れているぞ?メジロ家のご令嬢を満足させるような店なら、君の方がなんぼか詳しいだろう」
「いえいえ、まだ日本に来て日が浅いですし……何より、スイーツは専門外なんです」
「スイーツ」
アリーム君が頷いた。
「マックイーンは素直でとてもいい子なんです。優秀ですし、話も合う。
ただ、スイーツにだけは目がなくて……よくパティシエールの食べ歩きに同行させられるんですが、都内のめぼしい所は大体行き尽くしちゃいまして。
天王寺トレーナーなら、どこか彼女の知らない名店をご存じかと」
「そこまでか」
「ええ。スイーツの食べ過ぎで体重管理が大変ですよ……」
アリーム君が深い溜め息をつく。私は腕を組んで唸った。
「スイーツは、私もそこまで詳しいわけではないぞ?」
暫しトレーナー室の天井を見ながら考える。パティシエールのように若い女性が好むような店は、悲しいかなあまり知らない。
ボディービルと肉体研究にかまけて34年。恋愛経験が豊富というわけではないのだ。
かといって無下にアリーム君を追い出すわけには行かない。何か助けになってやれないものか……
グゥ
不意に腹が鳴った。そうか、食事の時間が近いのか。
よく考えれば、チートデイの日は明日だ。あの店に行くつもりだったが……
……ん?あの店の近くには……
106:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/15(土) 17:45:54.81 :TDjsODSLO
私は思わず笑みを浮かべた。
「……心当たりがある」
「本当ですか!!?」
「ああ。間違いのない店だ。マックイーン君も、気に入ってくれるだろう。
その代わり、私たちのチートデイに君たちも付き合ってくれたまえ」
「チートデイ、ですか」
「そうだ。目当ての店の隣駅で、ラーメンを食そうと思っている。どうかな?」
アリーム君の顔が曇った。
「お気持ちはありがたいのですが……イスラム教徒のボクには、豚の入っているラーメンは食べられないので……」
「心配は無用だ。その店は鶏出汁で、豚はチャーシュー含め一切使われていない。ハラルにも抵触しない。いかがかな?」
「そんなラーメンがあるんですか?」
「鶏そば、というジャンルだ。チャーシューに豚を使わない店も少なくはない。
全国の鶏そば、いやラーメン全体でも上位10指に確実に入る。マックイーン君も気に入るだろう」
「ありがとうございます!!」
アリーム君が急に立ち上がって、私の手を取った。
「で、どこなんですか?」
「横浜だ。明日、ドライブも兼ねて行くとしよう」
私は思わず笑みを浮かべた。
「……心当たりがある」
「本当ですか!!?」
「ああ。間違いのない店だ。マックイーン君も、気に入ってくれるだろう。
その代わり、私たちのチートデイに君たちも付き合ってくれたまえ」
「チートデイ、ですか」
「そうだ。目当ての店の隣駅で、ラーメンを食そうと思っている。どうかな?」
アリーム君の顔が曇った。
「お気持ちはありがたいのですが……イスラム教徒のボクには、豚の入っているラーメンは食べられないので……」
「心配は無用だ。その店は鶏出汁で、豚はチャーシュー含め一切使われていない。ハラルにも抵触しない。いかがかな?」
「そんなラーメンがあるんですか?」
「鶏そば、というジャンルだ。チャーシューに豚を使わない店も少なくはない。
全国の鶏そば、いやラーメン全体でも上位10指に確実に入る。マックイーン君も気に入るだろう」
「ありがとうございます!!」
アリーム君が急に立ち上がって、私の手を取った。
「で、どこなんですか?」
「横浜だ。明日、ドライブも兼ねて行くとしよう」
107:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/15(土) 17:46:54.05 :TDjsODSLO
第3R 横浜「中華そば高野」
第3R 横浜「中華そば高野」
108:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/15(土) 17:47:59.66 :TDjsODSLO
続きは明日です。
続きは明日です。
109:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/15(土) 18:05:20.66 :qNHKlakGo
おつー
ばいとあるひくま
おつー
ばいとあるひくま
110:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/15(土) 18:06:38.68 :qNHKlakGo
失礼
バイトアルヒクマとか明らかに中東系の名前の子もいるし全世界からよりすぐりの人材が集まってるんやろうなぁ
失礼
バイトアルヒクマとか明らかに中東系の名前の子もいるし全世界からよりすぐりの人材が集まってるんやろうなぁ
111:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/15(土) 23:27:36.69 :PShYBsyPO
1レスだけ更新します。
1レスだけ更新します。
112:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/15(土) 23:28:51.60 :PShYBsyPO
*
「おはようございます!トレーナーさん!」
待ち合わせより10分早く来たというのに、バクシンオーはもう待ち合わせの門の前にいた。彼女が時間より遅れたことは、一度たりとてない。
「相変わらず早いな」
「はい!学級委員長たるもの、皆さんのお手本でなければなりませんから!」
「結構。……何分前からいた?」
「はい!30分前です!」
……単にせっかちなだけかもしれない。まあ、悪いことではないのだが。
「まあ、いいだろう。……ん、来たな」
向こうから小柄な男女の二人組がやって来るのが見えた。アリーム君とマックイーンだ。
こうして見ると、中学生の初々しいカップルに見えなくもない。実際、マックイーンは中等部3年なのだが。
「お待たせしました」
「ごきげんようですわ、天王寺トレーナー。いつもお世話になっております。バクシンオーさんもご一緒ですのね」
どこか落ち着かない様子のアリーム君とは対照的に、マックイーンはいつも通りの調子で言う。
「うむ。今日はチートデイだからな。これもトレーニングの一環、というわけだ」
「はい!ちーとでいの後は、体がよく動くのです!ハーハッハッハ!」
「『チートデイ』?」
「説明は車の中でしよう。休日のドライブとしゃれこもうか」
駐車場には、愛車のアウディA4が停めてある。助手席にアリーム君を、後部座席にバクシンオーとマックイーンを乗せ、車は心地よいエンジン音と共に滑り出した。
「目的地は横浜なんですよね。ボクは地理には詳しくないんですけど、横浜のどこですか?」
「菊名という駅にまず向かう。そこでスイーツを買って、電車で隣の大口駅に行きラーメンを食べよう。
今の時刻からなら、ちょうど昼の部が始まる頃には着くな。かなり並ぶが、そこは勘弁してほしい」
後ろからパン、手を叩く音が聞こえた。
「横浜ですの!?横浜と言えば、かの名店『ユウジアジキ』もありますわね!ひょっとして、そこが目的地ですの?」
「『ユウジアジキ』は北山田だから、少し離れているな。今日は『ラトリエ・ドゥ・アンティーク』に行くつもりだ」
「どういうお店ですの?」
ハンドルを首都高方面に切りながら、ミラー越しにマックイーンを見る。
「2019年に世界のパティシエコンクールで優勝したオーナーシェフが開いた店だ。もとは石川町にあった店だが、手狭になったらしくてな。最近、菊名に移転したと聞いた」
「世界一ですの!!?さすが天王寺トレーナー、よくご存知ですのね」
「何、私たちの目的である『中華そば高野』が近くにあるから知っていただけだよ」
「素晴らしいですわ。そのスイーツ、いえ食への探求心、見習わなければなりませんわ」
「そうです!トレーナーさんは何でも知っているのです!」
バクシンオーもマックイーンも何か勘違いしているようだ。そこまで大したものではないと思うが……
*
「おはようございます!トレーナーさん!」
待ち合わせより10分早く来たというのに、バクシンオーはもう待ち合わせの門の前にいた。彼女が時間より遅れたことは、一度たりとてない。
「相変わらず早いな」
「はい!学級委員長たるもの、皆さんのお手本でなければなりませんから!」
「結構。……何分前からいた?」
「はい!30分前です!」
……単にせっかちなだけかもしれない。まあ、悪いことではないのだが。
「まあ、いいだろう。……ん、来たな」
向こうから小柄な男女の二人組がやって来るのが見えた。アリーム君とマックイーンだ。
こうして見ると、中学生の初々しいカップルに見えなくもない。実際、マックイーンは中等部3年なのだが。
「お待たせしました」
「ごきげんようですわ、天王寺トレーナー。いつもお世話になっております。バクシンオーさんもご一緒ですのね」
どこか落ち着かない様子のアリーム君とは対照的に、マックイーンはいつも通りの調子で言う。
「うむ。今日はチートデイだからな。これもトレーニングの一環、というわけだ」
「はい!ちーとでいの後は、体がよく動くのです!ハーハッハッハ!」
「『チートデイ』?」
「説明は車の中でしよう。休日のドライブとしゃれこもうか」
駐車場には、愛車のアウディA4が停めてある。助手席にアリーム君を、後部座席にバクシンオーとマックイーンを乗せ、車は心地よいエンジン音と共に滑り出した。
「目的地は横浜なんですよね。ボクは地理には詳しくないんですけど、横浜のどこですか?」
「菊名という駅にまず向かう。そこでスイーツを買って、電車で隣の大口駅に行きラーメンを食べよう。
今の時刻からなら、ちょうど昼の部が始まる頃には着くな。かなり並ぶが、そこは勘弁してほしい」
後ろからパン、手を叩く音が聞こえた。
「横浜ですの!?横浜と言えば、かの名店『ユウジアジキ』もありますわね!ひょっとして、そこが目的地ですの?」
「『ユウジアジキ』は北山田だから、少し離れているな。今日は『ラトリエ・ドゥ・アンティーク』に行くつもりだ」
「どういうお店ですの?」
ハンドルを首都高方面に切りながら、ミラー越しにマックイーンを見る。
「2019年に世界のパティシエコンクールで優勝したオーナーシェフが開いた店だ。もとは石川町にあった店だが、手狭になったらしくてな。最近、菊名に移転したと聞いた」
「世界一ですの!!?さすが天王寺トレーナー、よくご存知ですのね」
「何、私たちの目的である『中華そば高野』が近くにあるから知っていただけだよ」
「素晴らしいですわ。そのスイーツ、いえ食への探求心、見習わなければなりませんわ」
「そうです!トレーナーさんは何でも知っているのです!」
バクシンオーもマックイーンも何か勘違いしているようだ。そこまで大したものではないと思うが……
113:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/16(日) 00:37:57.77 :xOkM3uHF0
乙
乙
114:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/16(日) 21:42:47.07 :zSgUm9fwO
更新します。
とりあえず軽い設定ですが……
天王寺(34)
190cm 108kg
スキンヘッドの糸目。大体表情は微笑で固定。
見た目は強面だが温厚で理知的。トレセン学園では栄養学を担当する教師でもある。
日本屈指のボディービルダーである一方、スポーツ理化学では博士号も持つ。東大ボディービルディング部の出身で顧問。
トレーニングは速筋系に特化しており、パワートレーニングでは彼の右に出る者はいない。半面、ステイヤー育成は不得手。
これまで担当したウマ娘は全てスプリンターに偏っている。独身、彼女なし。
こんな感じです。随時オリキャラのプロフィールは更新します。
更新します。
とりあえず軽い設定ですが……
天王寺(34)
190cm 108kg
スキンヘッドの糸目。大体表情は微笑で固定。
見た目は強面だが温厚で理知的。トレセン学園では栄養学を担当する教師でもある。
日本屈指のボディービルダーである一方、スポーツ理化学では博士号も持つ。東大ボディービルディング部の出身で顧問。
トレーニングは速筋系に特化しており、パワートレーニングでは彼の右に出る者はいない。半面、ステイヤー育成は不得手。
これまで担当したウマ娘は全てスプリンターに偏っている。独身、彼女なし。
こんな感じです。随時オリキャラのプロフィールは更新します。
115:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/16(日) 22:07:48.16 :zSgUm9fwO
*
「確かここの辺りのはずだ」
菊名駅近くのコインパーキングにアウディを停め、西口方面に向かう。
すぐに若い女性たちの行列が見えた。……あそこか?
「すごい行列、ですね……ラーメン屋、じゃないですよね、これ」
「う、うむ……」
確かに「ラトリエ・ドゥ・アンティーク」とフランス語で書かれている。ここで間違いないようだ。
店の前には、ラーメン屋よろしく行列の順番待ちの方法が書かれた立て看板があった。行列は、ざっと10人ほどか。
「スイーツに並ぶのは、なかなか珍しいですわね……ああ、コロナ感染対策で入場を絞ってますのね。そういうことですの」
「むむう……早く入りたいですが、我慢です!あ、パンフレットがありますよ!」
バクシンオーが小さなパンフレットを持ってきた。「ショコラ アソート」とある。ああ、そういうシーズンでもあるのか。
「『2015年アジア大会優勝作品』、だそうですわ!!まるで宝石箱のよう……これ、買いますわ!」
「え、誰かにあげるのかい?」
戸惑い気味に言うアリーム君に、マックイーンは上機嫌で返す。
「もちろん、わたくしが自分で食べる分ですわ。トレーナーさんにも分けて差し上げますわよ?」
「だよねえ……」
アリーム君が肩を落とす。どうやら、マックイーンの頭にはスイーツしかないらしい。
これは先行き苦労しそうだ。思わず苦笑いが漏れた。
「トレーナーさんは、何を買うんですか?」
2人をよそに、バクシンオーがいつもの調子で聞いてくる。
「ん?私は好きなものを買うとするよ。多分、チョコレート系だな。脳へのエネルギー源として、チョコレートはかなり優秀だからな」
「なるほど!そこまで考えているのですね!では、私もチョコレートにします!手作りチョコレートの参考のために!」
「ん?バレンタインにチョコレートを作るのか?」
「はい!トレーナーさんに、日々の感謝を込めて、です!」
手作りチョコレートとはやや意外だった。こういうイベントには縁遠い子だと思っていたが……まあ、楽しみにしておこう。
*
この私の認識が大甘だったのが分かるのは、これから1ヶ月ほど先のことだ。
*
「確かここの辺りのはずだ」
菊名駅近くのコインパーキングにアウディを停め、西口方面に向かう。
すぐに若い女性たちの行列が見えた。……あそこか?
「すごい行列、ですね……ラーメン屋、じゃないですよね、これ」
「う、うむ……」
確かに「ラトリエ・ドゥ・アンティーク」とフランス語で書かれている。ここで間違いないようだ。
店の前には、ラーメン屋よろしく行列の順番待ちの方法が書かれた立て看板があった。行列は、ざっと10人ほどか。
「スイーツに並ぶのは、なかなか珍しいですわね……ああ、コロナ感染対策で入場を絞ってますのね。そういうことですの」
「むむう……早く入りたいですが、我慢です!あ、パンフレットがありますよ!」
バクシンオーが小さなパンフレットを持ってきた。「ショコラ アソート」とある。ああ、そういうシーズンでもあるのか。
「『2015年アジア大会優勝作品』、だそうですわ!!まるで宝石箱のよう……これ、買いますわ!」
「え、誰かにあげるのかい?」
戸惑い気味に言うアリーム君に、マックイーンは上機嫌で返す。
「もちろん、わたくしが自分で食べる分ですわ。トレーナーさんにも分けて差し上げますわよ?」
「だよねえ……」
アリーム君が肩を落とす。どうやら、マックイーンの頭にはスイーツしかないらしい。
これは先行き苦労しそうだ。思わず苦笑いが漏れた。
「トレーナーさんは、何を買うんですか?」
2人をよそに、バクシンオーがいつもの調子で聞いてくる。
「ん?私は好きなものを買うとするよ。多分、チョコレート系だな。脳へのエネルギー源として、チョコレートはかなり優秀だからな」
「なるほど!そこまで考えているのですね!では、私もチョコレートにします!手作りチョコレートの参考のために!」
「ん?バレンタインにチョコレートを作るのか?」
「はい!トレーナーさんに、日々の感謝を込めて、です!」
手作りチョコレートとはやや意外だった。こういうイベントには縁遠い子だと思っていたが……まあ、楽しみにしておこう。
*
この私の認識が大甘だったのが分かるのは、これから1ヶ月ほど先のことだ。
116:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/16(日) 22:30:25.37 :zSgUm9fwO
*
「つい買いすぎてしまいましたわ」
満足そうなマックイーンとは対照的に、アリーム君はややげんなりした表情だ。
「いや、幾つ買ったんだ?ケーキ10個に焼き菓子2箱、ショコラアソート2箱……まさか、君一人で食べるんじゃ」
「まさか、それはないですわ。トレーナーさんにも、お一つあげますわよ?」
「……残りは?」
「もちろん!わたくしが賞味期限内に全て責任を持って食べますわ!」
ドヤ顔のマックイーンに、アリーム君は「また体重制限プログラムが……」と呟いた。むしろよくそれであれだけマックイーンを仕上げられると感心するのだが。
私はというと、バクシンオーと2人で食べるだけのケーキとショコラを購入した。
特に「アンティーク」という名のチョコレートケーキは、時計を模したなかなか手の込んだ意匠だ。食べるのが少々勿体無く感じる。
「さて……ケーキはひとまず車内に置こう。電車で大口駅まで向かおうか」
「車では向かわないのですか?」
「車で行ってもいいんだが、またコインパーキングに停めないといかんからな。それに何より、菊名駅周辺は細い一方通行ばかりで動きにくいのだよ」
バクシンオーに告げ、JRの改札に向かう。そして、横浜線で3分。
大口駅を降り、1分ほど歩くと割烹の看板が見えた。
「ここを左に行くとすぐだ」
「え、こんな細い路地に……あ」
小さな立て看板と、行列が見えた。こちらはざっと……25人ぐらいか。
「すごい行列ですわね……どのくらい待ちますの?」
「1時間弱、だな。これでもすぐ近所にセカンド・ブランドの店が最近できたから、短くなった方だ」
「セカンド・ブランド?」
「そっちは塩がメイン、らしいな。私もまだ足を運べてない。
まあ、それはまた別の機会だな。ひとまず、並ぶとしよう」
行列には若い女性やカップルの姿もちらほら見られる。マックイーンが「意外ですわね」と口にした。
「ん?どういうことだ」
「ラーメン屋って、男の方のものというイメージがありましたから。少し店内も見えましたけど、お洒落な感じでしたわ」
「店主はまだ若いからな。元美容師と聞いている。接客も素晴らしいぞ。
最近は、こういうラーメン屋がかなり増えているのだよ。銀座『八五』のようにミシュランに選ばれる店もあるほどだ」
「そうでしたの。なるほど……」
フムフムと何やら感心している様子だ。こういう辺りは、さすがメジロ家御令嬢なのだろう。
*
「つい買いすぎてしまいましたわ」
満足そうなマックイーンとは対照的に、アリーム君はややげんなりした表情だ。
「いや、幾つ買ったんだ?ケーキ10個に焼き菓子2箱、ショコラアソート2箱……まさか、君一人で食べるんじゃ」
「まさか、それはないですわ。トレーナーさんにも、お一つあげますわよ?」
「……残りは?」
「もちろん!わたくしが賞味期限内に全て責任を持って食べますわ!」
ドヤ顔のマックイーンに、アリーム君は「また体重制限プログラムが……」と呟いた。むしろよくそれであれだけマックイーンを仕上げられると感心するのだが。
私はというと、バクシンオーと2人で食べるだけのケーキとショコラを購入した。
特に「アンティーク」という名のチョコレートケーキは、時計を模したなかなか手の込んだ意匠だ。食べるのが少々勿体無く感じる。
「さて……ケーキはひとまず車内に置こう。電車で大口駅まで向かおうか」
「車では向かわないのですか?」
「車で行ってもいいんだが、またコインパーキングに停めないといかんからな。それに何より、菊名駅周辺は細い一方通行ばかりで動きにくいのだよ」
バクシンオーに告げ、JRの改札に向かう。そして、横浜線で3分。
大口駅を降り、1分ほど歩くと割烹の看板が見えた。
「ここを左に行くとすぐだ」
「え、こんな細い路地に……あ」
小さな立て看板と、行列が見えた。こちらはざっと……25人ぐらいか。
「すごい行列ですわね……どのくらい待ちますの?」
「1時間弱、だな。これでもすぐ近所にセカンド・ブランドの店が最近できたから、短くなった方だ」
「セカンド・ブランド?」
「そっちは塩がメイン、らしいな。私もまだ足を運べてない。
まあ、それはまた別の機会だな。ひとまず、並ぶとしよう」
行列には若い女性やカップルの姿もちらほら見られる。マックイーンが「意外ですわね」と口にした。
「ん?どういうことだ」
「ラーメン屋って、男の方のものというイメージがありましたから。少し店内も見えましたけど、お洒落な感じでしたわ」
「店主はまだ若いからな。元美容師と聞いている。接客も素晴らしいぞ。
最近は、こういうラーメン屋がかなり増えているのだよ。銀座『八五』のようにミシュランに選ばれる店もあるほどだ」
「そうでしたの。なるほど……」
フムフムと何やら感心している様子だ。こういう辺りは、さすがメジロ家御令嬢なのだろう。
117:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/16(日) 23:05:40.01 :zSgUm9fwO
*
待つこと1時間弱。ようやく店内に通された。
「この『鶏の中華そば』を注文すればいいんですか?」
食券機の前で、アリーム君が訊く。
「それでももちろん構わない。が、私が注文するのはそれではないよ」
「え」
「こちらだ」
私は食券機の下部、「鶏つけそば」を指差した。
「つけそば、ですか」
「ああ。こちらの方が、より強烈に鶏の風味を感じられるからね。それと『和え玉』も頼むつもりだ」
「和え玉、とは?」
「ここは大盛りがないからね。その代わりというわけだ。まあ、頼んでみてのお楽しみ、だな」
結局、4人全員が特製鶏つけそばと和え玉シングルを注文することになった。
「色々素材について書いてありますのね。スープは『信玄どり』と『錦爽どり』の鶏ガラに手羽先、胸ひき肉、野菜、昆布……随分凝ってますわ」
「スープはラーメンの命、だからな。……っと、来たぞ」
店員がまず麺を持ってきた。丼の中には昆布水。そしてその中に麺が泳ぐ。穂先メンマが丼の周囲を取り囲み、麺の上にはとろろ昆布。独特のビジュアルだ。
「……これが、つけそば?」
「いや、麺だけだ。ただ……」
「バックシーン!!!」
説明する前に、バクシンオーが麺だけ食べ始めてしまっていた。
「ちょっと、バクシンオーさん?」
「これがつけそばというものですか!!少し硬い、パキパキとした麺にこの……スープ?がよく絡みます!おいしいです!!」
「天王寺トレーナー、あれでよろしいのですか?」
困惑するマックイーンに、私は軽く頷く。
「まあ、間違いじゃない。バクシンオー、つけ汁の分も残すように」
「分かりました!」
もう麺が半分なくなっているが、それはもうしょうがない。私は箸を持ち、麺をリフトアップする。
「まず麺だけを味わうのが、ここの流儀だ。では……」
啜ると、麺と共にやや粘度のある昆布水が口の中に入った。この噛み応えのある麺の存在感。そして、それに負けぬ昆布水の旨味。これだけで既に、完成された麺料理と言える。
「美味しい……しかし、鶏の風味は」
「それはこれからだよ」
続いて店員がつけ汁を持ってきた。「左右どちらに置きましょうか?」と訊いて来たので、左と告げる。こういう対応は、他店ではあまり見ない。
「これに、麺をつけますの?スープに浸かった麺を、別のスープにつけたら、味がぼやけませんこと?」
「それがここの素晴らしいところだよ、マックイーン君」
彼女は恐る恐る麺をつけ汁につけ、啜る。すぐにその表情が一変した。
「これは……なんという……!!」
*
待つこと1時間弱。ようやく店内に通された。
「この『鶏の中華そば』を注文すればいいんですか?」
食券機の前で、アリーム君が訊く。
「それでももちろん構わない。が、私が注文するのはそれではないよ」
「え」
「こちらだ」
私は食券機の下部、「鶏つけそば」を指差した。
「つけそば、ですか」
「ああ。こちらの方が、より強烈に鶏の風味を感じられるからね。それと『和え玉』も頼むつもりだ」
「和え玉、とは?」
「ここは大盛りがないからね。その代わりというわけだ。まあ、頼んでみてのお楽しみ、だな」
結局、4人全員が特製鶏つけそばと和え玉シングルを注文することになった。
「色々素材について書いてありますのね。スープは『信玄どり』と『錦爽どり』の鶏ガラに手羽先、胸ひき肉、野菜、昆布……随分凝ってますわ」
「スープはラーメンの命、だからな。……っと、来たぞ」
店員がまず麺を持ってきた。丼の中には昆布水。そしてその中に麺が泳ぐ。穂先メンマが丼の周囲を取り囲み、麺の上にはとろろ昆布。独特のビジュアルだ。
「……これが、つけそば?」
「いや、麺だけだ。ただ……」
「バックシーン!!!」
説明する前に、バクシンオーが麺だけ食べ始めてしまっていた。
「ちょっと、バクシンオーさん?」
「これがつけそばというものですか!!少し硬い、パキパキとした麺にこの……スープ?がよく絡みます!おいしいです!!」
「天王寺トレーナー、あれでよろしいのですか?」
困惑するマックイーンに、私は軽く頷く。
「まあ、間違いじゃない。バクシンオー、つけ汁の分も残すように」
「分かりました!」
もう麺が半分なくなっているが、それはもうしょうがない。私は箸を持ち、麺をリフトアップする。
「まず麺だけを味わうのが、ここの流儀だ。では……」
啜ると、麺と共にやや粘度のある昆布水が口の中に入った。この噛み応えのある麺の存在感。そして、それに負けぬ昆布水の旨味。これだけで既に、完成された麺料理と言える。
「美味しい……しかし、鶏の風味は」
「それはこれからだよ」
続いて店員がつけ汁を持ってきた。「左右どちらに置きましょうか?」と訊いて来たので、左と告げる。こういう対応は、他店ではあまり見ない。
「これに、麺をつけますの?スープに浸かった麺を、別のスープにつけたら、味がぼやけませんこと?」
「それがここの素晴らしいところだよ、マックイーン君」
彼女は恐る恐る麺をつけ汁につけ、啜る。すぐにその表情が一変した。
「これは……なんという……!!」
118:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/16(日) 23:27:53.91 :zSgUm9fwO
アリーム君の顔も、驚きで固まっている。
「これはっ!?紛れもなく、『鶏そのもの』……」
「バクシンバクシーン!!」という奇声も、私の隣から聞こえてきた。私も頂くとしようか。
ズズッ…………
バシーンッ!!!
シャツのボタンが弾けると共に、凄まじいまでの旨味が口の中に拡がった!
昆布水でコーティングされた麺が、鶏油多めのつけ汁でさらにコーティングされる。そしてそこから産み出される、二重の旨味……
いや、これは単なる「1+1」ではない。
まさに、互いが互いを高め合う「マリアージュ」というべきものだ。
箸が一気に進む。止まらない。
鶏の深い旨味と昆布水の優しい旨味が絡むと、これほどまでに暴力的で複雑な味になるのか?
私はつけ汁の中のワンタンを箸で持ち上げた。噛むと、生姜が強めの餡がいい味変となる。
そして、再び昆布水だけで麺を頂く。さっぱりした味が、舌をリセットする。
そして再びつけ汁へ……一体何種類の味を、この一品は与えてくれるのだろうか。
つけ麺、鶏そば数あれど、ここまで複雑玄妙にしてインパクトのある一杯を、私は知らない。
「す、凄いとしか……ラーメンとは、こんなに美味しいものなのですね……。
チャーシューも、確かに鶏だけですね。……むっ!?」
アリーム君がチャーシューを噛むと、また動きが止まった。
「どうしましたの、トレーナーさん」
「君も、チャーシューを食べてくれ。これも……驚くぞ」
「チャーシューって、豚だけじゃないですのね。鶏だとどう……柔らかいですわっ!それにこの風味は……」
私はマックイーンに頷く。
「そう、バジルで下味がついている。そして、モモ肉は……うむ、実に香ばしい」
胸肉のチャーシューは低温調理がなされており、実に柔らかい。
そして、もう一種のモモ肉は皮付きでローストされており、胡椒が利いたパンチのある味だ。
具材の味の変化も、極めて緻密な計算で成り立っている。これほどまでに多様な味がありながら、しかし一体感があるのは驚くべきことだ。
アリーム君の顔も、驚きで固まっている。
「これはっ!?紛れもなく、『鶏そのもの』……」
「バクシンバクシーン!!」という奇声も、私の隣から聞こえてきた。私も頂くとしようか。
ズズッ…………
バシーンッ!!!
シャツのボタンが弾けると共に、凄まじいまでの旨味が口の中に拡がった!
昆布水でコーティングされた麺が、鶏油多めのつけ汁でさらにコーティングされる。そしてそこから産み出される、二重の旨味……
いや、これは単なる「1+1」ではない。
まさに、互いが互いを高め合う「マリアージュ」というべきものだ。
箸が一気に進む。止まらない。
鶏の深い旨味と昆布水の優しい旨味が絡むと、これほどまでに暴力的で複雑な味になるのか?
私はつけ汁の中のワンタンを箸で持ち上げた。噛むと、生姜が強めの餡がいい味変となる。
そして、再び昆布水だけで麺を頂く。さっぱりした味が、舌をリセットする。
そして再びつけ汁へ……一体何種類の味を、この一品は与えてくれるのだろうか。
つけ麺、鶏そば数あれど、ここまで複雑玄妙にしてインパクトのある一杯を、私は知らない。
「す、凄いとしか……ラーメンとは、こんなに美味しいものなのですね……。
チャーシューも、確かに鶏だけですね。……むっ!?」
アリーム君がチャーシューを噛むと、また動きが止まった。
「どうしましたの、トレーナーさん」
「君も、チャーシューを食べてくれ。これも……驚くぞ」
「チャーシューって、豚だけじゃないですのね。鶏だとどう……柔らかいですわっ!それにこの風味は……」
私はマックイーンに頷く。
「そう、バジルで下味がついている。そして、モモ肉は……うむ、実に香ばしい」
胸肉のチャーシューは低温調理がなされており、実に柔らかい。
そして、もう一種のモモ肉は皮付きでローストされており、胡椒が利いたパンチのある味だ。
具材の味の変化も、極めて緻密な計算で成り立っている。これほどまでに多様な味がありながら、しかし一体感があるのは驚くべきことだ。
119:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/16(日) 23:41:42.30 :zSgUm9fwO
「本当に、美味しいとしか……そういえば、つけ麺はスープ割をするのでしたわね」
「スープ割はここにはないのだよ、マックイーン君。しばし、昆布水を出汁に入れて楽しんでくれ」
「ああ、そういうことですのね。……『しばし』?」
「そう、しばしだ。この後に、もう一品が来るぞ」
昆布水による出汁割は、鶏の旨味を一段と引き立てる。これもまた上質なものだ。
無論、ここで終えてもいい。だが、この店に来たからには、食べねばならぬもう一つの皿がある。
「お待たせしました、『和え玉』になります」
3人の顔が呆気に取られている。無理もない。
その小皿にあったのは、イタリアンのカルボナーラに近いものだったからだ。レモンの切ったものが添えられている。
「……え?これを、どうしろと」
「そのまま食してくれ。レモンを軽く絞るといいぞ」
麺を啜ったアリーム君が、目を見開いた。
「これは、ポルチーニ?それに、これも鶏の旨味が……」
「そう、ポルチーニカルボナーラをラーメンの麺でやってみた、ということだな。
やや重たい味だが、締めにはピッタリだろう」
「え、ええ。……これほどまでに、ラーメンは奥が深いのですね……ファインモーション殿下が、すっかりはまってしまわれたのがよく分かります」
「ハハハ、彼女にも教えてやってくれ。きっと気に入るだろう」
ふと横を見ると、「バックシーン!!ごちそうさまです!!」と、笑顔で手を合わせるバクシンオーが見えた。
細かい御託を考えながら食べるのも悪くないが、ああやって心を無にして一心不乱に食べる方が、チートデイとしては正しいのかもしれない。ふと、そう思った。
「本当に、美味しいとしか……そういえば、つけ麺はスープ割をするのでしたわね」
「スープ割はここにはないのだよ、マックイーン君。しばし、昆布水を出汁に入れて楽しんでくれ」
「ああ、そういうことですのね。……『しばし』?」
「そう、しばしだ。この後に、もう一品が来るぞ」
昆布水による出汁割は、鶏の旨味を一段と引き立てる。これもまた上質なものだ。
無論、ここで終えてもいい。だが、この店に来たからには、食べねばならぬもう一つの皿がある。
「お待たせしました、『和え玉』になります」
3人の顔が呆気に取られている。無理もない。
その小皿にあったのは、イタリアンのカルボナーラに近いものだったからだ。レモンの切ったものが添えられている。
「……え?これを、どうしろと」
「そのまま食してくれ。レモンを軽く絞るといいぞ」
麺を啜ったアリーム君が、目を見開いた。
「これは、ポルチーニ?それに、これも鶏の旨味が……」
「そう、ポルチーニカルボナーラをラーメンの麺でやってみた、ということだな。
やや重たい味だが、締めにはピッタリだろう」
「え、ええ。……これほどまでに、ラーメンは奥が深いのですね……ファインモーション殿下が、すっかりはまってしまわれたのがよく分かります」
「ハハハ、彼女にも教えてやってくれ。きっと気に入るだろう」
ふと横を見ると、「バックシーン!!ごちそうさまです!!」と、笑顔で手を合わせるバクシンオーが見えた。
細かい御託を考えながら食べるのも悪くないが、ああやって心を無にして一心不乱に食べる方が、チートデイとしては正しいのかもしれない。ふと、そう思った。
120:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:00:36.95 :zZAOGZQnO
*
「いや、本当にどうもありがとうございました」
帰りの車内で、アリーム君が頭を下げる。
「いやいや、寒空の下、2回も行列に並ばせてしまいすまなかった。まさか、『ラトリエ・ドゥ・アンティーク』があんなに並んでいるとは。
バレンタインデー前ということを、考えておくべきだったな」
「いえいえ、とんでもない。あんな美味しい店を紹介していただき、本当に感謝しています」
「天王寺トレーナー、私からも御礼……むぐっ、申し上げ、ますわ」
後部座席からマックイーンの声が聞こえる。……何か変だ。
「……マックイーン?」
「あ、んぐ。失礼しましたわ」
信号待ちで振り返ると、モンブランを手掴みで食べているマックイーンが見えた。
「ちょっと待ってくれ!?なぜ待てない!?」
「このモンブラン、絶品ですわ!もう一つ買えばよかったですわ……」
「いやいや、さっきつけ麺を食べたばかりだろ?」
「別腹タンク、ですわ」
悪びれもせず、笑顔で彼女は指についたクリームを舐めた。ストッパーになりそうなバクシンオーは……
「すぴー」
疲れてしまったのか、気持ちよさそうに眠っている。……スプリンターの彼女は、スタミナが切れてしまったようだ。
「……とりあえず、車内は汚さないようにな」
「分かりましたわ!」
*
トレセン学園に着いた時、1つを除いてケーキが食べ尽くされていたのは言うまでもない。
ただ、その1つはアリーム君が選んだものだった。案外、彼女も彼を気に入っているのだろうか?
まあ、若者の恋路は邪魔しないでおこう。
……私も、ああいう甘酸っぱい青春を送るすべきだったのだろうか。思えば、筋肉のことしか考えてこなかった気がする。
少し感傷的な気分になりながら、彼らを見送るのであった。
第3話 完
*
「いや、本当にどうもありがとうございました」
帰りの車内で、アリーム君が頭を下げる。
「いやいや、寒空の下、2回も行列に並ばせてしまいすまなかった。まさか、『ラトリエ・ドゥ・アンティーク』があんなに並んでいるとは。
バレンタインデー前ということを、考えておくべきだったな」
「いえいえ、とんでもない。あんな美味しい店を紹介していただき、本当に感謝しています」
「天王寺トレーナー、私からも御礼……むぐっ、申し上げ、ますわ」
後部座席からマックイーンの声が聞こえる。……何か変だ。
「……マックイーン?」
「あ、んぐ。失礼しましたわ」
信号待ちで振り返ると、モンブランを手掴みで食べているマックイーンが見えた。
「ちょっと待ってくれ!?なぜ待てない!?」
「このモンブラン、絶品ですわ!もう一つ買えばよかったですわ……」
「いやいや、さっきつけ麺を食べたばかりだろ?」
「別腹タンク、ですわ」
悪びれもせず、笑顔で彼女は指についたクリームを舐めた。ストッパーになりそうなバクシンオーは……
「すぴー」
疲れてしまったのか、気持ちよさそうに眠っている。……スプリンターの彼女は、スタミナが切れてしまったようだ。
「……とりあえず、車内は汚さないようにな」
「分かりましたわ!」
*
トレセン学園に着いた時、1つを除いてケーキが食べ尽くされていたのは言うまでもない。
ただ、その1つはアリーム君が選んだものだった。案外、彼女も彼を気に入っているのだろうか?
まあ、若者の恋路は邪魔しないでおこう。
……私も、ああいう甘酸っぱい青春を送るすべきだったのだろうか。思えば、筋肉のことしか考えてこなかった気がする。
少し感傷的な気分になりながら、彼らを見送るのであった。
第3話 完
121:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:02:48.35 :zZAOGZQnO
以上です。少々長くなりました。
中華そば高野のセカンド・ブランドは一度行きたいのですが、時間がなかなか取れません……
ブレが落ち着いた頃に向かいたいところです。
さて、次回のお題です。
まず登場ウマ娘を決めます。安価下1~5で、最もコンマが大きいものとします。
以上です。少々長くなりました。
中華そば高野のセカンド・ブランドは一度行きたいのですが、時間がなかなか取れません……
ブレが落ち着いた頃に向かいたいところです。
さて、次回のお題です。
まず登場ウマ娘を決めます。安価下1~5で、最もコンマが大きいものとします。
122:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:03:18.00 :l/fisPnH0
メイショウドトウ
メイショウドトウ
123:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:04:11.49 :1+L1MTuw0
メイショウドトウ
メイショウドトウ
124:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:04:31.85 :h0xZqHpWO
マヤノトップガン
マヤノトップガン
125:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:06:27.80 :15Pqvn/DO
ゼンノロブロイ
ゼンノロブロイ
126:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:06:37.96 :tdkeGDPIo
メジロパーマー
メジロパーマー
127:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:06:40.96 :RpGWe+d4O
ゴルシ
ゴルシ
128:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:09:18.44 :RpGWe+d4O
また00
また00
129:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:09:56.94 :zZAOGZQnO
また00が出ましたのでコンマで決めます。
コンマ下が奇数で>>126、偶数でドトウとあともう一人です。
また00が出ましたのでコンマで決めます。
コンマ下が奇数で>>126、偶数でドトウとあともう一人です。
130:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:10:07.07 :RpGWe+d4O
そい
そい
131:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:11:27.77 :zZAOGZQnO
ではメジロパーマーとします。メジロ家繋がりですね。
続いてジャンルを決めます。安価下1~5までで、最もコンマが大きいものとします。
ではメジロパーマーとします。メジロ家繋がりですね。
続いてジャンルを決めます。安価下1~5までで、最もコンマが大きいものとします。
132:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:11:58.81 :RpGWe+d4O
鬼金棒
鬼金棒
133:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:15:01.14 :RpGWe+d4O
ごめん勘違いした
味噌で
ごめん勘違いした
味噌で
134:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:15:10.71 :1+L1MTuw0
味噌系
味噌系
135:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:16:19.30 :l/fisPnH0
>>89
>>89
136:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:18:09.46 :zZAOGZQnO
>>133
固有の店でも問題ないです。
ただ鬼金棒は行ったことがないので、要リサーチですが。
(明日行こうと思えば行けます)
>>133
固有の店でも問題ないです。
ただ鬼金棒は行ったことがないので、要リサーチですが。
(明日行こうと思えば行けます)
137:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:18:10.05 :l/fisPnH0
>>133
店の名前直接出しても良いってどこかで言ってた気がする
安価下
>>133
店の名前直接出しても良いってどこかで言ってた気がする
安価下
138:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:31:49.31 :xC5jBUKwO
本場博多の豚骨ラーメン
本場博多の豚骨ラーメン
139:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:32:42.07 :Drb+sqNOo
固有店名有りとの事で
麺巧 潮
固有店名有りとの事で
麺巧 潮
140:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:35:57.65 :l/fisPnH0
店名出すなら関東オンリーになるのかな(行ったことあれば書けるんだろうけど)
店名出すなら関東オンリーになるのかな(行ったことあれば書けるんだろうけど)
141:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:46:25.73 :zZAOGZQnO
では>>132の鬼金棒とします。多分明日行きます。
>>140
そうですね。関東(それも東京か神奈川)限定です。
埼玉はまあまあ強いですが、千葉は行く機会がないためかなり弱いですね。
福岡は住んでいたことがあるため分かりますが、大阪と名古屋はほぼダメです。
鬼金棒はすぐに行ける場所なので、その点問題ありませんでした。実は宿題店でもありましたし。
では>>132の鬼金棒とします。多分明日行きます。
>>140
そうですね。関東(それも東京か神奈川)限定です。
埼玉はまあまあ強いですが、千葉は行く機会がないためかなり弱いですね。
福岡は住んでいたことがあるため分かりますが、大阪と名古屋はほぼダメです。
鬼金棒はすぐに行ける場所なので、その点問題ありませんでした。実は宿題店でもありましたし。
142:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/17(月) 00:48:03.59 :l/fisPnH0
乙
>>1の食レポに期待
乙
>>1の食レポに期待
143:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/18(火) 09:48:41.57 :+v0RatJ/O
調べたら40~50分あれば行ける場所だった
調べたら40~50分あれば行ける場所だった
144:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/21(金) 12:25:37.53 :Qxzdoc3U0
続きはまだ?
続きはまだ?
145:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 16:48:55.73 :fpZyINMJO
それでは、夜に前半更新します。
それでは、夜に前半更新します。
146:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 17:15:12.76 :fpZyINMJO
「バクシンバクシンバクシーン!!!」
叫び声と共にバクシンオーがゴール板前を圧倒的大差を付けて駆け抜けた。……素晴らしい。
満足して頷く私の背中を、誰かが軽くつついた。
「さすがだねえ、天王寺君」
「塩田トレーナー」
振り向くと、眼鏡を掛けたその細身の男がニヤリと笑った。
「素晴らしい直線の末脚だったねえ。坂対策は万全だった、ということかな」
「まあ、そうですな。このコースはスピード以上にパワーが求められるので」
目の前には、中京競馬場を模した模擬コースがある。バクシンオーは2ヶ月後の高松宮記念の模擬レースに出ていたのだった。
とはいっても、これはただの模擬レースではない。
「チャンピオンズミーティング」……通称「チャンミ」。
トレーナーの査定にも関わる、重要なレースだ。
毎月1度、トレセン学園ではコースを変えた模擬レース大会が開かれる。
先月は「有馬記念」、先々月は「天皇賞秋」。実際のG1をイメージしたコースを、ウマ娘たちは走る。
賞金こそ出ないが、そこにかける彼女たちの意気込みは本番と全く変わらない。むしろ、本番以上に気合いを入れる娘もいるほどだ。
バクシンオーもその一人。「スプリント戦なら負けられません!」と並々ならぬ意気込みだった。
阪神1600の「ヴァルゴ杯」では思うような結果が出せなかった悔しさもあったのだろう。
大腿筋を中心に徹底的に鍛え上げ、直線の坂でさらに突き放す。この狙いは見事に当たった。
フフ、と塩田トレーナーが軽く笑った。
「それにしても5バ身差はそうそうお目にかかれないねえ。噂の『チートデイ』の成果かな?」
「……誰が噂を?」
「ウマ娘たちの間ではかなり知られてるよ?ファインモーションとメジロマックイーン、2人のVIPのお墨付きとあれば、信憑性は嫌でも増す。
そこにもってきて今日のバクシンオーの圧勝だ。君のやり方を学びたいというトレーナーは多くなるだろうよ」
「貴方もですか?」
「バレたか」
ペロッと塩田トレーナーが舌を出す。冗談のつもりだったが、本当だとは。
塩田トレーナーは、沖野君や柰瀬君と並ぶ、トップトレーナーの一人だ。
私と違い、ステイヤーの育成を得意とする。メジロ家のウマ娘が多く師事しており、アリーム君も彼に学んでいたはずだ。
「バクシンバクシンバクシーン!!!」
叫び声と共にバクシンオーがゴール板前を圧倒的大差を付けて駆け抜けた。……素晴らしい。
満足して頷く私の背中を、誰かが軽くつついた。
「さすがだねえ、天王寺君」
「塩田トレーナー」
振り向くと、眼鏡を掛けたその細身の男がニヤリと笑った。
「素晴らしい直線の末脚だったねえ。坂対策は万全だった、ということかな」
「まあ、そうですな。このコースはスピード以上にパワーが求められるので」
目の前には、中京競馬場を模した模擬コースがある。バクシンオーは2ヶ月後の高松宮記念の模擬レースに出ていたのだった。
とはいっても、これはただの模擬レースではない。
「チャンピオンズミーティング」……通称「チャンミ」。
トレーナーの査定にも関わる、重要なレースだ。
毎月1度、トレセン学園ではコースを変えた模擬レース大会が開かれる。
先月は「有馬記念」、先々月は「天皇賞秋」。実際のG1をイメージしたコースを、ウマ娘たちは走る。
賞金こそ出ないが、そこにかける彼女たちの意気込みは本番と全く変わらない。むしろ、本番以上に気合いを入れる娘もいるほどだ。
バクシンオーもその一人。「スプリント戦なら負けられません!」と並々ならぬ意気込みだった。
阪神1600の「ヴァルゴ杯」では思うような結果が出せなかった悔しさもあったのだろう。
大腿筋を中心に徹底的に鍛え上げ、直線の坂でさらに突き放す。この狙いは見事に当たった。
フフ、と塩田トレーナーが軽く笑った。
「それにしても5バ身差はそうそうお目にかかれないねえ。噂の『チートデイ』の成果かな?」
「……誰が噂を?」
「ウマ娘たちの間ではかなり知られてるよ?ファインモーションとメジロマックイーン、2人のVIPのお墨付きとあれば、信憑性は嫌でも増す。
そこにもってきて今日のバクシンオーの圧勝だ。君のやり方を学びたいというトレーナーは多くなるだろうよ」
「貴方もですか?」
「バレたか」
ペロッと塩田トレーナーが舌を出す。冗談のつもりだったが、本当だとは。
塩田トレーナーは、沖野君や柰瀬君と並ぶ、トップトレーナーの一人だ。
私と違い、ステイヤーの育成を得意とする。メジロ家のウマ娘が多く師事しており、アリーム君も彼に学んでいたはずだ。
147:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 17:33:41.50 :fpZyINMJO
「私に学ぶことがあると?」
「幾らでもあるよ。筋肉の付け方だけじゃない。ウマ娘のモチベーションをいかに高めるか。その方法論として、『チートデイ』は実に有力だ。
僕も色々ご機嫌を取ろうとはしているのだけどねえ。なかなか思うようにはいかない。
オペラオーのように聞き分けのいい娘ばかりじゃないからねえ」
はあ、と彼が溜め息をついた。いつも余裕綽々の彼にしては珍しい。
思えば彼の担当ウマ娘は、ゴールドシップやナカヤマフェスタなど一癖ある娘が多い。
今海外留学中のウマ娘2人は、さらに酷い。すぐにサボったり、レースいきなりキレて止まろうとしたり……
それもこれも、塩田トレーナーが有能だから任されているというわけだが。
「誰かでお悩みですか」
「まあ、ね。後で彼女を連れて、君のトレーナー室に行っていいかな?」
「構いませんが。誰なんです」
「メジロパーマーだよ」
意外な名前が出てきた。彼女の交友関係はゴールドシチーやダイタクヘリオスなど派手だが、彼女たちと違い授業態度は真面目な方だ。
成績は決して良くはないが、あまり塩田トレーナーの手を煩わせるタイプでもない。
「何かあったんですか?」
「ま、それは会えばすぐ分かるよ。じゃあ、また」
「私に学ぶことがあると?」
「幾らでもあるよ。筋肉の付け方だけじゃない。ウマ娘のモチベーションをいかに高めるか。その方法論として、『チートデイ』は実に有力だ。
僕も色々ご機嫌を取ろうとはしているのだけどねえ。なかなか思うようにはいかない。
オペラオーのように聞き分けのいい娘ばかりじゃないからねえ」
はあ、と彼が溜め息をついた。いつも余裕綽々の彼にしては珍しい。
思えば彼の担当ウマ娘は、ゴールドシップやナカヤマフェスタなど一癖ある娘が多い。
今海外留学中のウマ娘2人は、さらに酷い。すぐにサボったり、レースいきなりキレて止まろうとしたり……
それもこれも、塩田トレーナーが有能だから任されているというわけだが。
「誰かでお悩みですか」
「まあ、ね。後で彼女を連れて、君のトレーナー室に行っていいかな?」
「構いませんが。誰なんです」
「メジロパーマーだよ」
意外な名前が出てきた。彼女の交友関係はゴールドシチーやダイタクヘリオスなど派手だが、彼女たちと違い授業態度は真面目な方だ。
成績は決して良くはないが、あまり塩田トレーナーの手を煩わせるタイプでもない。
「何かあったんですか?」
「ま、それは会えばすぐ分かるよ。じゃあ、また」
148:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 18:27:55.72 :fpZyINMJO
*
「失礼するよ」
「失礼……します……」
彼らが部屋に入ってくるなり、私はすぐにパーマーの異変に気付いた。
目には光がなく、明らかに意気消沈している。メンタルに異常を抱えているのは、誰の目から見てもすぐに分かった。
「どうしたんです?」
「平たく言えば、スランプだね。僕の責任でもある」
向かい合ったパーマーは、目線を私に合わせようともしない。
確かに彼女の競争成績にはムラがある。惨敗も決して少なくはない。
ただ、彼女の様子は、それだけではないように見えた。
「それだけじゃないでしょう?」
「……『バーンアウト』」
「……そういうことですか」
私は、パーマーの身に何が起こったか察した。
「ああ。この娘は、実は誰より真面目だ。マイペースに見えて、実は周囲に合わせる努力を怠らない。
負け続けていた時も、どうにかしようと必死にもがいていた。だからこそ、宝塚を勝った。
ただ、負けが込んでた時に僕に隠れて練習をしてたみたいでね……非公認の『フリースタイルレース』にも、こっそり出ていたらしいんだ」
「そして、張り詰めていた糸が、切れかかっている、と」
「……恥ずかしい話だけどね。友人たちに合わせようと、必死になっていたのもあったかもしれない。
僕が気付いて、ガス抜きをさせてあげなきゃいけなかった。ただ、何分どういう方法がいいのか……」
塩田トレーナーが、息をついた。
「パーマーはゴルシのように勝手に暴れて発散するタイプでも、フェスタのようにギャンブルでストレス解消をするタイプでもない。
考えた挙げ句、君の『チートデイ』が思い浮かんだ、というわけだ」
「食事なら、いいところは幾らでも……」
「パーマーは、高級レストランは嫌いなんだよ。庶民的な味の方がいいらしい。
庶民の味と言えばラーメンだ。元気の出る、スタミナラーメンとか知らないものだろうかな」
*
「失礼するよ」
「失礼……します……」
彼らが部屋に入ってくるなり、私はすぐにパーマーの異変に気付いた。
目には光がなく、明らかに意気消沈している。メンタルに異常を抱えているのは、誰の目から見てもすぐに分かった。
「どうしたんです?」
「平たく言えば、スランプだね。僕の責任でもある」
向かい合ったパーマーは、目線を私に合わせようともしない。
確かに彼女の競争成績にはムラがある。惨敗も決して少なくはない。
ただ、彼女の様子は、それだけではないように見えた。
「それだけじゃないでしょう?」
「……『バーンアウト』」
「……そういうことですか」
私は、パーマーの身に何が起こったか察した。
「ああ。この娘は、実は誰より真面目だ。マイペースに見えて、実は周囲に合わせる努力を怠らない。
負け続けていた時も、どうにかしようと必死にもがいていた。だからこそ、宝塚を勝った。
ただ、負けが込んでた時に僕に隠れて練習をしてたみたいでね……非公認の『フリースタイルレース』にも、こっそり出ていたらしいんだ」
「そして、張り詰めていた糸が、切れかかっている、と」
「……恥ずかしい話だけどね。友人たちに合わせようと、必死になっていたのもあったかもしれない。
僕が気付いて、ガス抜きをさせてあげなきゃいけなかった。ただ、何分どういう方法がいいのか……」
塩田トレーナーが、息をついた。
「パーマーはゴルシのように勝手に暴れて発散するタイプでも、フェスタのようにギャンブルでストレス解消をするタイプでもない。
考えた挙げ句、君の『チートデイ』が思い浮かんだ、というわけだ」
「食事なら、いいところは幾らでも……」
「パーマーは、高級レストランは嫌いなんだよ。庶民的な味の方がいいらしい。
庶民の味と言えばラーメンだ。元気の出る、スタミナラーメンとか知らないものだろうかな」
149:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 18:30:18.37 :fpZyINMJO
頭にパッと思い浮かんだのは二郎だ。だが、あれは人を選ぶ。特に女性の場合は。
「パーマー、何か好みは」
「……逃げたくなるようなのがいい」
「それはどういう」
彼女はうつむいて、言葉を返さない。これはなかなかに重症だな。
「バックシーン!」
大声と共に、バクシンオーが入ってきた。
「トレーナーさん!!見ましたか私の走り!!まさに学級委員長にふさわしい走りだったでしょう!!」
「あ、ああ。……来客中なのだが」
「や、ややっ!!これは失礼しました!!パーマーさんではありませんか!!こんにちは!!」
「…………」
パーマーはまた返事をしない。バクシンオーのこのテンションは、彼女にあまり良くないかもしれない。
「どうしたのですか!?」
「…………」
「バクシンオー、そっとしておいてやってはくれないかね」
「むむっ、そうですか、分かりました!!辛いものでも食べて、元気出してください!!」
…………ん?
「バクシンオー、今何と言った?」
「はいっ!!元気出してくださいと言いました!!」
「その前だ。辛いもの、と言ったかな」
「はいっ!!母は私が子供のころ、かけっこで負けた日にはいつもカレーライスを作ってくれましたので!!」
……カレー……そうでなくても辛いもの……しかも比較的食べやすい……
ここにするか。
「塩田トレーナー、明日の予定は」
「いや、ないが」
「一つ、元気を出してもらえそうな店を知ってます。そこに行くとしましょうか」
頭にパッと思い浮かんだのは二郎だ。だが、あれは人を選ぶ。特に女性の場合は。
「パーマー、何か好みは」
「……逃げたくなるようなのがいい」
「それはどういう」
彼女はうつむいて、言葉を返さない。これはなかなかに重症だな。
「バックシーン!」
大声と共に、バクシンオーが入ってきた。
「トレーナーさん!!見ましたか私の走り!!まさに学級委員長にふさわしい走りだったでしょう!!」
「あ、ああ。……来客中なのだが」
「や、ややっ!!これは失礼しました!!パーマーさんではありませんか!!こんにちは!!」
「…………」
パーマーはまた返事をしない。バクシンオーのこのテンションは、彼女にあまり良くないかもしれない。
「どうしたのですか!?」
「…………」
「バクシンオー、そっとしておいてやってはくれないかね」
「むむっ、そうですか、分かりました!!辛いものでも食べて、元気出してください!!」
…………ん?
「バクシンオー、今何と言った?」
「はいっ!!元気出してくださいと言いました!!」
「その前だ。辛いもの、と言ったかな」
「はいっ!!母は私が子供のころ、かけっこで負けた日にはいつもカレーライスを作ってくれましたので!!」
……カレー……そうでなくても辛いもの……しかも比較的食べやすい……
ここにするか。
「塩田トレーナー、明日の予定は」
「いや、ないが」
「一つ、元気を出してもらえそうな店を知ってます。そこに行くとしましょうか」
150:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 18:31:00.59 :fpZyINMJO
第4R 神田「鬼金棒」
第4R 神田「鬼金棒」
151:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 18:32:41.12 :fpZyINMJO
続きは夜か明日です。
カプリコーン杯、予想されていましたがバクシンオー強いですね。
エル固有とマミクリ固有と登山家さえあれば、高確率で直線ぶっちぎってくれます。
続きは夜か明日です。
カプリコーン杯、予想されていましたがバクシンオー強いですね。
エル固有とマミクリ固有と登山家さえあれば、高確率で直線ぶっちぎってくれます。
152:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 18:57:50.24 :PRNe5Yfto
たんおつおつ
たんおつおつ
153:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 20:30:16.15 :6Uf2v+mxO
*
「やあ、おはよう」
「…………」
塩田トレーナーとパーマーが、待ち合わせの門に現れた。パーマーの頬は、心なしかコケている。
「食事は食べたのかね?」
「……」
フルフル、とパーマーが首を振った。なるほど、これは重症だ。
*
昨日、彼らが去った後にダイタクヘリオスに会うことにした。
学園の中庭でいつもの3人でワチャワチャやっているのが見えたが、心なしかいつもの明るさがない。
「失礼、ちょっといいか」
「あ!マッチョ先生チース!!どしたんそんなガチな顔して。もっとあげみざわでいかん?」
ヘリオスがいつも通りの調子で言う。相変わらず言ってることはよく分からないが、とりあえず話を進める。
「ん、ちょっとな。パーマーのことなんだが」
一気に空気が重くなった。ヘリオスも伏し目がちになる。
「パーマー、ずっとつらたんだったけどどしたん?ぴえん超えてびえんになってたけど、なんでかわからんくて……」
「塩田トレーナーから相談を受けてね。オーバートレーニングによるバーンアウトの初期症状だろうと推測してるが」
「ばーんあうち?」
「『バーンアウト』、燃え付き症候群のことね」
リーダー格のゴールドシチーが言う。
「彼女、ああ見えて結構コンプレックス強いから。マイペースに見せて裏で人一倍努力するのよね。食事も惜しんで走り込みしたりしてるし」
「食事、食べてないのか」
「ここ数日、体調不良で休んでるって聞いて多分そうかなと。前にもそうなりかけたことはあったわ」
「昼を抜いてたりするわけだな」
「多分。さすがに塩田トレーナーの手前、そうは言ってないんだろうけど」
なるほど。栄養バランスも加味すべきということになる。やはりあの店が最も適切だろうか。
「助かる。それと、彼女は辛いのは?」
「一度罰ゲームで激辛ロシアンルーレットやったら、メチャ辛そうだったよ。そんな強くないんじゃね?」
トーセンジョーダンがネイルから顔を上げて答えた。
ふむ……いよいよあそこだろう。もう一つのオプションはここで消えた。
「ありがとう、助かった」
*
「やあ、おはよう」
「…………」
塩田トレーナーとパーマーが、待ち合わせの門に現れた。パーマーの頬は、心なしかコケている。
「食事は食べたのかね?」
「……」
フルフル、とパーマーが首を振った。なるほど、これは重症だ。
*
昨日、彼らが去った後にダイタクヘリオスに会うことにした。
学園の中庭でいつもの3人でワチャワチャやっているのが見えたが、心なしかいつもの明るさがない。
「失礼、ちょっといいか」
「あ!マッチョ先生チース!!どしたんそんなガチな顔して。もっとあげみざわでいかん?」
ヘリオスがいつも通りの調子で言う。相変わらず言ってることはよく分からないが、とりあえず話を進める。
「ん、ちょっとな。パーマーのことなんだが」
一気に空気が重くなった。ヘリオスも伏し目がちになる。
「パーマー、ずっとつらたんだったけどどしたん?ぴえん超えてびえんになってたけど、なんでかわからんくて……」
「塩田トレーナーから相談を受けてね。オーバートレーニングによるバーンアウトの初期症状だろうと推測してるが」
「ばーんあうち?」
「『バーンアウト』、燃え付き症候群のことね」
リーダー格のゴールドシチーが言う。
「彼女、ああ見えて結構コンプレックス強いから。マイペースに見せて裏で人一倍努力するのよね。食事も惜しんで走り込みしたりしてるし」
「食事、食べてないのか」
「ここ数日、体調不良で休んでるって聞いて多分そうかなと。前にもそうなりかけたことはあったわ」
「昼を抜いてたりするわけだな」
「多分。さすがに塩田トレーナーの手前、そうは言ってないんだろうけど」
なるほど。栄養バランスも加味すべきということになる。やはりあの店が最も適切だろうか。
「助かる。それと、彼女は辛いのは?」
「一度罰ゲームで激辛ロシアンルーレットやったら、メチャ辛そうだったよ。そんな強くないんじゃね?」
トーセンジョーダンがネイルから顔を上げて答えた。
ふむ……いよいよあそこだろう。もう一つのオプションはここで消えた。
「ありがとう、助かった」
154:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 20:43:37.69 :6Uf2v+mxO
*
「こんな具合だよ。リフレッシュ休暇でも取らせてあげたいが……」
塩田トレーナーが溜め息をつくと、「大丈夫です!!」とバクシンオーが割って入った。
「トレーナーさんなら、きっと美味しい食事で元気にしてくれます!!ところで、今日はどこに行くのですか!?」
「神田だ。今日は電車と地下鉄で向かうとしよう」
塩田トレーナーが「神田かあ」と呟いた。
「久しく行ってないね。カレーでも食べに行くのかな」
「それも少し考えましたが、ちょっと違う所です」
「ああ、ラーメンか。その件では殿下がとても君を買っていたねえ。『あの方こそマイスターだよ』とかなんとか」
「ハハ、そこまで詳しいわけではないですよ」
また随分尾ひれがついているらしい。褒められるのは嫌ではないが、どうにも落ち着かなくはある。
*
「こんな具合だよ。リフレッシュ休暇でも取らせてあげたいが……」
塩田トレーナーが溜め息をつくと、「大丈夫です!!」とバクシンオーが割って入った。
「トレーナーさんなら、きっと美味しい食事で元気にしてくれます!!ところで、今日はどこに行くのですか!?」
「神田だ。今日は電車と地下鉄で向かうとしよう」
塩田トレーナーが「神田かあ」と呟いた。
「久しく行ってないね。カレーでも食べに行くのかな」
「それも少し考えましたが、ちょっと違う所です」
「ああ、ラーメンか。その件では殿下がとても君を買っていたねえ。『あの方こそマイスターだよ』とかなんとか」
「ハハ、そこまで詳しいわけではないですよ」
また随分尾ひれがついているらしい。褒められるのは嫌ではないが、どうにも落ち着かなくはある。
155:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 20:54:34.82 :6Uf2v+mxO
ちょい休憩します。
ちょい休憩します。
156:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 21:03:58.34 :+D9DfnQdo
おつ
パーマーは色々抱え込みそうそうよねわかる
おつ
パーマーは色々抱え込みそうそうよねわかる
157:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 22:42:22.97 :b74g9IW4O
*
神田駅から歩いて3分。目当ての店が見えた。
「今日はここです」
「『カラシビ味噌ラーメン 鬼金棒』……なるほど、辛い系のラーメンか」
ふと後ろを見ると、パーマーの表情がさらに曇っている。
「天王寺トレーナー、気持ちはありがたいんだけどさ。私、激辛はあまり」
「それはジョーダンに聞いた。そして、だからこそここにしたのだよ」
「……え?」
「まず、君が十分な栄養を採っていないことは推測した。故にある程度の野菜を採れるものがいいと判断した。
ただ、野菜がたっぷりでも二郎はいささか好き嫌いが分かれる。故にここにしたのだよ。野菜がかなり多めの店だからな。
あと、食欲増進のためには、ある程度の辛味が必要だ。カプサイシンの血行促進効果については、授業でもやった点だな。
もっとも、辛さに対する耐性には個人差がある。ここはその点、比較的食べやすい」
「そうなの?」
「まあ、食えば分かる。それでも辛いのがあまり得意でないなら、つけ麺を選ぶといい」
券売機でカラシビつけ麺を4枚購入する。行列に戻ると、塩田トレーナーが「質問なのだけど」と切り出した。
「なぜデフォルトではなくつけ麺に?確かに、こちらも看板メニューのようだが」
「麺がポイントなのですよ。こちらの方が、激辛初心者にはいい」
「というと?」
「麺が太麺でしっかりしているからです。麺自体に小麦粉の甘みがある。そして、ここのつけダレは……」
話しかけた所で店員が「4名様どうぞー」と引き戸を開けた。コロナ感染防止のこともある、説明はここまでにしておこう。
*
神田駅から歩いて3分。目当ての店が見えた。
「今日はここです」
「『カラシビ味噌ラーメン 鬼金棒』……なるほど、辛い系のラーメンか」
ふと後ろを見ると、パーマーの表情がさらに曇っている。
「天王寺トレーナー、気持ちはありがたいんだけどさ。私、激辛はあまり」
「それはジョーダンに聞いた。そして、だからこそここにしたのだよ」
「……え?」
「まず、君が十分な栄養を採っていないことは推測した。故にある程度の野菜を採れるものがいいと判断した。
ただ、野菜がたっぷりでも二郎はいささか好き嫌いが分かれる。故にここにしたのだよ。野菜がかなり多めの店だからな。
あと、食欲増進のためには、ある程度の辛味が必要だ。カプサイシンの血行促進効果については、授業でもやった点だな。
もっとも、辛さに対する耐性には個人差がある。ここはその点、比較的食べやすい」
「そうなの?」
「まあ、食えば分かる。それでも辛いのがあまり得意でないなら、つけ麺を選ぶといい」
券売機でカラシビつけ麺を4枚購入する。行列に戻ると、塩田トレーナーが「質問なのだけど」と切り出した。
「なぜデフォルトではなくつけ麺に?確かに、こちらも看板メニューのようだが」
「麺がポイントなのですよ。こちらの方が、激辛初心者にはいい」
「というと?」
「麺が太麺でしっかりしているからです。麺自体に小麦粉の甘みがある。そして、ここのつけダレは……」
話しかけた所で店員が「4名様どうぞー」と引き戸を開けた。コロナ感染防止のこともある、説明はここまでにしておこう。
158:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 23:17:15.63 :OR5k1JPSO
店内に入ると、どこか空気が肌に刺すような気がする。バクシンオーも気付いたのか、「どうしたことですか?」と訊いてきた。
「多分、あれだろうな」
ジャーという音と共に、唐辛子の入った鍋に油が注がれる。そこでカプサイシンが揮発しているのだ。パーマーが不安そうな顔になる。
「辛そう……」
「心配は無用だ。追加料金を払って『鬼』にしなければ」
「鬼?」
「激辛党のドトウ向けだな。私もさすがに頼まないよ」
待つこと数分。カウンター越しに、大盛りの麺とつけダレが供された。
「え……つけダレって、こんなのだっけ?」
塩田トレーナーが困惑気味に言う。タレの色は赤茶色で、ネギがたっぷり散らしてある。問題は、その粘度だ。
「ポタージュ……というか、ほぼ固形?」
「それがポイントだ。さて、頂こう」
極太麺を軽く浸すと、濃厚なつけダレがそれにしっかり絡み付く。
そして一気に啜ると、小麦の甘みが味噌の旨味と混ざって口の中に広がった。
「バックシーン!!!」
隣のバクシンオーは叫ぶと、猛烈な勢いで麺を啜り始めた。私のワイシャツのボタンも、パシーンッという音と共に弾ける。
「これはっ!?」
「え、美味しい……あ、確かにちょっと辛いけど、これなら食べられるかも」
パーマーも恐る恐る食べ始めた。私は微笑みながら頷き、自分の丼に取り掛かる。
麺と味噌の異なる甘みの後に、唐辛子の刺すような辛み。そして花椒の痺れが追い掛けてくる。
それを忘れんと次なる麺に箸を伸ばす。見事なループだ。
そして、つけダレの底には……
「むっ!?モヤシ炒め!?それに、これは……」
「アッツアツだよ!え、どうして……」
「ポイントはタレの粘度だよ。これがモヤシ炒めの熱さを保っているわけだ」
それを口にすると、野菜の甘みでさらに辛さが中和される。シャキシャキの玉葱の甘さも、単調になりがちな辛さにアクセントを加えてくれる。
そして、もう一つ。
「ムムッ!?これはなんですかトレーナーさん!?」
バクシンオーが箸で細長い具を見せてきた。
「ヤングコーンだよ」
「??」
「トウモロコシの小さいヤツだな」
この甘みも、さらなる変化をつけダレに加える。実によく考えられた一品だ。
店内に入ると、どこか空気が肌に刺すような気がする。バクシンオーも気付いたのか、「どうしたことですか?」と訊いてきた。
「多分、あれだろうな」
ジャーという音と共に、唐辛子の入った鍋に油が注がれる。そこでカプサイシンが揮発しているのだ。パーマーが不安そうな顔になる。
「辛そう……」
「心配は無用だ。追加料金を払って『鬼』にしなければ」
「鬼?」
「激辛党のドトウ向けだな。私もさすがに頼まないよ」
待つこと数分。カウンター越しに、大盛りの麺とつけダレが供された。
「え……つけダレって、こんなのだっけ?」
塩田トレーナーが困惑気味に言う。タレの色は赤茶色で、ネギがたっぷり散らしてある。問題は、その粘度だ。
「ポタージュ……というか、ほぼ固形?」
「それがポイントだ。さて、頂こう」
極太麺を軽く浸すと、濃厚なつけダレがそれにしっかり絡み付く。
そして一気に啜ると、小麦の甘みが味噌の旨味と混ざって口の中に広がった。
「バックシーン!!!」
隣のバクシンオーは叫ぶと、猛烈な勢いで麺を啜り始めた。私のワイシャツのボタンも、パシーンッという音と共に弾ける。
「これはっ!?」
「え、美味しい……あ、確かにちょっと辛いけど、これなら食べられるかも」
パーマーも恐る恐る食べ始めた。私は微笑みながら頷き、自分の丼に取り掛かる。
麺と味噌の異なる甘みの後に、唐辛子の刺すような辛み。そして花椒の痺れが追い掛けてくる。
それを忘れんと次なる麺に箸を伸ばす。見事なループだ。
そして、つけダレの底には……
「むっ!?モヤシ炒め!?それに、これは……」
「アッツアツだよ!え、どうして……」
「ポイントはタレの粘度だよ。これがモヤシ炒めの熱さを保っているわけだ」
それを口にすると、野菜の甘みでさらに辛さが中和される。シャキシャキの玉葱の甘さも、単調になりがちな辛さにアクセントを加えてくれる。
そして、もう一つ。
「ムムッ!?これはなんですかトレーナーさん!?」
バクシンオーが箸で細長い具を見せてきた。
「ヤングコーンだよ」
「??」
「トウモロコシの小さいヤツだな」
この甘みも、さらなる変化をつけダレに加える。実によく考えられた一品だ。
159:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 23:47:06.26 :OR5k1JPSO
ふとパーマーを見ると、すっかり麺を食べ終えていた。青白かった顔にも生気が戻っている。
「うん、美味しい!今度ヘリオスにも教えてあげなくっちゃ」
塩田トレーナーと目が合う。「ありがとう」とその目は語っていた。
*
「んー!美味しかったあ。何かスッキリした感じだよ」
店を出ると、パーマーがうーんと大きく伸びをした。やっと本来の彼女の調子が出てきたようだ。
「天王寺トレーナー、本当にありがとう。それにしても、君の知識には感服させられるよ。どこで身に付けたのかな?」
「……まあ、ただの趣味ですよ」
私は笑って誤魔化した。
……そう、チートデイにラーメンばかり選ぶようになったのには、一応の理由がある。
私がスキンヘッドに敢えてしているのも、「彼」の影響だ。
私は深く、青い空を見上げる。私がトレーナーを志すようになったのも、「彼」に大学時代に出会ったからに他ならない。
「彼」の名は、すっかり聞かなくなってしまった。日本のどこかでラーメン屋をやっているのか、それとも海外でトレーナーをやっているのか……
「トレーナーさん?」
バクシンオーの声で、私は我に返った。どうにも感傷的になってしまったようだ。
「何でもない。行こうか」
私は歩き始めた。
「彼」と再会する日がそう遠くないことを、この時の私はまだ知らない。
第4話 完
ふとパーマーを見ると、すっかり麺を食べ終えていた。青白かった顔にも生気が戻っている。
「うん、美味しい!今度ヘリオスにも教えてあげなくっちゃ」
塩田トレーナーと目が合う。「ありがとう」とその目は語っていた。
*
「んー!美味しかったあ。何かスッキリした感じだよ」
店を出ると、パーマーがうーんと大きく伸びをした。やっと本来の彼女の調子が出てきたようだ。
「天王寺トレーナー、本当にありがとう。それにしても、君の知識には感服させられるよ。どこで身に付けたのかな?」
「……まあ、ただの趣味ですよ」
私は笑って誤魔化した。
……そう、チートデイにラーメンばかり選ぶようになったのには、一応の理由がある。
私がスキンヘッドに敢えてしているのも、「彼」の影響だ。
私は深く、青い空を見上げる。私がトレーナーを志すようになったのも、「彼」に大学時代に出会ったからに他ならない。
「彼」の名は、すっかり聞かなくなってしまった。日本のどこかでラーメン屋をやっているのか、それとも海外でトレーナーをやっているのか……
「トレーナーさん?」
バクシンオーの声で、私は我に返った。どうにも感傷的になってしまったようだ。
「何でもない。行こうか」
私は歩き始めた。
「彼」と再会する日がそう遠くないことを、この時の私はまだ知らない。
第4話 完
160:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 23:48:28.86 :OR5k1JPSO
今回はここまでです。色々伏線や小ネタがありますが、回収するかは未定です。
次回登場のウマ娘を決めます。
安価下1~5で、コンマが最も大きいものとします。
今回はここまでです。色々伏線や小ネタがありますが、回収するかは未定です。
次回登場のウマ娘を決めます。
安価下1~5で、コンマが最も大きいものとします。
161:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 23:49:46.79 :5jU4/bAi0
メジロアルダン
メジロアルダン
162:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 23:49:56.55 :e3RnlvXAo
サクラチヨノオー
サクラチヨノオー
163:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 23:50:27.98 :V/hLXOMTO
カレンチャン
カレンチャン
164:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 23:51:30.87 :RZLHASr4O
メイショウドトウ
メイショウドトウ
165:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 23:53:01.88 :NBVkHXo20
メイショウドトウ
メイショウドトウ
166:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 23:54:21.73 :OR5k1JPSO
カレンチャンに決定しました。
続いてテーマを決めます。同じく安価下1~5で、コンマが最も大きいものとします。
カレンチャンに決定しました。
続いてテーマを決めます。同じく安価下1~5で、コンマが最も大きいものとします。
167:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 23:55:57.66 :e3RnlvXAo
つけ麺
つけ麺
168:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/22(土) 23:58:58.80 :RZLHASr4O
ウマスタ映えしそうなラーメン屋さん
ウマスタ映えしそうなラーメン屋さん
169:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 00:01:07.21 :1zktD7nlo
眞久中
眞久中
170:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 00:03:45.96 :fJl2DPlY0
くろき
くろき
171:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 00:05:07.26 :ajlpTH/bO
煮干系
煮干系
172:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 00:08:45.02 :IBFuVrRbO
くろきで決定します。あそこはインスタ映えしそうですね……
わりと最近行ったので、リサーチなしでやれそうです。その時に食べた限定でやります。
くろきで決定します。あそこはインスタ映えしそうですね……
わりと最近行ったので、リサーチなしでやれそうです。その時に食べた限定でやります。
173:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 00:24:37.68 :KHJGT0pC0
話の更新するタイミングを教えてください
話の更新するタイミングを教えてください
174:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 00:26:16.86 :KHJGT0pC0
後から出合わせで来るウマ娘はいて、次のお店を紹介する回もありますか?
後から出合わせで来るウマ娘はいて、次のお店を紹介する回もありますか?
175:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 00:29:48.41 :IBFuVrRbO
>>173
基本週末です。また>>174のようなパターンは考えています。
(実はファインモーション回でやりかけました)
ウマスタ映えするお店という観点からはくろきは十分に足る店ですが、ファボ数を求めてカレンチャンが連食を求めるのもありと言えばありですね。
>>173
基本週末です。また>>174のようなパターンは考えています。
(実はファインモーション回でやりかけました)
ウマスタ映えするお店という観点からはくろきは十分に足る店ですが、ファボ数を求めてカレンチャンが連食を求めるのもありと言えばありですね。
176:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 01:02:14.87 :1zktD7nlo
おつー
おつー
177:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 01:04:44.75 :IBFuVrRbO
ちょっと多数決要素を入れます。
カレンチャンのトレーナーですが、以下の誰にするか決を取ります。
3票先取です。
1 三田村トレーナー(ライスのトレーナー、29歳女子)
2 浦安トレーナー(ファインのトレーナー、???、男性)
3 アリームトレーナー(マックのトレーナー、19歳童顔男性)
4 塩田トレーナー(パーマーのトレーナー、46歳男性)
5 新規(要望あれば)
ちょっと多数決要素を入れます。
カレンチャンのトレーナーですが、以下の誰にするか決を取ります。
3票先取です。
1 三田村トレーナー(ライスのトレーナー、29歳女子)
2 浦安トレーナー(ファインのトレーナー、???、男性)
3 アリームトレーナー(マックのトレーナー、19歳童顔男性)
4 塩田トレーナー(パーマーのトレーナー、46歳男性)
5 新規(要望あれば)
178:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 01:05:44.84 :IBFuVrRbO
一応6に天王寺が担当も入れておきます。
カレンチャンは筋トレ嫌がりそうですが。
一応6に天王寺が担当も入れておきます。
カレンチャンは筋トレ嫌がりそうですが。
179:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 01:08:16.40 :1zktD7nlo
1
1
180:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 01:21:10.60 :fJl2DPlY0
1
1
181:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 01:39:34.33 :yFidTUPXo
嫌がってそうなカレンチャンが見たいので6!
嫌がってそうなカレンチャンが見たいので6!
182:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 02:05:06.95 :ajlpTH/bO
6
6
183:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 02:28:01.96 :UK2X0hSZO
6
6
184:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 11:20:44.83 :cTXlwaZtO
では6で決定します。
これまで出てないのは香港に行ってたということにします。
(天王寺は教員兼務なので、日本を離れにくいのです)
では6で決定します。
これまで出てないのは香港に行ってたということにします。
(天王寺は教員兼務なので、日本を離れにくいのです)
185:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 18:14:45.36 :UK2X0hSZO
店名指定されてもすんなり対応してるのすごいなぁ
店名指定されてもすんなり対応してるのすごいなぁ
186:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/23(日) 18:58:42.74 :UbI0gbiQ0
調子に乗った乞食がつけ上がって更なる無茶振りに走らなきゃいいけどね
調子に乗った乞食がつけ上がって更なる無茶振りに走らなきゃいいけどね
187:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/24(月) 06:26:01.21 :JzH2Ieh60
検討案件だと思いますが、行った先のラーメン屋で他作品のキャラ(マシュとか立花響など)と鉢合わせして、そこのラーメンに対する自身らの評価を話し合うのもありますか?
検討案件だと思いますが、行った先のラーメン屋で他作品のキャラ(マシュとか立花響など)と鉢合わせして、そこのラーメンに対する自身らの評価を話し合うのもありますか?
188:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/24(月) 11:59:14.86 :K+RobaPnO
>>187
それはないです。
>>187
それはないです。
189:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/24(月) 21:28:57.07 :4MFITfwwO
テスト
テスト
190: ◆/4adlfiarI:2022/01/24(月) 21:30:27.27 :4MFITfwwO
もう一度テスト
もう一度テスト
191: ◆/4adlfiarI:2022/01/24(月) 21:31:31.18 :2sM2waKGO
とりあえず鳥付けました。
とりあえず鳥付けました。
192:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/24(月) 21:39:42.48 :4P6P3vrio
乙酉
乙酉
193: ◆/4adlfiarI:2022/01/28(金) 18:17:16.65 :KnNp5kHAO
明日更新しますが、その前に簡単な判定だけします。
安価下のコンマがゾロ目だと……
明日更新しますが、その前に簡単な判定だけします。
安価下のコンマがゾロ目だと……
194:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/28(金) 18:17:33.11 :vInwJT3Go
なんやー?
なんやー?
195: ◆/4adlfiarI:2022/01/28(金) 18:19:16.13 :KnNp5kHAO
ゾロ目ですのでカレンチャンは実妹設定です。
ゾロ目ですのでカレンチャンは実妹設定です。
196:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/28(金) 18:20:03.93 :vInwJT3Go
ファッ!?!??!
ファッ!?!??!
197: ◆/4adlfiarI:2022/01/28(金) 18:22:15.24 :KnNp5kHAO
年齢が20以上離れてしまいますが、天王寺は長兄、カレンチャンは末妹ということで何卒。
年齢が20以上離れてしまいますが、天王寺は長兄、カレンチャンは末妹ということで何卒。
198:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/28(金) 19:50:46.22 :6vfSUpzVo
>>194
素晴らしい!
>>194
素晴らしい!
199:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/28(金) 20:09:16.14 :/GsSRc52o
お兄ちゃん(実)
お兄ちゃん(実)
200: ◆/4adlfiarI:2022/01/28(金) 20:37:55.66 :Jiy/5sfnO
これに伴いオリジナル設定入りますがご了承下さい。
(某キャラやゲーム、シングレの描写を見るにほぼ推測は正しそうですが)
これに伴いオリジナル設定入りますがご了承下さい。
(某キャラやゲーム、シングレの描写を見るにほぼ推測は正しそうですが)
201: ◆/4adlfiarI:2022/01/29(土) 17:22:52.32 :uR4r37BxO
それでは更新します。
断続的な書き込みになりますがご了承下さい。
それでは更新します。
断続的な書き込みになりますがご了承下さい。
202:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/29(土) 17:27:15.88 :VOED10V8o
カワイイカレンチャン!!!
カワイイカレンチャン!!!
203: ◆/4adlfiarI:2022/01/29(土) 17:39:59.88 :uR4r37BxO
「24、25、26……」
上腕二頭筋を使ってダンベルを持ち上げながら、私の目はチラチラと時計に向いていた。
筋肉の動きに集中せねばならないのだが、どうにも気がそぞろだ。
「ややっ!?トレーナーさん、どうしたのですか!?」
横でレッグプレスをやっていたバクシンオーが訊いてきた。彼女から見ても分かるほどにはあからさまであったらしい。
「いや、そろそろ来てもいい頃だと思ってな」
「誰がですか?」
ぽかんとしたその様子に、私は思わず苦笑した。何回かスケジュールについては伝えていたはずだが。
「決まっているだろう、カレンだ」
「カレン……おお!そうでした!!」
バクシンオーはレッグプレスのマシーンから降り、パンと手を叩く。
「やっと香港から戻ってこられるのですね!にしても、どうしてトレセン学園に来なかったのですか?」
「このご時世だ、隔離期間を取らねばならなかったのだよ。あいつも随分退屈していた様子だったが」
「かくりきかん?」
バクシンオーの頭の上に、いつものように「?」が浮かんでいる。
「コロナの感染防止のためだよ。あいつはオミクロンの流行前に香港に出ていたからな。それもあって、手続きに時間がかかった。
それに、この前の香港スプリントは大変なことになったからな……身体の検査も念入りにやっておく必要があったわけだ」
「むう、よく分かりませんがお元気なら結構ですっ!」
うんうんとバクシンオーが頷く。
そう、私が担当しているのはバクシンオーだけではない。
トレセン学園が誇るもう一人のスプリンター……カレンチャンも私の受け持ちだ。
そして、昨年末の香港スプリントから、ようやくここに戻ってくる。
「24、25、26……」
上腕二頭筋を使ってダンベルを持ち上げながら、私の目はチラチラと時計に向いていた。
筋肉の動きに集中せねばならないのだが、どうにも気がそぞろだ。
「ややっ!?トレーナーさん、どうしたのですか!?」
横でレッグプレスをやっていたバクシンオーが訊いてきた。彼女から見ても分かるほどにはあからさまであったらしい。
「いや、そろそろ来てもいい頃だと思ってな」
「誰がですか?」
ぽかんとしたその様子に、私は思わず苦笑した。何回かスケジュールについては伝えていたはずだが。
「決まっているだろう、カレンだ」
「カレン……おお!そうでした!!」
バクシンオーはレッグプレスのマシーンから降り、パンと手を叩く。
「やっと香港から戻ってこられるのですね!にしても、どうしてトレセン学園に来なかったのですか?」
「このご時世だ、隔離期間を取らねばならなかったのだよ。あいつも随分退屈していた様子だったが」
「かくりきかん?」
バクシンオーの頭の上に、いつものように「?」が浮かんでいる。
「コロナの感染防止のためだよ。あいつはオミクロンの流行前に香港に出ていたからな。それもあって、手続きに時間がかかった。
それに、この前の香港スプリントは大変なことになったからな……身体の検査も念入りにやっておく必要があったわけだ」
「むう、よく分かりませんがお元気なら結構ですっ!」
うんうんとバクシンオーが頷く。
そう、私が担当しているのはバクシンオーだけではない。
トレセン学園が誇るもう一人のスプリンター……カレンチャンも私の受け持ちだ。
そして、昨年末の香港スプリントから、ようやくここに戻ってくる。
204: ◆/4adlfiarI:2022/01/29(土) 18:07:19.86 :4vJdc4mNO
その時、コンコンとノックの音がした。
「失礼しま「お兄ちゃん!!」」
ドスンッ
ドアが開くと同時に、小柄な人影が私に向かって飛び込んできた。
強烈な衝撃を、私はその腹直筋で受け止める。
「お兄ちゃん!!会いたかったよ~♪」
「ハハハ……人前だからやめなさい」
「むう。1ヶ月以上も会えなかったんだよ?お兄ちゃんは寂しくなかったの?」
「いや、寂しかったよ。ただ、流石に恥ずかしい……「コホン」」
妙齢の女性が咳払いをする。
「仲がよろしいのは結構ですが、場所を弁えて頂きませんと」
「申し訳ございません、理事長代理」
少し顔を赤らめながら、樫本理事長代理が私を見た。
「全く……気持ちは分かりますが。身体が無事だったのは、本当に幸いでした」
私は小さく頷く。そう、本当に幸いだった。
*
カレンは香港スプリントに遠征していた。本来なら私も同行するのが筋だったのだが、私は学園で教鞭を執らねばならなかった。
東京で学会に出なければならなかったこともあり、現地での調整を樫本代理に任せることになったのだ。
そこで、悲劇は起きた。
第4コーナーで、彼女の前を走るウマ娘が、突然骨折し倒れたのだった。
カレンはすかさず、勝敗を度外視して大きく外に進路を変えた。かなり無茶な進路変更だったが、おかげで「カレンは」何事もなくレースを終えた。最下位ではあったが。
だが、転倒の巻き添えを何人ものウマ娘が食い、相次いで倒れた。
時速数十キロで走るウマ娘が転倒した時の衝撃は……人間とは比べ物にならない。
死者こそ出なかったが、1人は意識不明の重体。2人が脚や腰の骨を折り、競争バ生命を絶たれた。
どれほど香港に行きたいと思っただろうか。しかし、出入国制限がかかった中でそれは不可能であった。
樫本代理からの情報を頼りに、この1ヶ月を過ごしてきた……というわけだ。
その時、コンコンとノックの音がした。
「失礼しま「お兄ちゃん!!」」
ドスンッ
ドアが開くと同時に、小柄な人影が私に向かって飛び込んできた。
強烈な衝撃を、私はその腹直筋で受け止める。
「お兄ちゃん!!会いたかったよ~♪」
「ハハハ……人前だからやめなさい」
「むう。1ヶ月以上も会えなかったんだよ?お兄ちゃんは寂しくなかったの?」
「いや、寂しかったよ。ただ、流石に恥ずかしい……「コホン」」
妙齢の女性が咳払いをする。
「仲がよろしいのは結構ですが、場所を弁えて頂きませんと」
「申し訳ございません、理事長代理」
少し顔を赤らめながら、樫本理事長代理が私を見た。
「全く……気持ちは分かりますが。身体が無事だったのは、本当に幸いでした」
私は小さく頷く。そう、本当に幸いだった。
*
カレンは香港スプリントに遠征していた。本来なら私も同行するのが筋だったのだが、私は学園で教鞭を執らねばならなかった。
東京で学会に出なければならなかったこともあり、現地での調整を樫本代理に任せることになったのだ。
そこで、悲劇は起きた。
第4コーナーで、彼女の前を走るウマ娘が、突然骨折し倒れたのだった。
カレンはすかさず、勝敗を度外視して大きく外に進路を変えた。かなり無茶な進路変更だったが、おかげで「カレンは」何事もなくレースを終えた。最下位ではあったが。
だが、転倒の巻き添えを何人ものウマ娘が食い、相次いで倒れた。
時速数十キロで走るウマ娘が転倒した時の衝撃は……人間とは比べ物にならない。
死者こそ出なかったが、1人は意識不明の重体。2人が脚や腰の骨を折り、競争バ生命を絶たれた。
どれほど香港に行きたいと思っただろうか。しかし、出入国制限がかかった中でそれは不可能であった。
樫本代理からの情報を頼りに、この1ヶ月を過ごしてきた……というわけだ。
205: ◆/4adlfiarI:2022/01/29(土) 18:56:24.98 :4vJdc4mNO
*
「ええ。本当に不幸中の幸いでした。一応念のための確認ですが、メディカルチームは何と」
「進路変更に伴う軽度の肉離れは完治したと。本日より通常のトレーニングに戻って結構です」
「やったぁ!!」
カレンがピョンと飛び跳ねる。
「これでまたお兄ちゃんとバクちゃんと一緒に練習できるね♪」
「ハイッ!これからも切磋琢磨いたしましょうっ!!
ところで、前から不思議だったのですが、なぜカレンチャンさんはトレーナーさんのことを『お兄ちゃん』と呼ぶのですか?」
「だって、お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん。ね?」
カレンが悪戯っぽい笑いを私に向ける。私は乾いた笑いを浮かべ、代理がまた軽く咳払いをした。
そう、事実関係を知らないバクシンオーが不思議に思うのも無理はない。
というより、トレセン学園でもこの事実を知るのは目の前の樫本代理や駿川女史、そしてシンボリルドルフなどごく少数に留まる。
そう、カレンチャン……戸籍名「天王寺カレン」は、私の実妹だ。
代理が困ったように私を見る。
「バクシンオーさん、カレンチャンさん。そこまでにして下さい。天王寺トレーナーと、少しお話があるので」
「ハイッ、わかりました!!」
「は~い♪」
*
「いつまで秘するつもりですか?」
代理が厳しい目で私を見る。私は静かに緑茶を口にした。
「彼女の卒業まで。平等の面からそうすべきであると考えております」
「それはもっともなことです。ただならなぜ敢えて手元に?」
「……亡くなった母の望みなんですよ。あいつを一人前のウマ娘にしてくれと。
男ばかり生まれた後で、やっとできた娘でしたから、思い入れはよく分かります」
そう、母はウマ娘だった。体質が弱く、競争バにはなれなかったが。
その代わり、父と共にスポーツ医学の研究に没頭した。自分が果たせなかった夢を、いつの日か生まれる娘に叶えてもらうがために。
ただ、そう上手くはことが運ばないものだ。学生結婚で生まれた私の他、下の3人は全員が男だった。
諦めかけていた時にようやく生まれたのがカレンだった。……が、高齢出産の負担は重く、早いうちに母は世を去ってしまった。
それから母代わりとなって、私が彼女を育ててきた。
母の夢を無理に託そうと思ったわけではない。ただ、賢いあいつは母の遺志を敏感に感じ取り、ここまで育った。ブラコン気味になってしまったのはそのせいもある。
だからこそ、彼女に甘くならないようにと、一つのルールを課した。
トレセン学園では、あくまで「トレーナーと生徒である」ということだ。
カレンもそこは理解しているはずだ。ただ、私への呼び方だけは「お兄ちゃん」で変わらない。
代理が息をつく。
「あまりご無理をされないよう。ああいうことがあった後ですから、お気持ちは分かりますが」
「肝に銘じておきます」
命の危険すらあった大事故の後だ。あいつもトレーナーとしてではなく、兄としての私に甘えたい思いはあるのだろう。
さりとて、どう距離感を作るべきか。バクシンオーもいる手前、彼女が求めるようには恐らくできない。
……とりあえず、飯でも誘うとしよう。チートデイも近いことだ。
*
「ええ。本当に不幸中の幸いでした。一応念のための確認ですが、メディカルチームは何と」
「進路変更に伴う軽度の肉離れは完治したと。本日より通常のトレーニングに戻って結構です」
「やったぁ!!」
カレンがピョンと飛び跳ねる。
「これでまたお兄ちゃんとバクちゃんと一緒に練習できるね♪」
「ハイッ!これからも切磋琢磨いたしましょうっ!!
ところで、前から不思議だったのですが、なぜカレンチャンさんはトレーナーさんのことを『お兄ちゃん』と呼ぶのですか?」
「だって、お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん。ね?」
カレンが悪戯っぽい笑いを私に向ける。私は乾いた笑いを浮かべ、代理がまた軽く咳払いをした。
そう、事実関係を知らないバクシンオーが不思議に思うのも無理はない。
というより、トレセン学園でもこの事実を知るのは目の前の樫本代理や駿川女史、そしてシンボリルドルフなどごく少数に留まる。
そう、カレンチャン……戸籍名「天王寺カレン」は、私の実妹だ。
代理が困ったように私を見る。
「バクシンオーさん、カレンチャンさん。そこまでにして下さい。天王寺トレーナーと、少しお話があるので」
「ハイッ、わかりました!!」
「は~い♪」
*
「いつまで秘するつもりですか?」
代理が厳しい目で私を見る。私は静かに緑茶を口にした。
「彼女の卒業まで。平等の面からそうすべきであると考えております」
「それはもっともなことです。ただならなぜ敢えて手元に?」
「……亡くなった母の望みなんですよ。あいつを一人前のウマ娘にしてくれと。
男ばかり生まれた後で、やっとできた娘でしたから、思い入れはよく分かります」
そう、母はウマ娘だった。体質が弱く、競争バにはなれなかったが。
その代わり、父と共にスポーツ医学の研究に没頭した。自分が果たせなかった夢を、いつの日か生まれる娘に叶えてもらうがために。
ただ、そう上手くはことが運ばないものだ。学生結婚で生まれた私の他、下の3人は全員が男だった。
諦めかけていた時にようやく生まれたのがカレンだった。……が、高齢出産の負担は重く、早いうちに母は世を去ってしまった。
それから母代わりとなって、私が彼女を育ててきた。
母の夢を無理に託そうと思ったわけではない。ただ、賢いあいつは母の遺志を敏感に感じ取り、ここまで育った。ブラコン気味になってしまったのはそのせいもある。
だからこそ、彼女に甘くならないようにと、一つのルールを課した。
トレセン学園では、あくまで「トレーナーと生徒である」ということだ。
カレンもそこは理解しているはずだ。ただ、私への呼び方だけは「お兄ちゃん」で変わらない。
代理が息をつく。
「あまりご無理をされないよう。ああいうことがあった後ですから、お気持ちは分かりますが」
「肝に銘じておきます」
命の危険すらあった大事故の後だ。あいつもトレーナーとしてではなく、兄としての私に甘えたい思いはあるのだろう。
さりとて、どう距離感を作るべきか。バクシンオーもいる手前、彼女が求めるようには恐らくできない。
……とりあえず、飯でも誘うとしよう。チートデイも近いことだ。
206: ◆/4adlfiarI:2022/01/29(土) 18:58:50.33 :4vJdc4mNO
少し休憩。
少し休憩。
207:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/29(土) 19:05:02.60 :VOED10V8o
たんおつ
たんおつ
208: ◆/4adlfiarI:2022/01/29(土) 22:22:53.06 :4vJdc4mNO
*
「あ、お兄ちゃん!」
トレーナー室に戻ると、カレンが何やら自撮り棒を持って準備をしている。
「……これは?」
「うん!ウマスタのフォロワーさんたちに報告するための投稿しよっかなーって。
カレンは元気だよーってね♪心配かけちゃったし」
「その……悪かったな。辛かっただろう」
「……大丈夫だよ。無事だったし。でも、お兄ちゃんには側にいてほしかったな」
寂しそうに笑うカレンを見て、心が痛んだ。
やむを得なかったことだとは、彼女も理解しているだろう。ただ、それだけに傷ついてもいる。
そして、カレンはその辛さを表には決して出そうとしない。「いつも可愛く元気なカレンチャン」を、どこまでも演じようとするのだろう。
それは彼女なりの処世術ではある。しかし、その無理が彼女の幼い心を蝕みかねないことを、私は知っている。
そんな時にどうすればいいのか?そのことも、私はよく知っている。
「埋め合わせにもならないかもしれないが、明日飯に行くか?」
「ご飯?フレンチ?イタリアン?ウマスタ映えするのがいいなあ」
「私がそういう柄じゃないのは知ってるだろう。それに、お前に辛いことがあった後はいつも決まっている。お前が本当に一番好きなものを食わせてやる」
「お兄ちゃん……」
目を潤ませるカレンの後ろから、バクシンオーが顔を出した。
「むむっ?何があったのです?」
「いや、飯を食わないか、とな。チートデイも近いだろう」
「おおっ、そうでした!ラーメンですね!!」
うんうん、とバクシンオーは上機嫌に頷く。カレンは上目遣いで訊いてきた。
「どこに行くの?」
「それは着いてのお楽しみだ。今しか食えない、特別な一杯が待っているぞ」
*
「あ、お兄ちゃん!」
トレーナー室に戻ると、カレンが何やら自撮り棒を持って準備をしている。
「……これは?」
「うん!ウマスタのフォロワーさんたちに報告するための投稿しよっかなーって。
カレンは元気だよーってね♪心配かけちゃったし」
「その……悪かったな。辛かっただろう」
「……大丈夫だよ。無事だったし。でも、お兄ちゃんには側にいてほしかったな」
寂しそうに笑うカレンを見て、心が痛んだ。
やむを得なかったことだとは、彼女も理解しているだろう。ただ、それだけに傷ついてもいる。
そして、カレンはその辛さを表には決して出そうとしない。「いつも可愛く元気なカレンチャン」を、どこまでも演じようとするのだろう。
それは彼女なりの処世術ではある。しかし、その無理が彼女の幼い心を蝕みかねないことを、私は知っている。
そんな時にどうすればいいのか?そのことも、私はよく知っている。
「埋め合わせにもならないかもしれないが、明日飯に行くか?」
「ご飯?フレンチ?イタリアン?ウマスタ映えするのがいいなあ」
「私がそういう柄じゃないのは知ってるだろう。それに、お前に辛いことがあった後はいつも決まっている。お前が本当に一番好きなものを食わせてやる」
「お兄ちゃん……」
目を潤ませるカレンの後ろから、バクシンオーが顔を出した。
「むむっ?何があったのです?」
「いや、飯を食わないか、とな。チートデイも近いだろう」
「おおっ、そうでした!ラーメンですね!!」
うんうん、とバクシンオーは上機嫌に頷く。カレンは上目遣いで訊いてきた。
「どこに行くの?」
「それは着いてのお楽しみだ。今しか食えない、特別な一杯が待っているぞ」
209: ◆/4adlfiarI:2022/01/29(土) 22:23:49.17 :4vJdc4mNO
第5R 「饗 くろき」
第5R 「饗 くろき」
210: ◆/4adlfiarI:2022/01/29(土) 22:27:47.47 :4vJdc4mNO
明日実食編です。
なお、その前にちょっとした判定を行います。
コンマ下
01~40 何もなし
41~50 あるウマ娘が道中に登場
51~90 あるキャラの噂話が出る
91~99 あるキャラが登場する
00 あるキャラ登場(???)
明日実食編です。
なお、その前にちょっとした判定を行います。
コンマ下
01~40 何もなし
41~50 あるウマ娘が道中に登場
51~90 あるキャラの噂話が出る
91~99 あるキャラが登場する
00 あるキャラ登場(???)
211:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/29(土) 22:28:15.18 :KFGfv0DJ0
乙
乙
212: ◆/4adlfiarI:2022/01/29(土) 22:30:00.91 :4vJdc4mNO
今回は通常進行です。
次回以降「あるキャラ」の登場があるかもしれません。
(伏線は張っています)
今回は通常進行です。
次回以降「あるキャラ」の登場があるかもしれません。
(伏線は張っています)
213:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/29(土) 22:36:23.69 :VOED10V8o
おつおつ
おつおつ
214:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/29(土) 23:57:48.17 :7OdPHTyn0
00
00
215:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 07:38:44.74 :CYGE0LOh0
おつ。そういえば根性SSRで委員長の妹出てましたね
おつ。そういえば根性SSRで委員長の妹出てましたね
216: ◆/4adlfiarI:2022/01/30(日) 15:17:44.27 :3n1lv2WdO
*
翌日昼。目的地に着いた私たちを出迎えていたのは……
「にょわー!?この行列はなんですか!?」
「『八五』ほどじゃないだろう。あと、あそこより更に並ぶ店も存在するぞ」
「ぬぬぬ……バクシンへの道は険しいのですね」
ぐぬぬと唸るバクシンオーをよそに、私たちは30人ほどの列の最後尾に並ぶ。目当てのものは……まだ売り切れてないようだ。
「ここに来るのも久しぶりだね、お兄ちゃん」
「お前が小学生の時以来だな。あの頃はまだ『紫』はあったが」
「今はないの?」
「極稀にやってるらしいけどな。勿体無いが仕方ない」
「そっか、ちょっと残念。あれウマスタ映えするんだけどなあ」
「『紫』とは何なのですか!?」
いつの間にか列に加わっていたバクシンオーが訊いてきた。小学生の下りは聞かれなかっただろうか。
「昔、ここは毎週金曜に鴨醤油ラーメンを出していた。それが『紫』だ。
醤油ラーメンでは傑出した旨さだったんだが、メインメニューのフルモデルチェンジと共にやめてしまった、らしい。
大将にその理由を聞いたことはないが、かなり手間がかかっていたからな……仕入れも大変だったんだろう」
「ほほう、では今日は何を食べるのです?」
私はニヤリと笑う。
「チャーシュー麺。マンガリッツァ豚のチャーシュー麺だ」
*
翌日昼。目的地に着いた私たちを出迎えていたのは……
「にょわー!?この行列はなんですか!?」
「『八五』ほどじゃないだろう。あと、あそこより更に並ぶ店も存在するぞ」
「ぬぬぬ……バクシンへの道は険しいのですね」
ぐぬぬと唸るバクシンオーをよそに、私たちは30人ほどの列の最後尾に並ぶ。目当てのものは……まだ売り切れてないようだ。
「ここに来るのも久しぶりだね、お兄ちゃん」
「お前が小学生の時以来だな。あの頃はまだ『紫』はあったが」
「今はないの?」
「極稀にやってるらしいけどな。勿体無いが仕方ない」
「そっか、ちょっと残念。あれウマスタ映えするんだけどなあ」
「『紫』とは何なのですか!?」
いつの間にか列に加わっていたバクシンオーが訊いてきた。小学生の下りは聞かれなかっただろうか。
「昔、ここは毎週金曜に鴨醤油ラーメンを出していた。それが『紫』だ。
醤油ラーメンでは傑出した旨さだったんだが、メインメニューのフルモデルチェンジと共にやめてしまった、らしい。
大将にその理由を聞いたことはないが、かなり手間がかかっていたからな……仕入れも大変だったんだろう」
「ほほう、では今日は何を食べるのです?」
私はニヤリと笑う。
「チャーシュー麺。マンガリッツァ豚のチャーシュー麺だ」
217: ◆/4adlfiarI:2022/01/30(日) 15:59:54.47 :3n1lv2WdO
バクシンオーがぽかーんと口を開けている。
「まんが……漫画なのですか!?」
「ハンガリー原産の豚だよ。ドングリなどを食べて育つという意味では、イベリコ豚に近いな。
希少で、ハンガリーの国宝にも指定されている。……これだ」
スマホでマンガリッツァ豚の画像を見せると、カレンが「カワイイー!!」と声を上げた。
「モコモコしてて、羊さんみたい!でも国宝って食べちゃっていいの?」
これが可愛く見えるのかと内心思いつつ、私は頷いた。
「日本でも少数が飼育されているな。これと在来種を掛け合わせたものなら、稀にファミレスでも食べられる。
もちろん、今日のは純正種だ。私も食べたことはない」
「へー、美味しいのかな?」
「食べたことのない味の豚らしいな。……だからこそ、今日はここに来た」
カレンが「あっ」と呟いた。
「お兄ちゃん……そういうこと」
彼女も私の意図を理解したようだ。辛いことがあったら、旨いものをしっかり食べて忘れるのがいい。チートデイも、ある意味それに似ている。
「大将なら、間違いのない味だろう。さて、もう少し待つとしようか」
30分ほどで食券を買うように促された。せっかくなので、「マンガリッツァ豚の脂飯」も頼んでおくか。
値段はしめて2000円とラーメンとしては極めて高額だが、美味いものには金をケチるなというのが親父から受け継いだ家訓だ。
バクシンオーがぽかーんと口を開けている。
「まんが……漫画なのですか!?」
「ハンガリー原産の豚だよ。ドングリなどを食べて育つという意味では、イベリコ豚に近いな。
希少で、ハンガリーの国宝にも指定されている。……これだ」
スマホでマンガリッツァ豚の画像を見せると、カレンが「カワイイー!!」と声を上げた。
「モコモコしてて、羊さんみたい!でも国宝って食べちゃっていいの?」
これが可愛く見えるのかと内心思いつつ、私は頷いた。
「日本でも少数が飼育されているな。これと在来種を掛け合わせたものなら、稀にファミレスでも食べられる。
もちろん、今日のは純正種だ。私も食べたことはない」
「へー、美味しいのかな?」
「食べたことのない味の豚らしいな。……だからこそ、今日はここに来た」
カレンが「あっ」と呟いた。
「お兄ちゃん……そういうこと」
彼女も私の意図を理解したようだ。辛いことがあったら、旨いものをしっかり食べて忘れるのがいい。チートデイも、ある意味それに似ている。
「大将なら、間違いのない味だろう。さて、もう少し待つとしようか」
30分ほどで食券を買うように促された。せっかくなので、「マンガリッツァ豚の脂飯」も頼んでおくか。
値段はしめて2000円とラーメンとしては極めて高額だが、美味いものには金をケチるなというのが親父から受け継いだ家訓だ。
218: ◆/4adlfiarI:2022/01/30(日) 16:25:35.43 :3n1lv2WdO
「いらっしゃい!お、天王寺さんじゃないですか、お久し振り」
店内に入ると、大将が気さくに話し掛けてきた。
「仕事がなかなか忙しくてすみません。今日は教え子も連れてきました」
「教え子……そう言えば、ウマ娘のトレーナーでしたっけ」
「ハハ、まあ」
大将はカレンにも気付いたようだったが、目配せすると意を汲んだらしく作業に戻った。
「ほわーっ!ここもおしゃれな店ですねえ!」
「そうなんだ~♪見た目も凝ってるんだよー」
横の客が注文した塩ラーメンが見えた。雲呑につくね、それにネギとドライトマト。見るからに美しく、調和の取れた盛り付けだ。
大将はかつて大手外食チェーンの総料理長だったと聞く。「八五」の主人と同様、異業種でかつてはトップにいた人物だ。
それだけあって、やはり見た目の美しさに対するこだわりは共通しているものらしい。
そして、この店のもう一つの特徴は「限定」にある。
時に松阪牛、時に寒ブリ。あるいは見知らぬ高級食材を巧みにラーメンというフォーマットに落とし込むのだ。
最近はこうした期間限定メニューを売りにする店も増えてはきたが、ここほど完成度の高い一杯を出す店はほぼない。
ベクトルが全く異なるが、「家元」の「スペシャル」程度ではないだろうか。
店員が「マンガリッツァは今日終わりなんですよ」と言っているのが聞こえた。どうやら滑り込みで間に合ったらしい。
「むむう、待ちきれません!早くバクシンしたいです!!」
「そう焦るな。……っと、あれかな」
大将と店員が、丁寧に盛り付けを進めていく。メンマにネギ、そして見たこともない赤いナルトのような何かがスープに乗せられた。
「お待ちどうさま。『マンガリッツァ豚の焼豚そば』です」
「いらっしゃい!お、天王寺さんじゃないですか、お久し振り」
店内に入ると、大将が気さくに話し掛けてきた。
「仕事がなかなか忙しくてすみません。今日は教え子も連れてきました」
「教え子……そう言えば、ウマ娘のトレーナーでしたっけ」
「ハハ、まあ」
大将はカレンにも気付いたようだったが、目配せすると意を汲んだらしく作業に戻った。
「ほわーっ!ここもおしゃれな店ですねえ!」
「そうなんだ~♪見た目も凝ってるんだよー」
横の客が注文した塩ラーメンが見えた。雲呑につくね、それにネギとドライトマト。見るからに美しく、調和の取れた盛り付けだ。
大将はかつて大手外食チェーンの総料理長だったと聞く。「八五」の主人と同様、異業種でかつてはトップにいた人物だ。
それだけあって、やはり見た目の美しさに対するこだわりは共通しているものらしい。
そして、この店のもう一つの特徴は「限定」にある。
時に松阪牛、時に寒ブリ。あるいは見知らぬ高級食材を巧みにラーメンというフォーマットに落とし込むのだ。
最近はこうした期間限定メニューを売りにする店も増えてはきたが、ここほど完成度の高い一杯を出す店はほぼない。
ベクトルが全く異なるが、「家元」の「スペシャル」程度ではないだろうか。
店員が「マンガリッツァは今日終わりなんですよ」と言っているのが聞こえた。どうやら滑り込みで間に合ったらしい。
「むむう、待ちきれません!早くバクシンしたいです!!」
「そう焦るな。……っと、あれかな」
大将と店員が、丁寧に盛り付けを進めていく。メンマにネギ、そして見たこともない赤いナルトのような何かがスープに乗せられた。
「お待ちどうさま。『マンガリッツァ豚の焼豚そば』です」
219: ◆/4adlfiarI:2022/01/30(日) 16:55:25.16 :3n1lv2WdO
「これが……マンガリッツァ豚」
カレンは早速スマホを取り出すと、パシャパシャと角度を変えて写真を撮り始めた。
その横ではバクシンオーがいつものように「バックシーン!」と叫んでいる。
「にょわーっ!!この豚さんは何ですかっ!!この、なんというか……ああっ!表現できる言葉がないのがくちおしい!!」
普段は豚は後で食べる私も、今回ばかりは焼豚から口にした。くにゅり、とした弾力。そして……
何だこれは。
顔色が一瞬のうちにして変わったのが、自分でも分かった。ワイシャツのボタンも弾け飛ぶ。
美味い。尋常ではなく、美味い。しかし、適切な言葉が全く思いつかない。
イベリコ豚のように、脂そのものが香ばしい。しかし、それだけではない。
肉から滲み出る旨味。この深さ、今まで体験したことのあるレベルではない。
バクシンオーでなくても、これを説明するのは難しいだろう。確実に言えることは、醤油で下味をしっかり付けているということだ。
「『鶴醤』、ですか」
「搾りたての特注品です。これに漬けて、旨味を最大限に引き出したんですよ」
大将が説明してくれた。麺を啜る。……これも美味い。
醤油ベースだが、マンガリッツァ豚の脂がそこに加わり、スープだけでも既に尋常じゃない旨さになっている。
赤いナルトのようなものは「赤巻」と呼ばれるかまぼこの一種か。かまぼこをラーメンに使うのはあまり聞かないが、脂が強いこの一杯にはとても合っている。
ふと横を見ると、カレンの目が潤んでいるのが分かった。
「……どうした」
「ううん。……すごく美味しい。というか、なんだかほっとしちゃったの」
「ほっとした?」
「うん……生きて日本に戻れたんだなって。そして、お兄ちゃんと会えたんだなって。やっと実感できた」
「カレン……」
ゴシゴシと目をこすると、カレンはいつもの調子の笑顔に戻った。
「お兄ちゃん、ありがとね!早速、写真ウマスタとウマッターにアップしていい?」
「あ、ああ」
バクシンオーは「大・満・足です!」ともう食べ終えていた。私も麺が伸び切る前に食べ終えねば。
「これが……マンガリッツァ豚」
カレンは早速スマホを取り出すと、パシャパシャと角度を変えて写真を撮り始めた。
その横ではバクシンオーがいつものように「バックシーン!」と叫んでいる。
「にょわーっ!!この豚さんは何ですかっ!!この、なんというか……ああっ!表現できる言葉がないのがくちおしい!!」
普段は豚は後で食べる私も、今回ばかりは焼豚から口にした。くにゅり、とした弾力。そして……
何だこれは。
顔色が一瞬のうちにして変わったのが、自分でも分かった。ワイシャツのボタンも弾け飛ぶ。
美味い。尋常ではなく、美味い。しかし、適切な言葉が全く思いつかない。
イベリコ豚のように、脂そのものが香ばしい。しかし、それだけではない。
肉から滲み出る旨味。この深さ、今まで体験したことのあるレベルではない。
バクシンオーでなくても、これを説明するのは難しいだろう。確実に言えることは、醤油で下味をしっかり付けているということだ。
「『鶴醤』、ですか」
「搾りたての特注品です。これに漬けて、旨味を最大限に引き出したんですよ」
大将が説明してくれた。麺を啜る。……これも美味い。
醤油ベースだが、マンガリッツァ豚の脂がそこに加わり、スープだけでも既に尋常じゃない旨さになっている。
赤いナルトのようなものは「赤巻」と呼ばれるかまぼこの一種か。かまぼこをラーメンに使うのはあまり聞かないが、脂が強いこの一杯にはとても合っている。
ふと横を見ると、カレンの目が潤んでいるのが分かった。
「……どうした」
「ううん。……すごく美味しい。というか、なんだかほっとしちゃったの」
「ほっとした?」
「うん……生きて日本に戻れたんだなって。そして、お兄ちゃんと会えたんだなって。やっと実感できた」
「カレン……」
ゴシゴシと目をこすると、カレンはいつもの調子の笑顔に戻った。
「お兄ちゃん、ありがとね!早速、写真ウマスタとウマッターにアップしていい?」
「あ、ああ」
バクシンオーは「大・満・足です!」ともう食べ終えていた。私も麺が伸び切る前に食べ終えねば。
220: ◆/4adlfiarI:2022/01/30(日) 17:15:40.55 :3n1lv2WdO
*
「う~ん♪美味しかったあ♪」
カレンは満面の笑みで言うと、私にウマスタグラムの画面を見せてきた。ラーメンとの自撮り写真が載っている。
涙の跡は見えないよう加工したのか、全くそんな気配は見えない。
「もう1万『いいね!』がついてるよ!やっぱりカレンってカワイイからね♪」
「まあ、そうだな……明日からは、普段通りのメニューに戻るぞ」
「えーっ。筋トレはいいけど、ほどほどにしてね♪あまり筋肉付け過ぎると、カワイクなくなっちゃうよー。ね?バクちゃん」
「はいっ!カレンチャンさんはカワイイです!私の妹と同じぐらいには!!」
「「……え??」」
カレンと啞然としてバクシンオーを見る。
「……バクシンオー君、妹がいたのか?」
「ハイッ!!お姉ちゃんなのですっ!!トレーナーさんと同じでしょう!!ハーッハッハッハ!!」
バクシンオーに聞かれていたというショック以上に、バクシンオーが長女という事実の衝撃が大きかった。一人っ子だとばかり思っていたが……
「ま、まあ……大事にしてやってくれ」
「ハイッ!もちろんでありますともっ!!」
バクシンオーは妙に上機嫌だ。彼女はどういう姉なのだろうか……やや不安に思いながら、家路につくのであった。
第5話 完
*
「う~ん♪美味しかったあ♪」
カレンは満面の笑みで言うと、私にウマスタグラムの画面を見せてきた。ラーメンとの自撮り写真が載っている。
涙の跡は見えないよう加工したのか、全くそんな気配は見えない。
「もう1万『いいね!』がついてるよ!やっぱりカレンってカワイイからね♪」
「まあ、そうだな……明日からは、普段通りのメニューに戻るぞ」
「えーっ。筋トレはいいけど、ほどほどにしてね♪あまり筋肉付け過ぎると、カワイクなくなっちゃうよー。ね?バクちゃん」
「はいっ!カレンチャンさんはカワイイです!私の妹と同じぐらいには!!」
「「……え??」」
カレンと啞然としてバクシンオーを見る。
「……バクシンオー君、妹がいたのか?」
「ハイッ!!お姉ちゃんなのですっ!!トレーナーさんと同じでしょう!!ハーッハッハッハ!!」
バクシンオーに聞かれていたというショック以上に、バクシンオーが長女という事実の衝撃が大きかった。一人っ子だとばかり思っていたが……
「ま、まあ……大事にしてやってくれ」
「ハイッ!もちろんでありますともっ!!」
バクシンオーは妙に上機嫌だ。彼女はどういう姉なのだろうか……やや不安に思いながら、家路につくのであった。
第5話 完
221: ◆/4adlfiarI:2022/01/30(日) 17:19:02.93 :3n1lv2WdO
今回はここまでです。なお、今行ってもマンガリッツァ豚の焼豚そばはありませんのでご注意下さい。
バクシンオー妹は恐らくスプリングコートでしょうが、優秀な姉と凡才の妹感があってなかなか切ないイベントでした。
さて、次回のウマ娘を募集します。
安価下1~5で、最もコンマが大きいものとします。
なお、今回は結果次第で追加募集もやります。
今回はここまでです。なお、今行ってもマンガリッツァ豚の焼豚そばはありませんのでご注意下さい。
バクシンオー妹は恐らくスプリングコートでしょうが、優秀な姉と凡才の妹感があってなかなか切ないイベントでした。
さて、次回のウマ娘を募集します。
安価下1~5で、最もコンマが大きいものとします。
なお、今回は結果次第で追加募集もやります。
222:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 17:22:17.49 :Nw9cGq330
メイショウドトウ
メイショウドトウ
223:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 17:23:09.73 :dTteWVCDO
ゼンノロブロイ
ゼンノロブロイ
224:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 17:33:47.75 :huePy9bCo
ゴールドシップ
ゴールドシップ
225:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 17:37:46.61 :9Q9pminVo
メジロドーベル
メジロドーベル
226:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 18:19:28.05 :xU32CYE3O
マンハッタンカフェ
マンハッタンカフェ
227: ◆/4adlfiarI:2022/01/30(日) 18:29:10.20 :m8Us8xklO
ゴルシとします。追加ウマ娘の判定を続いて行います。
コンマ下が50以上でもう一人追加です。
ゴルシとします。追加ウマ娘の判定を続いて行います。
コンマ下が50以上でもう一人追加です。
228:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 18:31:12.12 :Nw9cGq330
あ
あ
229: ◆/4adlfiarI:2022/01/30(日) 18:40:26.69 :m8Us8xklO
ゴルシ単独回となります。
続いてジャンルの決定です。
安価下1~5で最もコンマが大きいものとします。
ゴルシ単独回となります。
続いてジャンルの決定です。
安価下1~5で最もコンマが大きいものとします。
230:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 18:57:02.90 :ij8C9NZ4O
>>1が今まで食べた中で一番ぶっ飛んでると思ったラーメン
>>1が今まで食べた中で一番ぶっ飛んでると思ったラーメン
231: ◆/4adlfiarI:2022/01/30(日) 18:59:01.77 :m8Us8xklO
>>230
ちょっと抽象的なので投票からは除外します。申し訳ありません。
>>230
ちょっと抽象的なので投票からは除外します。申し訳ありません。
232:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 19:03:14.72 :9Q9pminVo
昔ながらのザ・ラーメンみたいなやつ
昔ながらのザ・ラーメンみたいなやつ
233:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 19:04:57.48 :Nw9cGq330
豚骨系
豚骨系
234: ◆/4adlfiarI:2022/01/30(日) 19:05:33.99 :m8Us8xklO
>>232
中華そば系としてカウントします。
>>232
中華そば系としてカウントします。
235:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 19:05:57.48 :gX2ig18vO
煮干系
煮干系
236:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 19:07:11.71 :t+YPtv5qo
二郎系
二郎系
237:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 19:13:14.70 :7Pm1H1gmO
油そば
油そば
238: ◆/4adlfiarI:2022/01/30(日) 19:29:50.01 :m8Us8xklO
それでは中華そば系とします。
候補は幾つかありますが……
それでは中華そば系とします。
候補は幾つかありますが……
239:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/30(日) 19:44:01.77 :9Q9pminVo
おつおつー
おつおつー
240: ◆/4adlfiarI:2022/01/31(月) 12:18:36.38 :1+IlSQu5O
少し更新が遅れるかもしれません。予定していた店がコロナで休業していました……
少し更新が遅れるかもしれません。予定していた店がコロナで休業していました……
241:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/31(月) 13:38:42.46 :ba3u5hUYO
報告乙
ありゃ…災難
報告乙
ありゃ…災難
242:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/02(水) 03:29:33.67 :zTMxm1okO
石原慎太郎の遺骨ラーメン
石原慎太郎の遺骨ラーメン
243:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/02(水) 06:40:07.37 :/5oNaH7m0
コロナで休みなら、しばらくはお休み確定でしょ?
再安価を検討しますか?
コロナで休みなら、しばらくはお休み確定でしょ?
再安価を検討しますか?
244:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/02(水) 06:41:17.66 :/5oNaH7m0
再安価するなら、登場ウマ娘にイクノディクタスをお願いします。
再安価するなら、登場ウマ娘にイクノディクタスをお願いします。
245:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/02(水) 09:25:28.16 :X5X1JqOW0
安価コンマ前提のスレでそのズルは不公平でしょ
安価コンマ前提のスレでそのズルは不公平でしょ
246: ◆/4adlfiarI:2022/02/02(水) 09:34:55.43 :9ENLl3Z4O
安価に変更はございません。
中華そばも対象を変えて検討しますが、実食の結果紹介に値しないと判断した場合は再来週にズレ込みます。
(第2候補の店に今度行ってみます)
安価に変更はございません。
中華そばも対象を変えて検討しますが、実食の結果紹介に値しないと判断した場合は再来週にズレ込みます。
(第2候補の店に今度行ってみます)
247:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/02(水) 09:43:37.39 :ogppO8izO
了解です
その姿勢に頭下がる
了解です
その姿勢に頭下がる
248: ◆/4adlfiarI:2022/02/03(木) 12:03:00.35 :tmdx9vtqO
大変申し訳ございません。第2候補の店もコロナで休業していました……
今週の更新はお休みします。
大変申し訳ございません。第2候補の店もコロナで休業していました……
今週の更新はお休みします。
249:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/03(木) 12:20:38.78 :HqpNJB5tO
時期的にしゃーない
報告ありがとう
時期的にしゃーない
報告ありがとう
250:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/03(木) 12:28:58.72 :hn9cARjtO
寂しい時代になったもんだ
寂しい時代になったもんだ
251:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/03(木) 12:36:44.05 :k49yjWMVO
閉店さえしてなければ救いはある……おつ
閉店さえしてなければ救いはある……おつ
252: ◆/4adlfiarI:2022/02/03(木) 15:24:02.72 :CiHPL+srO
一応第1候補は来週再開の予定らしいので、再来週の更新はできそうです。
一応第1候補は来週再開の予定らしいので、再来週の更新はできそうです。
253:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/03(木) 15:26:12.15 :zmSsZU8io
やったぜ。
お待ちしてます
やったぜ。
お待ちしてます
254: ◆/4adlfiarI:2022/02/07(月) 11:41:17.67 :t9+WYCdJO
休業延長らしいので、第3候補にします……
休業延長らしいので、第3候補にします……
255:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/07(月) 12:02:00.93 :LHdSIejw0
ラーメン二郎 亀戸店か?
ラーメン二郎 亀戸店か?
256:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/07(月) 12:12:41.91 :n67VBEN4O
中華そばジャンルだから違うでしょ
中華そばジャンルだから違うでしょ
257: ◆/4adlfiarI:2022/02/08(火) 17:49:21.20 :QxMIUNi3O
当初予定の店ではありませんが、超老舗の名店に行ったのでそこにします。美味かったです。
当初予定の店ではありませんが、超老舗の名店に行ったのでそこにします。美味かったです。
258:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/08(火) 18:09:22.01 :LD+xEfCCO
架空の店の架空のラーメンでいいじゃん
架空の店の架空のラーメンでいいじゃん
259:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/08(火) 18:22:14.70 :Lw3A3heJo
待ってます
待ってます
260: ◆/4adlfiarI:2022/02/11(金) 20:19:22.20 :91xhjFU9O
更新します。独自解釈がありますがご注意下さい。
更新します。独自解釈がありますがご注意下さい。
261:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/11(金) 20:29:52.73 :/9JsJiwqo
待機!
待機!
262: ◆/4adlfiarI:2022/02/11(金) 20:31:19.05 :91xhjFU9O
ウマ娘の健康管理は難しい。
もちろん、彼女たちがアスリートだから、というのは勿論ある。トレーナーはフィジカルだけでなくメンタルのケアもせねばならない。
いかに心身ともに万全の状態でターフに送り出すか。それこそがトレーナーの仕事であり、やりがいでもある。
この点については、些かながらではあるが自信を持っているつもりだ。私のトレーニング手法から活躍できる距離は限られてはいるが、相応の実績は積んでいる。
ただ、トレーナーの努力だけでは如何ともし難いこともある。……病気への対応だ。
ウマ娘は、生物学的にはホモ・サピエンスの亜種「ホモ・サピエンス・カルバス」と位置付けられる。
女性からのみの優性遺伝であり、ホモ・サピエンスよりも高い身体能力を持っていることが圧倒的に多い。
外見的に優れているのも、外見上の老化が遅いのも、遺伝子的にホモ・サピエンスとはやや異なることに由来する。
無論、未解明な点も多々ある。彼女たちが先天的に「ウマ娘としての名」を認識している理由や、食の嗜好がややホモ・サピエンスと異なっている点はその代表格と言えよう。
毒などに高い抵抗力を持つ理由も不明だ。医学的に、彼女たちが重要であり続けているのは当然と言える。
そして、未解明な点の中には、彼女たちがホモ・サピエンスより劣位にあるものもある。
病気への抵抗力だ。
ウマ娘の健康管理は難しい。
もちろん、彼女たちがアスリートだから、というのは勿論ある。トレーナーはフィジカルだけでなくメンタルのケアもせねばならない。
いかに心身ともに万全の状態でターフに送り出すか。それこそがトレーナーの仕事であり、やりがいでもある。
この点については、些かながらではあるが自信を持っているつもりだ。私のトレーニング手法から活躍できる距離は限られてはいるが、相応の実績は積んでいる。
ただ、トレーナーの努力だけでは如何ともし難いこともある。……病気への対応だ。
ウマ娘は、生物学的にはホモ・サピエンスの亜種「ホモ・サピエンス・カルバス」と位置付けられる。
女性からのみの優性遺伝であり、ホモ・サピエンスよりも高い身体能力を持っていることが圧倒的に多い。
外見的に優れているのも、外見上の老化が遅いのも、遺伝子的にホモ・サピエンスとはやや異なることに由来する。
無論、未解明な点も多々ある。彼女たちが先天的に「ウマ娘としての名」を認識している理由や、食の嗜好がややホモ・サピエンスと異なっている点はその代表格と言えよう。
毒などに高い抵抗力を持つ理由も不明だ。医学的に、彼女たちが重要であり続けているのは当然と言える。
そして、未解明な点の中には、彼女たちがホモ・サピエンスより劣位にあるものもある。
病気への抵抗力だ。
263: ◆/4adlfiarI:2022/02/11(金) 20:43:07.09 :91xhjFU9O
ウマ娘は病気の類に対し、免疫的に弱いことが多い。特に若い場合、ウイルス性の病気に対しては我々よりも遥かに脆い。
ウマ娘の平均寿命はヒトよりやや短いが、その最大の理由がこれだ。幼少時に罹った病気で夭折することが多いのだ。
トレセン学園の生徒にも、姉妹が早くに亡くなっている者が少なくない。高等部のマチカネフクキタルやアドバイヤベガはその代表格と言えるだろう。
成長するにつれウマ娘はヒトと同じ程度の免疫力を獲得するが、それでも相当感染症対策には気を遣わねばならないのだ。
そして、オミクロン型の蔓延は、私たちのトレーニングにも影響を与え始めていた。
外出は許可制に変わり、不要不急の外出は一切禁止となった。ウマ娘の免疫力の低さを鑑みれば当然の措置ではあるのだが……
それが意味することは……チートデイの見送りだ。
ウマ娘は病気の類に対し、免疫的に弱いことが多い。特に若い場合、ウイルス性の病気に対しては我々よりも遥かに脆い。
ウマ娘の平均寿命はヒトよりやや短いが、その最大の理由がこれだ。幼少時に罹った病気で夭折することが多いのだ。
トレセン学園の生徒にも、姉妹が早くに亡くなっている者が少なくない。高等部のマチカネフクキタルやアドバイヤベガはその代表格と言えるだろう。
成長するにつれウマ娘はヒトと同じ程度の免疫力を獲得するが、それでも相当感染症対策には気を遣わねばならないのだ。
そして、オミクロン型の蔓延は、私たちのトレーニングにも影響を与え始めていた。
外出は許可制に変わり、不要不急の外出は一切禁止となった。ウマ娘の免疫力の低さを鑑みれば当然の措置ではあるのだが……
それが意味することは……チートデイの見送りだ。
264:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/11(金) 20:49:45.87 :KRHWD2g4O
情勢的に仕方ない…
情勢的に仕方ない…
265: ◆/4adlfiarI:2022/02/11(金) 21:16:42.55 :91xhjFU9O
先週はまさにその影響にぶち当たってしまった。バクシンオーは「よよよ……」と肩を落とし、カレンは「つまんなーい」とむくれた。
そして、私自身も調子があまり出ない。態度には出さないよう努めてはいるが、やはり筋肉の「ノリ」が出ていないのだ。
競技会はコロナの影響で延期になっているが、このままではやはり良くない。チートデイを学園内でできるようにするか、それとも何とかして外出許可をもらうか……
「……やれやれだな」
「どうかしたかね、天王寺君」
塩田トレーナーが少し驚いた様子で私を見る。どうも思っていたことが口に出てしまったらしい。私は苦笑する。
「あ、いえ。特に大したことは」
「その割には深刻そうな顔だったが。君にしては珍しいねえ」
世界史の教師でもある塩田トレーナーは、トントンと授業に使う資料を机に叩いて整理した。
「まあ、君でなくてもストレスが溜まりやすいご時世だがねえ。オミクロンで外出制限がかかり、荒れてるウマ娘も少なくないし」
盛大な溜め息を塩田トレーナーがついた。そう、彼の受け持ちには問題児が多い。
パーマーも一時出奔していたし、ギャンブル狂のナカヤマフェスタは言うまでもない。卒業生でマックイーンの姉、メジロデュレンもなかなか面倒な娘だったようだ。
海外留学中の「あの2人」がいたらと思うとゾッとする。実力は確かだが、どちらもシリウスシンボリの比ではないほどの問題児だからだ。
ともあれ、塩田トレーナーの気苦労の多さは容易に想像ができた。私の悩みなど、大したものではないのかもしれない。
「どう感染リスクを避けつつ、ストレスを解消させるかですね……」
「そうだねえ、ただ外出は難し」
その時、バンッ、と職員室の扉が開かれた。
そこに立っていたのは、長身で銀髪のウマ娘。「トレセン学園三大問題児」……残り2人は海外だから、実質は問題児の筆頭。
「トレーナー、あっそびに来たぜ~」
所属不明、学年すら不明。中等部にも高等部にも顔を出し、挙動は一切予測不能。
「白い不沈艦」、ゴールドシップである。
先週はまさにその影響にぶち当たってしまった。バクシンオーは「よよよ……」と肩を落とし、カレンは「つまんなーい」とむくれた。
そして、私自身も調子があまり出ない。態度には出さないよう努めてはいるが、やはり筋肉の「ノリ」が出ていないのだ。
競技会はコロナの影響で延期になっているが、このままではやはり良くない。チートデイを学園内でできるようにするか、それとも何とかして外出許可をもらうか……
「……やれやれだな」
「どうかしたかね、天王寺君」
塩田トレーナーが少し驚いた様子で私を見る。どうも思っていたことが口に出てしまったらしい。私は苦笑する。
「あ、いえ。特に大したことは」
「その割には深刻そうな顔だったが。君にしては珍しいねえ」
世界史の教師でもある塩田トレーナーは、トントンと授業に使う資料を机に叩いて整理した。
「まあ、君でなくてもストレスが溜まりやすいご時世だがねえ。オミクロンで外出制限がかかり、荒れてるウマ娘も少なくないし」
盛大な溜め息を塩田トレーナーがついた。そう、彼の受け持ちには問題児が多い。
パーマーも一時出奔していたし、ギャンブル狂のナカヤマフェスタは言うまでもない。卒業生でマックイーンの姉、メジロデュレンもなかなか面倒な娘だったようだ。
海外留学中の「あの2人」がいたらと思うとゾッとする。実力は確かだが、どちらもシリウスシンボリの比ではないほどの問題児だからだ。
ともあれ、塩田トレーナーの気苦労の多さは容易に想像ができた。私の悩みなど、大したものではないのかもしれない。
「どう感染リスクを避けつつ、ストレスを解消させるかですね……」
「そうだねえ、ただ外出は難し」
その時、バンッ、と職員室の扉が開かれた。
そこに立っていたのは、長身で銀髪のウマ娘。「トレセン学園三大問題児」……残り2人は海外だから、実質は問題児の筆頭。
「トレーナー、あっそびに来たぜ~」
所属不明、学年すら不明。中等部にも高等部にも顔を出し、挙動は一切予測不能。
「白い不沈艦」、ゴールドシップである。
266: ◆/4adlfiarI:2022/02/11(金) 22:06:05.81 :Y7Qy6ZaMO
塩田トレーナーが頭を抱えた。
「また君の暇潰しに付き合わされるのか……」
なるほど、彼が溜め息をつくわけだ。普段からゴールドシップ……通称「ゴルシ」について、塩田トレーナーからはその奇行の愚痴を散々聞いていた。
五輪が近いからと「お前がストーンな!」とエアカーリングをやらされたり、自作の超難度ゲーム「ゴルシちゃんゲー」をクリアするまで散々やらされたり、「打倒ヤエノムテキ!空気椅子特訓」をやらされたり……
どれも聞くだけで気苦労が想像できるものばかりだ。この前の「サメ映画24時間耐久視聴」は、まだかわいい方かもしれない。
「なんだよー。『シャークネード2』面白かっただろ?」
「いや、そういう問題じゃなくてだな……とにかく今日はそういう気分じゃ……って何だその手に持っているものは」
塩田トレーナーの顔色が変わった。職員室もざわついている。
それも当然だ。ゴルシの手には、黄金の槍が握られていたからだ。
「ん?これか?よく聞いてくれた!これはなー、『黄金の槍』ってんだ」
「見たままだろう!?だから何でそんなものをここに持ち込んでるんだ!?」
「あー、何だかんだあってなー。大丈夫!危険なものじゃないから!」
「いや、危険とかそういう問題じゃ」
「てかこれすげえんだぜ!さっきまでマックイーンとスペとスズカとテイオーと一緒に異世界で一暴れしてやったんだぜ!
それもこれもこいつのおかげってわけだ」
フフンと得意そうにゴルシが胸を張る。異世界やらなんやらさっぱり理解ができないが、ゴルシならしょうがない。
昨年夏の「ウマネスト騒動」も、大体こいつのせいだったらしい。またウマレーターでも使ったのだろうか。
塩田トレーナーが盛大に肩を落とした。
「……分かったから、それを貸してくれ。こんな危ないものを持たせるわけには」
「おっ!天王寺ちゃんじゃねえか~。丁度いいところにいたぜ」
塩田トレーナーを無視して、満面の笑みでゴルシが私に語りかけてきた。血の気が引くのが分かる。
「な、何だっ」
「いやな?『グラブル』の世界から帰ってきたらすげー腹が減ってさー。それでトレーナーに何か食わせてもらおうかなって来たんだよー。
そしたら天王寺ちゃんもいるじゃねえか!パーマーから聞いたぜえ?すげーラーメンに詳しいらしいじゃんか」
「まさか、君を連れて行けと!?」
「大・正・解!!察しがいいなー、さっすが天王寺ちゃんだ」
塩田トレーナーが頭を抱えた。
「また君の暇潰しに付き合わされるのか……」
なるほど、彼が溜め息をつくわけだ。普段からゴールドシップ……通称「ゴルシ」について、塩田トレーナーからはその奇行の愚痴を散々聞いていた。
五輪が近いからと「お前がストーンな!」とエアカーリングをやらされたり、自作の超難度ゲーム「ゴルシちゃんゲー」をクリアするまで散々やらされたり、「打倒ヤエノムテキ!空気椅子特訓」をやらされたり……
どれも聞くだけで気苦労が想像できるものばかりだ。この前の「サメ映画24時間耐久視聴」は、まだかわいい方かもしれない。
「なんだよー。『シャークネード2』面白かっただろ?」
「いや、そういう問題じゃなくてだな……とにかく今日はそういう気分じゃ……って何だその手に持っているものは」
塩田トレーナーの顔色が変わった。職員室もざわついている。
それも当然だ。ゴルシの手には、黄金の槍が握られていたからだ。
「ん?これか?よく聞いてくれた!これはなー、『黄金の槍』ってんだ」
「見たままだろう!?だから何でそんなものをここに持ち込んでるんだ!?」
「あー、何だかんだあってなー。大丈夫!危険なものじゃないから!」
「いや、危険とかそういう問題じゃ」
「てかこれすげえんだぜ!さっきまでマックイーンとスペとスズカとテイオーと一緒に異世界で一暴れしてやったんだぜ!
それもこれもこいつのおかげってわけだ」
フフンと得意そうにゴルシが胸を張る。異世界やらなんやらさっぱり理解ができないが、ゴルシならしょうがない。
昨年夏の「ウマネスト騒動」も、大体こいつのせいだったらしい。またウマレーターでも使ったのだろうか。
塩田トレーナーが盛大に肩を落とした。
「……分かったから、それを貸してくれ。こんな危ないものを持たせるわけには」
「おっ!天王寺ちゃんじゃねえか~。丁度いいところにいたぜ」
塩田トレーナーを無視して、満面の笑みでゴルシが私に語りかけてきた。血の気が引くのが分かる。
「な、何だっ」
「いやな?『グラブル』の世界から帰ってきたらすげー腹が減ってさー。それでトレーナーに何か食わせてもらおうかなって来たんだよー。
そしたら天王寺ちゃんもいるじゃねえか!パーマーから聞いたぜえ?すげーラーメンに詳しいらしいじゃんか」
「まさか、君を連れて行けと!?」
「大・正・解!!察しがいいなー、さっすが天王寺ちゃんだ」
267: ◆/4adlfiarI:2022/02/11(金) 22:41:43.62 :Y7Qy6ZaMO
「しかし外出制限が掛かっているぞ?許可なんてそう簡単に」
ゴルシがニヤッと笑う。
「取れるんだな、これが」
「は?」
「この槍さえあれば何でもできるってことよ。とおっ!!」
ゴルシが持つ槍が激しく輝く。その光は職員室を満たし、そしてすぐに消えた。
「……何をした?」
「まあ見てなって」
ゴルシはツカツカと風紀委員会顧問の溝口トレーナーの所に向かう。生真面目で神経質そうな見た目通り、とても厳格な男だ。
正当な理由なしに外出許可など下りない。そのことは簡単に想像がつく。
「何だゴルシ」
「あのさー、外出許可出してほしいんだけど」
溝口トレーナーはじっとゴルシを見ると、深く息をついた。
「分かった、いつだ?」
「今日がいいかなー。人数はあたしと塩田トレーナーと天王寺ちゃん、あとはバクシンとカレンちゃんの5人だ」
※コンマ下80以上で乱入者あり
「しかし外出制限が掛かっているぞ?許可なんてそう簡単に」
ゴルシがニヤッと笑う。
「取れるんだな、これが」
「は?」
「この槍さえあれば何でもできるってことよ。とおっ!!」
ゴルシが持つ槍が激しく輝く。その光は職員室を満たし、そしてすぐに消えた。
「……何をした?」
「まあ見てなって」
ゴルシはツカツカと風紀委員会顧問の溝口トレーナーの所に向かう。生真面目で神経質そうな見た目通り、とても厳格な男だ。
正当な理由なしに外出許可など下りない。そのことは簡単に想像がつく。
「何だゴルシ」
「あのさー、外出許可出してほしいんだけど」
溝口トレーナーはじっとゴルシを見ると、深く息をついた。
「分かった、いつだ?」
「今日がいいかなー。人数はあたしと塩田トレーナーと天王寺ちゃん、あとはバクシンとカレンちゃんの5人だ」
※コンマ下80以上で乱入者あり
268:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/11(金) 22:42:27.55 :45s5ZLmc0
な
な
269: ◆/4adlfiarI:2022/02/11(金) 23:06:24.13 :Y7Qy6ZaMO
※特になし
実にあっさりと許可が下りた。まさか……
「あの槍の力で催眠術でもかけたのか?」
「いんや、分からねー。というか、『願った』だけだけどな」
恐ろしいことをサラッと言っている気がする。まさか思ったことを実現できてしまう謎のアイテムなのか?
塩田トレーナーは渋い顔のままだ。
「だが、外出できてもオミクロン型はどうする?感染したら、競争生命どころか命にもかかわりかねないぞ?そんなリスクなど……」
「大丈夫だって。こいつで『コロナにかからないように』と願えばモーマンタイってことよ」
んな馬鹿な、と口に出かけたが、溝口トレーナーのあの様子を見るとでまかせとも言えない。
多分、本当に大丈夫なのだ。黄金の槍の正体は一切分からないが。
「……分かった。こちらもチートデイをやりたかったところだ」
「さっすが天王寺ちゃんだ!話が分かるねえ。で、食いたいものがあるんだけどさ」
「何だ」
ゴルシが遠い目になった。
「アタシさー、中華そばが食いてえんだ……むかーしながらの、醤油の利いたヤツがさー」
「どうしてだ」
「アタシがここに来たのは、あるウマ娘のおかげなんだ。走るのが苦手だから屋台でラーメン作ってるって奴でさ……その時の中華そばが忘れられねえんだよ。
だからたまーに、無性に中華そばが食いたくなるってわけだ。昔ながらの醤油ラーメンがさ」
珍しく真面目にゴルシが話している気がする。
「なるほど、そういうことなら力を貸そう。ただ、今日行くとなると難儀だな。コロナのせいで閉まってる店ばかりだぞ」
「いいんだよ、町中華のやっすいやつでも。でも美味くなかったらパロ・スペシャルな、塩田トレーナーが」
「は?」
塩田トレーナーが啞然としている。さすがにウマ娘の力でパロ・スペシャルなんてやられたら命に関わる。何とかして店を探さねば……
……
…………
あった。老舗で昔ながらの中華そばを出し、かつ安くて美味くコロナでもやっている店が。
「いい店があるぞ」
「さっすが天王寺ちゃん!で、どこなんだ」
「場所は飯田橋。17時に正門前に集合だ」
※特になし
実にあっさりと許可が下りた。まさか……
「あの槍の力で催眠術でもかけたのか?」
「いんや、分からねー。というか、『願った』だけだけどな」
恐ろしいことをサラッと言っている気がする。まさか思ったことを実現できてしまう謎のアイテムなのか?
塩田トレーナーは渋い顔のままだ。
「だが、外出できてもオミクロン型はどうする?感染したら、競争生命どころか命にもかかわりかねないぞ?そんなリスクなど……」
「大丈夫だって。こいつで『コロナにかからないように』と願えばモーマンタイってことよ」
んな馬鹿な、と口に出かけたが、溝口トレーナーのあの様子を見るとでまかせとも言えない。
多分、本当に大丈夫なのだ。黄金の槍の正体は一切分からないが。
「……分かった。こちらもチートデイをやりたかったところだ」
「さっすが天王寺ちゃんだ!話が分かるねえ。で、食いたいものがあるんだけどさ」
「何だ」
ゴルシが遠い目になった。
「アタシさー、中華そばが食いてえんだ……むかーしながらの、醤油の利いたヤツがさー」
「どうしてだ」
「アタシがここに来たのは、あるウマ娘のおかげなんだ。走るのが苦手だから屋台でラーメン作ってるって奴でさ……その時の中華そばが忘れられねえんだよ。
だからたまーに、無性に中華そばが食いたくなるってわけだ。昔ながらの醤油ラーメンがさ」
珍しく真面目にゴルシが話している気がする。
「なるほど、そういうことなら力を貸そう。ただ、今日行くとなると難儀だな。コロナのせいで閉まってる店ばかりだぞ」
「いいんだよ、町中華のやっすいやつでも。でも美味くなかったらパロ・スペシャルな、塩田トレーナーが」
「は?」
塩田トレーナーが啞然としている。さすがにウマ娘の力でパロ・スペシャルなんてやられたら命に関わる。何とかして店を探さねば……
……
…………
あった。老舗で昔ながらの中華そばを出し、かつ安くて美味くコロナでもやっている店が。
「いい店があるぞ」
「さっすが天王寺ちゃん!で、どこなんだ」
「場所は飯田橋。17時に正門前に集合だ」
270: ◆/4adlfiarI:2022/02/11(金) 23:06:54.51 :Y7Qy6ZaMO
第6R 飯田橋「びぜん亭」
第6R 飯田橋「びぜん亭」
271: ◆/4adlfiarI:2022/02/11(金) 23:08:47.38 :Y7Qy6ZaMO
続きは明日。
続きは明日。
272:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/11(金) 23:10:20.66 :/9JsJiwqo
おつおつー
ゴルシ……コロナごと消してくれ……
おつおつー
ゴルシ……コロナごと消してくれ……
273:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/11(金) 23:14:35.79 :gpsD+ZGwo
274: ◆/4adlfiarI:2022/02/12(土) 17:23:12.33 :4Zu590cgO
*
「久々の外出ですね!やっとバクシンできますっ!バックシーン!!」
「バクちゃんまだ早いよ……というかお兄ちゃん、よく許可取れたね」
「まあな……あまり深くは突っ込まないでくれ」
訝しげなカレンに苦笑していると、問題の人物がやってきた。もちろん、手には例の槍がある。
「オーッス!!元気そうで何よりだぜ」
「「ゴルシさん!?」」
いささかゲンナリしたような塩田トレーナーを引き連れて、ゴルシは上機嫌でやってきた。
「今日はゴルシさんも一緒なのですか!?」
「ハハ、まあな……」
「何だよ、説明してなかったのか。まあいいや、じゃあ早速やるぜ。
オンアビラウンケンソワカ、南無阿弥陀仏……ジーザスクライストスーパースターぁぁぁ!!」
謎の呪文をゴルシが叫ぶと、黄金の槍が光り輝いた。そして……
バリンッ
「あ、壊れちまった」
槍は粉々に砕け散った。
「ちょっと待て、これでコロナにかからないってのがなくなったんじゃないだろうな?」
「多分大丈夫だろー。散々向こうの世界で使ってきたからなー、使用回数切れってことか。まあしゃあないな」
口を尖らせてゴルシが言う。……本当に大丈夫なのか。
*
「久々の外出ですね!やっとバクシンできますっ!バックシーン!!」
「バクちゃんまだ早いよ……というかお兄ちゃん、よく許可取れたね」
「まあな……あまり深くは突っ込まないでくれ」
訝しげなカレンに苦笑していると、問題の人物がやってきた。もちろん、手には例の槍がある。
「オーッス!!元気そうで何よりだぜ」
「「ゴルシさん!?」」
いささかゲンナリしたような塩田トレーナーを引き連れて、ゴルシは上機嫌でやってきた。
「今日はゴルシさんも一緒なのですか!?」
「ハハ、まあな……」
「何だよ、説明してなかったのか。まあいいや、じゃあ早速やるぜ。
オンアビラウンケンソワカ、南無阿弥陀仏……ジーザスクライストスーパースターぁぁぁ!!」
謎の呪文をゴルシが叫ぶと、黄金の槍が光り輝いた。そして……
バリンッ
「あ、壊れちまった」
槍は粉々に砕け散った。
「ちょっと待て、これでコロナにかからないってのがなくなったんじゃないだろうな?」
「多分大丈夫だろー。散々向こうの世界で使ってきたからなー、使用回数切れってことか。まあしゃあないな」
口を尖らせてゴルシが言う。……本当に大丈夫なのか。
275: ◆/4adlfiarI:2022/02/12(土) 17:51:40.88 :4Zu590cgO
「とにかく、さっさと行こうぜ!天王寺ちゃんおすすめの中華そば、どんなんだろうなー」
「お兄ちゃん質問。中華そばってそもそも何なの?」
カレンが手を挙げた。
「説明するには少々手間だな。寒い中喋るのもアレだ、車の中で話そう」
アウディA4に乗り込み、車を東京方面に向かわせた。大柄なゴルシがいるせいか、後部座席はかなり窮屈になってしまっている。
「さっきのカレン君の話だが。私もそこは気になっていた。色々中華そばはあるが、『昔ながらの』というのはどう違うのかね」
助手席の塩田トレーナーが訊いてくる。
「その定義は難しいですね。一般的には、いわゆる『東京ラーメン』がそれに該当すると思います。
醤油ベースの透明度のやや高いスープに縮れ麺、チャーシューにナルトにメンマ。スープは鶏ガラ中心の動物系で、スッキリとした癖のない味ってとこでしょうか」
「そういう店はどこにでもあるんじゃないか?」
「差別化が難しいんで、そういう店は少ないんですよ。化調をたっぷり入れたヤツなら、大手チェーンとかがやってますけどね。
個性があって、かつハイレベルな店は絶滅危惧種です。ゴルシ、満足行く店は今まであまりなかったんじゃないか?」
「あ?ルービックキューブやってたから聞いてなかったぜ」
相変わらずフリーダムな奴だ。代わりにカレンが答える。
「言われてみれば、今までお兄ちゃんと一緒に行った店でそういうのはあまりなかったかも。『支那そばや』とかはまた違うよね」
「あれは『淡麗系』という別のジャンルだな。素材からこだわり抜いて、魚介系なども含めたより複雑な味を志向している。
昔ながらの中華そばは、もう少しシンプルなスープの組み立てなんだ。だからこそ作るのが難しい。何より、安くないといけない」
「確かに……最近は一杯1000円以上のもザラだな」
塩田トレーナーに私は頷いた。車は東関東自動車道へと入って行く。
「それが悪いとは思いません。ラーメンは進化し続ける料理ですから。ただ、原点は『昔ながらの中華そば』なんです。
だからこそ、原点回帰の動きもあります。煮干し系や淡麗系とのハイブリッドとも言える『ネオクラシカル』がそれです」
「なんかよく分からなくなってきたな。ネオクラシカル?」
「まあ、中華そばの亜種と考えてもらえてば。前に三田村トレーナーとライスシャワーと言った『八五』の系列、『勝本』はその代表格ですね。
ただ、今日行くのは正真正銘、本物の『中華そば屋』です。『メルシー』でもよかったんですけどね」
「『メルシー』……早稲田生御用達のか。聞いたことはあるが」
「あそこは夜は早仕舞いするので。まあ、着いてのお楽しみという奴です」
後部座席からゴルシが身を乗り出してきた。
「まあ御託はいいからさっさと行こうぜ!美味けりゃそれでよし!情報を食べてるんじゃねえんだからさ」
※70以上でイベント
「とにかく、さっさと行こうぜ!天王寺ちゃんおすすめの中華そば、どんなんだろうなー」
「お兄ちゃん質問。中華そばってそもそも何なの?」
カレンが手を挙げた。
「説明するには少々手間だな。寒い中喋るのもアレだ、車の中で話そう」
アウディA4に乗り込み、車を東京方面に向かわせた。大柄なゴルシがいるせいか、後部座席はかなり窮屈になってしまっている。
「さっきのカレン君の話だが。私もそこは気になっていた。色々中華そばはあるが、『昔ながらの』というのはどう違うのかね」
助手席の塩田トレーナーが訊いてくる。
「その定義は難しいですね。一般的には、いわゆる『東京ラーメン』がそれに該当すると思います。
醤油ベースの透明度のやや高いスープに縮れ麺、チャーシューにナルトにメンマ。スープは鶏ガラ中心の動物系で、スッキリとした癖のない味ってとこでしょうか」
「そういう店はどこにでもあるんじゃないか?」
「差別化が難しいんで、そういう店は少ないんですよ。化調をたっぷり入れたヤツなら、大手チェーンとかがやってますけどね。
個性があって、かつハイレベルな店は絶滅危惧種です。ゴルシ、満足行く店は今まであまりなかったんじゃないか?」
「あ?ルービックキューブやってたから聞いてなかったぜ」
相変わらずフリーダムな奴だ。代わりにカレンが答える。
「言われてみれば、今までお兄ちゃんと一緒に行った店でそういうのはあまりなかったかも。『支那そばや』とかはまた違うよね」
「あれは『淡麗系』という別のジャンルだな。素材からこだわり抜いて、魚介系なども含めたより複雑な味を志向している。
昔ながらの中華そばは、もう少しシンプルなスープの組み立てなんだ。だからこそ作るのが難しい。何より、安くないといけない」
「確かに……最近は一杯1000円以上のもザラだな」
塩田トレーナーに私は頷いた。車は東関東自動車道へと入って行く。
「それが悪いとは思いません。ラーメンは進化し続ける料理ですから。ただ、原点は『昔ながらの中華そば』なんです。
だからこそ、原点回帰の動きもあります。煮干し系や淡麗系とのハイブリッドとも言える『ネオクラシカル』がそれです」
「なんかよく分からなくなってきたな。ネオクラシカル?」
「まあ、中華そばの亜種と考えてもらえてば。前に三田村トレーナーとライスシャワーと言った『八五』の系列、『勝本』はその代表格ですね。
ただ、今日行くのは正真正銘、本物の『中華そば屋』です。『メルシー』でもよかったんですけどね」
「『メルシー』……早稲田生御用達のか。聞いたことはあるが」
「あそこは夜は早仕舞いするので。まあ、着いてのお楽しみという奴です」
後部座席からゴルシが身を乗り出してきた。
「まあ御託はいいからさっさと行こうぜ!美味けりゃそれでよし!情報を食べてるんじゃねえんだからさ」
※70以上でイベント
276:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 17:55:00.65 :0b2e4jgDO
はい
はい
277: ◆/4adlfiarI:2022/02/12(土) 18:12:20.05 :4Zu590cgO
※特になし
……情報を食べている?どこかで聞いたような言葉だが。まあ、よくある台詞かもしれない。
車は首都高に入りつつある。飯田橋まではもう少しだ。
*
「ここが今日の目的地だ」
「ほー……渋いねえ。いいぜいいぜ、こういうのだよ」
ゴルシが満足そうに言う。古ぼけた小料理屋のような佇まい。ここに来るのはかなり久し振りだが、何一つ外観は変わっていない。まさに時が止まったかのようだ。
「『びぜん亭』か。年季が入った店だな」
「創業から45年ですからね。店主が同じでここより長くやってる店は殆どないはずです」
「45年!?驚いたな……」
塩田トレーナーが呟く。待ちきれなかったのか、バクシンオーが「バックシーン!!」と店内に入っていった。
「あ、バクちゃん!?」
「アタシたちも入ろうぜ。いやー、これはテンション上がってきたぜ」
カレンとゴルシも中に入る。私たちも続くと、老齢の主人が「いらっしゃい」と出迎えた。
「お久しぶりです」
「ああ、天王寺さん。3年ぶりですか」
「すみません、仕事が忙しくて」
「ウマ娘のトレーナーさん、でしたね。教え子さんといったとこですか」
「まあそんなところです」
振り向くとメニューが見えた。支那そば650円、チャーシュー麺850円。これでも値上げしているのだろうが、昨今のラーメンからすればかなり安い。しかも場所は飯田橋だ。
飯田橋はラーメン激戦区だが、最低でも800円以上は取られる。どれほどの経営努力をしているのだろう。
「お、外国からも客が来るんだなー。有名なのか?」
ゴルシが入口のポスターを指差した。確かに外国人と店主の植田氏が写っている。
「ああ、最近ドキュメンタリー映画になりまして。お恥ずかしい限りです」
こんな映画があったとは知らなかった。やはり、中華そばのノスタルジーに惹かれるのは万国共通なのかもしれない。
※特になし
……情報を食べている?どこかで聞いたような言葉だが。まあ、よくある台詞かもしれない。
車は首都高に入りつつある。飯田橋まではもう少しだ。
*
「ここが今日の目的地だ」
「ほー……渋いねえ。いいぜいいぜ、こういうのだよ」
ゴルシが満足そうに言う。古ぼけた小料理屋のような佇まい。ここに来るのはかなり久し振りだが、何一つ外観は変わっていない。まさに時が止まったかのようだ。
「『びぜん亭』か。年季が入った店だな」
「創業から45年ですからね。店主が同じでここより長くやってる店は殆どないはずです」
「45年!?驚いたな……」
塩田トレーナーが呟く。待ちきれなかったのか、バクシンオーが「バックシーン!!」と店内に入っていった。
「あ、バクちゃん!?」
「アタシたちも入ろうぜ。いやー、これはテンション上がってきたぜ」
カレンとゴルシも中に入る。私たちも続くと、老齢の主人が「いらっしゃい」と出迎えた。
「お久しぶりです」
「ああ、天王寺さん。3年ぶりですか」
「すみません、仕事が忙しくて」
「ウマ娘のトレーナーさん、でしたね。教え子さんといったとこですか」
「まあそんなところです」
振り向くとメニューが見えた。支那そば650円、チャーシュー麺850円。これでも値上げしているのだろうが、昨今のラーメンからすればかなり安い。しかも場所は飯田橋だ。
飯田橋はラーメン激戦区だが、最低でも800円以上は取られる。どれほどの経営努力をしているのだろう。
「お、外国からも客が来るんだなー。有名なのか?」
ゴルシが入口のポスターを指差した。確かに外国人と店主の植田氏が写っている。
「ああ、最近ドキュメンタリー映画になりまして。お恥ずかしい限りです」
こんな映画があったとは知らなかった。やはり、中華そばのノスタルジーに惹かれるのは万国共通なのかもしれない。
278:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:02:16.94 :tquuAKR6O
00含めイベントほとんど引けんな……
00含めイベントほとんど引けんな……
279:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:09:03.63 :wxZOA/QG0
コンビニや自販機などのお持ち帰りのラーメンも美味しいのがありますから、たまにはそれを選ぶのもありですか?
(それを作るのは担当のウマ娘)
コンビニや自販機などのお持ち帰りのラーメンも美味しいのがありますから、たまにはそれを選ぶのもありですか?
(それを作るのは担当のウマ娘)
280: ◆/4adlfiarI:2022/02/12(土) 19:20:14.72 :4DBzYjR4O
「とにかくお腹がすきました!注文しましょう!」
「バクシンオーの言う通りだな。ではチャーシュー麺大盛りで」
ゴルシが不思議そうにこちらを見る。
「ん?支那そばじゃねーの?」
「まあ、食えば分かる」
「そう言うなら乗ってやっか。アタシもそれで」
結局5人とも同じ注文になった。待つこと数分、丼がカウンター越しに置かれる。
「お待ちどうさま」
具はメンマにネギ、そしてほうれん草。極めてベーシックなものだ。一見何のひねりもないが……
「お兄ちゃん!このチャーシュー……」
「カレン、それだ」
ラーメンに浮かぶチャーシューはトロトロに柔らかく、脂が蕩けている。そう、このチャーシューこそ肝なのだ。
「え、このままでいいの?」
「いいから食べよ「バックシーン!!」」
バクシンオーが凄まじい勢いでラーメンを啜っている。
「何ですかこの味は!スープが、なんか、こう……」
「……!!おお、確かに……あまり飲んだことのないスープだ」
塩田トレーナーも目を見開いた。私も箸でやや柔らかめの麺をリフトアップし、一気に啜る。
バッシーンッッッ!!!
ボタンが弾け、大胸筋が喜ぶのを感じた。
ここのスープは、ただの醤油スープではない。鶏ガラと豚骨の動物系が強く押し出されるスープに、チャーシューから溶けた脂が深みを加えている。
そして、この脂には香ばしさがある。しっかり下味を付けた上で焦げ目が付くほどに焼かれたチャーシューは、ただの具ではない。スープに欠かせないパーツなのだ。
ゴルシを見ると、目をウルウルと潤ませている。
「……うめえな……懐しいけど、新しい……アタシが求めてたのは、これだよ……。
あいつが作ったラーメンも、こんな飽きのこない味だった」
「それは、ここのラーメンがオリジナルだからだろうな。個性は色褪せない。たとえそのスタイルが古くからあろうとも、常に新鮮さを与え続けるものだ。
だから『ネオクラシカル系』を志すラーメン職人は、ここに教えを乞いに来る。温故知新ってやつだな」
「よくわかんねーけど、うめえものはうめえ。それでいいじゃねえか。親父!お代わりあるか!?」
ゴルシはあっという間に平らげていたらしい。まあ、一杯くらいなら大丈夫だろう。
※70以上で店主が……
「とにかくお腹がすきました!注文しましょう!」
「バクシンオーの言う通りだな。ではチャーシュー麺大盛りで」
ゴルシが不思議そうにこちらを見る。
「ん?支那そばじゃねーの?」
「まあ、食えば分かる」
「そう言うなら乗ってやっか。アタシもそれで」
結局5人とも同じ注文になった。待つこと数分、丼がカウンター越しに置かれる。
「お待ちどうさま」
具はメンマにネギ、そしてほうれん草。極めてベーシックなものだ。一見何のひねりもないが……
「お兄ちゃん!このチャーシュー……」
「カレン、それだ」
ラーメンに浮かぶチャーシューはトロトロに柔らかく、脂が蕩けている。そう、このチャーシューこそ肝なのだ。
「え、このままでいいの?」
「いいから食べよ「バックシーン!!」」
バクシンオーが凄まじい勢いでラーメンを啜っている。
「何ですかこの味は!スープが、なんか、こう……」
「……!!おお、確かに……あまり飲んだことのないスープだ」
塩田トレーナーも目を見開いた。私も箸でやや柔らかめの麺をリフトアップし、一気に啜る。
バッシーンッッッ!!!
ボタンが弾け、大胸筋が喜ぶのを感じた。
ここのスープは、ただの醤油スープではない。鶏ガラと豚骨の動物系が強く押し出されるスープに、チャーシューから溶けた脂が深みを加えている。
そして、この脂には香ばしさがある。しっかり下味を付けた上で焦げ目が付くほどに焼かれたチャーシューは、ただの具ではない。スープに欠かせないパーツなのだ。
ゴルシを見ると、目をウルウルと潤ませている。
「……うめえな……懐しいけど、新しい……アタシが求めてたのは、これだよ……。
あいつが作ったラーメンも、こんな飽きのこない味だった」
「それは、ここのラーメンがオリジナルだからだろうな。個性は色褪せない。たとえそのスタイルが古くからあろうとも、常に新鮮さを与え続けるものだ。
だから『ネオクラシカル系』を志すラーメン職人は、ここに教えを乞いに来る。温故知新ってやつだな」
「よくわかんねーけど、うめえものはうめえ。それでいいじゃねえか。親父!お代わりあるか!?」
ゴルシはあっという間に平らげていたらしい。まあ、一杯くらいなら大丈夫だろう。
※70以上で店主が……
281:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:23:28.01 :tquuAKR6O
はい
はい
282:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:30:37.17 :wxZOA/QG0
隣の客にラーメンを提供する
その隣の客がツインターボ
隣の客にラーメンを提供する
その隣の客がツインターボ
283: ◆/4adlfiarI:2022/02/12(土) 19:36:28.56 :4DBzYjR4O
※何もなし
※
「いやー!食った食った!!」
腰に手を当て、満足そうにゴルシが言う。結局彼女は3杯おかわりをした。まあ、オグリやスペシャルウィークならこんなものではないから良かったと思うべきか……
「天王寺君、すまない。パーマーに続いて、うちのゴルシが……」
「まあいいってことです。私も久々のチートデイで、かなりコンディション上がりそうですし」
その通りだ。筋肉が脈動しているのを感じる。やはりチートデイは、私には欠かせないルーティーンであるようだ。
「私も絶好調です!!学級委員長として、週明けからもがんばりますとも!!」
「カレンもいい感じだよ♪でも次はいつできるかなあ……」
それもその通りだ。オミクロン型はピークアウトしつつあるが、外出制限は簡単には解除されまい。
何とかして外に出たいところだが……
そう思っていると、ゴルシがニヤリと笑った。
「しょぼくれた顔してんなあ。例の槍の『認識改変』なら、多分しばらく続くぜ?」
「……は?」
「いや、なんとなーくわかんだよ。ま、旨いラーメン食わせてくれたお礼ってことだな!」
そう言うと、上機嫌な様子で彼女はコインパーキングに停めてあるアウディへと向かうのであった。
*
ゴルシが槍で色々なウマ娘の認識を滅茶苦茶にしていたと知るのは、その翌日のことだった。
そして、我々トレーナー陣はその後始末に追われるのだが、それはまた別の話だ。
第6話 完
※何もなし
※
「いやー!食った食った!!」
腰に手を当て、満足そうにゴルシが言う。結局彼女は3杯おかわりをした。まあ、オグリやスペシャルウィークならこんなものではないから良かったと思うべきか……
「天王寺君、すまない。パーマーに続いて、うちのゴルシが……」
「まあいいってことです。私も久々のチートデイで、かなりコンディション上がりそうですし」
その通りだ。筋肉が脈動しているのを感じる。やはりチートデイは、私には欠かせないルーティーンであるようだ。
「私も絶好調です!!学級委員長として、週明けからもがんばりますとも!!」
「カレンもいい感じだよ♪でも次はいつできるかなあ……」
それもその通りだ。オミクロン型はピークアウトしつつあるが、外出制限は簡単には解除されまい。
何とかして外に出たいところだが……
そう思っていると、ゴルシがニヤリと笑った。
「しょぼくれた顔してんなあ。例の槍の『認識改変』なら、多分しばらく続くぜ?」
「……は?」
「いや、なんとなーくわかんだよ。ま、旨いラーメン食わせてくれたお礼ってことだな!」
そう言うと、上機嫌な様子で彼女はコインパーキングに停めてあるアウディへと向かうのであった。
*
ゴルシが槍で色々なウマ娘の認識を滅茶苦茶にしていたと知るのは、その翌日のことだった。
そして、我々トレーナー陣はその後始末に追われるのだが、それはまた別の話だ。
第6話 完
284: ◆/4adlfiarI:2022/02/12(土) 19:39:05.38 :4DBzYjR4O
今回はここまでです。多分12か13話くらいで一度締めますが、ぼちぼちそこに向けて走りたいところです。
(イベント判定はそこに絡むものです)
さて、次回のウマ娘を決めます。
安価下1~5で、コンマが最も大きいものとします。
また、決定されたウマ娘次第で、追加判定があるやもしれません。
今回はここまでです。多分12か13話くらいで一度締めますが、ぼちぼちそこに向けて走りたいところです。
(イベント判定はそこに絡むものです)
さて、次回のウマ娘を決めます。
安価下1~5で、コンマが最も大きいものとします。
また、決定されたウマ娘次第で、追加判定があるやもしれません。
285:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:39:27.12 :e44zXBNso
ナリタブライアン
ナリタブライアン
286:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:39:40.70 :wxZOA/QG0
イクノディクタス
イクノディクタス
287:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:39:43.07 :yDmBWYyZ0
サトノダイヤモンド
サトノダイヤモンド
288:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:40:07.72 :tquuAKR6O
メジロアルダン
メジロアルダン
289:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:40:25.53 :bneTMgQMO
サイレンススズカ
サイレンススズカ
290:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:41:36.56 :wxZOA/QG0
イクノディクタス
あまりアニメで活躍しないウマ娘も活躍させて!
イクノディクタス
あまりアニメで活躍しないウマ娘も活躍させて!
291: ◆/4adlfiarI:2022/02/12(土) 19:46:02.30 :4DBzYjR4O
メジロアルダンとします。
コンマ下が70以上で1人追加です。90以上だと……
メジロアルダンとします。
コンマ下が70以上で1人追加です。90以上だと……
292:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:46:16.93 :e44zXBNso
ほい
ほい
293:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:48:28.65 :wxZOA/QG0
未実装のウマ娘も活躍して欲しい
未実装のウマ娘も活躍して欲しい
294: ◆/4adlfiarI:2022/02/12(土) 19:54:07.98 :4DBzYjR4O
90以上のため、ある重要人物に関連するウマ娘になります。
今回は多数決で決定します。3票先取です。
1 アグネスタキオン
2 マルゼンスキー
3 エルコンドルパサー
4 シンボリルドルフ
90以上のため、ある重要人物に関連するウマ娘になります。
今回は多数決で決定します。3票先取です。
1 アグネスタキオン
2 マルゼンスキー
3 エルコンドルパサー
4 シンボリルドルフ
295:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:54:12.22 :lWx7ebqSo
ナイスゥ
ナイスゥ
296:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:54:40.17 :bneTMgQMO
4
4
297:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:54:54.29 :lWx7ebqSo
1
1
298:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:56:22.61 :O4Ov4EQ70
1
1
299:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:56:42.63 :XozgX5igo
1
1
300:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:57:05.03 :0b2e4jgDO
1
1
301: ◆/4adlfiarI:2022/02/12(土) 19:58:05.52 :4DBzYjR4O
アグネスタキオンで決定します。
続いてテーマを決めます。
安価下1~5でコンマが最も大きいものとします。
アグネスタキオンで決定します。
続いてテーマを決めます。
安価下1~5でコンマが最も大きいものとします。
302:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:58:40.52 :bneTMgQMO
煮干系
煮干系
303:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:58:58.72 :wxZOA/QG0
錦糸町駅にある牡蠣ラーメン、ラーメン佐市
錦糸町駅にある牡蠣ラーメン、ラーメン佐市
304:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 19:59:27.97 :yDmBWYyZ0
町田付近でおすすめの店
町田付近でおすすめの店
305:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 20:00:14.57 :wxZOA/QG0
名前間違え
ラーメン佐市→麺や佐市
名前間違え
ラーメン佐市→麺や佐市
306:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 20:02:17.36 :e44zXBNso
二郎系
二郎系
307:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 20:04:24.90 :XozgX5igo
福岡の>>1オススメ店
福岡の>>1オススメ店
308:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 20:07:14.94 :wxZOA/QG0
錦糸町駅のラーメン屋
錦糸町駅のラーメン屋
309: ◆/4adlfiarI:2022/02/12(土) 20:08:34.46 :4DBzYjR4O
>>304
町田付近……行くことがほとんどないのですよね……
エアでよければ書けなくもないですが、代替案があればよろしくお願いします。
2030まで何もなければ、>>307で繰り上がりとします。福岡もここ数年行けていませんが。
>>304
町田付近……行くことがほとんどないのですよね……
エアでよければ書けなくもないですが、代替案があればよろしくお願いします。
2030まで何もなければ、>>307で繰り上がりとします。福岡もここ数年行けていませんが。
310:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 20:08:48.22 :zi2q1MtJO
>>308
ageんなハゲ
>>308
ageんなハゲ
311:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 20:10:56.01 :yDmBWYyZ0
代わりの案出していいの?
じゃあジャンル指定で、油そばとかどう?
代わりの案出していいの?
じゃあジャンル指定で、油そばとかどう?
312:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 20:12:40.94 :wxZOA/QG0
錦糸町の牡蠣ラーメン、麺や佐市
錦糸町の牡蠣ラーメン、麺や佐市
313: ◆/4adlfiarI:2022/02/12(土) 20:12:41.78 :4DBzYjR4O
>>311
OKです。実食まで少々お待たせするかもしれませんが。
>>311
OKです。実食まで少々お待たせするかもしれませんが。
314:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 20:13:39.51 :yDmBWYyZ0
了解ー
了解ー
315:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/12(土) 20:15:00.51 :e44zXBNso
おつおつ
アルダン✕タキオンってレア
おつおつ
アルダン✕タキオンってレア
316: ◆/4adlfiarI:2022/02/12(土) 20:28:24.60 :4DBzYjR4O
とりあえず店は決めました。若干遠いので来週に間に合うかはやや微妙ですが。
開店当初から通っていた某店です。
アルダンとタキオンの絡ませ方は思いついたので問題ないかと思います。
とりあえず店は決めました。若干遠いので来週に間に合うかはやや微妙ですが。
開店当初から通っていた某店です。
アルダンとタキオンの絡ませ方は思いついたので問題ないかと思います。
317: ◆/4adlfiarI:2022/02/18(金) 18:55:27.36 :X9tqqwHHO
さっき食べたので少し更新します。
さっき食べたので少し更新します。
318: ◆/4adlfiarI:2022/02/18(金) 19:09:48.92 :X9tqqwHHO
ウマ娘はアスリートである。
トレセン学園の正式名称がそれを物語る。「国立ウマ娘トレーニングセンター学園」。一応建前としては中高一貫の普通学校だが、実態は体育専門学校のそれに近い。
ここの主眼は、あくまでアスリートとしてのウマ娘の育成(トレーニング)。
無論、現役引退後のキャリア形成も睨んだ基礎教育も行われているが、「より速いウマ娘を育てること」が第一なのだ。
それ故、激しい競争に耐えきれず、退校を余儀なくされる生徒も多い。
入学も狭き門だが、卒業もまた困難だ。
無論、卒業できれば圧倒的な名誉と人気、そして何より莫大な金が手に入る。
ただ、そこに辿り着けるのはごく一握り。この上なく残酷な競争社会の縮図が、ここにはある。
だからこそ、ウマ娘は夢を諦めない。どんな怪我を負ったとしても、再起に僅かな望みを賭ける。自らの夢と、可能性を信じて。
その儚さと尊さこそ、我々トレーナーが惹かれるものの一つなのだ。
そして、目の前にいる彼女もその一人だ。
高等部3年、メジロアルダン。
硝子の脚を持ちながらも、優秀な同期に立ち向かわんとする、メジロ家の少女だ。
ウマ娘はアスリートである。
トレセン学園の正式名称がそれを物語る。「国立ウマ娘トレーニングセンター学園」。一応建前としては中高一貫の普通学校だが、実態は体育専門学校のそれに近い。
ここの主眼は、あくまでアスリートとしてのウマ娘の育成(トレーニング)。
無論、現役引退後のキャリア形成も睨んだ基礎教育も行われているが、「より速いウマ娘を育てること」が第一なのだ。
それ故、激しい競争に耐えきれず、退校を余儀なくされる生徒も多い。
入学も狭き門だが、卒業もまた困難だ。
無論、卒業できれば圧倒的な名誉と人気、そして何より莫大な金が手に入る。
ただ、そこに辿り着けるのはごく一握り。この上なく残酷な競争社会の縮図が、ここにはある。
だからこそ、ウマ娘は夢を諦めない。どんな怪我を負ったとしても、再起に僅かな望みを賭ける。自らの夢と、可能性を信じて。
その儚さと尊さこそ、我々トレーナーが惹かれるものの一つなのだ。
そして、目の前にいる彼女もその一人だ。
高等部3年、メジロアルダン。
硝子の脚を持ちながらも、優秀な同期に立ち向かわんとする、メジロ家の少女だ。
319: ◆/4adlfiarI:2022/02/18(金) 19:37:11.03 :X9tqqwHHO
「怪我をしないようにするコツ、か」
授業の後、「相談があるのですが」と職員室を訪れた彼女は、伏し目がちに頷いた。
「はい。天王寺先生なら何か答えを知っているのでは、と」
「専属の橋本トレーナーではいけないのか?」
「……色々手を尽くしたのですけど、上手く行かなくて。トレーニング理論なら、天王寺先生に聞いた方がいい、と」
橋本トレーナーは真面目な青年だ。ただ、キャリアはまだ3年と浅い。彼なりにベストを尽くした結果、私を頼るようにということなのだろう。
私は腕を組んだ。
「君の脚は、確か先天的に……」
「ええ。骨密度が、通常より密でないとは聞いています。過剰な負荷には耐えられないと……
免疫力も劣っているとは知っています。ただ、学園生活はあと1年と少し。できるだけのことはしたいんです」
静かだが、強い想いを噛み締めるように、アルダンは言った。
私は少し目を閉じた。筋トレを徹底することで、骨を支える筋肉を作り、より故障しにくくする身体にすることはできなくはない。
ただ、私の手法は速筋を鍛えるものだ。スプリンターやマイラーを育成するにはいいが、アルダンのような王道路線のウマ娘を育てるには向いていない。
とすれば……免疫力、ひいては基礎体力の向上を優先すべきか。
ただでさえヒトより弱い免疫力の彼女たちである。今後、社会に出ることを考えると、そちらをこそ優先的に強化すべきかもしれない。
そのためには……
「ここにいたかね、アルダン君!」
ノックの音もなく、相談室のドアがバンと開けられた。
そこにいたのは、白衣に身を包んだウマ娘。「三大問題児」とはベクトルの異なる問題児、アグネスタキオンである。
「怪我をしないようにするコツ、か」
授業の後、「相談があるのですが」と職員室を訪れた彼女は、伏し目がちに頷いた。
「はい。天王寺先生なら何か答えを知っているのでは、と」
「専属の橋本トレーナーではいけないのか?」
「……色々手を尽くしたのですけど、上手く行かなくて。トレーニング理論なら、天王寺先生に聞いた方がいい、と」
橋本トレーナーは真面目な青年だ。ただ、キャリアはまだ3年と浅い。彼なりにベストを尽くした結果、私を頼るようにということなのだろう。
私は腕を組んだ。
「君の脚は、確か先天的に……」
「ええ。骨密度が、通常より密でないとは聞いています。過剰な負荷には耐えられないと……
免疫力も劣っているとは知っています。ただ、学園生活はあと1年と少し。できるだけのことはしたいんです」
静かだが、強い想いを噛み締めるように、アルダンは言った。
私は少し目を閉じた。筋トレを徹底することで、骨を支える筋肉を作り、より故障しにくくする身体にすることはできなくはない。
ただ、私の手法は速筋を鍛えるものだ。スプリンターやマイラーを育成するにはいいが、アルダンのような王道路線のウマ娘を育てるには向いていない。
とすれば……免疫力、ひいては基礎体力の向上を優先すべきか。
ただでさえヒトより弱い免疫力の彼女たちである。今後、社会に出ることを考えると、そちらをこそ優先的に強化すべきかもしれない。
そのためには……
「ここにいたかね、アルダン君!」
ノックの音もなく、相談室のドアがバンと開けられた。
そこにいたのは、白衣に身を包んだウマ娘。「三大問題児」とはベクトルの異なる問題児、アグネスタキオンである。
320: ◆/4adlfiarI:2022/02/18(金) 20:03:44.92 :X9tqqwHHO
「タキオンさんっ!?」
「骨密度の増強に必要な飲み薬が完成したのさ!これで君も私も……っと天王寺トレーナー君じゃないか」
私は溜め息をついた。
「……また未認可の薬を飲ませようとしたのか。ドーピング検査に引っ掛かったら破滅だぞ」
「いやいや、それは大丈夫。私のモルモット君が身を以て証明してくれたからね!」
萌え袖をヒラヒラさせ、得意気にタキオンが胸を張る。そういう問題じゃない。
「また滝川トレーナーが被害に遭ったのか……」
「被害とはなんだい、失礼な。研究成果の名誉ある第一号になったのだよ。多少身体が光っても……」
「その時点でアウトだ」
滝川トレーナーもよく彼女の人体実験に付き合っているものだ。ある意味、私以上に頑健ではなかろうか。
「なんだよ~つまらないな~。成果は確かなのに」
「脚を治したい気持ちは分かるが、せめて認可が降りるまで我慢しろ」
……そう。タキオンも脚は弱い。昨年に大怪我をし、今は復帰に向けて動いていると聞く。
同じ悩みを抱える者同士、気が合うのだろうか。確かにタキオンがたまに学年が上のアルダンと話している姿は見ていた。
「……でも、私には時間がないんです」
アルダンが、絞り出すように言う。私はハッとなった。
トレセン学園は、建前は中高一貫の普通学校だ。だが、6年で卒業できる生徒は、実はほぼいない。
毎年ある進級試験。それに合格しないと、卒業できない仕組みになっている。そして、不合格者は、1年に限って留年を許される。
アルダンは既に、進級試験を落ちていた。
厳密には、受けることすらできなかったのだ……脚の怪我で。
翌年までに、脚を完全に治さないと、彼女の未来は……ない。
「タキオンさんっ!?」
「骨密度の増強に必要な飲み薬が完成したのさ!これで君も私も……っと天王寺トレーナー君じゃないか」
私は溜め息をついた。
「……また未認可の薬を飲ませようとしたのか。ドーピング検査に引っ掛かったら破滅だぞ」
「いやいや、それは大丈夫。私のモルモット君が身を以て証明してくれたからね!」
萌え袖をヒラヒラさせ、得意気にタキオンが胸を張る。そういう問題じゃない。
「また滝川トレーナーが被害に遭ったのか……」
「被害とはなんだい、失礼な。研究成果の名誉ある第一号になったのだよ。多少身体が光っても……」
「その時点でアウトだ」
滝川トレーナーもよく彼女の人体実験に付き合っているものだ。ある意味、私以上に頑健ではなかろうか。
「なんだよ~つまらないな~。成果は確かなのに」
「脚を治したい気持ちは分かるが、せめて認可が降りるまで我慢しろ」
……そう。タキオンも脚は弱い。昨年に大怪我をし、今は復帰に向けて動いていると聞く。
同じ悩みを抱える者同士、気が合うのだろうか。確かにタキオンがたまに学年が上のアルダンと話している姿は見ていた。
「……でも、私には時間がないんです」
アルダンが、絞り出すように言う。私はハッとなった。
トレセン学園は、建前は中高一貫の普通学校だ。だが、6年で卒業できる生徒は、実はほぼいない。
毎年ある進級試験。それに合格しないと、卒業できない仕組みになっている。そして、不合格者は、1年に限って留年を許される。
アルダンは既に、進級試験を落ちていた。
厳密には、受けることすらできなかったのだ……脚の怪我で。
翌年までに、脚を完全に治さないと、彼女の未来は……ない。
321: ◆/4adlfiarI:2022/02/18(金) 20:36:15.38 :X9tqqwHHO
部屋が重い空気に包まれた。タキオンは1年だから、まだ猶予はある。しかし、3年の彼女は……次に落ちたら退校処分だ。
「そうだな……」
助けになりたいのは山々だ。だが、即効性のある特効薬はない。私にできるのは、あくまで地道な基礎体力強化を勧めることしかない。
だが、それを告げたところで何の意味があるだろう?彼女をさらなる絶望に落とすだけではないか?
参った。……こういう時に、「あの人」なら何と言うだろう。
「そういえば天王寺トレーナー君。私の叔父が君に会いたがっていたよ」
唐突に、タキオンが口を開いた。
「君の叔父?こんな時に何の関連が」
「おおありだよ。今度、中国から凱旋帰国するそうだ。何か話が聞けるかもしれないねえ」
「……凱旋帰国?」
「そう。中国ウマ娘界でナンバーワントレーナーになったらしいんだよ。事業も成功したらしい」
「中国……ウマ娘では後進国と聞いていたが」
フフフ、とタキオンが笑う。
「年末の香港ヴァーズと香港マイルは、叔父さんが担当したウマ娘が勝ったんだよ。
というか天王寺トレーナー君、叔父さんを知らないのかい?」
胸騒ぎがする。私の知り合い?誰だそれは?
「ああ、こっちの方が有名かもしれないね。中国を代表する、日本人ラーメンプロデューサー」
……ゾクンッ
まさか。「あの人」なのか?
しかし、いつの間に中国に渡っていたとは……しかもトレーナーもやっている?頭が混乱する。
だが、私の頭に浮かぶ名前は……一つしかない。
「……芹沢達也」
部屋が重い空気に包まれた。タキオンは1年だから、まだ猶予はある。しかし、3年の彼女は……次に落ちたら退校処分だ。
「そうだな……」
助けになりたいのは山々だ。だが、即効性のある特効薬はない。私にできるのは、あくまで地道な基礎体力強化を勧めることしかない。
だが、それを告げたところで何の意味があるだろう?彼女をさらなる絶望に落とすだけではないか?
参った。……こういう時に、「あの人」なら何と言うだろう。
「そういえば天王寺トレーナー君。私の叔父が君に会いたがっていたよ」
唐突に、タキオンが口を開いた。
「君の叔父?こんな時に何の関連が」
「おおありだよ。今度、中国から凱旋帰国するそうだ。何か話が聞けるかもしれないねえ」
「……凱旋帰国?」
「そう。中国ウマ娘界でナンバーワントレーナーになったらしいんだよ。事業も成功したらしい」
「中国……ウマ娘では後進国と聞いていたが」
フフフ、とタキオンが笑う。
「年末の香港ヴァーズと香港マイルは、叔父さんが担当したウマ娘が勝ったんだよ。
というか天王寺トレーナー君、叔父さんを知らないのかい?」
胸騒ぎがする。私の知り合い?誰だそれは?
「ああ、こっちの方が有名かもしれないね。中国を代表する、日本人ラーメンプロデューサー」
……ゾクンッ
まさか。「あの人」なのか?
しかし、いつの間に中国に渡っていたとは……しかもトレーナーもやっている?頭が混乱する。
だが、私の頭に浮かぶ名前は……一つしかない。
「……芹沢達也」
322: ◆/4adlfiarI:2022/02/18(金) 20:37:26.46 :X9tqqwHHO
今日はここまで。独自設定がある点、お詫びします。
学年設定は現状での推測によるものです。
今日はここまで。独自設定がある点、お詫びします。
学年設定は現状での推測によるものです。
323:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/18(金) 20:42:03.20 :7Z+jEl38o
おつおつ!
ラーメン○ゲさん!!?!
おつおつ!
ラーメン○ゲさん!!?!
324: ◆/4adlfiarI:2022/02/19(土) 19:47:46.33 :JzQJV121O
ククッ、とタキオンが笑った。
「なんだ、やっぱり知り合いじゃないか。訳ありみたいだけど」
「……私の恩人だよ。トレーナーをやっているのも、半分は彼の影響だ」
「恩人、ね。あの偏屈な叔父さんが、皮肉交じりとはいえ人を褒めるなんて珍しいとは思ってたけど」
そう。芹沢達也は私の「師」だ。トレーナーとしても、そしてラーメンについても。
『俺は俺の道を行かせてもらう。また会うことがあるかもしれんな』
10年前、トレセン学園を去った彼の言葉が蘇る。
あの人は間違いなく有能なトレーナーだった。「あの事件」がなければ、今頃は日本を代表するトレーナーになっていたかもしれない。
ウマ娘界から追放され、行方知らずであるとは聞いていた。ラーメン職人としても一流だった彼のことだ、どこかでひっそりと店を出しているかと思ったが、その情報はなかった。
まさか、中国に渡っていたとは。それも、向こうでラーメンプロデューサーもやっていたとは。
二足のわらじを履き、両方で頂点へと駆け上がろうとしているのは……どういう意図なのか?
「芹沢さんが帰国するのは、いつだ」
「詳しくは聞いてないよ。何せ身内の私すら、久々に連絡をもらったくらいだし。多分、春には戻ってくるんじゃないか?」
「そうか……」
訊きたいことはたくさんある。何より、「あの事件」の真相。芹沢さんが、あんなことをしでかしたとは、今でも信じられない。
「まあ、私も会うのは楽しみだよ。脚の治療についても何か考えがあるらしいからね」
「そうなのか?」
呆れたようにタキオンが私を見る。
「知らないのかい?叔父さんの別名を」
「別名?」
「そうさ。『魔法使い』……どんな虚弱なウマ娘でも、たちどころに強靭な身体となり、レースを勝ちまくる。
この前負けたけど、ゴールデンシックスティー、だったかな?あの娘もそうやって強くなった」
ゾワッと、嫌な予感が広がった。……10年前と同じだ。
芹沢達也は、担当ウマ娘へのドーピング疑惑をかけられ……日本を追放されたのだった。
ククッ、とタキオンが笑った。
「なんだ、やっぱり知り合いじゃないか。訳ありみたいだけど」
「……私の恩人だよ。トレーナーをやっているのも、半分は彼の影響だ」
「恩人、ね。あの偏屈な叔父さんが、皮肉交じりとはいえ人を褒めるなんて珍しいとは思ってたけど」
そう。芹沢達也は私の「師」だ。トレーナーとしても、そしてラーメンについても。
『俺は俺の道を行かせてもらう。また会うことがあるかもしれんな』
10年前、トレセン学園を去った彼の言葉が蘇る。
あの人は間違いなく有能なトレーナーだった。「あの事件」がなければ、今頃は日本を代表するトレーナーになっていたかもしれない。
ウマ娘界から追放され、行方知らずであるとは聞いていた。ラーメン職人としても一流だった彼のことだ、どこかでひっそりと店を出しているかと思ったが、その情報はなかった。
まさか、中国に渡っていたとは。それも、向こうでラーメンプロデューサーもやっていたとは。
二足のわらじを履き、両方で頂点へと駆け上がろうとしているのは……どういう意図なのか?
「芹沢さんが帰国するのは、いつだ」
「詳しくは聞いてないよ。何せ身内の私すら、久々に連絡をもらったくらいだし。多分、春には戻ってくるんじゃないか?」
「そうか……」
訊きたいことはたくさんある。何より、「あの事件」の真相。芹沢さんが、あんなことをしでかしたとは、今でも信じられない。
「まあ、私も会うのは楽しみだよ。脚の治療についても何か考えがあるらしいからね」
「そうなのか?」
呆れたようにタキオンが私を見る。
「知らないのかい?叔父さんの別名を」
「別名?」
「そうさ。『魔法使い』……どんな虚弱なウマ娘でも、たちどころに強靭な身体となり、レースを勝ちまくる。
この前負けたけど、ゴールデンシックスティー、だったかな?あの娘もそうやって強くなった」
ゾワッと、嫌な予感が広がった。……10年前と同じだ。
芹沢達也は、担当ウマ娘へのドーピング疑惑をかけられ……日本を追放されたのだった。
325: ◆/4adlfiarI:2022/02/19(土) 20:11:50.15 :JzQJV121O
「その、タキオンさんの叔父様なら……私の脚も」
「断言はできないけど、治るかもしれないねえ。私もできれば自分で治したいけど」
アルダンの目に光が戻った。おそらく、アルダンは芹沢さんのことを知らない。
「タキオン。君は、10年前のことは」
彼女の目が鋭くなった。
「子供の頃のことだよ?真相なんて知ってるわけがないじゃないか。
でも、叔父さんは素晴らしい人だ。トレーナーとしても、人間としても……いや、面倒な人だけど。汚れたことをしているわけがない」
その通りだ。私もそう信じたい。だが、日本では彼は「黒」となっている。真実は藪の中だ。
「……そうだな」
ざわつく想いを押し殺し、私はそう呟いた。タキオンがやれやれと首を振る。
「叔父さんの話をしたから、お腹が空いたじゃないか。それもラーメンが食べたくなったよ。
モルモット君……はラーメンは作れないな。天王寺トレーナー君、君は作れるかな?」
「すぐに言われて作れるわけがないだろう」
「なんだよ~。私はラーメンが食べたいんだよ~」
タキオンが頬を膨らませる。橋本トレーナーの日々の苦労がよく分かった。
アルダンがおずおずと手を挙げる。
「あの、ラーメンって……最近、天王寺トレーナーはよく他のウマ娘さんを連れて行ってるって聞きました。マックイーンさんやパーマーさんも行ったって」
「あ、ああ」
「私たちも、ご一緒できませんか?無理に、とは言いませんが」
チートデイは近い。まあ、申し出を断る理由はないか。
それに、今度行くつもりの店は……ある意味アルダンに向いた店かもしれない。脚だけでなく、基礎体力に不安を抱える彼女には、エネルギー変換効率の高い食事が必要だからだ。
「明日ならいいだろう。タキオンもそれでいいな?」
「今日じゃないのかよ~。仕方ないな~」
頬を膨らませてタキオンが言う。店が狭いのが少し気になるが、まあ何とかなるか。
「その、タキオンさんの叔父様なら……私の脚も」
「断言はできないけど、治るかもしれないねえ。私もできれば自分で治したいけど」
アルダンの目に光が戻った。おそらく、アルダンは芹沢さんのことを知らない。
「タキオン。君は、10年前のことは」
彼女の目が鋭くなった。
「子供の頃のことだよ?真相なんて知ってるわけがないじゃないか。
でも、叔父さんは素晴らしい人だ。トレーナーとしても、人間としても……いや、面倒な人だけど。汚れたことをしているわけがない」
その通りだ。私もそう信じたい。だが、日本では彼は「黒」となっている。真実は藪の中だ。
「……そうだな」
ざわつく想いを押し殺し、私はそう呟いた。タキオンがやれやれと首を振る。
「叔父さんの話をしたから、お腹が空いたじゃないか。それもラーメンが食べたくなったよ。
モルモット君……はラーメンは作れないな。天王寺トレーナー君、君は作れるかな?」
「すぐに言われて作れるわけがないだろう」
「なんだよ~。私はラーメンが食べたいんだよ~」
タキオンが頬を膨らませる。橋本トレーナーの日々の苦労がよく分かった。
アルダンがおずおずと手を挙げる。
「あの、ラーメンって……最近、天王寺トレーナーはよく他のウマ娘さんを連れて行ってるって聞きました。マックイーンさんやパーマーさんも行ったって」
「あ、ああ」
「私たちも、ご一緒できませんか?無理に、とは言いませんが」
チートデイは近い。まあ、申し出を断る理由はないか。
それに、今度行くつもりの店は……ある意味アルダンに向いた店かもしれない。脚だけでなく、基礎体力に不安を抱える彼女には、エネルギー変換効率の高い食事が必要だからだ。
「明日ならいいだろう。タキオンもそれでいいな?」
「今日じゃないのかよ~。仕方ないな~」
頬を膨らませてタキオンが言う。店が狭いのが少し気になるが、まあ何とかなるか。
326: ◆/4adlfiarI:2022/02/19(土) 20:12:16.64 :JzQJV121O
第7R 「破顔」
第7R 「破顔」
327: ◆/4adlfiarI:2022/02/19(土) 20:13:34.74 :JzQJV121O
実食編は多分明日です。
実食編は多分明日です。
328:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/19(土) 20:32:03.29 :OjpBPp8Lo
おつおつ
芹沢さんとタキオン、言われてみれば似てる所あるな……北海道TVから成り上がった紅白司会も血統に入ってない?
おつおつ
芹沢さんとタキオン、言われてみれば似てる所あるな……北海道TVから成り上がった紅白司会も血統に入ってない?
329: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 14:58:30.24 :MNaDcSqVO
*
「油そば?」
ちゃっかり助手席に座ったカレンが訊く。
「そうだ。今日は油そばを食べに行く」
薄曇りの中を、アウディA4は西に走る。「むー」と不機嫌そうに後部座席のタキオンが唸った。
「油そばぁ!?油まみれの麺なんて健康に悪いじゃないか!何より、スープもないなんて味が薄っぺらいに決まってる」
「芹沢さんには、ろくにラーメンのことを教わってなかったらしいな」
「何を言うんだね!?私が間違っているとでも……」
「私の栄養学の授業そっちのけで内職ばかりしてるから、気付いてないらしいな。よく考えろ、ラーメンでもっとも多く含まれるのは何だ?」
「ハッ、そんなの決まっているだろう?馬鹿にしないでくれ、炭水化物に決まってるじゃあないか」
「そうだ。で、最もエネルギー変換効率の高い炭水化物の摂り方は?」
パン、とアルダンが手を叩く。
「確か、麺だけを食べること……ですよね?」
「その通り。ボクサーが減量明けに食べるもので、最も多いのはうどんだ。それも、余計な水分のない、ぶっかけうどんが望ましい。
弱った胃でも消化がしやすく、かつすぐにエネルギーに変換されるからだ。
ラーメンの麺はぶっかけうどんほど消化は良くない。それでも、カロリーを抑えながら最大限の炭水化物を摂りたいなら、油そばは選択肢に入る。
大体2割、油そばはラーメンよりカロリーが低いのだそうだ」
「フン」とタキオンが鼻を鳴らす。
「そ、そのぐらい知っていたよ。それに、油そばの味は単調じゃないのかい?」
「タレの使い方で千差万別だ。ダシがないから複雑な味わいにはなりにくいが、それでも美味い店は美味い」
「まあ美味しければ万事よし!です!」
バックミラーに妙に得意げなバクシンオーが見えた。まあ、御託はここまでにしておこう。
……芹沢さんに笑われるな。「お前は知識を食いに来ているのか」、と。
*
「油そば?」
ちゃっかり助手席に座ったカレンが訊く。
「そうだ。今日は油そばを食べに行く」
薄曇りの中を、アウディA4は西に走る。「むー」と不機嫌そうに後部座席のタキオンが唸った。
「油そばぁ!?油まみれの麺なんて健康に悪いじゃないか!何より、スープもないなんて味が薄っぺらいに決まってる」
「芹沢さんには、ろくにラーメンのことを教わってなかったらしいな」
「何を言うんだね!?私が間違っているとでも……」
「私の栄養学の授業そっちのけで内職ばかりしてるから、気付いてないらしいな。よく考えろ、ラーメンでもっとも多く含まれるのは何だ?」
「ハッ、そんなの決まっているだろう?馬鹿にしないでくれ、炭水化物に決まってるじゃあないか」
「そうだ。で、最もエネルギー変換効率の高い炭水化物の摂り方は?」
パン、とアルダンが手を叩く。
「確か、麺だけを食べること……ですよね?」
「その通り。ボクサーが減量明けに食べるもので、最も多いのはうどんだ。それも、余計な水分のない、ぶっかけうどんが望ましい。
弱った胃でも消化がしやすく、かつすぐにエネルギーに変換されるからだ。
ラーメンの麺はぶっかけうどんほど消化は良くない。それでも、カロリーを抑えながら最大限の炭水化物を摂りたいなら、油そばは選択肢に入る。
大体2割、油そばはラーメンよりカロリーが低いのだそうだ」
「フン」とタキオンが鼻を鳴らす。
「そ、そのぐらい知っていたよ。それに、油そばの味は単調じゃないのかい?」
「タレの使い方で千差万別だ。ダシがないから複雑な味わいにはなりにくいが、それでも美味い店は美味い」
「まあ美味しければ万事よし!です!」
バックミラーに妙に得意げなバクシンオーが見えた。まあ、御託はここまでにしておこう。
……芹沢さんに笑われるな。「お前は知識を食いに来ているのか」、と。
330: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 15:11:50.25 :MNaDcSqVO
*
「さて、着いたぞ」
「駅前、ですね。……向こうに行列がありますけど、あそこですか?」
アルダンが長蛇の列を指差す。私は苦笑した。
「ああ、あれは違う店だ。『桜台二郎』…… 二郎系列では上位の店だが、今日の目的地はあそこじゃない」
※二郎の行列には……
01~70 誰もいない
71~95 ウマ娘がいる
96~99 二郎が閉店させられている
00 ん?あのハゲは
*
「さて、着いたぞ」
「駅前、ですね。……向こうに行列がありますけど、あそこですか?」
アルダンが長蛇の列を指差す。私は苦笑した。
「ああ、あれは違う店だ。『桜台二郎』…… 二郎系列では上位の店だが、今日の目的地はあそこじゃない」
※二郎の行列には……
01~70 誰もいない
71~95 ウマ娘がいる
96~99 二郎が閉店させられている
00 ん?あのハゲは
331:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 15:46:29.88 :18lILhl+o
ヌッ
ヌッ
332: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 15:58:17.14 :MNaDcSqVO
※並んでいるウマ娘がいる
安価下1~3で最もコンマが大きいものとします。
※並んでいるウマ娘がいる
安価下1~3で最もコンマが大きいものとします。
333:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 16:13:26.24 :UUW6Djnu0
イクノディクタス
イクノディクタス
334:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 16:35:44.84 :JaG6RDGH0
メイショウドトウ
メイショウドトウ
335:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 16:36:36.07 :E67lXcTDO
ゼンノロブロイ
ゼンノロブロイ
336:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 16:55:30.06 :UUW6Djnu0
ツインターボ
ツインターボ
337: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 17:28:03.52 :nu2KD84yO
その時だ。
「ややっ!?あそこにいるのは!?」
そう言うなり、バクシンオーは向こうの行列へと走っていった。……行列に、見た顔がいる。あれは……
「メイショウドトウさんではありませんか!こんにちは!」
「あわわっ!?ば、バクシンオーさんっ!?」
混乱した様子でメイショウドトウが言う。オグリならともかく、彼女が二郎に並ぶというのはかなり意外だ。
「あ、ドトウちゃんだ!どうしたの?こんな所で」
「あう……カレンちゃんまで……違うんです、これは間違えちゃったんですぅ……」
「間違えた?」
「行きたいお店があって、でも駅を間違えちゃって……でもお腹が空いたから何か食べようと思ってたら、いつの間にか行列に巻き込まれちゃって……」
「人の流れに押された、ということか」
目を潤ませながら、ドトウがウンウンと頷いた。
「そもそも、これ何のお店なんですか?ラーメン屋さんみたいだけど、殺伐としてますしぃ……」
「まあ二郎だからな。このまま食べるのか?」
01~20 せっかくだから、食べますぅ……
21~75 助けてくださいぃ……
76~00 お店を教えてくださいぃ……
その時だ。
「ややっ!?あそこにいるのは!?」
そう言うなり、バクシンオーは向こうの行列へと走っていった。……行列に、見た顔がいる。あれは……
「メイショウドトウさんではありませんか!こんにちは!」
「あわわっ!?ば、バクシンオーさんっ!?」
混乱した様子でメイショウドトウが言う。オグリならともかく、彼女が二郎に並ぶというのはかなり意外だ。
「あ、ドトウちゃんだ!どうしたの?こんな所で」
「あう……カレンちゃんまで……違うんです、これは間違えちゃったんですぅ……」
「間違えた?」
「行きたいお店があって、でも駅を間違えちゃって……でもお腹が空いたから何か食べようと思ってたら、いつの間にか行列に巻き込まれちゃって……」
「人の流れに押された、ということか」
目を潤ませながら、ドトウがウンウンと頷いた。
「そもそも、これ何のお店なんですか?ラーメン屋さんみたいだけど、殺伐としてますしぃ……」
「まあ二郎だからな。このまま食べるのか?」
01~20 せっかくだから、食べますぅ……
21~75 助けてくださいぃ……
76~00 お店を教えてくださいぃ……
338:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 17:45:15.07 :znFuPqX00
あ
あ
339:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 18:46:21.48 :hLnE3OUG0
01
01
340:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 19:03:26.19 :6reWywWYO
sageは付けないわ安価二度取ろうとするわで好き放題やってる末尾0は何なんだ
sageは付けないわ安価二度取ろうとするわで好き放題やってる末尾0は何なんだ
341: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 19:18:30.83 :znS1evlKO
「せっかくだから、このまま食べますぅ……。並んだ時間がもったいないですしぃ……」
「まあ、そう言うなら仕方ないな。私たちは近くで食べているから、帰りは送っていこう」
「分かりましたぁ……」
しょんぼりと耳を垂れながらドトウが言った。大丈夫だろうか。
「トレーナーさんっ!二郎ってなんですか!?」
「二郎もラーメンの一種だが、色々特殊でな。ウマ娘にも量が多いから、ドトウが食べられるかどうか」
カレンが渋い顔をしている。
「カレンはあんま好きじゃない。カワイくないし、ウマスタ映えしないし。何よりニンニク臭くなるのがヤ」
「まあ、好き嫌いは分かれるな。ドトウは妙に頑固だから、あのまま食べることにしたんだろうが……」
「それよりお兄ちゃん、油そばのお店は?」
「それならすぐそこだ」
二郎ほどではないが、やはり長蛇の列が見えた。ここが目的地「破顔」だ。
「並んでますね……食券から先に買うのでしょうか」
「そうなってるな。店はかなり狭いから、注意してくれ」
引き戸を開けると、炭の匂いがした。私の体格だと、ギリギリ歩けるかどうかといったところか。
「『ラーメン』って軒先にあるのに、全部『汁なし』じゃないか。油そばとどう違うんだ?」
外からガラス越しにタキオンが訊く。
「基本は大して変わらない。油そばとは違ったタイプの『汁なし』を出す店もあるが、ここはほぼ油そばだな。タレがオイリーなら油そばと呼んで差し支えない。
一応醤油と塩と煮干しがあるが、私が決めていいか?」
「構わないよ」
私は塩の大盛りを5枚購入する。大盛りでも800円は、この物価高騰の折では割と安い。これも、スープに原価を必要としない油そばの強みだ。
「せっかくだから、このまま食べますぅ……。並んだ時間がもったいないですしぃ……」
「まあ、そう言うなら仕方ないな。私たちは近くで食べているから、帰りは送っていこう」
「分かりましたぁ……」
しょんぼりと耳を垂れながらドトウが言った。大丈夫だろうか。
「トレーナーさんっ!二郎ってなんですか!?」
「二郎もラーメンの一種だが、色々特殊でな。ウマ娘にも量が多いから、ドトウが食べられるかどうか」
カレンが渋い顔をしている。
「カレンはあんま好きじゃない。カワイくないし、ウマスタ映えしないし。何よりニンニク臭くなるのがヤ」
「まあ、好き嫌いは分かれるな。ドトウは妙に頑固だから、あのまま食べることにしたんだろうが……」
「それよりお兄ちゃん、油そばのお店は?」
「それならすぐそこだ」
二郎ほどではないが、やはり長蛇の列が見えた。ここが目的地「破顔」だ。
「並んでますね……食券から先に買うのでしょうか」
「そうなってるな。店はかなり狭いから、注意してくれ」
引き戸を開けると、炭の匂いがした。私の体格だと、ギリギリ歩けるかどうかといったところか。
「『ラーメン』って軒先にあるのに、全部『汁なし』じゃないか。油そばとどう違うんだ?」
外からガラス越しにタキオンが訊く。
「基本は大して変わらない。油そばとは違ったタイプの『汁なし』を出す店もあるが、ここはほぼ油そばだな。タレがオイリーなら油そばと呼んで差し支えない。
一応醤油と塩と煮干しがあるが、私が決めていいか?」
「構わないよ」
私は塩の大盛りを5枚購入する。大盛りでも800円は、この物価高騰の折では割と安い。これも、スープに原価を必要としない油そばの強みだ。
342: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 19:47:00.59 :znS1evlKO
*
待つこと20分。私たちが入ると、それだけでほぼカウンターが埋まった。
厨房からの香ばしい匂いが強まる。
「これは……炭火焼、ですか?」
「その通り。客に出す前に炙るんだ」
アルダンが興味津々といった様子で厨房を見る。メジロのお嬢様にとっては、ラーメン屋自体が新鮮なのかもしれない。
タキオンが、カウンターの上のポットを指差した。
「なんだいこれは」
「スープだ。麺をほぼ食い終えた頃に入れる。油そばで追い飯はよくあるが、スープ割りはまあまあ珍しいな」
そうしているうちに、私たちの丼が準備される。向こうから黒煙が上がると、肉の焦げた匂いが強まった。
「塩大盛りです」
麺には、たっぷりの魚粉とネギ。それに海苔と味玉、炭火焼のサイコロチャーシューが添えられている。
「よくかき混ぜ……「バックシーン!」」
また説明する前にバクシンオーが食べ始めていた。
「これはおいしいです!なんというか、力が湧く味です!!」
「……とにかく、ちゃんとかき混ぜて食べよう」
軽く上下に麺を混ぜ、一気に啜り込む。
その瞬間、口の中に魚粉とネギ、そして炭と唐辛子の香りが一気に拡がった。
パシーンッ!!!
ボタンが弾け飛ぶ。洗練という言葉からは程遠い。むしろ、ジャンクフードとすら思える暴力的な荒々しい味だ。
だが、それがいい。スープの雑味がないからこそ、こういう味の組み立てができるわけだ。
「むむっ!!?」
「これは……」
アルダンとタキオンも唸った。
「何というか……シンプルなようで、いくつもの香りがあるのですね……」
「なるほど、塩にした意味はこれだね?辛味が入ってるから、味がぼやけない」
「味覚は芹沢さん譲りか。何で料理がダメなんだ」
「だって料理なんて面倒じゃないか。モルモット君が作ってくれるし」
ウマスタ用の写真を撮り終わったカレンも「おいしー♪」と満足げだ。
「この炭火焼が美味しいね♪柔らかいし、味もしっかりしてる。さすがお兄ちゃん♪」
「味付け卵もおいしいです!さらにバクシンできますっ!」
バクシンオーの丼はもうほとんど空だ。相変わらず速い。
「麺が減ったらスープを少しずつ入れてくれ。また違った味になる」
私もスープ割りに動く。焦がしネギが浮いたスープは、ちょうど町中華のスープを思わせるような柔らかい味わいだ。
出汁の少なさを、香りと工夫で補う。こういう油そばもあっていい。
*
待つこと20分。私たちが入ると、それだけでほぼカウンターが埋まった。
厨房からの香ばしい匂いが強まる。
「これは……炭火焼、ですか?」
「その通り。客に出す前に炙るんだ」
アルダンが興味津々といった様子で厨房を見る。メジロのお嬢様にとっては、ラーメン屋自体が新鮮なのかもしれない。
タキオンが、カウンターの上のポットを指差した。
「なんだいこれは」
「スープだ。麺をほぼ食い終えた頃に入れる。油そばで追い飯はよくあるが、スープ割りはまあまあ珍しいな」
そうしているうちに、私たちの丼が準備される。向こうから黒煙が上がると、肉の焦げた匂いが強まった。
「塩大盛りです」
麺には、たっぷりの魚粉とネギ。それに海苔と味玉、炭火焼のサイコロチャーシューが添えられている。
「よくかき混ぜ……「バックシーン!」」
また説明する前にバクシンオーが食べ始めていた。
「これはおいしいです!なんというか、力が湧く味です!!」
「……とにかく、ちゃんとかき混ぜて食べよう」
軽く上下に麺を混ぜ、一気に啜り込む。
その瞬間、口の中に魚粉とネギ、そして炭と唐辛子の香りが一気に拡がった。
パシーンッ!!!
ボタンが弾け飛ぶ。洗練という言葉からは程遠い。むしろ、ジャンクフードとすら思える暴力的な荒々しい味だ。
だが、それがいい。スープの雑味がないからこそ、こういう味の組み立てができるわけだ。
「むむっ!!?」
「これは……」
アルダンとタキオンも唸った。
「何というか……シンプルなようで、いくつもの香りがあるのですね……」
「なるほど、塩にした意味はこれだね?辛味が入ってるから、味がぼやけない」
「味覚は芹沢さん譲りか。何で料理がダメなんだ」
「だって料理なんて面倒じゃないか。モルモット君が作ってくれるし」
ウマスタ用の写真を撮り終わったカレンも「おいしー♪」と満足げだ。
「この炭火焼が美味しいね♪柔らかいし、味もしっかりしてる。さすがお兄ちゃん♪」
「味付け卵もおいしいです!さらにバクシンできますっ!」
バクシンオーの丼はもうほとんど空だ。相変わらず速い。
「麺が減ったらスープを少しずつ入れてくれ。また違った味になる」
私もスープ割りに動く。焦がしネギが浮いたスープは、ちょうど町中華のスープを思わせるような柔らかい味わいだ。
出汁の少なさを、香りと工夫で補う。こういう油そばもあっていい。
343: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 20:00:17.33 :znS1evlKO
*
「んー、食べた食べた。たまにはこういうのもいいものだねえ」
タキオンが伸びをする。アルダンはというと、私に深々とお辞儀をした。
「天王寺トレーナー、ごちそうさまでした。とても美味しかったです。それに、何か元気が湧いてきたような」
「そう言ってもらえたら何よりだ」
ふと、ドトウのことを思い出した。そういえば、桜台駅前で待ち合わせていたが……
01~50 もう無理ですぅ
51~80 とても美味しかったですぅ
81~99 美味しかったけど、やっぱり……
00 ん?あのハゲは
*
「んー、食べた食べた。たまにはこういうのもいいものだねえ」
タキオンが伸びをする。アルダンはというと、私に深々とお辞儀をした。
「天王寺トレーナー、ごちそうさまでした。とても美味しかったです。それに、何か元気が湧いてきたような」
「そう言ってもらえたら何よりだ」
ふと、ドトウのことを思い出した。そういえば、桜台駅前で待ち合わせていたが……
01~50 もう無理ですぅ
51~80 とても美味しかったですぅ
81~99 美味しかったけど、やっぱり……
00 ん?あのハゲは
344:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:03:23.60 :0HPPe4FS0
ほい
ほい
345:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:05:55.70 :+Am0hvuao
やっぱりウマ娘、量は平気なんですねぇ
やっぱりウマ娘、量は平気なんですねぇ
346: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 20:12:39.21 :znS1evlKO
そう思っていると、ポンポンとタヌキのようにお腹を膨らませたドトウが上機嫌な様子でやってきた。
「あ、ドトウちゃん!大丈夫だった?」
「とても美味しかったですぅ。きしめんみたいな麺にゴロゴロとしたお肉……ああいうラーメンもあるのですねぇ」
どうやらちゃんと食べきったらしい。やはり、ウマ娘の胃袋は常人とは異なるのだろうか。
「ま、まあ満足なら何よ……ちょっと待った、その腹で車に乗れるのか?」
「は、はうう……食べすぎてしまいましたぁ……」
まあ、ギリギリなんとか詰め込めば乗れるか。送ると言った手前、仕方あるまい。
結局帰りの車がニンニク臭くなり、カレンはその後数日口を聞いてくれなくなってしまった。
どうにも一番のドジは私であったらしい。
第7話 完
※テーマが二郎系か○○系の場合、ドトウが登場するようになりました
そう思っていると、ポンポンとタヌキのようにお腹を膨らませたドトウが上機嫌な様子でやってきた。
「あ、ドトウちゃん!大丈夫だった?」
「とても美味しかったですぅ。きしめんみたいな麺にゴロゴロとしたお肉……ああいうラーメンもあるのですねぇ」
どうやらちゃんと食べきったらしい。やはり、ウマ娘の胃袋は常人とは異なるのだろうか。
「ま、まあ満足なら何よ……ちょっと待った、その腹で車に乗れるのか?」
「は、はうう……食べすぎてしまいましたぁ……」
まあ、ギリギリなんとか詰め込めば乗れるか。送ると言った手前、仕方あるまい。
結局帰りの車がニンニク臭くなり、カレンはその後数日口を聞いてくれなくなってしまった。
どうにも一番のドジは私であったらしい。
第7話 完
※テーマが二郎系か○○系の場合、ドトウが登場するようになりました
347: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 20:14:09.86 :znS1evlKO
以上です。桜台二郎はかなり量があった記憶がありますが、今でもそうなのでしょうか。
とりあえず記憶準拠で書いています。
次回登場のウマ娘を決定します。
安価下1~5で、コンマが最も大きいものとします。
以上です。桜台二郎はかなり量があった記憶がありますが、今でもそうなのでしょうか。
とりあえず記憶準拠で書いています。
次回登場のウマ娘を決定します。
安価下1~5で、コンマが最も大きいものとします。
348:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:15:43.48 :E67lXcTDO
ゼンノロブロイ
ゼンノロブロイ
349:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:15:43.59 :+Am0hvuao
ダイタクヘリオス
ダイタクヘリオス
350:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:16:16.86 :cUUcCcR8o
アグネスデジタル
アグネスデジタル
351:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:16:18.75 :0HPPe4FS0
サトイモ
サトイモ
352:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:16:45.81 :6reWywWYO
キタサンブラック
キタサンブラック
353:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:17:17.86 :F3/f5u1/0
ダイワスカーレット
ダイワスカーレット
354: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 20:18:21.80 :znS1evlKO
アグネスデジタルとします。
続いてテーマを決めます。安価下1~5で最もコンマが大きいものとします。
アグネスデジタルとします。
続いてテーマを決めます。安価下1~5で最もコンマが大きいものとします。
355:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:20:23.56 :hLnE3OUG0
東陽町のラーメン麺徳
99
東陽町のラーメン麺徳
99
356:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:23:43.91 :1OzxiLnKO
煮干系
煮干系
357:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:24:50.04 :0HPPe4FS0
池袋付近で美味しいところ
池袋付近で美味しいところ
358:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:28:10.23 :5PLxH6hRO
とみ田
とみ田
359:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:29:20.55 :18lILhl+o
二郎系
二郎系
360: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 20:38:19.95 :znS1evlKO
煮干し系で決定しました。幾つか候補があるので悩ましいですね……
更新は来週末です。
煮干し系で決定しました。幾つか候補があるので悩ましいですね……
更新は来週末です。
361:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:42:00.53 :+Am0hvuao
おつ
芹沢さん登場いつかなー
おつ
芹沢さん登場いつかなー
362: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 20:46:15.80 :znS1evlKO
少し多数決を取ります。
1 ザ・煮干しラーメン
2 煮干し+手打ちラーメン
3 最先端煮干しラーメン
3票先取です。(1の場合、時間が必要になる可能性があります)
少し多数決を取ります。
1 ザ・煮干しラーメン
2 煮干し+手打ちラーメン
3 最先端煮干しラーメン
3票先取です。(1の場合、時間が必要になる可能性があります)
363:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:48:09.41 :5PLxH6hRO
1
1
364:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:52:39.20 :+Am0hvuao
1
1
365:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 20:56:00.00 :JaG6RDGH0
1
1
366: ◆/4adlfiarI:2022/02/20(日) 21:01:55.58 :znS1evlKO
了解です。少し更新が遅れる可能性がある旨ご了承下さい。
了解です。少し更新が遅れる可能性がある旨ご了承下さい。
367:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/20(日) 21:25:00.63 :+Am0hvuao
了解
了解
368:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/21(月) 07:19:01.99 :SHUxHxf6o
369: ◆/4adlfiarI:2022/02/23(水) 20:47:42.52 :3/VFmMLlO
週末が忙しくなりそうなので、早めに更新します。
週末が忙しくなりそうなので、早めに更新します。
370: ◆/4adlfiarI:2022/02/23(水) 20:56:52.83 :oAAi4/WTO
*独自設定がある旨、ご了承下さい。
1時間以内をメドに更新します。
*独自設定がある旨、ご了承下さい。
1時間以内をメドに更新します。
371:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/23(水) 21:10:45.30 :UncfGc7go
おっありがてぇ
おっありがてぇ
372: ◆/4adlfiarI:2022/02/23(水) 21:23:35.10 :tRnoMhkXO
2月末のトレセン学園は、どこか緊張から解き放たれた空気で包まれる。
卒業・進級試験の結果が判明するだけではない。入試の結果発表が行われた直後だからだ。
学園の入試倍率は高い。今年は確か、20倍はあっただろうか。出るのも困難だが、入るのも難しい。宝塚音楽学校並みの超難関と言える。
無論最優先されるのは実技だ。学力試験もあるが、実技が抜きん出ていれば全く問題にはならない。
「バックシン、バックシン……」
向こうでダンベルを持ちながらスクワットを行っている彼女……サクラバクシンオーもそのタイプだ。
学力試験は確か最下位。だが、それを補って余りに余りあるスプリント力で、彼女はここに入学した。
以来、1400mまでのレースで彼女に勝った者はいない。カレンも半バ身まで詰め寄るのが精一杯だった。
「少しオーバーワーク気味だな。高松宮が近いから、気合が入っているのは分かるが」
「ハイッ!!もちろん今年も勝ってみせますとも!何より今年は、親戚が入学するのですから!学級委員長として、そしてお姉ちゃんとして手本を見せねば!!」
「親戚?」
確か、バクシンオーの本籍の名字と同じ合格者はいなかったはずだ。私は首を捻る。
バクシンオーがスクワットをやめ、タオルで汗を拭いた。
「ハイッ!キタサンブラックといいます!!」
「ああ、あの子か」
中距離から長距離にかけての試験で軒並みトップレベルの成績を叩き出した注目株だ。
父親は演歌の超大御所。話題性だけでなく、実力も兼ね備えているスター候補生といえる。
彼女に限らず、今年は話題になりそうな新入生が多い。
里見財閥の御令嬢、サトノダイヤモンド。その親戚で香港のジュニアレースで名を馳せたサトノクラウン。
そして、元メジャーリーガーの父を持つシュヴァルグラン……今年も、いや例年以上に期待できる学年になりそうだ。
「にしても、気が早くないか?……ああ、新入生オリエンテーションでの模擬レースに向けて、か」
「ハイッ!キタちゃんには、是非このチーム『ゼニス』に入ってもらいたいですからっ!」
「うちはマイルまで専用のチームなんだが……」
その時、ドタバタと誰かが駆けてくる音がした。
※コンマ下
01~80 アグネスデジタル
81~95 アグネスタキオン
96~00 たづなさん
2月末のトレセン学園は、どこか緊張から解き放たれた空気で包まれる。
卒業・進級試験の結果が判明するだけではない。入試の結果発表が行われた直後だからだ。
学園の入試倍率は高い。今年は確か、20倍はあっただろうか。出るのも困難だが、入るのも難しい。宝塚音楽学校並みの超難関と言える。
無論最優先されるのは実技だ。学力試験もあるが、実技が抜きん出ていれば全く問題にはならない。
「バックシン、バックシン……」
向こうでダンベルを持ちながらスクワットを行っている彼女……サクラバクシンオーもそのタイプだ。
学力試験は確か最下位。だが、それを補って余りに余りあるスプリント力で、彼女はここに入学した。
以来、1400mまでのレースで彼女に勝った者はいない。カレンも半バ身まで詰め寄るのが精一杯だった。
「少しオーバーワーク気味だな。高松宮が近いから、気合が入っているのは分かるが」
「ハイッ!!もちろん今年も勝ってみせますとも!何より今年は、親戚が入学するのですから!学級委員長として、そしてお姉ちゃんとして手本を見せねば!!」
「親戚?」
確か、バクシンオーの本籍の名字と同じ合格者はいなかったはずだ。私は首を捻る。
バクシンオーがスクワットをやめ、タオルで汗を拭いた。
「ハイッ!キタサンブラックといいます!!」
「ああ、あの子か」
中距離から長距離にかけての試験で軒並みトップレベルの成績を叩き出した注目株だ。
父親は演歌の超大御所。話題性だけでなく、実力も兼ね備えているスター候補生といえる。
彼女に限らず、今年は話題になりそうな新入生が多い。
里見財閥の御令嬢、サトノダイヤモンド。その親戚で香港のジュニアレースで名を馳せたサトノクラウン。
そして、元メジャーリーガーの父を持つシュヴァルグラン……今年も、いや例年以上に期待できる学年になりそうだ。
「にしても、気が早くないか?……ああ、新入生オリエンテーションでの模擬レースに向けて、か」
「ハイッ!キタちゃんには、是非このチーム『ゼニス』に入ってもらいたいですからっ!」
「うちはマイルまで専用のチームなんだが……」
その時、ドタバタと誰かが駆けてくる音がした。
※コンマ下
01~80 アグネスデジタル
81~95 アグネスタキオン
96~00 たづなさん
373:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/23(水) 21:49:55.90 :UncfGc7go
やばい人
374: ◆/4adlfiarI:2022/02/23(水) 22:25:33.86 :tRnoMhkXO
バン、とドアが開かれた。アグネスタキオンだ。
「天王寺トレーナー君!大ニュースだ、来年度から叔父さんがトレセン学園に戻るらしい!!」
「……本当か!?」
タキオンにしては珍しく、緊張した様子で頷く。
「中国での実績が評価されて、特例で追放処分が解かれるそうだ。過去のウマ娘に対するドーピング疑惑も、解けたらしい」
筋肉を流れる血が加速し、身体が紅潮するのが分かった。思わず顔が綻ぶ。
「本当かっ!!」
「叔父さんから連絡があったから間違いないよ。……ただ、気になることを」
「気になること?」
コクン、とタキオンが頷く。
「『俺をハメた連中には、報いを受けさせないとな』、だそうだ」
タキオンの顔が強張っていた理由が分かった。芹沢さんは、善人ではない。目的のためには手段を選ばないこともある。
私は昔のドーピング疑惑の真相は知らない。そしてそれが急に解かれたのも、かなりキナ臭い。……胸騒ぎがする。
「……そうか」
「何か企んでいるかもしれない。もちろんトレーナーとしては一流だが……気を付けた方がいいかもね」
「了解した」
その時、また向こうからドタバタとやってくる小柄な人影が見えた。……あれは。
「タキオンさんタキオンさん聞きました!!?今年の新入生、超推せるのばっかなんですけど!?入学前から尊死しそう……しゅきぃ……」
「デジタル君、そこで倒れそうにならないでくれたまえよ。入試結果発表後で、興奮するのは分かるが」
「今年の1年はどんなカップリングでしゅかねえ!?ウオダスを超える組み合せがあるかもしれないですねえ!?やっぱここはキタサト……っと、天王寺トレーナーじゃありませんか!こんにちは、今日はカレンちゃんは?」
「脚の定期検査だ。一応あんなことがあっただけに、念には念を入れてな」
アグネスデジタルが分かりやすく肩を落とした。
「そうですか……バクカレ、ありだと思うんですけどねえ……」
「バクカレとはなんですかっ!?」
バクシンオーがいつもの調子でやってきた。デジタルは「はわわっ」とタキオンの後ろに隠れる。
「そんな、現役最強スプリンターの御前で私などミジンコのようなもの……無礼な物言いをしてしゅみません、消えて詫びます……」
「どうして君はそう卑屈なんだか……君自身も優秀なオールラウンダーじゃないか」
ブンブンとデジタルが首を振る。
「私はそっと影から推しのあれやこれやを見るだけで十分なんですよお……ああ、後光で目が潰れてしまう……」
「何を言ってるのかよく分からないが。実際に話した方が、より距離が詰まるんじゃないか?
カレンと君は、確かクラスメートだろう。友達になりたいなら、場をセッティングするが」
「ひゃあっ!!?」
私の言葉に、デジタルが飛び退いた。
「そ、そんな恐れ多い……!!」
「いい機会じゃないか、行きたまえよ。そうだ、チートデイが今週末だったね。この前は私とアルダンさんがご相伴に預かったが、今度は君がどうだい」
「ひゃっ!?わ、私がですか!?」
私は微笑みながら首を縦に振る。
「私は構わないよ。ラーメンを食べるつもりだが、何かリクエストはあるかな?」
デジタルが少し考える素振りをした。
「……煮干し。そう!!煮干しです!!アイドルユニット『UMA48』の『ソダにゃん』が、煮干しラーメンが大好物と聞きまして!私もどんなものか食べたいんです!!」
「煮干し、か」
バン、とドアが開かれた。アグネスタキオンだ。
「天王寺トレーナー君!大ニュースだ、来年度から叔父さんがトレセン学園に戻るらしい!!」
「……本当か!?」
タキオンにしては珍しく、緊張した様子で頷く。
「中国での実績が評価されて、特例で追放処分が解かれるそうだ。過去のウマ娘に対するドーピング疑惑も、解けたらしい」
筋肉を流れる血が加速し、身体が紅潮するのが分かった。思わず顔が綻ぶ。
「本当かっ!!」
「叔父さんから連絡があったから間違いないよ。……ただ、気になることを」
「気になること?」
コクン、とタキオンが頷く。
「『俺をハメた連中には、報いを受けさせないとな』、だそうだ」
タキオンの顔が強張っていた理由が分かった。芹沢さんは、善人ではない。目的のためには手段を選ばないこともある。
私は昔のドーピング疑惑の真相は知らない。そしてそれが急に解かれたのも、かなりキナ臭い。……胸騒ぎがする。
「……そうか」
「何か企んでいるかもしれない。もちろんトレーナーとしては一流だが……気を付けた方がいいかもね」
「了解した」
その時、また向こうからドタバタとやってくる小柄な人影が見えた。……あれは。
「タキオンさんタキオンさん聞きました!!?今年の新入生、超推せるのばっかなんですけど!?入学前から尊死しそう……しゅきぃ……」
「デジタル君、そこで倒れそうにならないでくれたまえよ。入試結果発表後で、興奮するのは分かるが」
「今年の1年はどんなカップリングでしゅかねえ!?ウオダスを超える組み合せがあるかもしれないですねえ!?やっぱここはキタサト……っと、天王寺トレーナーじゃありませんか!こんにちは、今日はカレンちゃんは?」
「脚の定期検査だ。一応あんなことがあっただけに、念には念を入れてな」
アグネスデジタルが分かりやすく肩を落とした。
「そうですか……バクカレ、ありだと思うんですけどねえ……」
「バクカレとはなんですかっ!?」
バクシンオーがいつもの調子でやってきた。デジタルは「はわわっ」とタキオンの後ろに隠れる。
「そんな、現役最強スプリンターの御前で私などミジンコのようなもの……無礼な物言いをしてしゅみません、消えて詫びます……」
「どうして君はそう卑屈なんだか……君自身も優秀なオールラウンダーじゃないか」
ブンブンとデジタルが首を振る。
「私はそっと影から推しのあれやこれやを見るだけで十分なんですよお……ああ、後光で目が潰れてしまう……」
「何を言ってるのかよく分からないが。実際に話した方が、より距離が詰まるんじゃないか?
カレンと君は、確かクラスメートだろう。友達になりたいなら、場をセッティングするが」
「ひゃあっ!!?」
私の言葉に、デジタルが飛び退いた。
「そ、そんな恐れ多い……!!」
「いい機会じゃないか、行きたまえよ。そうだ、チートデイが今週末だったね。この前は私とアルダンさんがご相伴に預かったが、今度は君がどうだい」
「ひゃっ!?わ、私がですか!?」
私は微笑みながら首を縦に振る。
「私は構わないよ。ラーメンを食べるつもりだが、何かリクエストはあるかな?」
デジタルが少し考える素振りをした。
「……煮干し。そう!!煮干しです!!アイドルユニット『UMA48』の『ソダにゃん』が、煮干しラーメンが大好物と聞きまして!私もどんなものか食べたいんです!!」
「煮干し、か」
375: ◆/4adlfiarI:2022/02/23(水) 22:34:14.69 :tRnoMhkXO
煮干しラーメンといっても色々ある。元祖は津軽ラーメンとされているが、それも透明度の高い清湯系とたかはし中華そば店のような濃厚系に分かれる。
そこから派生したものや、たけちゃんにぼしらーめんのようなタイプ、そしてフレンチの技法を導入した最先端のものと多種多様だ。
何より、煮干しラーメンは割と好き嫌いが分かれる。煮干し特有の苦味やエグみ、そしてしょっぱさが出ることが多いからだ。
それを中和するために、大体は玉ねぎのみじん切りが具に入る。それでも、癖のある店は多い。
「……万人向けのがいいか?」
デジタルの答えは意外なものだった。
「いえっ!ザ・煮干しラーメンみたいなのはいいです!!『ソダにゃん』も『ニボニボしたのがたまらないよお』って言ってましたし!」
「……そうか」
そうなれば、煮干しの「極致」に連れて行くよりほかあるまい。
私はニヤッと笑った。
「了解だ。ならば日本で最も濃いラーメン屋に行くとしよう」
煮干しラーメンといっても色々ある。元祖は津軽ラーメンとされているが、それも透明度の高い清湯系とたかはし中華そば店のような濃厚系に分かれる。
そこから派生したものや、たけちゃんにぼしらーめんのようなタイプ、そしてフレンチの技法を導入した最先端のものと多種多様だ。
何より、煮干しラーメンは割と好き嫌いが分かれる。煮干し特有の苦味やエグみ、そしてしょっぱさが出ることが多いからだ。
それを中和するために、大体は玉ねぎのみじん切りが具に入る。それでも、癖のある店は多い。
「……万人向けのがいいか?」
デジタルの答えは意外なものだった。
「いえっ!ザ・煮干しラーメンみたいなのはいいです!!『ソダにゃん』も『ニボニボしたのがたまらないよお』って言ってましたし!」
「……そうか」
そうなれば、煮干しの「極致」に連れて行くよりほかあるまい。
私はニヤッと笑った。
「了解だ。ならば日本で最も濃いラーメン屋に行くとしよう」
376: ◆/4adlfiarI:2022/02/23(水) 22:34:57.94 :tRnoMhkXO
第8R 「中華ソバ 伊吹」
第8R 「中華ソバ 伊吹」
377: ◆/4adlfiarI:2022/02/23(水) 22:35:25.35 :tRnoMhkXO
次回更新は多分土曜です。
次回更新は多分土曜です。
378:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/24(木) 00:46:15.46 :Tuh0jbWLo
おつ
おつ
379:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/24(木) 22:23:11.69 :WF7LhHQkO
そのソダにゃん白毛で目元にちょっと黒いほくろがある娘だったりしない?
そのソダにゃん白毛で目元にちょっと黒いほくろがある娘だったりしない?
380:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/24(木) 22:35:42.09 :z4VCscRyO
ageるなゆーとるねん
ageるなゆーとるねん
381: ◆/4adlfiarI:2022/02/26(土) 19:39:13.61 :ZEh2cF8AO
*
「で、どこまで行くんですかー?」
興奮を隠しきれない様子でデジタルが言う。助手席のカレンは少し引き気味だ。
「デジタルちゃん、ちょっと落ち着いて」
「これがテンション上げずにいられますか!?
バクシンオーさんにカレンちゃん、スプリント界のツートップとご一緒できるだけでも尊死できるのに、ひょっとしたら行く先に『ソダにゃん』がいたりするかも……はあ、ほんと無理……」
「いや、アイドルが一人でラーメン屋に並ばないと思うよ……ねえ、お兄ちゃん」
私は苦笑した。
「まあ、な。特に今日の目的地は、とても女性向けの店じゃないからな」
「そうなの?」
「まあ、行けば分かるが……辺鄙だし、雰囲気はまあまあ殺伐としている。しかも味は超ストロングスタイルだ。
女性が入りやすいラーメン屋はかなり増えてきたし、内装に凝る店も多いが、まあそういう流れには全く逆行する店だな」
「むう。カワイくないのはちょっとつまんないかも」
「その分味は間違いない。何せ普通の『特濃』を名乗る煮干しラーメンより、倍の量を使ってるからな」
後部座席のバクシンオーが「ハイッ!!」と手を挙げた。
「煮干しラーメンって何ですか!?」
「いやいやバクちゃん、それは煮干しを使ってるから煮干しラーメンって……」
「いや、重要な問いだぞ、カレン。そもそも、多くのラーメン店がスープに大なり小なり煮干しを使う。
そのスープの主成分が煮干しだから煮干しラーメンというわけだが、それも色々種類がある」
「そうなの?」
うんうんとデジタルが頷く。
「さすが天王寺トレーナーさん!『ソダにゃん』もそう言ってました」
「随分そのアイドルは詳しいんだな。しかしトレセン学園の生徒じゃないだろう」
「入学前って聞いてますよ。来年辺り入るとか入らないとか。ひょっとしたら海外に行くかもって聞いてますけど」
「私よりよく知ってるな……」
「そりゃあウマ娘ちゃんの情報なら、本格デビュー前から情報収集は怠りませんとも!」
デビュー前からアイドル活動、ということはジュニアアイドルか。芸能界にはどうにも疎くていけない。
※コンマ下85以上で……
*
「で、どこまで行くんですかー?」
興奮を隠しきれない様子でデジタルが言う。助手席のカレンは少し引き気味だ。
「デジタルちゃん、ちょっと落ち着いて」
「これがテンション上げずにいられますか!?
バクシンオーさんにカレンちゃん、スプリント界のツートップとご一緒できるだけでも尊死できるのに、ひょっとしたら行く先に『ソダにゃん』がいたりするかも……はあ、ほんと無理……」
「いや、アイドルが一人でラーメン屋に並ばないと思うよ……ねえ、お兄ちゃん」
私は苦笑した。
「まあ、な。特に今日の目的地は、とても女性向けの店じゃないからな」
「そうなの?」
「まあ、行けば分かるが……辺鄙だし、雰囲気はまあまあ殺伐としている。しかも味は超ストロングスタイルだ。
女性が入りやすいラーメン屋はかなり増えてきたし、内装に凝る店も多いが、まあそういう流れには全く逆行する店だな」
「むう。カワイくないのはちょっとつまんないかも」
「その分味は間違いない。何せ普通の『特濃』を名乗る煮干しラーメンより、倍の量を使ってるからな」
後部座席のバクシンオーが「ハイッ!!」と手を挙げた。
「煮干しラーメンって何ですか!?」
「いやいやバクちゃん、それは煮干しを使ってるから煮干しラーメンって……」
「いや、重要な問いだぞ、カレン。そもそも、多くのラーメン店がスープに大なり小なり煮干しを使う。
そのスープの主成分が煮干しだから煮干しラーメンというわけだが、それも色々種類がある」
「そうなの?」
うんうんとデジタルが頷く。
「さすが天王寺トレーナーさん!『ソダにゃん』もそう言ってました」
「随分そのアイドルは詳しいんだな。しかしトレセン学園の生徒じゃないだろう」
「入学前って聞いてますよ。来年辺り入るとか入らないとか。ひょっとしたら海外に行くかもって聞いてますけど」
「私よりよく知ってるな……」
「そりゃあウマ娘ちゃんの情報なら、本格デビュー前から情報収集は怠りませんとも!」
デビュー前からアイドル活動、ということはジュニアアイドルか。芸能界にはどうにも疎くていけない。
※コンマ下85以上で……
382:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 19:39:34.12 :HViMzAV9o
むん!
383: ◆/4adlfiarI:2022/02/26(土) 20:00:27.32 :vvyyVwDcO
※特になし
「で、どういう種類があるの?煮干しラーメンって、もう一大ジャンルになってるけど」
カレンが訊いてきた。私はハンドルを板橋方面に切る。
「よく言われるのは青森ラーメン起源説だな。津軽海峡の漁師を相手にした食堂が、普段からたくさん取れる煮干しをスープに使ったのが始まりとされる。
透き通ったスープに濃くてしょっぱめの煮干しスープが定番だ。新宿の『凪』は、確かこの系統だな。
ただ、濃厚煮干しラーメンがここまでブレイクしたのは、別の理由があるんじゃないかと私は考えている」
「そうなの?」
「『伊藤』という店が濃厚煮干しに細くパツパツとした麺を合わせて流行したのが大きい。ここは元々秋田の角館にあるんだが、その店主の弟が東京でやってる。
煮干しの苦味やエグみも旨味として取り込んだスープが話題になってな。今は銀座や赤羽にも支店がある。このフォロワーが、煮干しラーメンを広めたってわけだ」
「じゃあ、今日はその『伊藤』に?」
「その近所だが違う。『伊藤』の方向性をさらに尖らせ、極めた店だ」
板橋本町インターが見えてきた。目的地まで、もうそう遠くもない。
※目的地には……
01~75 誰もいない
75~95 誰かいる(再判定)
96~00 あ!ソダにゃんだ!(再判定)
※特になし
「で、どういう種類があるの?煮干しラーメンって、もう一大ジャンルになってるけど」
カレンが訊いてきた。私はハンドルを板橋方面に切る。
「よく言われるのは青森ラーメン起源説だな。津軽海峡の漁師を相手にした食堂が、普段からたくさん取れる煮干しをスープに使ったのが始まりとされる。
透き通ったスープに濃くてしょっぱめの煮干しスープが定番だ。新宿の『凪』は、確かこの系統だな。
ただ、濃厚煮干しラーメンがここまでブレイクしたのは、別の理由があるんじゃないかと私は考えている」
「そうなの?」
「『伊藤』という店が濃厚煮干しに細くパツパツとした麺を合わせて流行したのが大きい。ここは元々秋田の角館にあるんだが、その店主の弟が東京でやってる。
煮干しの苦味やエグみも旨味として取り込んだスープが話題になってな。今は銀座や赤羽にも支店がある。このフォロワーが、煮干しラーメンを広めたってわけだ」
「じゃあ、今日はその『伊藤』に?」
「その近所だが違う。『伊藤』の方向性をさらに尖らせ、極めた店だ」
板橋本町インターが見えてきた。目的地まで、もうそう遠くもない。
※目的地には……
01~75 誰もいない
75~95 誰かいる(再判定)
96~00 あ!ソダにゃんだ!(再判定)
384:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 20:07:56.68 :O0r5MW53O
バクシン!
385: ◆/4adlfiarI:2022/02/26(土) 20:16:32.63 :p9rWvgZuO
※通常進行
大きな公園近くの駐車場にアウディを停め、店に向かうと開店前というのに既に行列ができ始めていた。
「こんな所にラーメン屋があるんですねえ」
「『場所代をいかに抑えるかが美味いラーメンを作る秘訣だ』と、ある超有名店の店主が言ってたな。辺鄙な場所にある店は、大体美味い」
店の前には幾つも注意書きが書かれている。少し異様な雰囲気ではある。
「『本当に煮干しが好きな人向けの店です』……と。そんなに濃いの?」
「さっきも言ったが、『特濃』をうたう店の倍煮干しを使ってる。1杯辺り何グラムだと思う?」
カレンは少し考えて言う。
※何グラムでしょう?当たった場合、実食後に……
安価下のみ、制限時間10分です。
※通常進行
大きな公園近くの駐車場にアウディを停め、店に向かうと開店前というのに既に行列ができ始めていた。
「こんな所にラーメン屋があるんですねえ」
「『場所代をいかに抑えるかが美味いラーメンを作る秘訣だ』と、ある超有名店の店主が言ってたな。辺鄙な場所にある店は、大体美味い」
店の前には幾つも注意書きが書かれている。少し異様な雰囲気ではある。
「『本当に煮干しが好きな人向けの店です』……と。そんなに濃いの?」
「さっきも言ったが、『特濃』をうたう店の倍煮干しを使ってる。1杯辺り何グラムだと思う?」
カレンは少し考えて言う。
※何グラムでしょう?当たった場合、実食後に……
安価下のみ、制限時間10分です。
386:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 20:24:07.00 :HViMzAV9o
100g
387:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 20:24:37.90 :pgwQUzTqo
500
500
388: ◆/4adlfiarI:2022/02/26(土) 20:50:11.81 :p9rWvgZuO
※不正解、今回の○○の登場はなし
「100グラム、かなあ」
「残念、不正解だ」
「えー、確か『凪』で50グラムでしょ?その倍だからそのぐらいって思ったのに」
「まあ『凪』も濃い方だがな。ただ、ここ『中華ソバ伊吹』は別格だ。
最近量を増やして160グラムにしたらしい。スープの半分が煮干し、と聞いたらいかに狂ってるか分かるだろう?」
「……160グラム??そんなに使ったら、味も何も……」
私はニイと笑う。
「それが違う。まず、煮干しは全国から厳選された各種煮干しをブレンドして使っている。
しかも仕入れによって配合も変えてるらしいな。今日は……九十九里の背黒と長崎のアゴ煮干し、それと背黒二種とあるな」
後ろからデジタルがスマホを覗き込んできた。
「ひょえー、その日の配合をウマッターにアップしてるんですねえ……淡麗と濃厚って?」
「淡麗は水から炊いたスープ、濃厚はそこに動物系スープを合わせたものだな。まあ、どちらも超が付くほど濃いぞ……っと、食券を買わないとな」
店員の呼び出しに応じて、店内に入る。店内には全国各地の煮干しが入った段ボールがそこかしこに積まれていた。
「にょわっ!!?この濃厚な匂いっ!!まさに煮干しっ!!」
「お客さん、お静かに」
目付きの鋭い、大柄な店主がバクシンオーを睨む。その威圧感に、バクシンオーは思わずたじろいだ。
「は、はいぃ……」
再び列に戻る。
「……なるほど、女の子向けの店じゃないね、お兄ちゃん」
「まあ殺伐としてるからな。ここに女の子一人で来るのは考えにくいな。
ただ、味は本当に全国のラーメンの中でも上位ベスト10には入る。そこは保証する」
「うう、『ソダにゃん』には会えそうもないですねぇ……」
デジタルが肩を落とした。店員がもう一度私たちを呼ぶ。順番であるらしい。
※不正解、今回の○○の登場はなし
「100グラム、かなあ」
「残念、不正解だ」
「えー、確か『凪』で50グラムでしょ?その倍だからそのぐらいって思ったのに」
「まあ『凪』も濃い方だがな。ただ、ここ『中華ソバ伊吹』は別格だ。
最近量を増やして160グラムにしたらしい。スープの半分が煮干し、と聞いたらいかに狂ってるか分かるだろう?」
「……160グラム??そんなに使ったら、味も何も……」
私はニイと笑う。
「それが違う。まず、煮干しは全国から厳選された各種煮干しをブレンドして使っている。
しかも仕入れによって配合も変えてるらしいな。今日は……九十九里の背黒と長崎のアゴ煮干し、それと背黒二種とあるな」
後ろからデジタルがスマホを覗き込んできた。
「ひょえー、その日の配合をウマッターにアップしてるんですねえ……淡麗と濃厚って?」
「淡麗は水から炊いたスープ、濃厚はそこに動物系スープを合わせたものだな。まあ、どちらも超が付くほど濃いぞ……っと、食券を買わないとな」
店員の呼び出しに応じて、店内に入る。店内には全国各地の煮干しが入った段ボールがそこかしこに積まれていた。
「にょわっ!!?この濃厚な匂いっ!!まさに煮干しっ!!」
「お客さん、お静かに」
目付きの鋭い、大柄な店主がバクシンオーを睨む。その威圧感に、バクシンオーは思わずたじろいだ。
「は、はいぃ……」
再び列に戻る。
「……なるほど、女の子向けの店じゃないね、お兄ちゃん」
「まあ殺伐としてるからな。ここに女の子一人で来るのは考えにくいな。
ただ、味は本当に全国のラーメンの中でも上位ベスト10には入る。そこは保証する」
「うう、『ソダにゃん』には会えそうもないですねぇ……」
デジタルが肩を落とした。店員がもう一度私たちを呼ぶ。順番であるらしい。
389: ◆/4adlfiarI:2022/02/26(土) 21:27:53.02 :p9rWvgZuO
濃厚と和え玉4枚を店員に渡す。いつもはハイテンションなバクシンオーだが、さっき注意されたからか珍しく大人しい。
「ウマスタにアップするのは?」
「着丼直後の撮影はいいそうだ」
「よかったー。にしても……すごいね」
カレンがちらりと隣の客の丼を見る。スープはどこまでも濃く、セメントのような粘度だ。
「食うとさらに驚くぞ。……と着丼だ」
丼の半分ぐらいが分厚いチャーシューで覆われている。そこに海苔と刻みタマネギ。煮干しのエグみを中和するのに、タマネギは欠かせない。
まずはレンゲでスープをすくう。ドロっとしていて、見るからに濃い。口に含むと……
パシーンッ!!
ワイシャツのボタンが弾け飛んだ。バクシンオーは「バック……」と叫びかけたが、自分で口を塞いでいる。
強烈、かつ鮮烈な煮干しの香りと旨味が口いっぱいに広がる。
しかし、一切の苦味やエグみはない。煮干し特有のしょっぱさは感じるが、それは煮干しの風味を損なわない、極めて微妙なバランスで留められている。
「「美味しい……!!」」
カレンとデジタルが同時に呟いた。この強烈な味は、理屈抜きで人にそう言わせるだけのものを持っている。
箸で麺をリフトアップする。細ストレート麺で、かなり硬めの茹で上がりだ。そこには特濃のスープが、ガッツリと絡んでいる。
啜ると、パキパキとした食感と共に煮干しがこれでもかと舌を刺激する。まるでスープを食べているかのようだ。
そのパワーに、箸が止まらなくなる。スープは飲んでもいないのにみるみる減り、あっという間に半分ほどになっていた。
ふと見ると、バクシンオーはほぼ食べ終えようとしている。……これは少しまずい。
「バクシンオー、スープがなくなる前に和え玉を」
「にょわっ!?でも、どう食べればいいのですか?」
「『高野』のように別に食べてもいいが、ここはつけ麺みたいに食べた方がいいな」
私もそろそろ頃合いだ。店員に和え玉を作ってもらうよう頼む。
濃厚と和え玉4枚を店員に渡す。いつもはハイテンションなバクシンオーだが、さっき注意されたからか珍しく大人しい。
「ウマスタにアップするのは?」
「着丼直後の撮影はいいそうだ」
「よかったー。にしても……すごいね」
カレンがちらりと隣の客の丼を見る。スープはどこまでも濃く、セメントのような粘度だ。
「食うとさらに驚くぞ。……と着丼だ」
丼の半分ぐらいが分厚いチャーシューで覆われている。そこに海苔と刻みタマネギ。煮干しのエグみを中和するのに、タマネギは欠かせない。
まずはレンゲでスープをすくう。ドロっとしていて、見るからに濃い。口に含むと……
パシーンッ!!
ワイシャツのボタンが弾け飛んだ。バクシンオーは「バック……」と叫びかけたが、自分で口を塞いでいる。
強烈、かつ鮮烈な煮干しの香りと旨味が口いっぱいに広がる。
しかし、一切の苦味やエグみはない。煮干し特有のしょっぱさは感じるが、それは煮干しの風味を損なわない、極めて微妙なバランスで留められている。
「「美味しい……!!」」
カレンとデジタルが同時に呟いた。この強烈な味は、理屈抜きで人にそう言わせるだけのものを持っている。
箸で麺をリフトアップする。細ストレート麺で、かなり硬めの茹で上がりだ。そこには特濃のスープが、ガッツリと絡んでいる。
啜ると、パキパキとした食感と共に煮干しがこれでもかと舌を刺激する。まるでスープを食べているかのようだ。
そのパワーに、箸が止まらなくなる。スープは飲んでもいないのにみるみる減り、あっという間に半分ほどになっていた。
ふと見ると、バクシンオーはほぼ食べ終えようとしている。……これは少しまずい。
「バクシンオー、スープがなくなる前に和え玉を」
「にょわっ!?でも、どう食べればいいのですか?」
「『高野』のように別に食べてもいいが、ここはつけ麺みたいに食べた方がいいな」
私もそろそろ頃合いだ。店員に和え玉を作ってもらうよう頼む。
390: ◆/4adlfiarI:2022/02/26(土) 21:48:53.73 :p9rWvgZuO
「お待たせしました」
麺の上に何かの粉末がかけられたものが出された。鶏肉のそぼろのようなものか。
これをスープにつけて啜ると、動物系の旨味が足され、味にさらに深みが増した。
「バクシンバクシン……!!」
小声で言いながら、物凄い勢いでバクシンオーが和え玉を食べている。箸が進むのも無理はない。
これまで放置していたチャーシューも口にする。まるで二郎系のような、存在感十分の豚だ。
噛み切ると柔らかく、味もしっかり染みている。これもまた上質だ。
「ううっ……」
見るとデジタルが泣いている。
「デジタルちゃん、どうしたの?」
「『ソダにゃん』にもこの味を食べてほしかった……こんな美味しい煮干しラーメンを知らないなら、それは悲しすぎましゅ……」
「彼女が入学したら、先輩として連れて行ってやればいいじゃないか」
「……!!それもそうですね!!ああ、その時を考えたら……!!推しとラーメン、いい……」
店主が溜め息をついているのが見えた。これはそろそろ撤収時だな。
「申し訳ない、ご馳走様」
「天王寺さん」
去ろうとした私を、店主が呼び止めた。
「……何か?」
「芹沢サン、戻ってくるんだって?」
「……!!なぜそれを」
「業界じゃ有名な話さ。トレーナーのあなたなら、詳しい話を知ってるんじゃないかってね」
「うちに復帰すると聞いてますが」
「……そうか」
安堵とも落胆とも取れる溜め息を、彼はついた。そうか、ラーメン界に復帰するとなれば、それは激震に他ならない。
「らあめん清流房」。かつて日本の頂点に君臨したラーメン店。
彼の復帰は、その復活を意味するからだ。
「お待たせしました」
麺の上に何かの粉末がかけられたものが出された。鶏肉のそぼろのようなものか。
これをスープにつけて啜ると、動物系の旨味が足され、味にさらに深みが増した。
「バクシンバクシン……!!」
小声で言いながら、物凄い勢いでバクシンオーが和え玉を食べている。箸が進むのも無理はない。
これまで放置していたチャーシューも口にする。まるで二郎系のような、存在感十分の豚だ。
噛み切ると柔らかく、味もしっかり染みている。これもまた上質だ。
「ううっ……」
見るとデジタルが泣いている。
「デジタルちゃん、どうしたの?」
「『ソダにゃん』にもこの味を食べてほしかった……こんな美味しい煮干しラーメンを知らないなら、それは悲しすぎましゅ……」
「彼女が入学したら、先輩として連れて行ってやればいいじゃないか」
「……!!それもそうですね!!ああ、その時を考えたら……!!推しとラーメン、いい……」
店主が溜め息をついているのが見えた。これはそろそろ撤収時だな。
「申し訳ない、ご馳走様」
「天王寺さん」
去ろうとした私を、店主が呼び止めた。
「……何か?」
「芹沢サン、戻ってくるんだって?」
「……!!なぜそれを」
「業界じゃ有名な話さ。トレーナーのあなたなら、詳しい話を知ってるんじゃないかってね」
「うちに復帰すると聞いてますが」
「……そうか」
安堵とも落胆とも取れる溜め息を、彼はついた。そうか、ラーメン界に復帰するとなれば、それは激震に他ならない。
「らあめん清流房」。かつて日本の頂点に君臨したラーメン店。
彼の復帰は、その復活を意味するからだ。
391: ◆/4adlfiarI:2022/02/26(土) 21:56:52.75 :p9rWvgZuO
*
「あー美味しかった!!雰囲気は殺伐としてましたが、本当に美味しかったですねえ!!」
「ハイッ!花マル、いえ花マル三重丸の美味しさだったでしょう!!」
「次来る時は声は抑えめにね……お兄ちゃん?」
はしゃぐ3人をよそに、私は物思いにふけっていた。
そうか、ラーメン界にも芹沢さんの復帰は伝わっていたのか。
彼は日本追放と共に、「らあめん清流房」も閉めた。
毒舌で知られる彼の店の閉店を一部の同業者は喜んだが、大半はそれを心より惜しんだ。私もその一人だ。
もし、彼が再び二足のわらじを履くなら、清流房も復活するかもしれない。
その時に、芹沢さんは何を作るのだろうか。
それは喜ばしい話のはずだ。しかし、妙に心がざわつく。
タキオンが言っていた「報い」とは、まさかラーメン界にも向けられているのではないか?
私は首を振る。考えすぎだ。
*
そのことが分かるまでに、そう時間はかからなかった。
第8話 完
*
「あー美味しかった!!雰囲気は殺伐としてましたが、本当に美味しかったですねえ!!」
「ハイッ!花マル、いえ花マル三重丸の美味しさだったでしょう!!」
「次来る時は声は抑えめにね……お兄ちゃん?」
はしゃぐ3人をよそに、私は物思いにふけっていた。
そうか、ラーメン界にも芹沢さんの復帰は伝わっていたのか。
彼は日本追放と共に、「らあめん清流房」も閉めた。
毒舌で知られる彼の店の閉店を一部の同業者は喜んだが、大半はそれを心より惜しんだ。私もその一人だ。
もし、彼が再び二足のわらじを履くなら、清流房も復活するかもしれない。
その時に、芹沢さんは何を作るのだろうか。
それは喜ばしい話のはずだ。しかし、妙に心がざわつく。
タキオンが言っていた「報い」とは、まさかラーメン界にも向けられているのではないか?
私は首を振る。考えすぎだ。
*
そのことが分かるまでに、そう時間はかからなかった。
第8話 完
392: ◆/4adlfiarI:2022/02/26(土) 21:59:33.08 :p9rWvgZuO
今回はここまで。そろそろ芹沢サンも出したいところではあります。
次回登場のウマ娘を決めます。
安価下1~5で、コンマが最も大きいものとします。
今回はここまで。そろそろ芹沢サンも出したいところではあります。
次回登場のウマ娘を決めます。
安価下1~5で、コンマが最も大きいものとします。
393:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:00:15.18 :MmUJPZM60
ゼンノロブロイ
ゼンノロブロイ
394:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:00:18.68 :hGRYtTUG0
流行りのキタサンブラック
流行りのキタサンブラック
395:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:01:21.12 :S5jsit9DO
マンハッタンカフェ
マンハッタンカフェ
396:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:01:32.31 :Q3suAGfzO
サトノダイヤモンド
サトノダイヤモンド
397:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:01:47.57 :2oh21dDiO
チヨちゃん
チヨちゃん
398: ◆/4adlfiarI:2022/02/26(土) 22:12:06.89 :p9rWvgZuO
キタサンブラックに決定します。
設定上バクシンオーをお姉ちゃん呼びしますがご承知下さい。
テーマを決めます。安価下1~5でコンマが最も大きいものとします。
キタサンブラックに決定します。
設定上バクシンオーをお姉ちゃん呼びしますがご承知下さい。
テーマを決めます。安価下1~5でコンマが最も大きいものとします。
399:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:13:56.90 :mFyKORj9O
富山ブラック
富山ブラック
400:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:15:25.88 :MmUJPZM60
二郎系
二郎系
401:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:16:09.10 :pgwQUzTqo
二郎系
二郎系
402:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:18:45.37 :hGRYtTUG0
二郎系
二郎系
403:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:19:11.59 :JOpMa3HCo
中山のど・みそ
中山のど・みそ
404: ◆/4adlfiarI:2022/02/26(土) 22:24:14.49 :p9rWvgZuO
富山ブラックとします。ただ、東京にマトモな富山ブラックの店があるか次第ですね……
場合によってはずるい手段を使うかもしれません。富山ブラックでありながら富山ブラックでない、ある店を紹介する可能性があります。
富山ブラックとします。ただ、東京にマトモな富山ブラックの店があるか次第ですね……
場合によってはずるい手段を使うかもしれません。富山ブラックでありながら富山ブラックでない、ある店を紹介する可能性があります。
405:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:28:16.05 :hGRYtTUG0
乙わっしょい
乙わっしょい
406:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:29:37.73 :pgwQUzTqo
おつおつ
ラハゲのウマ娘とバクシンオー(orカレンチャン)の対決あるか…?
おつおつ
ラハゲのウマ娘とバクシンオー(orカレンチャン)の対決あるか…?
407: ◆/4adlfiarI:2022/02/26(土) 22:33:17.30 :p9rWvgZuO
>>406
それは構想中です。誰を出すかはある程度決めてはいます。
富山ブラックでおすすめの店を募集します。ちょっと調べましたが、東京だとどうにも数が少ないですね。
もしないようなら、裏技を使います。今は限定を出してないようなので、記憶を引き出してやります。
>>406
それは構想中です。誰を出すかはある程度決めてはいます。
富山ブラックでおすすめの店を募集します。ちょっと調べましたが、東京だとどうにも数が少ないですね。
もしないようなら、裏技を使います。今は限定を出してないようなので、記憶を引き出してやります。
408:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 22:40:21.01 :hGRYtTUG0
富山ブラックはカップ麺くらいしか食べたことない……
富山ブラックはカップ麺くらいしか食べたことない……
409:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/02/26(土) 23:37:19.13 :pgwQUzTqo
思いつかねえので裏技行こう
思いつかねえので裏技行こう
410: ◆/4adlfiarI:2022/02/26(土) 23:57:34.11 :p9rWvgZuO
とりあえず明日までにリクエストがなければ裏技やります。
結果として○○系になるので高確率で○○○が出ます。
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